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ウイロウの方も開けて食べる。これは元々切れているので便利だ。
「青島のウイロウもいいな。私は山口のも好きなんだけどね」とまどか。
「白と黒、どちらが好みですか?」
「私は黒だな」
「私は白」
とこのあたりは意見が分かれる。
「あと、今回は正八幡も宮崎神宮も行ってないしね」
「正八幡?」
「鹿児島神宮とも言う。日本で2番目に古い八幡様さ」
「へー。一番は?」
「宇佐八幡だよ。大分の」
「はあ」
「近くにハーモニーランドとかあるよ。星が少し大きくなったら連れて行ってもいいかもね」
「男の子が喜ぶかなあ・・・」
「命(めい)の子供だもん、きっと喜ぶよ」
「うっ」
「やっぱりオカマって遺伝します?」と理彩。
「ああ、きっと遺伝すると思うよ」とまどかは笑っている。
「今一瞬命(めい)と結婚したことを後悔した」
「あはは。成人式に振袖着るような子になったりしてね」
とまどかは更に笑う。
「星の前に、あんたたちこそ来年の成人式は何着るの?」と理彩の母。「私は振袖着るよ、既婚だけど、そこはスルーで」と理彩。
「命(めい)ちゃんは?」
「えっ? 背広かなあ、やっぱり」と命(めい)。
「背広〜!? そんなの持ってないでしょ?」と理彩。
「うん。1着くらいは買っておくかなと思ってたんだけどね。フォーマルな服全然持ってないし」
「そんなの許さん。命(めい)には振袖を着てもらおう」
「えー? だって僕男だし、既婚だし、ママだし。振袖着れる条件全然無い」
「既婚でもママでも構わないと思うよ」と理彩の母。
「そうそう。命(めい)は女の子だもん。振袖着なくちゃ」と理彩。
「フォーマルな服が必要なら、女性用のフォーマルドレスとかビジネススーツとか買っておけばいいんじゃない?」と理彩の母も言う。
「だいたい結婚式で白無垢着た人が、今更何言ってんのさ?」
翌日。星の世話役を理彩の母と交替するために、命(めい)の母が村から出てきた。理彩が「疲れたから休む」と言って自主休講していたので、4人でお昼御飯を食べながら、成人式の話題をする。
「うん、理彩ちゃん既婚でも振袖でいいと思うよ」
と命(めい)の母も言うので、そちらはそれで決まりの感である。
「命(めい)も振袖を着ようよ、と言ってるんですけどね」と理彩が言うと「ああ、それでいいんじゃない」と命(めい)の母も言った。
「命(めい)ちゃん、以前一度振袖着てもらったことあるけど、可愛かったね」
と理彩の母。
「あ、これだよね」と言って理彩が棚からお花の会のパンフレットを取ってくる。「さっと出てくるところが凄い」と命(めい)は呆れて言う。
「命(めい)の可愛いショットはきれいに整理してるから。これ大元のInDesignのファイルのコピーも私のパソコンに保存してるよ」
「ははは」
「背広なんて必要ないですよね?」
「必要無いでしょ。命(めい)がサラリーマンやる姿なんて想像できない」
と命(めい)の母。
「お母さんもこう言ってるし、ちゃんと女として生きて行こう」と理彩。
「えーん」
「もし、大阪とか奈良とかで女として就職できなかったら、村に帰ってきて畑買って耕せばいいよ」
「あ、大阪は結構いけると思うよ。女として受け入れてくれる所あるよ」
「僕、男として就職するつもりでいたけど」
「無理無理」と母。
「男として履歴書出したら性別詐称ですよね〜」と理彩。
「ほんとほんと。どっちみち今年くらいに性転換手術するんでしょ?」
「しないよ〜」
「あら、妊娠中に性転換手術するわけには行かないなんて言ってたから、出産が終わったところで手術するつもりなんだろうと思ってたのに」
「私切ってあげようか?命(めい)は私と結婚したんだからヴァギナは不要でしょ? おちんちんとタマタマ取るくらいなら、私にもできるよ。麻酔くらい掛けてあげるから。どうせなら休学中に切れば、復学する頃までには傷もきれいに治ってるよ」
「あら、いいわねえ、お願いしたら?」
「やめて〜」
その夜。
理彩の母は夕方の電車で村に帰り、命(めい)の母は2階の寝室で寝ている。星は座敷に置かれたベビーベッドですやすやと寝ている。
命(めい)と理彩はリビングに布団を敷き、お風呂に入ってきて、今から愛の儀式を始めようとしていた。ふたりとも裸だ。理彩がEカップの命(めい)のバストを撫でていたら、唐突にまどかが現れた。
「あっと・・・今から私たち、あれなんですけど」と理彩。
「うん。それやりやすいように、命(めい)を女の子に変えてあげるね」とまどか。
「え?」
と言っているうちに、もう命(めい)の身体は女の子になっている。
「ん? これはタックじゃなくて、本物の割れ目ちゃんだ」と理彩。
「ちゃんと、ヴァギナもあるはずだよ。じゃ、楽しんでね〜」
「あ」と命(めい)がいう間もなく、まどかは姿を消してしまう。
「おお!これは素敵だ。やっぱり私の勘違いじゃなかったのね。命(めい)ってしばしば女の子の身体になってるよね?」
「うん、まあ・・・」
「それで生理用ナプキンも使うんでしょ?」
