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■神様のお陰・花育て(8)

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命(めい)が高校2年の秋。
 
神社の宮司である和雄は、年明けの真祭で誰に踊ってもらうかを占った。
 
今年はこの神社、およびその分社の神域となる合計5つの集落の氏子の中に18歳の子はいない。まだ17歳だが、理彩と命(めい)のどちらかに踊ってもらうことになると思った。
 
ふたりの名前をひとつの紙の左右に書き、神意を問う神事をする。両手に持った筮竹をふたつに分け、左手に残った筮竹の数を数える。奇数なら左側に書いた命(めい)、偶数なら右側に書いた理彩になる。
 
筮竹の数は17本あった。和雄はそれをちゃんと17まで声に出して数えてから
「偶数か。理彩ちゃんだな」
と言った。筮竹を片付けて和雄は奥田家を訪問するため神殿を後にする。
 
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その様子を見守っていた理が「は?なんで!?」と思わず声をあげた。
 
そしてその時、神殿の外で、理に見つからないよう蝶の姿に変身して柱の陰にいた、まどかが笑いをこらえきれずに「ククク」という小さな声をもらした。
 
だって、命(めい)って赤ちゃん産みたいなんて言ってたよね−。産ませてあげる。ついでに欲しがってた、おっぱいも付けてあげるねー。おまけで理彩ちゃんと結婚させてあげようかな。私あの子も好きだし。ふたりはお似合いだと思うよー。まどかはイタズラっぽい表情でそんなことを考えていた。
 

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命(めい)が高校3年の5月。命(めい)と理彩は兵庫県の温泉に学習塾の合宿に行くことになった。理彩のおじ太造が積極的にふたりを応援してくれて、この講座の費用自体を2人分出してくれた。太造は申込書のフォームに、奥田理彩・高3・女、斎藤命・高3・男と記入し、パソコンから送信しようとしたところで電話が掛かってきた。少しややこしい用件だったので、席を立ち、窓際に行って相手と話し込む。
 
その時、飼い猫が部屋の中に入ってきて、テーブルの上に飛び乗った。そして飛び乗った勢いでマウスを動かしてしまう。それで命(めい)のところの性別が男になっていたのが女に変わってしまった、猫はそんなこと気付きもせずに欠伸して身体の伸びをしている。
 
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やがて電話が終わった太造は机に戻ると、ざっとフォームを見て、それから送信ボタンを押した。そして理彩の父に電話して「申し込んどいたよ」と言った。
 

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この講座に性別女で登録されてしまっていた命(めい)は、理彩に唆されてその5日間を女で通してしまう。命(めい)はふつうにしていても充分女に見えるので昼間の講義を受けている最中は全然問題無かったのだが、問題はお風呂だった。
 
個室にバスルームが無く、大浴場に入りに行く方式なので、外見上女に見えるが身体は男である命(めい)は、男湯にも女湯にも入れず困った。結局人が寝静まった深夜に入浴するという方針で行くのだが、最終日の夜、命(めい)が入浴している間に他の女子が4人入ってきてしまった。
 
焦っている命(めい)を見て、まどかは面白くなって、これこのまま放置したら命(めい)はどう対処するだろうか? 見てみたいという気持ちも出てしまったのだが、ちょっと可哀想かなと思い「10分だけだよ」と声を掛けて胸の付近とお股の付近を女体側にタイマー付きでスイッチした。
 
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お陰で、命(めい)は同じクラスの生徒から特別変に思われることもなく、無事女湯からあがることができた。命(めい)は脱衣場で元の身体に戻ると『どこのどなたか分かりませんが、助けてくれて、ありがとう』と心の中で言った。まどかはクスクスと笑う。
 
命(めい)が脱衣場から廊下に出るとまどかが立っていた。
「どこのどなたか、は無いでしょ。今度から助けてあげないよ」
「まどかさん、僕が女の子として登録されていた件、心当たり無いですよね?」
「あ・・・・何のことかなあ・・・・」
焦っているまどか、というのも珍しい。
 
「でも、おかげで理彩と一緒に過ごせて気楽だった。僕も理彩も知らない子と同室だったら、その分で少し疲れたろうし」
「じゃ、感謝しなさい」
「いつも感謝してますよ」
「じゃ、これ1枚あげる。じゃね」
と言ってまどかはスッと消えた。命(めい)の手には避妊具が1枚残されていた。もう少し人間らしい消え方してもいいだろうにと命(めい)は微笑んだ。
 
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合宿が終わった翌日、理彩と命(めい)は大阪市内のホテルに宿泊した。自分たちが志望校にしていた阪大のキャンパスを見ておきたかったのと、合宿の間に他の受講生から聞いた参考書や問題集を大阪の書店で探してみたかったのがあった。
 
ホテルに荷物を置いてからジュンク堂に行ってメモしておいた参考書・問題集を立ち読みして吟味した。取り敢えずやってみようと思ったのを2人分買ってから阪急三番街で食事をする。
 
