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■春気(14)

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桃香は相変わらず季里子と千里さんの二股生活をしているが、次から次へと浮気されるよりはマシだし、千里さん側はどうも他にも恋人がいるようなので、その内こちらに落ち着いてくれないかなと半ば達観している状況である。桃香はたまに更に別の恋人を作る場合もあるが、昨年のマヤちゃんについては季里子と千里の暗黙の共闘により排除した。あの件は桃香も謝っていた。
 
北区のアパートを借りた後も、桃香はだいたい毎日午前中に2人の子供(早月・由美)を連れてアパートにやってきて、子供たちは適当に遊ばせておき(季里子の娘たちと4人で遊んでいる)、季里子とイチャイチャしたりしながら昼間は過ごし、夕方、御飯を食べてから世田谷区の自分のアパートに帰っていく生活をしていた。どうも夜は千里さんと過ごしているようだ。
 
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季里子には来紗と伊鈴の養育費と称して毎月5万円くれている。むろん全然足りないのだが、桃香が貧乏なのは分かっているので、取り敢えずそれでいいことにしている。
 
「桃香、実際問題として、他にも子供いるの?早月ちゃん・由美ちゃん以外で」
と一度訊いてみたこともある。
 
友人たちの噂では桃香はあちこちの女に産ませた?子供が沢山いて、その養育費の支払いで貧乏なのだともいう。
 
「季里子だから言うけど、実はあと2人だけいる。九州に住んでいるんだよ」
「その子たちにも養育費送ってるんだ?」
「それは要らないと言われた。向こうはお金持ちなんだよ」
「ああ、そういう相手は助かるかもね」
 
「子種が欲しかったからセックスしただけと言われた。実はその子とは付き合っていたわけではなく、数回寝ただけだったから、子供が2人もできていたとかなり後から聞いてびっくりしたんだよ」
 
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やはり桃香って精子あるよね?などと季里子はその話を聞いて思う。
 
「子種が欲しかったのなら自分の排卵期に合わせて桃香を誘惑したのでは?」
「たぶんそうだと思う」
 
「桃香そのパターンで、自分でも知らない子供が他にも居るのでは?」
「そう言われると自信が無い」
 

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12月17日の新自宅再建の地鎮祭には桃香も出てくれたが、その直後
「実家から呼ばれた」
と言って、高岡に行ったまま、なかなか戻って来ない。千里さんと一緒に行ったみたいだから、しばらく向こうで2人で過ごすつもりだろうかと思っていたら、1月5日夕方に唐突に戻って来た。中田屋のきんつば(金鍔)をお土産と言って出す。これは過去にも何度かもらったが、凄く美味しいきんつばである。
 
「向こうの用事は済んだの?」
「妹の青葉がテレビ局に就職したらさ、新人の御自宅紹介なんて番組やるとかで、とてもじゃないけど現状の自宅はテレビに映せないと言って、大掃除に呼ばれたんだよ。ついそのまま向こうに長居してしまった。ごめんな」
 
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「テレビ局に就職するのも大変ね!」
 
それで桃香はしばらく、北区のアパートに居着いて、来紗・伊鈴と遊んでくれていた。
「早月ちゃんたちは?」
「しばらく実家のほうに置いておく」
「ああ、その方が御飯をもらいそこねることもなくていいかもね」
「面目ない」
 
季里子が桃香のアパートに行ったら、早月が
「きーママぁ、おなかペコペコォ!」
と泣き顔で訴えてきたこともある。桃香はその時は浮気相手の女の子(マヤ)の家に泊まり込んでいて、早月たちの食事は忘れられていたらしい。
 
千里さんが寄ってくれていれば何とかなったのだろうが、千里さんは千葉の義母宅に行ったり仕事であちこち出張したりで忙しそうである。
 
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しかし1月5日に高岡から戻って来た後は、桃香はずっと季里子の家に居てくれて、季里子の両親からも、ほぼ婿として受け入れられ、季里子はしばし幸せな気分で過ごしていた。
 
