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■春気(20)

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一方男子3人が女将に案内されて男湯に行った後、部屋にはカオリが1人残っている。そこに旅館の主人の娘2人(演:姫路スピカ・今井葉月)が浴衣を着てやってくる。
 
「今日は男性の団体客が入っていて男湯はたくさん人が居るんですけど、女性のお客様は他にはいないんですよ。ひとりだけだと心細いでしょうから、私たちと一緒に入りませんか?」
 
「そうですか、ありがとうございます」
とカオリは答えて、2人と一緒にお風呂に行く。大浴場の廊下のT字路から右側女湯の暖簾がある方面に行く。そして3人とも服を脱ぐ。
 
この場面、男湯のフランツたちは上半身の裸を撮っていたが、こちらは3人とも首から上しか撮さない。3人は浴室に移動して各々身体を洗ってから浴槽に入る。お湯はにごり湯である。ここからは水面横からの撮影で、水面の下は映らない。
 
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「お客さん、日本とブラジルのハーフなんですって?」
「そうなんですよ」
「私たちも同じー。うちの父ちゃんはブラジルから日本に出稼ぎにきて、そのまま日本に居着いちゃって」
「それで日本人のうちの母ちゃんと結婚したのよねー」
 
「私の場合は超複雑なのよ」
と言ってカオリは自分たち4人の親のことを話したが
「待って。意味が解らなかった」
と2人。
 
「言葉で聞いただけでは分からないよねー」
と言って、カオリはあがってから紙に書いて説明してあげることを約束した。
 

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さて、この女湯のシーンは深夜に一般客が途切れてから撮影している。撮影者は美高鏡子である。
 
男3人が大浴場へ行くシーンではカオルをアクア(M)が演じ、部屋に残るカオリは葉月(M)が演じていた。しかしこの深夜に撮影したシーンでは、最初部屋にカオリを演じるマクラことアクア(F)が居る所に、スピカと葉月(F)が入ってくるのである。そしてアクアF・葉月F・スピカの3人はそのまま大浴場の女湯に入り、普通に服を脱いで裸になり、普通に身体を洗って、普通に浴槽に入っている。女同士の気安さで3人はのんびりとお湯に浸かりながら台本のセリフを語った。美高鏡子は自分も服を脱いでお風呂につかりながら、防水カバーを付けたカメラでこの撮影をしたのである。
 
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スピカとしては過去に何度もアクアの裸は見ており、ちんちんが“付いてない”のは確認済みなので女体のアクア(F)を見ても何も動じなかった。むしろ男湯のシーンは、どうやって撮影したのだろう?水着付けたのかな?などと考えていた。
 
葉月については、多分(2年くらい前に)性転換手術を受けたのだろうと思っている。実際、性転換していないのなら昨年の写真集での水着姿などあり得ない。
 
なお、この女湯シーンは公的には3人とも水着を着けていたということにしている。多くのファンは、女湯の方で一般客を入れずに撮影したのは、裸の一般女性がいる所に男であるアクアを入れる訳にはいかないからだろうと想像した。
 

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2月1日(設定8月15日).
 
早朝5時、旅館の主人が作ってくれたバーナーに2連点火して、気球は下呂温泉を飛び立つ。そして上空ではバーナー1個だけにして西風に乗り、東京方面に進んでいった。
 
「君たちのライブ会場はどこだったっけ?」
 
「僕は大宮ドーム」
とフランツ。
「ボクは江戸ドーム」
とカオル。
 
ヨゼフは地図を見ている。
 
「ほぼ何北に並んでるなあ。だったらこの旅は東京エンドにしたいから、大宮でフランツを降ろしてから、江戸でカオルを降ろそうかな」
 
「何時頃に着く?」
「今日も風が強いからたぶん15時頃には着く」
「だったら時間の余裕があるからどちらが先でもいいよ。ね?」
「うん。問題無い」
 
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それで一行はこの5日間は楽しかったね。また世界のどこかで4人で会おうよなどという話をしながら最終日の旅を楽しむ。
 

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そして15時ちょうど、気球は大宮ドーム(という設定の西武ドーム)に到着する。気球を降ろして驚いている多数の客の前でフランツが降りた。
 
「楽しかったよ。じゃまたね」
とフランツはドイツ語と、この5日間で少しだけ覚えた日本語で言った。フランツはカオリを熱い視線で見ているのだが、カオリはその視線に気づかない。
 
