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■東雲(2)

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1月27日(月)になって、ローザ+リリンはやっとローズクォーツの音源制作に参加できた。ただし午後から予定が詰まっているので、午前中にスタジオに出てきて歌唱した。クォーツのメンツも午前中はだいたい休んでいるのだが、この日は(実質的なリーダーである)タカだけが出て来てくれた。
 
タカはふたりの歌唱を聴いて言った。
 
「ケイナは上の方の音が苦しそうだな」
「すみません。以前は男声はオクターブ下で、女声は実際にはヘッドボイスで歌ってたから出ていたんですが、女声になってしまってから、上のほうが少し苦しくて」
 
「困ったな。音程を下げようとすると伴奏を録り直さないといけない」
とタカが本当に困ったように言っていた時、たまたま臨席していた甲斐窓香が言った。
 
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「ふたりの話す声を聞いていると、マリナちゃんの声の方が高い気がする。マリナちゃんはこの音出ない?」
 
「歌ってみます」
 
それでマリナがケイナのパートを歌うとのびのびと声が出ている。
 
「かなり余裕があるな。マリナちゃん、ちょっと声域を確認しよう」
 
それで窓香がキーボードを弾き、それに合わせてマリナが声を出すと、上はE6まで出ることが分かった。
 
「これはすげー」
「E6は今たまたま出ましたけど、いつも出るかどうかは自信無いです」
「一瞬出た感じだったもんな」
 
そして下はF3まで出た。つまりほぼ3オクターブ出ていることになる。
 
「こんな低い声出しても、男声にならないね」
「どうも男声は完全に出なくなっちゃったみたいです」
「うん。それはもういいよ」
 
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「どうします?」
と甲斐さんが尋ねる。タカは少し考えていたが、技術者さんに尋ねる。
 
「現在の伴奏、5度上にトランスポーズできますよね?」
「できますよ」
 
「じゃマリナちゃんの声を最大限まで使おう」
とタカは言った。
 
「じゃ伴奏は電気的に5度上にするの?」
と窓香が尋ねる。
 
「今日はそれでボーカルを収録する。伴奏は録り直す」
「結局録り直すんだ!」
 
「当然。アイドルの音源制作じゃあるまいし、電気的に調整した音なんて商品としてはリリースできないよ」
とタカは言った。
 
それで結果的に、"CATS"の"Memory"や、ユーリズミックスの"There Must Be an Angel"をオリジナルキーで収録することができたのである。
 
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またこれを機会に、マリナとケイナはパートを交替することにし、高音部をマリナ、低音部をケイナが歌うことになった。
 
(これまではテノールのケイナがケイのパート、バリトンのマリナがマリのパートを歌っていたがケイナが1オクターブ、マリナは2オクターブ上がってしまった感じである)
 
「ローズ+リリーのものまねする時も、マリナがケイのパートを歌って、ケイナがマリのパート歌った方がいいな」
とタカがいうと
 
「実はもしかしたらその方がいいかもとこないだから思ってました」
とケイナも言った。
 
27日も28日も午後からは別の仕事が入っていたのだが、この2日間は午前中にスタジオで歌唱録音をした。ふたりとも上手いのでこの2日間で4曲吹き込むことができた。28日はタカが来られなかったが、プロデューサーの毛利五郎が奥さんを連れてやってきた。ふたりがパートを交替したことを窓香から聞いた毛利さんも「ああ、その方が良さそうだね」と追認した。マリナは毛利の奥さんを見て、「なんか影の薄い人だな」と感じた。
 
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1月29日(水)は、"Sex on the Beach"のPV撮影をすると言われて、2人は早朝東京駅に来た。待っていたのは甲斐窓香の他に映像作家の深中加奈美さん、メイクアップ・アーティストの小林マユミさんである。
 
「なんか性別の怪しい人ばかりだ」
とマリナが言った。
 
「あんたたち、きれいに女の子の声出すね。私、いまだに女の声が出ないよ」
などと小林さんは言っている。彼女はいわゆるフィッシュアイ話法を使っているので、声自体は低いものの、女性が話しているように聞こえる。
 
