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■春気(4)

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その日の夕方、千里がふらりとクレールに来るので驚く。
「若葉から聞いたけど、新しいお店出すんだって?」
「うん。播磨建設さんだっけ?そちらに建設を頼もうかと言っていたんだけど」
「播磨工務店ね。念のため現場見せてくれる?見積もりを作らせるから」
「ありがとう!それも頼まなきゃと思ってた」
 
千里は車(オーリス)で来ていたので、その車に同乗して現場まで行った。千里は方位磁針を見ている。
 
千里は尋ねた。
「玄関はこの道路側に作る?」
「まだ何も考えてないけど、そうなると思う」
「すると西向きになるから和実の吉方位だよ」
「それはよかった」
 
「妖怪が住んでいて地縛霊も居たけど、今どちらも処分したからもう大丈夫」
「ほんと?ありがとう!」
「中村さんに伝えなよ。ここ絶対『出る』という噂があったはず。それを値切りの材料にすればかなりの値切りができると思う。大きな瑕疵(かし)だもん。きっとテナントが居着かなかったと思うよ、こんな便利な場所にあるのに」
「うん。伝えておく」
「買い取ったら青葉に結界作らせるといいよ。変なのが来ないように」
「それ頼もうと思ってた」
 
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和実はこの霊的な処理の報酬を幾ら払おうかと尋ねたのだが、千里は
「御礼は別にいいけど、ここ買ったら地下にでもバスケットコート作らせて。その分の建設費と地代は払うから」
と言った。
 
「まあ地下ならいいよ」
 
地下ならバスケットの音は地上までは響かないだろうと和実も思った。
 

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妖怪・幽霊の件は和実から中村さんに伝えたが
「うん。それはいい材料ですね。その分、余分に値切ってみせますよ」
と彼は言っていた。
 
それで1月8日、再度中村さんは仙台に来たが、自分ひとりで交渉するので、和実の立ち会いは不要ということだった。むしろ和実が聞いたらまずいこともあるのかもという気がした。
 
午後2時ころ連絡があり
「今解体はこちらでするということで4億8千万まで来たのですが、このくらいではどうでしょう?」
ということだった。
「充分です。それで妥結していいです」
「では月山様もこちらにいらしてください」
「行きます!」
 
それで和実は七夕不動産に向かい、契約書の内容を確認して売買契約書に署名捺印をした。
 
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「それでは」
と言って、中村さんが助手の人(ボクシングか何かしそうな屈強な男性2人だった)に電話して、現金が詰まったジュラルミンケースを4個も持ってこさせて渡すので内心驚いたが、和実はその驚きを顔には出さず平然としていた。お店を出てから中村さんは説明した。
 
「5億7千万くらいが限度かなと思ったのですが、昨夜教えて頂いた幽霊の件であと9000万行けました。もう2000-3000万値切りたかったのですが、売主さんもなかなか頑張りましてね」
「いえ充分な金額ですよ。建築費で銀行から借りる額がかなり少なくて済むかも」
 
「あと値切りの材料で、今すぐ現金で支払うということにしたので、用意していた現金で払いました。実際の額は山吹様に月山様の方から払って下さい」
 
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「分かりました!一応一昨日も山吹さんには伝えたのですが、こちらはお金が入ってくるのが多分今月下旬になると思うのですが」
 
「ゆっくりでいいと思いますよ。山吹様は8億円程度全然気にしませんし、私の報酬も事前にお話ししましたように来月末までに頂ければ問題ありません」
 
「ああ、やはりそういう感覚なんですね」
「私も一緒に仕事をしていて時々呆れますが、だいたい一般人の感覚から10万分の1にしてだいたい似た感覚になります。ですから山吹様にとって8億円は普通の人にとっての8000円くらいです」
 
「凄いなあ。でも現金って、振込じゃなくて本当の現ナマだったんですね」
「まあ現金のやりとりは記録が残らないのがいい所なんですよ」
「なるほどー」
 
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中村さんの助手はやはり2人ともボクシングの元選手だと言っていた。
「飾り職人の秀君と何でも屋の加代さんです」
と中村さんは紹介した。
 
「ほんとに仕事人みたいですね。でも加代さんって女の人みたいな名前」
と和実が言うと、
「ああ、私女ですよ」
と加代さんは言った。
 
和実はジョークなのかマジなのか判断に悩んだ。もしかしてMTF?あるいはFTM??声は普通に男性の声に聞こえたけど?
 

