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■春封(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-08-18
 
買物に来ていて淳は困っていた。
 
和実・希望美といっしょに来ているのだが、ふだん和実ひとりで赤ちゃんのお世話をしているしと思い、今日は私が抱くよと言って抱いている。そしてお昼を食べた後、和実が何か見たいものがあるらしかったので、私が希望美は見てるから、ひとりで行っておいでよと送り出して・・・2時間経つ!
 
淳はスリングで希望美を抱いているのだが、お昼を食べた少し後まではずっと寝ていたのが、今は起きている。それはそれで可愛かったのだが、さっきからぐずり始めて困っていたのである。
 
おむつは20分くらい前に替えたばかりである。おっぱいが欲しいのかなぁ・・・しかし。。。。
 
淳は迷ったものの、意を決して授乳室に入った。
 
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すると、淳が入って来た途端、何だか冷たい視線が来る。
 
きゃー。やはり!?
 
でも仕方ない。
 
授乳室は混んでいて、6組もの母子が授乳している。4組が乳房から直接授乳していて2組は哺乳瓶である。
 
淳は空いている席に座ると、服のボタンを外し始めた。
 

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「ちょっとあんた」
とひとり27-28歳くらいかなという感じの女性が赤ちゃんを抱いたまま淳の前に来ると、きつい顔でこちらを睨む。
「ここは女性専用で、みんなそれで安心しておっぱい出してるんだよ。男の人は出て行って欲しいんだけど。何なら警備員呼ぶよ」
 
あぁ・・・やはり私はパスしてない!
 
女子トイレでも女湯でも文句言われたことないのに。
 
「えっと、どういう意味でしょうか?」
と淳は笑顔で言うと、ボタンを外し終わった服から乳房を取り出し、希望美の口に乳首をふくませる。すると希望美は物凄い勢いで、淳のおっぱいを飲み始めた。よほどお腹が空いていたのだろうか?
 
「あら、あんた・・・ほんとの女だった?」
 
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「え?私男に見えます?」
 
「ごめーん。てっきりオカマさんかと思っちゃって。ほんとに御免ね」
と言いながら、その女性は自分の席に戻った。
 
他の女性たちはなりゆきを見守っていたが「え〜?」とか「へー」といった感じの顔をしているので、私って、やはり《本パス》はしてないんだなあと改めて思った。
 
その女性は後で「変なこと言ったお詫び」と言って、アイスクリームをおごってくれた。これが結構美味しかった。
 
「でも夏はやだなあ」
と淳は呟いた。
 
赤ちゃんを連れていると、どうしても重装備になってしまうし、汗掻いても簡単には着換えられない。特に赤ちゃん連れで外出する時は、おっぱいを出しやすい服を着る必要もある。
 
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ところで和実はいったいいつ戻ってくるのだろう??
 

裕夢(ひろむ)は「いいかげんに起きなさい」という母の声に、まだぼーっとしたままの状態で起き上がると、そのまま居間に出て行った。すると、こちらを見て父がポカーンとしている。
 
姉が言った。
「あんた、何て格好してるのよ?」
 
「え?なんかおかしい?」
と言って裕夢が鏡を見ると、自分で吹き出した。
 
「お前、女装とかするの?」
と父がやっと口をきく。
 
「何か変な夢見たんだよね〜。その夢のせいかも」
 
「ところでそのブラジャー、誰の?」
と姉が訊く。
 
「うーんと・・・」
と言って、裕夢は自分が着けているブラジャーを外して見てみる。この時、裕夢が後ろ手を回してすんなりホックを外したので姉は「ほほぉ」といった顔をしたのだが、まだ半分寝ている裕夢は気付かない。
 
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「C60だよ」
「私のじゃないし、お母ちゃんのでもないね」
と姉。
「あんた、下着泥棒とかしてないよね?」
 
「さすがにそんなことするほどの変態じゃない。これもしかしたら百合花のかも」
 
「百合花ちゃん、あんたと今どうなってる訳?」
「ふつうの友だちだけど」
「セックスはするんだっけ?」
「僕が東大理3に合格したら、させてやると言ってた」
「そりゃ頑張らなきゃ」
「理3なんて通る訳ないじゃん。それに僕は工学部志望だし。セックスするつもりはないという意味だと思うよ」
 
「でもブラジャーを置いてっちゃうくらいの付き合い方してるの?それともあんた百合花ちゃんのを盗ったの?」
 
「そりゃ僕は百合花が好きだけど、下着を盗ったりはしないよ」
などと言っている。
 
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裕夢はたぶんこれこないだあいつが来た時に“忘れて”いったんだろうなと思った。以前あいつのパンティが落ちてたこともあったし、ヌード写真まで添えてあったことがあった。全くあんなの流出でもしたらどうすんだよ?
 
