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■神様のお陰・愛育て(17)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-07-21
 
翌週の金曜日。
 
理彩が学校から帰ってきて、一休みし、ネットでゲームをしながら晩御飯を作っている命(めい)、座敷で星をあやしている自分の母と会話をしていたら、玄関にピンポーンという音。「はーい」と言って出ていくと、まどかだった。
 
「こんばんは。珍しい所から入ってきますね」と理彩。
「うん。たまにはこういう所から来てもいいかなと思って」とまどか。
 
「あら、こんにちは。お久しぶりです」
と母も笑顔で迎え入れる。
「先週、まだお母ちゃんたちが出てくる前、高校の友達で集まって結婚と星の誕生のお祝いをしてくれた時も、まどかさん来てくれたんだよ」
「あらら、本当にいつもお世話になってます」
「いえ、お母さんたちには、なかなか挨拶ができなくて」
 
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「まどかさんは忙しいからね。ほんとによくあちこち動き回ってるもん」と命(めい)。
「セールスか何かのお仕事なんですか?」
「サービス業だよね」と理彩。
「そうだね。これもサービス業の一種だよね」とまどか。
 
「でね。ちょっと命(めい)と理彩に頼みがあって来たんだ」とまどか。
「何でしょう?」
「これを友達の所に届けてきて欲しいんだけど」
と言って、持っていた紙袋の中の箱を取り出す。
 
「桃ですか?今の時期に珍しいですね」
「でしょ? ふつうは早いものでも来月くらいからだよね。私の親戚でハウス栽培で4月から桃を出荷してるところがあってね。そんな話を別の友達と話してたら、あ、食べたいというので分けてもらってきたんだけど、私自身がたまたま向こうに行くつもりだったからそのついでにと思ってたら急用ができちゃって行けなくなったのよ。それで代わりに行ってきてくれないかと思って」
 
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「いいですよ。どこですか?」
「宮崎の青島ってとこなんだけどね」
「宮崎? 九州ですか?」
「うん」
 
「飛んで行くの?」
と命(めい)は転送するのかと訊く。理彩の母がいるので、あまりうかつな言葉は使えない。
「飛行機だとあっという間に着いちゃって面白くないじゃん。新幹線で行って来ない? あんたたち新婚旅行、行ってないでしょ。だからそれ兼ねて。もちろん交通費と宿泊費は出すからさ」
「ああ」
 
なるほど、それが目的だったんだ! しかしまどかにしては親切な。
 
「あら、いいお話ね。行ってらっしゃいよ」
「星はどうする?」と理彩。
「私が面倒見てるよ。赤ちゃんの世話のことは忘れて楽しんできたら?」
と理彩の母が言うので、甘えることにした。
 
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「でも泊まりなら朝晩の祝詞が」
「あ、それも私がやるよ。読み上げる祝詞を教えて」
 

まどかはチケットをカードで決済したから、受け取る時にカードがいるからと言って、VISAカードを渡し、「ホテル代もこれで払ってね。他にも何か必要なものがあったらこれで決済して」と言った。
 
翌朝、日出前に家を出て理彩の母に車で新大阪駅まで送ってもらい、まどかから預かったカードを使ってみどりの券売機でチケットを受け取る。
朝一番の「みずほ」に乗る。
 
「私、グリーン車なんて乗るの初めて」
「僕も。あんまり親切すぎて、何か裏があるんじゃないかと思いたくなるくらい」
「そんなこと言ってたら、バナナが飛んでくるよ」
と言うと、ほんとにバナナが飛んできて、命(めい)の頭にぶつかる。
 
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「痛っ」
「バナナ、も〜らい」
と言って、理彩は命(めい)の頭に命中したバナナを剥いて食べ始める。
「なるほど、欲しいものがあったらその手か」
「宝石とか言ってみたらどうなるかなあ」
「それやめて。請求書付きで飛んでくるから」
「あ、それは怖いからやめとこう」
 