「でも5日も女の子で通したら、随分女の子ライフに慣れたんじゃない?」
と理彩は微笑んで言う。今日も命(めい)は白いブラウスにチェックのティアードスカート、リボンタイで女子高生っぽい服装だ。
 
「何かもう癖になりそうだね。本当に女の子になりたくなったらどうしよう」
「・・・・命(めい)は女の子になりたいんだと思ってたけど」
「まさか。僕、理彩と結婚したいから、男の子でいるつもりだけど」
「それって私との結婚ってのが無ければ女の子になりたいってことなんじゃ?」
「うーん。そう深い意味は無いけどなあ」
 
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「でも私、命(めい)が背広着てアタッシェケース持って『行ってきます』と毎朝出かける様とかが想像出来ないよ」
「そ、そう?」
「命(めい)はそうだなあ。ピンクのカーディガンに白いワンピ、ハイヒール穿いてハンドバッグ片手に『行ってきます』ってイメージ」
「うーん。。。。。」
「人間、自分に正直に生きた方がいいと思うけど」
「正直に生きてるつもりだけどなあ」
「正直に生きてるから、今みたいな服装だよね」
「あ、しまった」
 

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ホテルに戻ってから交替でシャワーを浴びる。4日間温泉に入ったのでふたりとも今日はシャワーだけでいいみたいな感覚だった。理彩が先にシャワーし、その後、命(めい)がシャワーをしてホテルのガウンを着て出て行くと、理彩は何やら白い紙を4枚テーブルの上に並べていた。
 
「命(めい)、この中から1枚取って」
「うん」
 
と言って1枚選ぶ。ひっくり返してみる。
 
『女の子同士の悪ふざけ』と書いてあった。
 
「もう。。。。なぜ、わざわざそれを選ぶかなあ」と言って、理彩は他の3枚も表に返す。
 
『セックス』『命の後ろに入れる』『すまた』と書いてある。
 
命(めい)は笑う。
「僕が入れられるってのもあったんだ?」
「ふふふ」
 
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「きっと。僕たちまだセックスしちゃいけないという、神様からのお達しなんだよ」
 
「あぁあ〜。今晩セックスしたかったのに」
「高校卒業するまでは『友だち』でいる約束だよ」
「今夜だけ、その約束忘れない?」
 
命(めい)はかなり心が揺らいだ。でも・・・・
「また、今度にしようよ」
 
理彩は命(めい)の至近距離まで寄ってから小さな声で言う。
「もし、私と命(めい)が友だちでいる間に、私が他の男の子にバージンあげちゃったらどうする?」
「悲しい。理彩のバージンが欲しい。理彩のバージンを予約させてもらえない?」
「予約なんかせずに今もらってよ」
「今日はやめとこう」
「仕方ないなあ。。。。うん、まあいいよ。予約。でも有効期間3ヶ月。それすぎたら、もう保証しないからね」
 
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理彩はガウンを脱いだ。下は一糸まとわぬ姿だ。命(めい)は優しく微笑んでいる。くそー。予測されてたか? これ結構切り札のつもりだったのに。
 
「これ見て何とも思わない?」
「スタイルきれいだと思う。おっぱいはCカップだよね。ウェストくびれてるし」
「なんで、そんなに冷静でいられるのかなあ。男の子って、こういう時、我慢できなくなって、女の子を襲ったりしないの?」
「僕、半分女の子だから」
 
「あぁあ、そんな彼氏を選んだのは私自身だしなあ。私、女の子の命(めい)も好きだし」
と言いながら、理彩は下着を着け、再度ガウンを着た。
「私をちゃんと逝かせなかったら、罰としてセックスしてもらうからね」
「セックスが罰なんだ!」
 
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「だって、してくれないんだもん」
と言って理彩はベッドにもぐりこむ。命(めい)も同じベッドに潜り込み、ぎゅっと理彩を抱きしめた。「あっ」と理彩が声を出す。強く抱きしめられて頭に血が上る。その時何か違和感を感じたが、そのことを考える前に命(めい)が「好きだよ」と言った。
 
「・・・・私も好き」
 
命(めい)は理彩の後ろに回り込んだ。後ろから抱きしめて、理彩の乳首を指で刺激する。理彩の脳内に陶酔物質が大量に放出される。命(めい)は理彩の首筋を舐めてあげた。
 
「あーん。気持ちいいよぉ」と言って理彩は自分の敏感な部分を最初はショーツの上から刺激していたが、やがて我慢出来ずにショーツを脱いでしまった。
 
「ねぇ、もう私今何されてもいい気分。私のを直接刺激してよ」
「これやる時は直接お互いのお股には触らないルール」
「けちー。なんで命(めい)って、いつもそうなのかなあ」
などというが、そんな命(めい)だから好きというのも事実だ。もっと簡単にセックスしちゃう男の子だったら、きっとこんなに長くふたりの関係は続いてなかった。とっくに燃え尽きて終わってしまっていただろう。
 