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中村さんはわざわざ和実を車でクレールまで送ってくれた。
 
別れた後、和実は若葉に御礼がてら電話をし、下旬に予定している入金があった所で、立て替えてもらった4億8千万と値切った金額の1割3200万円の合計5億1200万円を若葉の口座に振り込むことで了承してもらった。淳が言っていた通り、若葉はそのお金の出所(でどころ)は全く詮索しなかった。
 
更に若葉は言った。
「私、仙台にもムーランを作ろうかと思っていたんだど、その和実の新しいお店の駐車場に1個出店させてもらえない?」
 
「飲食店の庭に飲食店を置くの〜〜?」
と和実はさすがに驚いて言う。
 
「競合しないと思うよ。むしろランチ食べた人がカフェでコーヒー飲んだりするんじゃないかな」
 
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「ムーランでテイクアウトして、うちの店内で食べたりして」
「その場合は最低1ドリンク買ってということにしたら?あ、そうだ。ムーランでコーヒー券付きのお弁当を販売して、そちらで座って食べてよいとかできない?」
 
和実は少し考えた。
 
「それ悪くない気がする。win-winで」
「ちなみにトレーラーを駐められる程度の駐車場はあるよね?」
「奥行き45mで建蔽率60%だから、前庭は奥行き18mくらいは取れると思う」
「あの付近は建蔽率80%だと思うけど」
「嘘!?」
「これ会って打ち合わせた方がいいね。明日にもそちらに行っていい?」
 
「歓迎、歓迎。そうだ。千里が地下にバスケットコート作らせてなんて言ってたんだけど」
「じゃ千里も呼ぼう、私が連絡しておくよ」
「うん。じゃお願い」
 
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それで若葉と千里は翌1月9日(木)クレールを訪れ、和実の自宅の方で打ち合わせた。若葉のRX-8をふたりで交替で運転してきたらしいが、よく若葉の運転する車に乗るよ!と和実は思った(若葉に乗せてもらった人の多くが2度目の同乗を辞退する!)。
 
「これ建蔽率80%で建てちゃうと、前庭は9mくらいしかないから、2列駐車できない。すると9台( (33-5)÷3 = 9.3 )しか駐められない。延べ床面積が3000m2としても駐車場規制で最低15台分の駐車場を確保しないといけないから、建蔽率60%の基準で建てた方がいい気がする」
 
「あるいは地下駐車場を作るかだよね」
「その手もある。この面積なら地下駐車場を作った場合、建蔽率80%の計算なら建物は32m×37mくらい (33×45×0.8÷32=37.1) として、たぶん25台近く駐められると思う」
 
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「駐車場を地下1階に作って、私のバスケットコートは地下2階かな」
「それがいいね。駐車場が下なら進入が大変」
 
「でも地下駐車場は無断駐車されないよね?」
「うん。お店で駐車券の無料化処理してもらわないと高額の駐車料金を払わないといけなくなるからね」
 
「ところでムーランのトレーラーレストランってサイズは?」
「長さ10m 幅3.2m デッキも入れたら4.6m かな」
「建蔽率80%で建てちゃうと入らないじゃん」
「あ、そうか。だったら10mのトレーラーが置けるサイズの前庭にしてよ」
「それ12mあればいい?」
「待って。トイレはクレールのを利用させてもらうのでトイレユニットを省略する前提でこちらは12mあれば充分だけど、地下駐車場を自走式にするならそのスロープを収められる長さにしないといけない」
 
