広告:國崎出雲の事情 3 (少年サンデーコミックス)
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■春封(20)

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それでも千里は29-30日の2日間、桃香のアパートで掃除と食事作りをした。そして31日午前中の新幹線で青葉と一緒に仙台に入った。
 
青葉は先日の会話が気になったので、千里姉に再度尋ねたみたのだが、千里はあの日話した『結婚』のことも『球の分割増殖問題』のことも全然覚えていないようであった。
 
つまり・・・結婚と分身のことを話したちー姉と、今ここにいるちー姉は別の分身だったりして!?
 
会場に行ってみると、政子は来ていたが、冬子はまだという。冬子はKARIONが東京でのカウントダウン・イベントに参加するので、そちらが終わってから、KARIONおよびトラベリングベルズのメンバーと一緒に来るらしい。
 
簡単な打合せをした上で、和実がやっている出店に青葉と千里の2人で行ってみる。まだ観客を入れる前なのに、スタッフや他の出店の人!?まで集まって列ができている。
 
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「夕方までは時間取れるし、手伝おうか?」
「助かる。頼む」
 
それで青葉と千里は、フル回転で卵を焼いていて疲れている様子のメイド服を着たスタッフさんと交代した。
 

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前座が3つ終わった後、21:45にローズ+リリーのカウントダウンライブは開演する。
 
最近のローズ+リリーの演奏はひじょうに多数の演奏者が参加しており、しかも曲によって参加する人が違うし、担当楽器も変わったりする。それで今回のツアーでは、全員に小型のスマホを配布し、そのスマホに次の曲に出演するのかどうか、また何の楽器を演奏するのかをネット配信して表示するようにしていた。ただ、異様なエネルギーを持つ曲があり、過去に多数の静電気事故が起きているので、今回はそのスマホに全部アースが付いていて、アース線を床に垂らした状態で全員移動していた。
 
この日はこのアースのおかげで、スマホのトラブルは発生しなかったが、実はそのアースを付けたほうがいいと言ったのは千里である。千里は自分がいちばん静電事故の危険が高いと思い、最初自主的に工作の得意な人に頼んでアースをつけてもらおうかと思ったが、それなら全員つけた方がいいと冬子が言ったので最初からアースをつけた状態で配布したのである。
 
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ところが、1曲目『赤い玉・白い玉』が終わった所で唐突に落雷がある。
 
それまで特に天気が悪いわけでもなかったのだが、突然のことであった。
 
電柱に落雷したようで全ての電源が落ちる。会場は当然真っ暗になる。しかし冬子の観客への呼びかけで、パニックは防ぐことができた。
 
ライブは一時中断したものの、現場の総責任者である★★レコードの松前会長は、続行しようという決断をした。
 
東北電力のスタッフが状況確認と復旧作業に走り回る。イベンターやレコード会社のスタッフの数人が車を会場内に入れ、ヘッドライドで場内を照らす。PAを担当している碧音光開発のスタッフは、場内各所に置いてあるサブスピーカーがバッテリーで駆動していることを利用し、小型のアンプを車載の補助電源で動かして使用するという方法で何とか音響が使えるようにした。
 
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それでメインスピーカーも落ちて、場内が薄暗い中、コンサートの前半が行われた。出演指示を表示するスマホも無線LANが使えない中ローカルモードに切り替えて使用した。
 

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前半終了間際に東北電力のチームが電源を復活させることに成功する。それでやっと会場に灯りが戻り、メインスピーカーも復活。後半はスマホも本来のオンラインモードで使用することができた。
 
「だけど怪我人とかもなくて良かった」
 
「毎年落雷で亡くなる人っていますよね」
「まあ人間を直撃すると怖い」
 
「あれ金属を身につけていたら危険と普通言われるけど、逆に身につけていれば、身体の芯ではなく表面の金属物質に流れるから、かえって安全という説もありますね」
 
「表面を流れるように導いた方がいいというなら金属製の鎧(よろい)をつけておくといいのかもね」
 
「いや、それ絶対危険」
 

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2017年1月1日。
 
千里と青葉は冬子たちと一緒に宮城県M市の水族館跡特設ステージで新しい年のカウントダウンを迎えた。
 
ライブ終了後は一緒に遠刈田(とおがった)温泉まで移動して、泊まる。近隣の温泉地はお客さん優先で全て埋まっているので、こんな遠くまで移動したのである。
 
「ここまでなかなか『とおかった』ね」
などと鷹野さんが、使い古されたジョークを言っている。
 
青葉は旅館の部屋にも飾ってある遠刈田コケシを懐かしく感じた。彪志と知り合った時の事件で、ここのコケシを事件を処理するための重要なアイテムとして利用させてもらったのである。
 
