広告:ここはグリーン・ウッド (第3巻) (白泉社文庫)
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■神様のお陰・愛育て(1)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-07-15
 
理彩と命(めい)が高校3年生の6月初旬。昼休みに命(めい)が図書館に行って来ようとしていたら、春代に拉致された。
 
「命(めい)、はっきりさせておきたいことがあるんだけどね」と春代は言った。「うん?何?」と命(めい)。
 
「先月さ、私が命(めい)と理彩はHしてるかと訊いた時に命(めい)は否定したでしょ? でも理彩はそれに異論があるみたいだった。それにこないだもふたりでお泊まりしてたじゃん。ふたりは実際Hしてるの?してないの?本当のことを聞かせて欲しい。返事次第では、命(めい)には理彩と別れてもらう」
と春代は厳しい顔で言った。
 
「それなんだけどさぁ」と命(めい)は困ったような顔で言う。
「僕たち、きちんとした形でしてないんだよ」
「ああ」
「だから僕としては少なくとも理彩の前では、したことがないと言うしかない」
「どういうこと?」
 
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「春代だから正直に言う。信じてくれないかも知れないけど」
「取り敢えず話してみてよ」
「結論から言うと僕と理彩は今までに2回セックスしてる」
「正直じゃん」
 
「でも正常な形じゃないんだよ。2回とも」
「へー」
「いろいろ考えたんだけど、僕は夏くらいまでには、理彩と1度きちんとした形でセックスしたいと思ってる。たぶん理彩の方もそうしないとスッキリしないんじゃないかと思って」
「まあ、それまでに命(めい)が理彩に愛想尽かされなかったらね」
「そうだね」
 
「でも正常じゃないって、どんな形なの?」
「最初は中学2年の時だった」
「うん」
「でも。そのセックスは理彩が男の子になってて、女の子になってた僕に入れられたんだ」
「はあ?」
 
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「異常な事態だったから、理彩はそれを夢の中の出来事だと思ってる」
「そういえば、そんなこと言ってたね!」
「でもあれ、夢じゃなくてリアルなんだよ。僕は排卵期だったからあやうく妊娠するところだった」
「えー!?」
 
「緊急避妊薬を飲んだ。ちょっと副作用がきつくて。吐いちゃったからもう1度薬もらって飲み直した。だから、直後と、吐いた時と12時間後の3回飲んだんだよ。あれって女性ホルモン剤だから、おちんちんも1月くらい立たなくなったし」
「わあ。。。。でも、それ妊娠してたら、どうなってたの?」
 
「男の子の身体ではホルモンの関係で妊娠維持できないから、結果的には1月もしない内に流れてたろうって。でも下手するとお腹の中で受精卵が成長できないまま死んで中絶手術みたいなのをして出す必要が出てきてたかも、とも言われた」
「きゃー」
 
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「でも、そういう事態だから、理彩には言わずにいる。付けずにしたことを責めるみたいにしたくないから」
「いや。それってちゃんと付けさせるべきだった」
「うん。あの時は僕も性別逆転して焦っちゃったから、そこまで頭が回らなかったんだよね。でも、こないだは理彩、する時は付けるって言ってたからね」
「ああ、言ってたね!」
「だから今度もし逆転した時はちゃんと付けてもらう」
 
「それがいいね。でも、こんな話、普通は誰も信じないね」と春代。
「そうだろうね」
「ふつうの男の子が言ったら信じないけど、命(めい)ならあり得る気がする」
「ありがとう」
 
「もう1回はたぶん今年の2月。理彩の家に行ってて、ふと気付いたら僕は裸で寝てたんだよね」
「ほお」
「僕は記憶が残ってないんだけど、その時、たぶん理彩とセックスしたんだと思う。これ理彩は何も言わなかったんだけど、ある人が教えてくれた」
「命(めい)が寝てる間に理彩が勝手に結合したわけ?」
 
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「ううん。僕と理彩が合意の上でしたセックスだと思う。でも何かの事情だか都合だかで僕には記憶が残らなかったんだよ。そしてこのこと自体、それを理彩に言ってはいけないみたいなんだ」
「なんで?」
 
「そのセックスで、僕は理彩に降りかかるはずだった何かを引き受けたみたいなの。それで僕には記憶が残ってない。でも、このことを理彩に言ってしまうと、それが理彩に戻ってしまう気がする。だから、このことは春代も理彩には言わないで欲しい」
 
