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■春気(10)

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金沢駅でたっぷり遊んだ後は、マーチに4人で乗って(むろん運転は千里)高岡の実家に帰還する。京平用のチャイルドシートは千里が昨日の内に買っておいた。
 
そこで、京平を早月・由美に会わせたが、早月たちはすぐ京平と仲良くなった。
 
津幡のプールで水泳の練習をしていた青葉も戻ってきた所で2台の車に分乗して氷見の“きときと寿司”に行った。
 
マーチ:千里(D)・桃香・阿倍子・京平
ヴィッツ:朋子・青葉(D)・早月・由美
 
お寿司屋さんに入り、テーブル2つに陣取る。
 
千里が京平に
「好きなだけ食べて良いよ」
と言ったのに対して京平は
「5個まで?」
と心配そうに訊く。
「そうだなあ。今日は特別。20個まではいいよ」
と千里が言うと
「わーい!」
と嬉しそうだ。
 
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「すみません。何だかふだんの生活が知られちゃう」
と阿倍子は恥ずかしがっている。ふだん回転寿司に来る時は「5個まで」のルールにしているのだろう。
 
京平は20個までいいと言われて、最初にイクラを4皿も取っている。桃香が顔をしかめているが千里は笑っている。お稲荷さんが好きなようで、それも2皿取っていた。
 

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15皿くらい食べたところで
「ちょっとうんこ」
と言って京平がトイレに行く。
 
その姿を見送って桃香が言った。
「そうだ。先週、こちらに由梨亜が来たんだよ」
 
由梨亜というのは千里や桃香の大学時代の友人のひとりである。桃香の話によると、夫の転勤で現在白山市(金沢より少し西にある市。高岡市は金沢の東にある)に住んでいるらしい。
 
「由梨亜はだいぶ前に結婚したよね?」
「結婚してもう6年だよ。あの子、結婚だけは早かったんだよな」
「うん。当時の女子会のメンツでは最初に結婚したよね」
 
「ところが子供ができなかったんだ」
「6年経ってできないというのは、作ろうとしなかったの?」
「いや、すぐにも欲しかったらしい。由梨亜は一人っ子だったから、兄弟のたくさん居る家庭に憧れていたんだよ」
「そういや、子供6人産んでバレーボールのチーム作ろうかなとか言ってたよね」
 
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「そうそう。だから結婚してすぐから子作りに挑戦していたものの全然できないんだよな」
「それ、不妊治療とかもしたの?」
 
「うん。取り敢えず最初は排卵のタイミングと精子の寿命とかのお話を夫婦で聞いて、事前の禁欲もして妊娠しやすいタイミングでセックスするとかしていた」
「基本だよね。だけどそういうセックス楽しくなさそう」
 
「私もそう思う。でも、それやってても、できないから、夫婦とも精密検査を受けた。夫の精子が少ないし活動性が悪いということだったが、一応許容範囲と言われた。ところが由梨亜自身も卵管狭窄が疑われたんだよ」
 
「ああ。でも閉塞じゃなくて狭窄なんだ?」
「うん。水を通したりする検査して、狭いけど通ってはいることは確認できた」
と桃香が言うと
 
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「あの検査辛いですよね」
と阿倍子が言う。
 
「それでホルモンの投与とかで卵胞が育つのと排卵をコントロールしてそのタイミングでセックスとかもしてみたものの、どうもうまく受精卵が定着してくれない」
「それ妻と夫の双方に問題がありそうな気がする。精子の能力に問題があって受精卵がきちんと育たないんじゃないの?」
と千里は言う。
 
「うん。そんな気がする。それで結局、卵巣から直接卵子を採取して、体外受精したんだよ」
「わあ・・・・」
 
「でもおかげで妊娠成功」
「良かったね!」
「胚はちゃんと子宮に着床して今3ヶ月目」
「そこまで来たら、かなり安心」
 
「ちゃんと分裂開始した受精卵を8個も取ってあるらしいから、次の子もそれで行けるらしい」
 
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「ああ。卵子採取は何度もはやりたくないですよね」
と阿倍子が言う。
 