1月11-13日の連休、桃香は
「学習塾の高校受験直前講座の助手のバイトすることになった」
 
と言って、3日間、季里子が作ってあげたお弁当を持って、季里子が見立ててあげたパンツスーツを着て、船橋市の講義会場(廃校になった女子高の校舎)に出かけて行った。
 
スカートスーツではなくパンツスーツにしたのは、教師とか講師という職業はパンツでの勤務がわりと許容されやすいのと、桃香にスカートを穿かせると女装男にしか見えないので、いっそパンツなら最初から性別を誤解されずに!?普通に男と思われて!問題が少ない気がしたからである。実際、桃香は女性講師として勤務しているのか男性講師として勤務しているのか微妙な気もした。
 
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「元々が女子高だからさ、トイレも女子トイレしか無いんだよ。男子生徒にも女子トイレ使わせているけど、やりにくいとこぼしていた。トイレには男女混合の列ができている」
「じゃ桃香も女子トイレ使うんだ?」
「男子トイレが存在しないし」
 
男子トイレがあったら男子トイレ使うのかな?と季里子は疑問を感じた。桃香は元々男子トイレを使うのは平気だし、立っておしっこができる。むしろ女子トイレに入るとしばしば悲鳴をあげられる。
 
更に桃香は1月18-19日のセンター試験で試験監督のバイトをすることになったということで事前説明の17日も含めて3日間でかけていった。先日の学習塾からの紹介らしい。
 
桃香は試験最終日の夕方、1月19日には
 
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「これこないだのも含めてもらったお給料」
 
と言って、8万円の入った封筒をそのまま季里子に渡してくれた。そして
「この後も週に3日、土日水に中学生の英語・数学と小学生の理科を教えに行くことになった」
と言った。
 
勤務先は集中講義をした女子校の廃校とは別の場所だが、やはり船橋市内である。潰れたゲームセンターのビルをパーティションで区切って教室を作っているらしい。学習塾にしては外見が派手だし、天井が高すぎて落ち着かないので吊り天井を付けていると言っていた。
 
「桃香、英語はうまいし、数学は専門だもんね」
 

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桃香は洋楽が好きなので、しばしばアヴリル・ラヴィーンとかカーリー・レイ・ジェプセンとかのナンバーを英語のまま口ずさんでいる。発音もきれいだ。取り敢えず音程は気にしないことにしている!
 
「うん。一応英検準一級と数学の高校教諭専修免許持ってるから」
「桃香、大学出た後、変な企業に入らずに学校の先生になればよかったのに」
「教員採用試験は、私みたいな変な女には難しい」
「ああ、それはあるかもね」
 
と言いつつ、変な女という自覚はあるんだなと季里子は思った。いや、むしろ桃香は「変な男」に分類されやすいかもね、という気もした。やはり塾では男性講師ということになっている気がしてきた。だいたい学校を出てから就職した企業では最初の数ヶ月は“女になりたい男”と思われていたらしい。(それでスカート勤務と女子トイレ使用も“容認”されていた)
 
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「でもずっと早月ちゃんたちは高岡?」
「うん。取り敢えず向こうで母ちゃんに面倒見ておいてもらう」
「まあ子供4人いた時は、うちの母ちゃんもパニックだったしね」
 
(昨年4月に千里が10日ほど旅に出た時は季里子の家に早月・由美がいて、来紗・伊鈴とあわせて4人の女の子たちの面倒を日中見ることになった母は“保母さんの気分”だったらしい)
 

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1月下旬、季里子は夏樹から呼び出されて、新宿のカフェで会った。
 
「ボクさ、法律上の性別を女性に訂正してもいい?」
「夏樹、実際もう女の身体になっているんでしょう?そしたら戸籍上の性別もちゃんとそれに合わせたほうがいいと思うよ」
 