「わかった」と春代。
「何だか奇妙な話だけど他言しないよ。正直に話してくれてるみたいだから。命(めい)の周りって、昔から時々不思議なこと起きてたもんね」
 
「うん。僕って霊媒体質だから、どうも神様同士の思惑に巻き込まれてるような気もするんだけどね。もうこの先何が起きても驚かないや。その内ほんとに赤ちゃん産んじゃうかも」
「実際、一度は妊娠の可能性があった訳なんでしょ?」
 
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「そうなんだよね−。そういう訳で2回セックスしていることはしているけど、僕としては理彩とはまだしてないというのが公式見解」
 
「でも、そういうおかしな状況じゃない状況で、1度しておきたい訳ね」
「うん」
「まあ、他の男の子に横取りされないうちに、ちゃんと捕まえておきなよ」
「そうだね」
 
「こないだお泊まりした時もしなかったわけ?」
「Hなことはしたけど、セックスはしてない」
「ふーん」
「僕たちは『女の子同士の悪ふざけ』と言ってるんだけどね。服は脱がない。相手の服の中にも手は入れない。相手のお股にも触らないというのを守って気持ちいいことだけする」
「そりゃまた、清純なって、それでどうやって気持ち良くなるの?」
「だいたい僕が理彩の乳首を刺激して、あとは理彩がセルフサービスで自分のをいじって逝ってしまう」
「命(めい)はどうやって逝くの? 命(めい)もひとりでする訳? 理彩が見ているところで」
 
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「僕は何もしないよ」
「えー? でもそれだと理彩は気持ちよくなれても、命(めい)はなれないじゃん」
「僕は理彩が満足してればそれで満足するから。これは快楽よりふたりの愛の確認のためにしているの」
「でも出しちゃわなくて平気なの?」
 
「僕出すのあまり好きじゃないんだよねー。理彩と結婚したいから男の子でいる必要はあるけど、男の機能を使うこと自体はあまり好きじゃない。オナニーも月に1回はしてるけど、出しても気持ち良くない」
「月に1回〜! あり得ない。男の子って毎日するんじゃないの?」
「そうなの?」
と命(めい)が驚いたように言うので春代が呆れる。
 
「日に数回やる子もいるみたいだよ」
「嘘みたい・・・・そんなに楽しいのかな」
「楽しいというよりせざるを得ない衝動に動かされるんじゃない?」
 
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「やっぱり・・・・僕って男の子の機能、弱いのかな」
「まあ、男性ホルモンあまり強くない気はするよね。いっそ性転換してレスビアン婚を目指さない? 理彩ってバイだから命(めい)が女の子になっても結婚してくれるよ、たぶん」
 
「そうかもね。でも、僕理彩との子どもが欲しいから性転換はできないよ」
「子どもが欲しいんじゃ、男の子の機能を維持する必要があるね」
「うん」
 

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その月の下旬。命(めい)は隣町のショッピングセンターに行っていて突然倒れ救急車で病院に運び込まれてしまった。
 
救急処置室に運び込まれ、「患者は推定15-16歳、女性、意識レベル1の3」などと言われている。
 
命(めい)は掠れる意識の中で『私、17歳の男性なのに・・・』などと思っていたが、スカートも穿いてるし、下着も女物を着けているし、髪も2月に切って以来ずっと伸ばしていたので、その格好を見て男と思えという方が無理である。
 
インフルエンザと判断され、タミフルを飲まされる。命(めい)は何とかこれを飲み、その後CT室に運ばれる途中で完全に意識を失ってしまった。
 
「これは導尿した方がいいかな」という医師の判断で尿道カテーテルを挿入する。女性看護師が命(めい)のショーツを下げ、陰唇を左手の指で開き、右手で尿道口付近を消毒した上でカテーテルを挿入した。
 
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その処置が終わった所で医師が再度命(めい)の身体を診察する。
「でもこの患者さん、ほんとに胸が無いね」
「中学生くらいでしょ? そんな子も時々いますよ」
「まさか・・・・男の子ってことないよね?」突然その可能性に気付いた医師が言ったが
「女の子でしたよ」と今、尿道カテーテルを入れた看護師が言うので
「あ。よかった。間違ってなかった」と医師は安堵した。
 