「でも神様がクレジットカード持ってるとは思わなかった」
「クレカでないと買えないものもあるからね。作るのはどうにもでもして作るでしょ」
「確かにね〜。神様の在確ってどうするんだろう?と一瞬悩んでみた」
 
「Madoka Nishizawaか・・・・」
「西沢さんだったのね」
「たぶんお母さんの苗字なんじゃない?」
『母ちゃんの結婚相手の苗字だよ』と声が響いてくる。
「へー」と理彩と命(めい)は同時に声をあげた。
 
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「だけど、こんな感じで旅をするのって、受験の時以来だね」
「ほんと。大学に入ってまもなく僕が妊娠しちゃったし。星連れてはまだ長旅できないよ」
「倍疲れるだろうね。星って、あまり手の掛からない子のような気はするけどそれでも、けっこう私たち少し育児疲れしてたよね」
「うん。けっこう夜泣きはするしね。おっぱいあげるとおとなしくなるけど」
「おっぱい欲しい泣き方とオムツ換えて欲しい泣き方は分かるようになった」
「雰囲気で分かるよね」
 
「でも命(めい)って眠りながら、無意識におっぱい出してお乳あげてるから凄い」
「理彩も自分で産んだらできるよ、きっと」
 
山陽路を西行しながら、少しずつ景色が明るくなってくる。ふたりは朝御飯用に作ってきたおにぎりを食べながら、おしゃべりを続けていた。
 
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「だけど、私男の子の命(めい)と一緒に旅したことがない気がしてきた」
「そうだっけ?」
「命(めい)って、村の外に出る時はいつも女の子だったよね」
「えーっと、中学の時に四国に行った時は男の子じゃなかったかな」
 
「あの時、うちの家族と命(めい)の家族と6人で食事に行って、伝票をふと見たら、M2F4って書いてあった。うちのお父ちゃんと命(めい)のお父ちゃんがMだろうから、命(めい)は F でカウントされてたんだよ」
 
「あ、そうだ!大学受検の時は男の子だったよ」
「命(めい)、女子トイレにいたじゃん。つまり女子トイレに入っても誰も騒がないような服装だったということ」
「うーん。。。。」
 

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鹿児島中央に10時前に着き、特急「きりしま」に乗り継ぐ。新幹線に乗っている間は、ずっと4時間近く座っているのは辛いので、時々交替で車内の散歩などしていたのだが、「きりしま」の中ではふたりともすやすやと寝ていた。
 
お昼過ぎに南宮崎に着き、日南線の快速に乗り継ぐ。南宮崎に着く5分ほど前に目が覚めたが、「もうすぐ南宮崎に到着します」というアナウンスが流れているのに、列車の外の景色が物凄い山の中なので、南宮崎も凄い山の中の駅なのだろうかと思ったものの、駅到着のすぐ前に開けたところに出たので、ちょっとホッとした。お昼をまだ食べていなかったが、青島まですぐなので、お届け物をしてから食べようということにする。
 
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快速「日南マリーン号」に乗って20分ほどで青島駅に着いた。歩いてすぐの所に青島はあった。
 
「これ、どこで渡すの?」
「たぶん行けば分かると思う」
 
島にかかる橋を渡り、回り込むようにして青島神社の鳥居の所まで行き、境内に入る。正面にある拝殿でふつうにお参りをした。
 
「あ、こっちだ」
と言って命(めい)は右手の方にある元宮の方に歩いて行く。そこでまたお参り。すると、左側に外見30代という感じの女性が立っている。
 
「こんにちは。E村のN大神からお届け物です」
と言って命(めい)は持ってきた桃の箱のひとつを渡す。
「お疲れ様。これから鵜戸に行くよね?」
「はい。お昼を食べてから行くつもりでいましたが」
「『お昼食べる前に』、このお酒を持っていって」
「分かりました。持って行きます」
「じゃね」
と言って手を振ると、女性の姿は消えた。
 