深中さんの方はいわゆるオカマ声だが、これも(この方面に関心のない)普通の人が聞けば女性が話しているように聞こえるだろう。
 
ケイナとマリナは1990年代後半以降に知られるようになったメラニー法を使っていたので、女性の声と全く区別のつかない声を使用していた。しかし秋の突発的性転換の後遺症で、完全な女声になり、もう男声は出なくなった。
 
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「サトたちも来るから待ってね」
と甲斐窓香は言っている。
 
「クォーツも行くんですか?」
「ううん。サトだけ」
 
ちなみに、サトの奥さんは窓香の姉である。
 
やがてサトが
「済みません、遅れました」
と言って、奥さんの涼香と一緒にやってきた。
 
「姉ちゃん、遅い」
「ごめーん」
 
「という訳で、行くのはこの7人ね」
と窓香は言った。
 

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それで新幹線ホームに行くのかと思ったら、地下に降りていく。それで着いたのは総武線地下ホームである。
 
「はい、これチケット」
と言って、窓香が全員にチケットを配る。
 
「グアム!?」
「うん。日本では冬の真っ最中にビーチでビキニになっての撮影はできないから、グアムで撮影する」
 
「ビキニになるんですか?」
「あれ?聞いてなかった?」
「聞いてません」
「ごめーん。手違いがあったかも。ケイナちゃん、マリナちゃんのビキニ姿を撮影したいんだけど、いい?」
 
「まあいいですよ。そのくらい」
 
「僕は?」
とサトが訊く。
 
「サトさんも女の子ビキニ付ける?」
「それは現地警察に逮捕されるからやめましょう」
「そういえば"Rose Quarts Plays Girl Sound"の制作の時は、女装で街を歩いてて警官に職務質問されたらしいね」
 
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「あれ雨宮先生が強引なんですよ」
「ああ、可哀想に」
 

マリナが気づいた。
 
「すみません。こちらの予定はたぶん美咲から伝えていたと思うのですが、明日は日本国内でテレビ番組の収録があるのですが」
 
「うん。だから今日中に帰ってくるよ」
「グアムに日帰りなんですか!?」
 
「だって成田からグアムまで3時間半だよ。大阪あたりまで日帰りするのと大差無いよ」
などと窓香は言っている。
 
「うっそー!?」
とケイナ・マリナだけでなく、サトも驚いている。
 
「ああ。須藤社長の体質が窓香にも伝染してるな」
と涼香が笑っている。
 
「須藤さんがローズ+リリーを担当していた時は1日10公演なんてのもあったらしいから」
 
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「恐ろしい」
 
「でもあの人適当だから、物理的に不可能な移動もあってさ。横浜の15分後に高崎とか入ってた」
 
「それはケイちゃんでも無理でしょ」
「あの子、名古屋の1時間後に金沢なんてのは、やったことあるけどね」
「あれは未だに謎ですね」
 
とマリナも言いながら虚空(丸山アイ)とか駿馬(醍醐春海=村山千里)のレベルの超能力者の力を借りたのでは、などと思っていた。マリナは先週、アイが芸人クラウドを東京から名古屋に瞬間転送するのを見ている。
 
(2008.11.15 “蘭子”はKARIONの名古屋公演に出演して15:40に楽屋裏で他のメンバーと一緒にタクシーに乗り込む所を目撃されているが、16:40には金沢でローズ+リリーの公演を前にして、“ケイ”が、早くから会場前に来ていたファンに手を振る所を目撃されている。つまり蘭子とケイが同一人物なら、名古屋から金沢まで1時間以内に移動したことになるのである:実際には自衛隊のF15 Eagle で移動している。バレると国会で問題にされるレベルなので絶対にバラせない)
 
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「実はH2型ロケットで飛んでったらしいよ」
「それ、ケイならありそうで恐い。沖縄から大宮に短時間で移動した時は、飛んでいるジェット機の上から怪盗キッド並みにパラグライダーで降下したのではとか言われていたし」
 