そういう訳で命(めい)は女性用の病室に運び込まれた。
 
やがて命(めい)が倒れた時に開いていた電話番号からの連絡で、ちょうど大阪に行っている両親の代わりに理彩の母が病院まで駆けつけてくれた。理彩も行くと言ったのだが、インフルエンザということだったので、移る可能性を考えて、理彩の母がひとりで来たのである。
 
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理彩の母が病院に到着してまもなく命(めい)は意識を回復した。それをナースコールで聞いた病棟看護師は、意識回復したら導尿は終了していいですね、と言って、命(めい)のショーツを下げ、陰唇を開き、バルーンをしぼめて尿道口からカテーテルを外した。そして代わりに(女性用の)尿器をベッドそばに置いて行った。カテーテルを外す作業をされている間、命(めい)はまだぼーっとしていたので、自分の身体がどういう状況なのか、よく分かっておらず、自分が女体化していることにも気付かないままであった。
 
命(めい)はそのあとしばらく理彩の母と会話していたが、会話しながら少しずつ意識も明確になっていった。そんなことをしている内に命(めい)は尿意を催したので、尿器を使っておしっこをしようとした。最初尿器が女性用であったことに驚くが、命(めい)は小さい頃に入院した時、男性用の尿器でどうしてもうまくおしっこができず、女性用の尿器でなら漏らさずにできたことを思いだし、たぶんこの方がうまくいくはず・・・と言って、尿器を布団の中に入れパンティーを下げる。尿器をお股に当てるのに、おちんちんの位置を確認しようとして、おちんちんが無いことにやっと気付いた。
 
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命(めい)は意識を失っていた間におちんちんを切られてしまう夢を見ていたので、あの夢は本当だったのだろうか? と思ったものの、いや、これはタックされているからだと考えた。
 
そしてそういう意識を持った瞬間、命(めい)のお股の形状が本物の女性の形から、タックされている男性の形に戻った。命(めい)はタックの中に指を入れてちゃんとおちんちんがあることを確認して安堵する。それから女性用尿器をしっかりお股に当てておしっこを無事することができた。
 
結局命(めい)はその日自分が一時的に女体化していたことに全く気付かないままであった。命(めい)の身体は時々こんな感じで偶発的に半ば無意味に女体化することもあったようである。まどかはこれを「女体化癖」と呼んでいたが、命(めい)自身がどちらの性別でいたいかという気持ちの影響が大きいのだとも言っていた。
 
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夏休みに入ってから、命(めい)と理彩、春代と香川君は4人で出身中学に集まり空いてる教室を借りて勉強会を毎日していた。高校まで行くには4人とも30分ほど掛かるが、中学までなら車で10分ほどなので、その程度なら親に送ってもらえるのだ。4人の家を回っても20分ほどなので、4人の親で交替でこの運び役を引き受けてくれていた。
 
4人に勉強の場を提供してくれた先生は、春代・理彩・香川君は即認識したが命(めい)のことが最初分からないようであった。「えっと、君誰だったっけ?」
などと言われるので命(めい)が「あ、済みません。斎藤です」と言ってもすぐには分からない。
 
「斎藤命(めい)ですよ」と春代が言うと
「えーーー? 君、いつの間に女の子になっちゃったの?」と先生。
「命(めい)は中学の頃からけっこう女装してたじゃないですか」と理彩。
「そういえば、そうかな。文化祭の英語劇で『オズの魔法使い』の北の魔女だったかをしてたね」
「あ、西の魔女です。基本的に悪女役、いつも引き受けてたんで」
 
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「そうかー。でも凄く女らしくなってる。もう去勢くらいしちゃったの?」
「してないです」と命(めい)は笑顔で言った。
 
夏で冷房も無いが、けっこうな山の上だしそばに川があるので何とか過ごすことができる。命(めい)たちは朝8時に集まってまだ暑くならない午前中に交替でセミナー方式で各教科の勉強をして、少し集中力の途切れる午後には数学や物理の問題集をやり、少し涼しくなった夕方には、英語や古典などの読解問題をやるようにしていた。英語の問題ではOC(英会話)の訓練も兼ねて、日本語を使わずに全員英語でやりとりをしていた。
 
時々のぞきに来る先生が「君たち・・・なんか凄いね」などと言う。
「大学受験だから」
「どこ受けるの??」
「はい、香川は神戸大学、後の3人は奈良女子大とか同志社女子大あたりを」
「斎藤君も?」
「ええ。受験前に私が切っちゃいますから大丈夫です」と理彩。
 
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