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命(めい)からしっかり抱きしめられる。その時理彩は微妙に変な感じがしたのだが、自分が気持ち良くなっているので、そのことは深く考えなかった。
 
そして理彩は15分ほどで逝ってしまった。
「えーん。逝っちゃった。まだセックスしてないのに。どうして命(めい)ってそんな上手いの? 私自分でしてても、こんなに気持ち良くなれないのに」
「ふふ。気持ち良くなった所で寝ちゃおうか」
と言って命(めい)は理彩の唇にキスをすると、そのまま目を瞑ってしまった。結局お互い着衣のままだ。
 
「命(めい)・・・・? 寝ちゃった??」
返事が無い。
 
理彩は心では不満だったが自分は逝ってしまったので身体は満足している。寝ちゃったのか・・・・私も少し寝ようかな、と思いながら命(めい)のお股に手を伸ばす。
 
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あ・・・命(めい)ったら下着つけてない! あん。じゃ、もう少し私がうまく誘ったらHできたかなあ、と少し後悔した。でも・・・・ふふふ、勝手にアレで遊んじゃおう。
 
っと思って「アレ」を探すが見つからない。もしかしてタックしてる?と考える。さわってみると、割れ目ちゃんのようなものがある。やはりタックしてるのか・・・外しちゃおうかな。。。。などと思いながら、その「疑似割れ目」を触っていたのだが・・・・え?
 
その割れ目が開けそうな気がした。タックの「疑似割れ目」は接着剤で留めるので開くことができないはずなのに。理彩はおそるおそる開いて指を入れてみる。嘘? これ本物の女の子の器官なのでは? 指先がクリトリスっぽいものに当たる。え? どうして?
 
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と思ったところで、理彩のその夜の記憶は途切れている。強い睡魔に吸い寄せられるようにして眠りの世界に入っていく理彩の耳にどこからともなく「クスクス」という女性の忍び笑いの声が聞こえた気がした。それと同時にさっき命(めい)に抱きしめられた時、命(めい)にバストがあったような気もした。
 

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明け方、命(めい)が起きた時、理彩はまだ寝ていた。起き出して服を着、コンビニまで行って朝御飯と飲み物、それに理彩の好きなおやつを買ってくる。ホテルに戻り、エレベータの方に行こうとした時、ロビーで手を振っている女性がいる。
 
「まどかさん、ありがとう」
「感謝しちゃうの? 私はふたりの仲を邪魔しちゃろうと思って悪戯しただけだけどね」
 
「うん。お風呂の中で突然女体化した時はびっくりした。でも、まだ僕たちはセックスしちゃいけないと思うんだ。男の身体だったら絶対昨夜は、やってしまっていたから」
 
「でも、あんまり先送りするのも良くないよ。邪魔した私が言うのも何だけど」
「そうだね・・・・」
「高校入ってすぐの時に1度一緒に寝たじゃん。あの時やっちゃえば良かったのよ」
「あの時はさすがに早すぎたと思う」
「今年中には、やっちゃいなよ」
「うん・・・・・」
 
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「理彩も命(めい)のこと大好きだから、きっとあの子は命(めい)とセックスするまでは、絶対他の男の子とはしないつもりだよ。でも、今は理彩もそういう気持ちだけど、それがいつまでも続くとは限らない。先に他の男の子とセックスしたら、きっとその子と結婚する気になって、命(めい)は捨てられちゃうよ。命(めい)、理彩のこと好きなんでしょ?」
「好き」
「自分の大事なものは、絶対手放さないようにした方がいいよ」
 
「うん」と命(めい)は少し考えてから返事をした。
 
「ひとつ教えてあげようか」
命(めい)が返事に躊躇ったのを見て、まどかが意地悪そうな目で言った。命(めい)はこの表情こそがまどかの本性だと知っている。優しくしてくれたり助けてくれるのは、あくまで気まぐれの範囲だ。
 
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「何?」と命(めい)は少し構えて訊く。
「理彩はもうバージンじゃないよ」
「え?」
 
と言った命(めい)の顔が青くなっている。まどかは、ほんとにこの子、理彩のことが好きなんだねと思った。
 
「誰がバージンを取ったか分かる?」とまどかは笑顔に戻して言った。
「えっと・・・・・もしかして△君、いや・・・・◇君・・・?」
 
「ふふふ。浮気性の彼女持つと大変だね」
「いや、理彩の浮気性は昔からだから」
 
「理彩のバージンをもらったのはね、命(めい)、あんただよ」
「え??」
 
「理彩だけが覚えてて、命(めい)が忘れているセックスがあるのさ」
「えーー!??」
 
まどかは楽しそうな顔をすると「バイバイ」と言って手を振り、ホテルの玄関から出て行った。
 
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