しかしそれよりも、さっきのは変な夢だったなあ、と裕夢は思いながら、なぜか穿いていたスカート(これもきっと百合花のだ)を脱ぐと、その付近に掛かっている学生ズボンを穿いた。穿いている下着が男物のブリーフではなく女物のショーツであることに、母と姉は気付いたものの、本人は気付いてない感じであった。
 

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青葉は2016年7月6日の夜から車で仙台まで走り、和実の赤ちゃん・希望美(のぞみ)の出産を千里・桃香とともにサポートした。桃香本人は意識していないものの、この出産成功には実は桃香の力が大きかった。
 
赤ちゃんは7月7日の朝4:20に産まれ、青葉はその日の日中は和実の雑用などをしてあげた。夕方車で東京に戻るが、その夜《妖怪アジモド》の封印に成功する。青葉は7月8日は1日中寝ていたが、夕方から彪志と一緒に焼肉屋さんに行ったら桃香と同僚のグループに遭遇。富山県の水仲温泉に行く計画が急遽決まってしまった。
 
ちょうど東京に出てきていた朋子と合流し、翌7月9日、富山まで走って水仲温泉に行くが、ここで図らずもラララグーンのソウ∽さんと、ステラジオのホシのヒーリングを連続してやることになる。温泉には1泊して翌7月10日、上越妙高まで一緒に行き、そこから青葉と朋子は新幹線で高岡に帰還した。
 
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ところがその日の夜、和実から電話があり、青葉は再度仙台に向かうことになったのであった。
 

7月11日(月)。青葉は新幹線を乗り継いで仙台に入った。
 
富山6:19-8:06大宮8:22-9:30仙台
 
仙台駅には和実がプリウスで迎えに来てくれていて、青葉はそれに乗車した。和実の姉で石巻市内で美容室に勤めている胡桃も一緒である(正確には共同経営者のひとり)。彼女は月曜日が美容室の定休日なので出てこられたらしい。
 
「希望美ちゃんは?」
 
「元気元気。退院は水曜日の予定なんで、その前にと思ってね。病院にいる間は看護婦さんたちが見ていてくれるし。実は今日は盛岡からお母ちゃんも出て来ているし」
 
「なるほどー」
 
このあたりは和実自身が出産した訳ではないので自由がきく所であろう。
 
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実は、和実が来年の夏くらいにオープンしたいと考えているメイドカフェの候補地の風水チェックを頼まれたのである。そこで各候補地を実際に回って青葉の目で見てみることにした。
 

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3人は最初に仙台市の中心部にある候補地に行く。
 
「ここは交通の便もいいし、商圏的には申し分無いんだよね。ただ土地単価がどうしても高い。この区画は50坪あるから、座席数30席くらいのカフェにできて、まあ最低限のレベルかなという所。でも売値は1億円なんだよね。融資は受けられると思うんだけど」
 
と和実は言うが
 
「1億円借りて、それどうやって返済するのよ?と私は言っているんだけどね」
 
と胡桃は言っている。
 
「でもどっちみち建設費も1億円以上掛かるよ。だから3億円借りる方向で銀行と交渉中なんだよね」
 
「それ絶対返せないって」
と胡桃は言っている。
 
青葉は羅盤を持って周囲を見回し、車内に戻って地図も確認した。
 
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「その予算の問題を除けば、純粋な土地としての評価では90点。ほぼ問題が無い。都会の中にあるから全体的なエネルギーも高い。ただ雑多な霊も集まりやすい。これはきちんと結界を張っておけばある程度回避できるし、定期的にお祓いすれば大丈夫」
 
と青葉は言う。
 
「そのお祓いとか青葉に頼める?」
「たぶん千里姉の方がそういうのは得意」
「へー!」
 

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次に行ったのは青葉区内だが、中心部からは外れ、大学が多数集まっている地区である。
 
「ここは70坪で3000万円。わりとお買い得物件だと思うんだよ。それだと計算してみたけど客席を40席ちょっと取れる。ここは建設費も7-8000万円で済みそうなんだよね」
 
「私、保証人になってくれと言われてもハンコ押さないからね」
などと胡桃は言っている。
 
「40席で4回転1人800円使ってくれた場合で、売上は12.8万円。その内の多分半分が粗利。カフェって他の飲食店に比べて粗利率が高いんだよね。特にメイドカフェは高い。それで年間2000万円。生活費を外しても1600万円。30年もあれば完済できる計算になるんだよ」
 
と和実は言っている。
 
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「それ収支見積もり甘すぎるし、店舗のメンテナンスの費用も計算に入れていない。店舗を自己所有する場合、建物のメンテに結構お金が掛かるよ」
 
と実際に美容室の経営に携わっている胡桃は鋭い指摘をしている。
 
「まあ私が途中で死んだ場合は残金は保険金で精算できるようにしておくし」
とも和実は言っている。
 

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「それに、ここは学生さんのお客を期待できると思うんだよね」
などと和実は言っている。
 
「ただその場合、客単価が低くなるんじゃないかというのが心配でね」
と胡桃が言う。
 
ここも青葉は羅盤でずっとチェックしていた。
 
「純粋な土地としての点数としては85点。結構な気の乱れがあるけど、若い人たちが多いだけに乱れが発生してもすぐ修復されていくと思う。ここはとにかく若い町だね。ここでやるなら、メイドカフェにするより、もっとカジュアルで低単価のお店を志向した方がいいかも」
 
「やはりヴェローチェみたいな方向性かな?」
 
「あるいは吉野家とかマクドの線。学生さんは早くて安くて量があればいいから。あまり味や雰囲気は気にしない。それに胡桃さんの肩を持つ訳じゃないけど、学生さん相手の場合、400円のコーヒーで5時間ねばったりしないかな?」
 
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「メイドカフェはね、最後にオーダーしてから2時間経つと『ご主人様、お出かけの時間です』と言うんだよね〜」
 
「なるほど!」
 
「それでも学生相手の商売は、コンセプトが変わってくるかなぁ」
と和実は悩んでいた。
 

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