彼が手を振る中、気球は再浮上し、風向きを見ながら高度を調整する。
「カオリ、扇風機回して」
「OK」
と言ってカオリが扇風機を回してヨゼフの指示する方向に向ける。気球は1時間ほどの飛行で16時頃、江戸ドーム(という設定の東京ドーム)前の広場に着陸した。こちらも大勢の人たちが驚いている中、カオルは2人の兄妹に手を振って気球を降りた。
 
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「又会おうね」
とカオルは、この5日間で少しだけ覚えたポルトガル語で言った。
 

それでカオルがドームの方に歩いて行っていると、そこにフランツのマネージャーがいる。
「ミスター・カオル? うちのフランツを見ませんでしたか?」
「彼はさっき大宮ドーム前で降ろしましたが」
「なぜ大宮ドームなんです?ライブはここ江戸ドームでやるのに」
「嘘!?」
 
それでカオルが自分のマネージャーに電話してみると、彼女は大宮ドームに居て、カオルがくるのを今か今かと待っていると言う。
 
「ボクのライブって江戸ドームじゃなかった?」
「最初その予定だったけど、大宮ドームに変更になったんだよ。言ったじゃん」
「すぐそちらに行きます」
 
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何かおかしな事態が起きているようなので、ヨゼフとカオリが寄ってくる。
「どうしたの?」
「会場が違った!」
「ええ!?」
 
カオルはすぐスマホで新幹線の時刻を調べる。
「間に合う便が無い。どうしよう?」
 
「カオル、俺のエアシップで飛べばいいよ」
とヨゼフはこの5日間で少しだけ覚えた日本語で言った。
 
それでカオル、カオリ、ヨゼフはすぐに気球に乗り、大宮に向けて飛び立ったのである。
 
「気流だけでは無理。カオリ、こっち向けて全力で扇風機回して」
「うん」
 
更にヨゼフはカオルに団扇(うちわ)を渡した。
「カオルもこれであおいで」
「シム!」
 

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それでヨゼフができるだけ早く大宮に行けそうな風を探し、カオリが扇風機で、カオルは団扇で何とか気球を真北に向かわせる。カオルのスマホにフランツから電話が掛かってきて、フランツも会場が変わっていたことに今気づいたと言っている。後で確認したら、カオルのマネージャーがフランツを探して会場変更を教えてあげていたのであった。
 
努力の甲斐あって、気球は17時に再び大宮ドーム前の広場に到着した。
 
カオルが飛び降りる。カオルのマネージャーとフランツが駆け寄る。そしてフランツは気球に飛び乗った。
 
「行くよ」
 

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気球は再度飛び立ち、南に向かって飛ぶ。例によって扇風機と団扇で進行方向を調整する。
 
17:55, 気球は江戸ドーム前の広場に到着する。開演は18:00である。
 
「頑張って」
「うん」
 
それでフランツはドームの正面に向かって走る。玄関を通る。ロビーに居た客が驚いている。その何人かと握手しながらフランツはホールに飛び込んだ。そして最後尾の列の所に立ち、大きな声で
 
「東京のみなさん、こんばんは!」
と大きな声で叫んだ。すぐスポットライトが当たる。フランツは駆け足で通路を走りステージまで行った。多くの観客はこういう登場演出なのだろうと思ったようである。
 
楽屋で待機していたバックバンドがステージに駆け上がって前奏を始める。そしてフランツはスタンドマイクの前に立ち、歌い始めた。
 
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(このラストシーンはオーストラリアで観客の席を再アレンジして撮っておいたもの)
 
それをマネージャーさんのおかげでホールの最後尾で見ることができたヨゼフとカオリは喜びのあまりハグしてからステージに向かって手を振った。
 

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この最後のシーンについては
「フランツ×カオリと思わせておいて最後はヨゼフ×カオリかよ」
と公開時に非難囂々であったが、アクアは
 
「ヨゼフとカオリは血のつながった兄妹ですよぉ。恋愛要素はありません」
とコメントを出した。
 
ネットの声。
「将来的にはこの4人、フランツとカオリが結婚するのでは?」
「続編はそれかな」
「余った2人は?」
「そこはヨゼフとカオルが結婚だな」
「カオルは充分花嫁になるよな」
「うん。ヨゼフならカオルがあれだけ可愛ければお股に変なのが付いてるくらい気にしないと思う」
 