「あの子、体当たり芸人並みの扱いされてるからね」
「無茶苦茶ですよね」
 

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実際にこの日、ローザ+リリンやサトらが利用した便は下記である。
 
NRT 1/29 9:30 (HA5437 B777) 14:15 GUM (3'45)
GUM 1/29 17:10 (HA6459 B777) 19:55 NRT (3'45)
 
日本とグアムの時差は1時間なので、14:15GUM = 13:15JST
17:10GUM = 16:10JST
となっている。(日付変更線は越えない)
 
グアムに着いたらビーチに直行し、1時間ほどで撮影を終えて空港にとんぼ返りしている。しかし深中加奈美はその短時間できれいな映像を撮ったのである。
 
小林マユミさんは、ふたりのビキニ姿が女子のビキニ姿に見えるように、ボディメイクをするために同行している。本当は本人たちで事前練習しておきたかったのだが、ローザ+リリンがあまりにも忙しかったため、花村唯香を使ってシミュレーションしていた。
 
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実際には、小林さんがボディメイクによる“陰影マジック”で、肩の張った身体を撫で肩に見せたりする作業はケイナだけにおこなえば良かった。マリナの場合は「女の子のボディラインそのものだから何も修正する必要無い」と彼女は言った。
 
「ケイナちゃんも、テストでボディメイクした花村唯香ちゃんよりずっと撫で肩だから、修正の程度が少なくて済む。あなた20歳前後から女性ホルモン摂ってたでしょ?」
 
「いや、そんなの摂ってないんですが」
「別に今更隠す必要無いよ。マリナちゃんは、ケイちゃんなんかと同様に、小学生の内に去勢してHRT(女性ホルモン療法)してるね」
 
「私去勢とかしてないですけど」
「嘘ついたってダメだよ。そうでないとこの骨盤の形が説明できない。まるで妊娠できるかのような骨盤してる。身体が正直にトランスの履歴を表しているよ」
 
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などと小林さんは言っていた。
 

確かに小林さんにしても、深中さんにしても、結構肩が張ってるよなとマリナも思った。男性の肩の張りは、だいたい18-22歳くらいの時期にできあがる。それでそれ以前に去勢して女性ホルモンを摂っていた人は女性のように撫で肩だ。マリナは大阪在住の古い友人が、きれいな撫で肩だよなと以前から思っていた。彼女の場合は高校を出てすぐの時期に去勢したという。
 
何でも友人と道で会って「私今から病院行くけどあんたも行く?」と言われて「行く行く」と言って付いてったら、友人は去勢手術をしに来ていて、お医者さんから「あんたもかい?」と言われてノリで「はい」と言ったら、去勢されたらしい。
 
実はケイナとマリナの場合、定山渓で丸山アイの悪戯?で性転換して女になった時に、肩がずいぶんなだらかになってしまったのである。徳島で醍醐春海に男に戻してもらった時にも肩は戻らなかった。そしてマリナの場合は再度性転換した時に前よりなだらかになって、普通の女性のような撫で肩になってしまった。骨盤も同様である。どうも何度も性転換するといろいろ副作用も出るようである。
 
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なお、ケイナのパスポートもマリナのパスポートも、ちゃんと女装写真なので、入出国ではトラブルは無かった。また甲斐窓香は航空券を、ケイナはM、マリナはFで取ってくれていた。
 

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グアムのビーチでは、ケイナとマリナがセクシーなビキニ姿になって、(男子水着姿の)サトの両脇から誘惑するようなポーズをする。この程度の仕草は、以前から田舎の温泉などでやっていた“芸”の範囲なので、ふたりとも本当にセクシーな感じになり、深中さんが感心していた。
 
サトが「すまん。変な気分になった」と言って、涼香から蹴りをくらっていた。
 
「時間が無いから帰国してから処理してね」
と窓香は言うが
「セクシー美人に迷った罪で3日くらいお預けにしようかな」
などと涼香は言っている。
 
「勘弁してよぉ」
 

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