結果的に青葉の手許にはコケシは残っていない。明日帰る時にお土産に買っていこうかな、と青葉は思った。
 
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温泉ではスタッフ・出演者だけ1つの旅館に集めている。この旅館には観客は(団体予約では)入れていないので、安心して館内を移動できる。青葉や冬子たちは夜中の1時半に旅館に到着したが、大広間で「お疲れさん」と言って乾杯をし、そのまま解散した。ほとんどの人がそのまま寝るので、お弁当と飲み物を渡した。20人ほどが残って少しおしゃべりしたが、それでも大半は1時間ほどで各自の部屋に引き上げた。青葉と千里もここで引き上げた。数人徹夜で飲み明かした人たちもあったようである。
 
お部屋は、お正月でそもそも混む時期に無理矢理枠を取ってもらっているので、男性・女性・MTF・FTMと4分類した上での相部屋で、今日は夫婦といえども性別に応じた部屋に別れてもらっている。メイン出演者の冬子と政子にしても、和泉・小風・美空と一緒に5人部屋に押し込んでいた。青葉と千里は、鮎川ゆま・近藤七星・呉羽ヒロミと5人部屋であった。
 
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ライブの後で疲れているので熟睡したが、明け方妙に現実感のある不思議な夢を見た。
 
千里が町を歩いているのを見て手を振って近寄ろうとしたら、いきなり落雷があり、千里を直撃した。びっくりして
 
「ちー姉大丈夫?」
と声を掛けて近寄ったら、雷が当たった千里が3つに分裂してしまったのである!?
 
そしてひとりは貴司さんの所に行ってキスしている。京平君もそばでニコニコした顔でその様子を見ている。
 
ひとりは青葉が知らない男性と腕を組んでから、近くにあったエスカレータに一緒に乗って、どこか上の方に昇って行ってしまった。そのエスカレーターの向こうは妙に明るかった。そのエスカレーターの登り口の所におくるみに包まれた赤ちゃんがいたので、青葉はその子を拾い上げた。
 
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そしてもうひとりは、バスケットボールを持つと怖いくらいに引き締まった顔でボールをドリブルしていき、10mくらい離れたゴールに向けてロングシュートを撃つ。これが美事に決まると、青葉の方を向いてガッツポーズをし、ニコリと笑顔になった。
 
そこで目が覚めた。
 

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起きて時計を見ると6時である。千里はもう起きていたようで、セーターにスカートという姿である。見るとポチ袋を手にしている。
 
「それどうしたの?」
「ああ。京平にお年玉あげてきた」
 
「うーん・・・。まあいいや」
 
一緒にお風呂に行くことにする。昨夜はお風呂に入るだけの体力が残っておらず、そのまま眠ってしまった。お風呂に行く途中で、冬子・和泉と一緒になる。
 
「このメンツふと思ったら凄いね」
と和泉が言う。
 
「うん?」
 
「この中で元々女湯に入っていたのは私だけかなあ、とか思って」
と和泉が言うが、千里は笑いながら指摘する。
 
「和泉ちゃん、この中に男湯に入っていた子はひとりも居ない」
 
「へ?」
と声を出した和泉はしばらく考えている内に
「うーん・・・・」
と腕を組んで考えていた。
 
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この日はもちろん4人ともふつうに女湯に入る。
 

お風呂の中では、今年の各地のカウントダウンライブの様子を話題にしたが、妊娠中のフェイに代わって、ヒロシ(ハイライト・セブンスターズ)がメインボーカルを務めたレインボウ・フルート・バンズの演奏が凄かったということであった。
 
ヒロシはフェイに割り当てられているソプラノパートを完璧に歌いこなしたし、16種類もの楽器(エレキギター、アコスティックギター、ベース、津軽三味線、ドラムス、グランドピアノ、エレクトーン、ハープ、ヴァイオリン、フルート、クラリネット、トランペット、トロンボーン、フレンチホルン、アルトサックス、ソプラノサックス)を演奏した。そしていつも通りのフェイの衣装で、ライブの前半は男装、後半は女装で登場したが、その女装が物凄く可愛かったらしい。
 
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なお、フェイはライブに出演はしないものの、会場に同行していて、カウントダウンの時だけ観客の前に姿を見せたということだった。
 
そして、この場にいるメンツでは青葉と千里だけが知っていることとして、妊娠中の彼は、ライブが終わるとそのままお腹の中の子供の法的な父親であるヒロシと、お腹の中の子供の遺伝子上の父親・宮田雅希(戸籍上は生まれながらの女性)に付き添われて、深夜、都内の病院に行き入院した。後は出産まで病院で過ごしてもらうことにする。
 

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お風呂を出た後、朝御飯を食べる。青葉はこの日1月1日いっぱい、この遠刈田温泉で過ごすが明日からのオールジャパンに出場する千里は、お昼前に宿を出て、東京に戻った。
 
千里が出発するので出口まで見送るが、出口の近くに土産物コーナーがある。
 
「そうだ。ちー姉、お土産に遠刈田のコケシとか持っていく?」
「あ、それもいいかもね」
「じゃ私が買うよ」
 
と言って、可愛い花模様のコケシを2つ買って千里に渡した。
 
「ありがとう」
と言って笑顔で受け取る。
 
「じゃ気をつけて。オールジャパン頑張ってね」
と言って青葉は千里を送り出した。
 
そして・・・青葉は結局自分用にコケシを買うのは忘れてしまったのであった。
 
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千里は新幹線の中で半ばまどろみながら《彼女》の話を聞いていた。
 