「えっとね。女の子の身体にならなくても、生理はある。僕の身体自体が実はほとんど女の子で、男性器はお義理でくっついている感じなんだよね。だから男の子の身体のまま、生理は出てくるから、生理中はナプキン付けてる。僕の生理周期は理彩の生理周期とほとんど連動してるよ」
「へー、ああ、生理は移るってやつか!」
「そうそう。これだけ密着してるとね。中学生の頃までは、ずれてる時もあったけど、高校になってからは、僕たち密着度が高くなったから、ほぼピッタリ合ってるよ」
「そうだったのか・・・命(めい)がナプキンを何に使っているのかというのはずっと謎だったんだ。ちゃんと生理に使ってたのか」
「僕って、胎児の時に男性ホルモンの分泌が悪かったんだって。生理周期って男女とも本来あるものが、男の子の場合は胎児の時の男性ホルモンの作用で破壊されてしまうのだけど、僕の場合はその破壊が起きなかったらしい」
「へー。生理っていつ頃からあるの?」
「理彩に初めて生理が来た日の2日後に、僕にも生理が来たんだよ」
「小学生の時からあったんだ!」
「僕に生理があること知ってるのは、お母ちゃんだけ。ナプキンを部屋に置いてたら当然見つかるから。事情を話して、そのあとはお母ちゃんがナプキン買ってくれるようになった。男の子がナプキン買ってたら変に思われるよと言われて」
「いや、命(めい)は女の子にしか見えないから問題無い」
「うーん。そうかも。でも僕が妊娠したことを自然に受け入れてくれたのは僕に生理があることを知っていたからかもね」
「なるほど。でも今日は純粋にレスビアンで楽しめるね」
「そうだね」
その夜は理彩が異様に燃えて、いろいろ体位を変えつつ結局6時間くらいやっていた。最後はもう明け方に掛かってしまったので「私、今日も自主休講」などと言って寝た。命(めい)も疲れ果てて、朝の祝詞をあげた所で寝た。
起きたらもう11時だった。
「あんたら、起こしても起きないから放っといたよ」と命(めい)の母が言う。
「ごめーん」
「星には朝1度ミルクあげたから」
「ありがとう」
「星が泣いても起きないなんて珍しいね」
「うん。僕も今日はちょっと熟睡してた」
「まあ、若いし、たくさんしたいんだろうけど、平日は少し控えた方がいいよ」
「肝に銘じます」
命(めい)の母が買物に出かけたら、まどかが現れる。
「昨夜は楽しんだ?」
「楽しみすぎです。これ凄くいい。このまま命(めい)を女の子のままにしておいてください」
「それは困る。まだ僕は男を辞めたくない」
「いや、命(めい)はとっくの昔に男を辞めている」と理彩にもまどかにも言われる。
「まあ、時々女の子に変えてあげるよ。そのうち子作りが終わったら、完全な女にしてあげるし」
「ああ、いいかも」と理彩。
「それまででも必要な時は、いつでも女の子にしてあげるから、命(めい)は性転換手術を受ける必要無いよ」
「そっかー。私、命(めい)のおちんちん切り落としたかったのに」
「理彩、あんたは一度命(めい)のおちんちんを切り落としてるよ」
「えー!?」
「小さい頃のことだから、忘れちゃったかもね」
「全然記憶無いです」
「僕、それかすかに覚えてる。おちんちんが切れて転がってて、嬉しいけど痛くて」
「やはり切られて嬉しかったのか」と理彩。
「ふふ。でも私がくっつけちゃったからね」とまどか。
「でも、命(めい)って、結局そもそもヴァギナ持ってるんですよね?」と理彩。
「そう。性転換手術しようとしてメスを入れたら、お医者さんびっくりするだろうね」
「星を出産した時も、帝王切開でお腹を開けたら子宮が存在してたから、お医者さん、驚いてました」と命(めい)。
「そりゃ、子宮が無きゃ妊娠できるわけないさ。でも子宮を見たという記憶は、お医者さんからは消してあるから」
「ふーん」
「成人式の服は決まった?」
「決まりです。ふたりとも振袖です」
「うん。楽しみにしてるよ。ふたりの成人式の時は、私も振袖着てこようかな」
「・・・・まどかさん、成人式してないですよね?」と命(めい)。
「まあね」
「僕たちと一緒に成人式しません? ちょっと年齢3倍だけど」
「女の年齢のこと言うと、マウスが飛んでくるよ」
とまどかが言い、テーブルに置いていたパソコンのワイヤレスマウスが飛んできて、命(めい)の頭に当たる。
「痛たたっ。もっと痛くないものにしてください」
「でも、それもいいかな。私も成人式しちゃおうかな」
「一緒に振袖着ましょうよ。まどかさん、見習い期間が終わって正式に神様になったんだもん。成人式をするのにふさわしいタイミングですよ」と理彩。
「そっかー。そういう考え方もあるよね」
まどかはちょっと楽しそうな表情を浮かべていた。
まどかは帰り際に命(めい)の身体を男の子に戻した。それと同時に、命(めい)が女体であった間の、命(めい)と理彩の記憶も消える。(正確には消去されるのではなく、その記憶を再生するための暗号鍵が分からなくなってしまうらしい)
理彩は、命(めい)の生理用品の謎が解け、性転換手術をさせる必要がないことも理解した記憶だけがあったが、どう謎が解けたのか、なぜ命(めい)を性転換する必要がないのかは、忘れてしまって、記憶の矛盾に悩んでしまった。
しかし来年の成人式に理彩と命(めい)とまどかの3人で一緒に振袖を着る約束をしたことは覚えていた。