夏樹にちんちんがもう無いことは桃香のアパートでの同居中に“夜這い”を掛けて確認している(大勢居るのでセックスは自粛した−というより実は夏樹とは法律上の夫婦であったにも関わらず一度もセックスしたことがない)。
 
「いやそのボクが法的に女になってしまったら、季里子ちゃんとはもう婚姻関係を作れないからさ。念のため訊いておこうと思って」
「ごめん。私は夏樹と再婚するつもりはないから」
 
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元々子供を作るためだけに結婚したのであって、愛情があった訳ではない。友情くらいはあったけどね。季里子は男性を愛せない。男に触られるのも嫌なのだが、夏樹はあまり男っぽくないのでキスくらいまでは許容していた。子供も人工授精で作ったもので、性行為はしていない。
 
「分かった。ごめんね。変なこと聞いて。でも一応確認してからにしようと思って」
「うん。女として頑張って生きてね」
と言ってから季里子は“そのこと”に気づいた。
 

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「待って。夏樹、来紗と伊鈴がいるから、あの子たちが成人するまでは性別の変更はできないのでは?」
 
「それは性同一性障害のケースの特例法による性別の取り扱い変更でしょ?ボクがしようと思っているのは、半陰陽のケースでの性別の訂正なんだよ」
 
「夏樹、半陰陽なんだっけ?」
「病院で、そういう診断書をもらった。半陰陽だが、実質女だという診断書。女性としての生殖機能もあると診断してもらっている。これを元に性別の訂正を裁判所に申し立てる」
 
「夏樹が半陰陽だったなんて知らなかった」
「実は去年の秋に急に身体に変調が起きてさ。女の身体に変わってしまったんだよ。噂によると、こういう事例が一昨年頃から多発してるらしい」
 
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「そんなのがあるんだ?」
「ボクは今、完全に女性なんだよ。ヴァギナはもちろん、子宮や卵巣もあるし、毎月生理がきてる」
「それでナプキン買ってたのか」
「身体が変化してから、実は女の声が凄く出しやすくなって、男の声は出しにくくなった。もう出してないけどね。会社でもこの声でやってるし」
「うん。女の声の出し方、うまくなったなと思った」
 
「だから性別は最初から女だったということにして性別を修正してもらう」
「子供がいても構わないわけ?」
「特に要件には無いから問題無いと思うけどな。ひょっとしたら来紗と伊鈴の父であるという記録を抹消されるかも知れないけど」
「それは構わない。あの子たちの父親は桃香だと私は思っているから」
「うん、それでいい」
 
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季里子は少し考えてから言った。
 
「だけど、モニカちゃん、女の子になるのなら“ボク”はやめなよ。“私”って言いなよ」
「ふつうに人前では“私”って言ってるけど、身内の前では、“ボク”と言う方が楽なんだよ。“私”と言う時は喉のつっかえを強行突破して発音する感じで」
 
「心の性転換が必要だな。少女コミックどさっと送りつけるから読んでごらんよ」
「それは読んでみようかな」
 
「会社はどうするの?」
「今実質ほとんど女性社員になっちゃってるんだよ。スカートで通勤して女子更衣室に女子トイレ使っているし。女の声が出るから電話応対とかもしてるし。戸籍の訂正が終わったら、その戸籍個人事項証明書を提示して、会社の性別登録を変更して、正式に女性社員にしてもらうつもり。上司からも戸籍が変更されたら会社の登録は変更してもいいと言ってもらった。そしたら女子制服を着てもいいと言われてる」
 
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「まさか今は男子制服着てるの?」
「そうだけど」
「女子更衣室使ってると言わなかった?」
「だから女子更衣室で男子制服に着替える」
 
「無理があるなあ。バスト入らないのでは?」
「ひとつ上のサイズを支給してもらった」
 
「ふーん。でもそうか。OLになるのか。おめでとう」
「OL?」
「だって、女性の会社員はOLだよ」
「ボ、ボクがOLなの?」
と言って夏樹が狼狽しているので、ほんとこの子には“心の女性化教育”が必要だなと季里子は思った。
 

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