『私がまだほんの小狐だった頃なんだけど、私、お使いで人里の近くを走り回っていて、猟銃持った人に見られてね。撃たれそうになったんだよ。狐としての命が終わったら次は人間に戻してもらえることになっていたから、死ぬのは構わないけど、鉄砲で撃たれるって痛そう・・・と思った時に、小さな男の子がその猟師に石を投げつけたんだよ』
 
『それで猟師は狙いが外れて私は助かった。私は必死で逃げた。猟師はその男の子を殴ったけど彼は《まだ小さいのに可哀相じゃん》と猟師に言った』
 
千里はじっと聞いていたが、ひとこと訊いた。
 
『その人のこと好きなの?』
 
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『好き』
といったん言った後、彼女は
 
『。。。という感情とは違うと思う』
 
と言った。
 
千里は静かに聞いている。
 
『でもずっとあの子のことを守ってきたよ。千里に貴司君がいなかったら、千里を彼と結婚させたかったよ』
 
『私は貴司と結婚したいからなあ。何とか今年くらいにはあいつ阿倍子さんとさすがに破綻しそうだし。でも私が3人くらい居たら、その中の1人くらいはその彼と結婚してもいいけど』
 
『千里、けっこう彼のこと好きになると思う。元男の子だなんて気にする人じゃないと思うよ』
 
『ごめんね。私は貴司ひとすじだから』
 
彼女は自分と《彼》とのこれまでのことをたくさん話した。
 
『もしかして、小春って、彼にはその最初の出会いを除いては1度も姿を見せていなかったりして?』
と千里は訊く。
 
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『だっていつも見られないように気をつけて助けてきたから』
『あまりにも奥手すぎる』
 

『それでね、千里』
『うん?』
 
『私の寿命が尽きるのを防いでいる封印がさすがに期限切れなの。だから私、千里の子供として生まれ変わるための準備期間に入るから』
 
千里は厳しい顔をした。
 
『だから千里と今の状態で一緒に居られるのは、たぶんあと半年くらいだと思う。その後私はしばらく中有の世界で一休みする。だから私が再度生まれて1年くらいたって、精霊としての封印が解除されて、今の京平君と似たような状態になれるまでは、何とかひとりで頑張って』
 
千里は静かに目を瞑った。
 
『その間死なないでよ。今の状態はこの身体の中に、千里の命と私の命と2つの命が共存しているから千里の心臓が万一停まっても、私がすぐ千里を再起動させられるけど、私が居ないと本当に死んじゃうからさ』
 
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千里は微笑んだ。
 
あの・・・中学1年の春のことを思い出す。目に涙が浮かぶ。
 

ふたりの会話は眷属たちの中では本来、実質的に神様である《くうちゃん》にだけ聞こえるのだが、この日の《くうちゃん》は千里にも告げないまま、その会話を《きーちゃん》にも聞かせていた。
 
『そうそう。私やはり生物学的には男の子に生まれちゃうみたいなんだよ。だから千里、私をできるだけ早い年代で性転換してよ』
『取り敢えず玉は抜けばいいよね?』
『それは生まれてすぐやって欲しい』
 
『何とかする。私小春が生まれる場所には居ると思うし。《こうちゃん》にでもやらせるよ。卵巣は、私の卵巣と同じ作り方すればいいんでしょ?それで中学生くらいの段階で移植する』
 
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『そうそう。細かい手順は大神様に頼んで』
 
『了解。ところで小春、誰と誰の子供として産まれるんだっけ?』
『もちろん千里が産んでよ』
『それはもちろん産むけど、世間的には私は出産することにはできないじゃん』
 
『面倒くさいなあ。歴史を改竄して千里は最初から女の子だったことにしない?』
 
『それだと貴司はたぶん私に興味を持ってくれなかった。貴司は間違い無く、男の娘が好きなんだよ。純粋な女性には興味が続かない。あいつ既に阿倍子さんには完全に飽きている。貴司が浮気を繰り返しても私との関係はずっと続けているのは、浮気相手が女性で私が元男の娘だからだよ』
 
と千里は言った。
 
『貴司君も確かに屈折しているよね。じゃ、精子は貴司君のを使うことにして』
『つまり物理的には京平と同父同母の兄妹になるわけか』
 
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『そうそう。私、貴司君のこともわりと気に入っているし、貴司君と私の思い人の間の子供として生まれちゃおうかな』
 
『小春の思い人って女の子だっけ?』
『しまった!この組合せは男の子同士だ!』
 
『いっそ貴司を性転換させる?あいつちんちん無くなっても多分平気だと思う。そしたら阿倍子さんと自動的に離婚になるし』
 
『それもいいなぁ・・・』
 
と言って小春は悪戯を計画している子供のような表情をした。
 
一瞬《くうちゃん》と《きーちゃん》が顔を見合わせた。
 
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