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「私、まどかさんの出没になれてるから、こういうの見ても驚かない」
「なんか普通だよね。さて、お昼はお預けで、行ってこようか」
「うん」
 

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青島神社でトイレに行ってから、水分くらいはよいだろうということで自販機でお茶のペットボトルを買って、13時半の飫肥行きのバスに乗る。30分ほどで鵜戸神宮入口についた。しかしここからが結構長いのである。2km近い道のりを歩く必要がある。
 
ふたりはバス停近くの「荷物預かります」の看板が出ている商店に大半の荷物を預け、お届け物だけをリュックに入れて、約30分の行程を歩いた。
 
「やっと着いた!」
ふたりはやっと鵜戸神宮の鳥居の所まで到着した。
 
「私、とりあえずトイレ行きたい」「僕も」
と言ってふたりはトイレに行く。もちろんふたりとも女子トイレである。今日の服装は、命(めい)は水色のポロシャツに膝上スカート、理彩はライトイエローのポロシャツにショートパンツであった。神様のお使い物を持っているので、個室は充分空いていたが、交替で入り、個室の中にはお使い物を持ち込まないように留意した。
 
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「公共交通機関使ってくるのが大変な場所だね」
「まあ、もともと修験者が修行してた場所だもん。やすやすと人が来れる所じゃないんだ」
「もしかして私たちも修行させられてたりして」
「ああ、あり得るね」
 
トイレで人心地ついてから、気を取りなおして、本殿までの道をまた歩く。5分ほど歩いて、本殿のある洞窟に到達する。ここは開口面積の広い洞窟の中に神社が祭られている。今でこそ、参拝のための道が作られているが、昔はお参りするだけでもかなり大変な場所であったろう。
 
拝殿でお参りしてから、裏手に回る。
 
「あ、お乳岩だって。命(めい)、お参りしなきゃ」
「うん」
 
そこでお参りしていたら、右手に若い男性が立っているのに気付いた。
 
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「こんにちは」と命(めい)は挨拶する。
「こんにちは」と青年も笑顔で挨拶した。
「E村のN大神から桃、青島大神からお酒を言付かって来ました」
と言って、命(めい)は紙袋ごと渡す。
「お疲れ様です。申し訳無いですが、これを霧島神宮まで持って行ってもらえませんか?」
と言って、青年は日向夏を3個渡した。
「えっと・・・・お昼を食べる前に?」と命(めい)。
「いえ、御飯食べてから、明日でもいいですよ」
「助かります!」と理彩が言った。
 
「そうそう。かわらけを投げて行ってくださいね」
と言って青年は命(めい)と理彩にかわらけの玉を5個ずつ渡して、すっと消えた。
 
「これ、どうするんだっけ?」
「ああ、あそこから投げるんだよ」
と言って、ふたりは運玉を投げる場所に行く。
 
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「ほら、あそこの岩に向かってなげるんだ。男性は左手、女性は右手で投げるんだって」
「よし。投げよう」
と言って理彩は1個目の玉を投げるが全然届かない。
「これ届かないよ〜」
 
「全力で投げないと無理だよ。けっこう本気必要」
「よし」
と言って理彩は再度投げるが、やはり届かない。
「うーん」
理彩は3個目をおおきく振りかぶってなげるが、わずかに届かない。
「あ、でも惜しい」
「よし、頑張る」
と言って投げるも4個目はさっきのより手前に落ちた。
 
「最後。もうほんとに全力で」
と言って理彩は少し下がって走りながら投げた。勢い余って手すりにぶつかり、慌てて命(めい)が押さえる。
しかしこの5個目はギリギリで円の中に落ちた。
「やった!」
「当たり〜。で、これあそこに当たると何かいいことあるの?」
「願い事が叶うんだよ。何を願って投げたの?」
「あ・・・・何も考えてなかった」
 
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