「うん。私も事情あって1度やったけど、正直あまり次はやりたくないと思った」
と桃香。
 
由美を作った卵子は、桃香の卵巣から直接採取したものである。早月は人工授精なので排卵タイミングで精液を子宮に注入しただけである。
 
「あれ男は精子取るのに気持ちいい思いするのに女は卵子取るのに痛い思いするって、ずるいよね」
と千里も言う。
 
「それ、私も思った!」
と阿倍子。
 
「男も精巣に針刺して直接吸い取ればいいのに」
と桃香。
 
「賛成!」
と阿倍子。
 
「女もオナニーして卵子が飛び出して来たら便利なのに、あの針刺されるのは本当に痛いよね」
と千里。
 
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「お、それぜひ神様に提案してみたい」
と桃香。
 
その内京平がトイレからすっきりした顔をして戻って来たので、この話はここまでになった。そして京平は千里の顔を見ながら言う。
 
「ねぇ、ちさとおばちゃん、あと8個くらいいい?」
 
千里も微笑んで答える。
「じゃ特別にあと8個」
 
すると京平は「わーい」と言って大トロを2皿と稲荷寿司1皿を取っていた。
 
「そうだ、ちさとおばちゃん、こないだ、ほいくしょで、けつえきがたってしらべたんだよ」
と京平は言った。
 
「へー、京平は何型だった?」
「えーがただって」
「ふーん」
「ママはなにがただっけ?」
「私はAB型だよ」と阿倍子。
「パパはなにがたなの?」
「京平のパパはB型」
「ちさとおばちゃんとももかおばちゃんは?」
「私はB型だな」と桃香。
「私はAB型だよ」
と千里が言った時、阿倍子は頷くようにした。
 
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「でも京平、もう保育所行ってたんだっけ?」
と桃香かが訊く。
「4がつからいくんだよ」
と京平は楽しそうに言う。
 
「本当は保育所は母親が働いていないと入れないんですけど、新しく住む予定になっていた地区には幼稚園がないので、無職でも求職中ということにしておけば保育所で受け入れてくれるらしいんですよ。その入所前の健康診断に行ったら血液型検査もあって」
と阿倍子は説明した。
 
しかし京平はどうも保育所を楽しみにしているようだが、東京に引っ越してきたら、東京の幼稚園とかにでも入れないといけないなと桃香は思った。
 

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この日はお寿司屋さんを出てから氷見のイオンまで足を伸ばしておやつを買い、それから高岡の実家に戻る。青葉が
 
「私、また津幡で泳いでくるから、私の部屋に阿倍子さんたちを泊めてよ」
 
と言って赤いアクアで出かけてしまったので、青葉の好意に甘えて、阿倍子と京平は青葉の部屋に泊まった。桃香は自分の部屋で早月と寝て、千里は1階の居間で由美と寝た(千里が東京に行っている間は由美は朋子の部屋で寝せている)。
 
ともかくも今日は楽しくみんな過ごせたが、念のため今度の土曜に今度は桃香たちが神戸に行って、再度京平とデートしようということになった。
 

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2020年2月3日、節分であるが、この日は朋子の60歳の誕生日で、朋子はこの日で勤めている会社を定年退職した。
 
65歳までの再雇用制度はあるものの、給与は大幅に下がるし、実際問題として再雇用されても、大した仕事は割り当てられず、やっかいもの扱いされている人が多い現状を見て“娘たちの稼ぎ”のおかげで経済的な心配も無いし、そのまま退職することにしたのである。
 
実際には“実の娘”桃香は大学院まで行ってから就職したものの1年半で妊娠を機に退職してしまい、その後は一時パートに出ていただけで2018年12月以降は無職である(ネットライターの仕事はしているものの月収は数千円)。しかし実親を東日本大震災で失った後、朋子が未成年後見人になっていた“義理の元娘”青葉が年間数億円(朋子もよく分からない)稼いでいるし、“青葉の姉代わり”千里もやはり年間数十億円?(朋子は全然分からない)稼いでいるようで、その2人からの支援で全く生活には困っていないのである。
 
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青葉から退職記念に旅行でもしてきたらと勧められ、有休の消化もかねて1月にお伊勢さん、鳥羽水族館、スペイン村・熊野三山・信楽・忍者の里という盛り沢山のツアーに行ってきた。そしてこの日、円満に定年退職した。
 
この日は東京から桃香・千里と2人の娘、早月・由美も来て、青葉も含めて4+2人で自宅で焼肉パーティーをし、朋子の慰労会とした。お肉は千里が調達してきてくれたが、能登牛の特上肉らしく、とても美味しかった。ケーキも大きな蝋燭6本立てたものを朋子に吹き消してもらった。
 
「ほんとに長い間お疲れ様でした」
「年金が出る5年後までは無収入になるけどね」
 
(60歳からの受給は可能だが4割ほどカットされる)
 
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「5年後には年金は70歳からが標準になっていたりして」
「その5年後は75歳が標準になっていたりして」
「その内年金もらえるのは100歳からという話に」
 