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「自走式以外の選択肢は?」
「カーエレベーターあるいは機械式駐車場」
「機械式は敷地的に厳しい。カーエレベーターは、ぶつける人が続出しそう」
「警備員が上と下に1人ずつ常駐する必要があるね」
「それ費用が恐ろしい。やはり自走式の一択だな」
 
基準に沿って計算してみたら、高さ2.3mまでの車が進入できるようにする場合、前庭は13mあればよいことが分かる。
 
(傾斜路の最初と最後の3.5mの勾配は1/12以下、その途中は1/6以下でなければならない。3.5mの間に3.5/12=0.29m沈む。2.3mの車が建物の端を通過する時、床の高さを50cmとして、2.3-(0.5+0.29)=1.51m沈む必要がある。傾斜1/6でこの高さ沈むには水平距離は 1.51x6=9.06m必要である。最初の3.5mと合わせて12.56m前庭は必要ということになる。13mある場合は237cmの車まで通過できる。なおランクル・フォレスタ・パジェロが225cmである。ハイエースはもっと低い211cm)
 
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「入口の所に高さ230cmのゲートを立てよう」
「よく地下駐車場の入口に立ってるよね」
「建物にぶつけられたら困るからね」
 
「前庭が13mなら、敷地境界と建物の間に最低必要な50cmも引いて45-13-0.5=31.5 で奥行き31.5m、間口32mの建物が建てられることになる。
 
「奥側のマージンは0.5mでもいいけど、両脇のマージンは1mずつ取らない?万一の場合の避難路と考えると50cmでは通れない人がいる」
「ダイエットして欲しいな。でもわりと余裕あるし1mずつ取ろうか。だったら間口31m 奥行き31.5mということで」
 
「家賃はいくらくらいにしようか?」
と若葉が訊く。
「家賃とか居るんだっけ?庭を使うだけなのに」
「地人の敷地を占有すれば当然必要。トイレも借りるし、できたら電気も借りたい」
「ああ、それは問題無い。水道・下水・ガス使っていいよ」
「じゃ水道と下水道も借りちゃおう。ガスはトレーラーレストランの性質上プロパンガスの器具そろえてるから都市ガスは使えないのよね」
「なるほどー」
 
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「このビルは他に何かお店入れるの?」
「全然予定無い」
「だったら2階も貸してくれない?仙台事務局と食材置き場、ついでにセントラルキッチンを作りたい」
「そこでまとめて調理するんだ?」
「大半はファミレスチェーンのブルーフィンに作ってもらっているんだけどね。それ以外に自家製のソーセージとか作りたいなと思ってるのよ」
「そういうのいいね」
 
「じゃさ2階を私が使うということで、建築費の何割か私に出させてもらえない?」
と若葉は言ったが
「それ私も言ってた所」
と千里が言う。
 
「だったら面積比率か何かで建築費を分担すればいいな」
と若葉。
「取り敢えず店内の部屋の配置とか考えてみようよ」
 

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それで現在のクレール本店の部屋配置を参考にホワイトボードに書き出してみた。これはとても楽しい作業で5時間くらいがあっという間に過ぎた。
 
↓1F(地上)のレイアウト

↓2T・3Tのレイアウト(暫定版)


 
1階(地上図)の前庭右手にあるのは空堀りの開口部である。お店に近い部分は高度(17m)もあり危険なのでグレーチングを敷いておく。地上駐車場の1つには電気自動車用の充電設備を設置する。充電している間にカフェラテでもどうぞという趣旨である。
 
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2T 3T というのはテラス席である。これを2階・3階と考えると若葉のムーラン仙台本部は4階と言うべきかも。
 
若葉がヨーロッパ旅行や出張をしていて18世紀に建てられたシューズボックス型のホールも多数見ていたのだが、そのようなホールにはしばしばこのような「バルコニー席」が設けられていて、1ランク上の座席として人気らしい。
 
「更衣室は男子更衣室と女子更衣室だけでいいんだっけ?」
「他に何があるのさ?」
「男の娘更衣室とかは?」
「女子更衣室使う自信無い、あるいは容認してもらえないレベルなら多目的トイレ使ってもいいよ」
「その手があるか」
 
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