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そういう訳で、映画の撮影は公式には2月1日夕方で終了し、その日の夜にはラップアップ(撮影終了)のお祝いということで宿泊しているホテルの各自の部屋に豪華な料理がデリバリーされた。日本人俳優も含めて撮り直しが発生した時のために2月3日まで東京に滞在することになっている。その間専用の観光バスに乗せて“バスから降りない”観光ツアーに行ってもらう。
 
そしてこの日の夕方から、アクア・マクラと河村助監督の3人による追加撮影が始まった。同席したのは、助手を務める美高鏡子第2カメラマン(河村助監督の奥さん!)と、様々な雑用を引き受ける、山村・コスモス・葉月・桜木ワルツの4人である。アクアとマクラはこの映画の全ての会話シーンをその時点で着ていたのと同じ衣装を着けて撮影した。フランツとヨゼフの役は葉月とワルツが代行してセリフを入れている。この作業には(着替えの時間が必要なので)休憩も入れながら2月1日夕方から3日午後までの丸2日を要した。(撮影はアクアは“偶然具現化した”Nを交代要員に使い、葉月は本人と、山村か連れてきたそっくりさん(実はかぶちゃん)が交替でしている。ワルツが疲れていたので途中コスモスが代わったところもある。コスモスは“本気を出すと”結構演技力がある)
 
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これで撮影は全完了したので念のため引き留めていた他の俳優さんたちが帰国することになる。ホテルのロビーで記念写真を撮った後、河村助監督が
 
「日本では今日は節分なので無病息災に豆を配りますね」
と言って、大豆の炒り豆の袋を配った。
 
「これ何?」
とミハエルが訊くのでアクアは
「無病息災のおまじない。えっと、Sound health and no disease かな」
「no disease いいね!」
とミハエルも喜んでいった。リョーマが「Give me one more」と言うので美高鏡子さんが、豆のパックを4人(ミハエル・リョーマ・アクア・葉月)にもう2個ずつくれた。
 
ブラジルに帰るリョーマ、ドイツに帰るミハエルをアクアと葉月はまるで本当の兄たちと別れるような気分で成田で見送った。
 
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2020年2月13日(木).
 
青葉は幸花からの電話を受けた。この時点では金沢ドイルの取材の件かなと思った。
 
「青葉、日本選手権は申し込んでおいたから」
「は!?」
「今日から申し込みフォームがオープンになったのよ。だから即ダウンロードしてWeb-SWMSYSで申し込んで、書類も郵送した。参加料もこちらで払っておいたから、よろしくね。後でADカードが送られてきたら渡すね」
 
「あのぉ、私3月22日で大学を卒業するから、日本選手権のある4月時点ではK大水泳部には所属してないんですけど」
と言いながら、なんで卒業生の幸花が水泳部の作業をしているのだろうと疑問に思った。すると幸花は思わぬことを言った。
 
「むろんK大水泳部じゃないよ。〒〒テレビ・スイミングクラブだよ」
「なんですか?それ」
「津幡火牛アリーナ・プライベートプールを本拠地とするスイミングクラブ」
「そんなのいつできたんです?」
「青葉が日本代表候補になっているのに4月以降所属団体が無くなるというのを石崎部長が聞いてさ、だったら〒〒テレビのスイミングクラブを作ろうといって年内に作業を進めていた。ちなみに私が部長ね」
 
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「そんなのが進んでいたんだ?」
「他の所属メンバーは青葉でしょ、布恋でしょ、竹原杏梨ちゃん、ジャネさんの妹の月見里公子・夢子姉妹。他に福山希美・広島夏鈴・竹下リルも準メンバー。この子たちは現在は学校の水泳部に所属しているけど、こちらでも練習する。あのプールは女子専用というのもあってクラブも女子のみ。男子でも無理なく女子水着が着れる人は考慮する」
 
「あはは」
 
要するに今津幡のプライベートプールで泳いでいるメンツな訳だ。ジャネは金沢市内のスイミングクラブに所属しているからこちらには名前は入れない訳だ。でも主としてこちらで泳ぐんだろうな。こちらが圧倒的に空いているから。
 
「津幡のアクアゾーンが出来たら、そちらのプールで泳ぐ一般会員も募集する。私、布恋、杏里、月見里公子ちゃんの4人がコーチライセンス持ってるから指導者」
 
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採算取れちゃうかも!?
 
やはり若葉さんが絡むとちゃんと採算の取れる事業になっちゃうんだろうな、と青葉は思った。
 
 
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