ちなみにこの日来ていた千里は髪がだいぶ伸びてきた1番さんで、2番さんは“スペインの自宅”にいる模様。3番もベルギーでのオリンピック予選に出るため渡欧中である。日本は東京五輪の出場は確定しているのだが、それでも予選には出るらしい。よく分からないシステムだ。
 
ちなみにケーキを用意したのは3番さんで、2番さんは「腐らないもの」と言って、スペインのお菓子を置いていったので、あとで頂く予定である。ついでにスペイン南部で一般的なビール“クルスカンポ(Cruzcampo)”を1ダース置いていったので、これは桃香が早速飲んでいる。
 
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若葉は言った。
「マスク工場作ろう」
 
それは2月上旬、ほとんどの店からマスクが消えてしまった時のことであった。
 
「今から工場を作るの?」
と千里は尋ねる。
 
「だって私昨日ドラッグストアに買いに行ったら無くってさ、そのあと数軒まわったけど、どこにも無いのよ。困っちゃう」
 
「うん。みんな困ってる」
「無いと困るから作ることにした」
 
まあお金持ちの行動原理なんて、そういうものかも知れない。
 
「マスク作るのってクリーンルームが必要なのでは?」
「インドネシアでやってるからノウハウはある。向こうの技術者さんを呼ぶよ」
「それは心強い」
 
若葉はインドネシアにもマスクを製造できる不織布の工場を所有しており、取り敢えずクレール若林店や、全国のムーランのスタッフなどにもここで製造して輸入したマスクを配布している。ちなみにムーランやクレールのスタッフに使わせているゴム手袋は千里が所有する草津工場でも製造できるので、ラインを切り替えて今フル生産して供給している。実は草津はまた募集して増員している。
 
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「工場ができた頃に日本の騒ぎが収まっていても、他の国でまだ大変な状態が続いているかも知れないし。千里、一緒に建てない?」
 
「若葉だけでできるのでは?」
 
「材料の木材チップを千里の製材所から分けて欲しいのよ」
「あ、それはこちらも助かるかも」
 
現状では大量に余っている端材や小枝・樹皮の類いは一部は福井県の吸音板工場で吸音板に利用しているが、大半は費用を払って、歓喜さんの企業グループに処分をお願いしている状況である。これが実は製材所の利益率を落としている。(多くの製材所で起きているこの業界の構造的問題)
 
「木材チップから不織布を作ったり、不織布にしにくい部位は分解してエチルアルコールにしちゃってもいいと思う。自動車の燃料にもなるし」
 
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「エタノールの製造って認可が必要なのでは?」
「そういうのの取得は任せて」
 
それで若葉と千里は安い土地を求めて南砺市南部に用地を確保。播磨工務店さんに頼んでわずか1週間で工場の建物を建ててしまった。そして製造機械をアメリカから輸入して、3月中旬にはここで不織布とエチルアルコール、更にはその不織布を利用してマスクも製造するようにした。そのお陰で、インドネシア工場に頼らなくても、ムーラン各店舗や津幡火牛スポーツセンター・郷愁村・藍小浜・ミューズセンターなどのスタッフ、クレール若林店・青葉通り店ビルのスタッフ、およびクレールや若葉経営の旅館などの来店客に無料配布するマスクは充分な量を確保することができるようになった。
 
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3月中旬以降は当地国内及び東南アジア諸国への出荷が主となったインドネシア工場も24時間フル操業だと言っていたが、千里たちの南砺工場もすぐ24時間フル操業状態になり、作業員を大量雇用した(製造自体はほぼオートメーションだが、検品や出荷などの作業が必要)。
 
なお募集要項で「年齢性別不問・連続3時間程度の工場勤務に耐えられる体力のある人なら、18歳以上80歳まで可。性別も男性・女性・中性・無性OK」と書いたら、50歳以上の人、性別曖昧な人の応募が異様に多かった!実際、採用した人の内3割が50歳以上で最高齢は75歳、性別も男の娘・女の息子さんが2割ほどを占めたので、トイレはムーランと同様の男女中3区分を設置した。男の娘でも女にしか見えない人は女子トイレの使用を許可した。逆も同様である。
 
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コロナ騒ぎでは消毒用アルコールも不足したが、若葉たちはアルコールを自己生産していたおかげで、これも足りなくなることなく運用することができた。エタノールはムーランのトレーラーの燃料に使うつもりだったのだが、取り敢えずエタノールの引き合いが多いので、全面消毒用途に供給することにした。
 

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