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■春封(6)

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「だけど何かお手伝いできることがあったらお手伝いしたいよね」
と政子はまだ言っている。
 
その時、冬子がふと思いついたように言った。
 
「お店にステージ作ってライブ演奏してさ、2階にはスタジオも作って音源制作するとかなら、私たちが、それのスポンサーになれないかな」
 
「というと?」
と和実は少し興味を持ったようである。
 
「例えば、そのライブ演奏する人たちのギャラを私たちが払うことにするとか。その代わり、有望な人がいたらTKRとかからデビューさせる。新人開拓を兼ねたギブ&テイク」
 
「ギブ&テイクになるんだっけ?」
 
「和実はお店のプロモーションになる。こちらはTKRがいいアーティストを確保できると助かる」
「それ★★レコードじゃなくてTKRがいいの?」
 
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「★★レコードだと、どーんと何十万枚も売るアーティストでないと厳しい。TKRだと年間100枚でも文句言われない」
 
「なるほどー」
 
「それと現在の★★レコードの経営陣は私たちのコンセプトに合ってないんだよ。実は今★★レコードで制作しているアルバムとは別口でFMIから出すアルバムの制作も進めている」
 
「へー!」
 
「今はむしろアクアとかステラジオが入っているTKRの方が私たちにとっては使いやすいんだよね」
 
「なるほどー」
と言ってから、和実は少し考えていた。
 

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「それ、お願いしたいかも」
と和実は答えた。
 
「じゃこの話、進めようよ」
「アーティストのギャラの額とかは誰が決めることにする?」
 
「それは和実に任せる。例えば1日合計1万円とかまではそちらの裁量で。その枠以上に払いたいようなアーティストは、うちの風花とかに見てもらうよ」
「なるほど。それなら運用しやすいかもね」
 
「それと、銀行融資が下りるまで他の準備作業ができないという状態なら、融資が下りるまでの3ヶ月間だけ5000万か必要なら6000万円くらい融資しようか?無利子」
 
冬子としてもこのくらいの金額・期間ならいいかなと考えたのである。和実も少し考えていたようだが
 
「じゃ貸して」
と言った。
 
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「今から準備始めれば夏前にはオープンできるでしょ?」
「うん。家具とかは製作に時間が掛かると思うから、実はできるだけ早く動きたいと思ってた」
 
「どういう感じの家具にするの?」
 
「盛岡のショコラ、エヴォン神田店はヴィクトリア朝風、京都のマベル、エヴォン新宿店はルイ王朝風、エヴォン銀座店は現代英国王室風なんだよね」
 
「ごめん。よく分からない」
 
「ルイ王朝の時期はロココ、ヴィクトリア朝は新ゴシックだよ」
 
「ごめん、やはり分からない」
 
「それでクレールはアールヌーボーに行こうかと思っている」
 
「あ、それなら少しは分かる気がする」
「それ家具とか、輸入になる?」
「そうなんだよ。国内で作ることは可能だけど、敢えて輸入したいんだよね。これはフランスから輸入したものです、と言った方がアピールするじゃん」
 
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「言えてる言えてる」
 
「男の娘もユニセックスな男物の服を着せてもいいけど、できたらレディスとして作られている服を着せた方が可愛いよね」
と政子が言うので
 
「なぜそういう話になる?」
と和実が突っ込んでいた。
 

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「あのぉ、話がよく見えないんですけど、もしかしてそちらのおふたりは歌手か何かなさってるんですか?」
 
と和実のお母さんが訊いた。
 
「ええ。大して売れてないんですけどね」
と冬子が答える。
 
「お名前は・・・私が知ってる名前かしら」
と和実の母は少し遠慮がちに訊く。
 
「お母ちゃん、この2人はローズ+リリーだよ」
と和実が言うと
 
「うっそー!!?」
と驚いていた。
 

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青葉が布恋に弟さんがよく見るという「変な夢」について尋ねたのは、もう10月に入り、後期の授業が始まってからであった。
 
青葉はそれまでの間に北海道で桃川さんの案件を処理し、富山市内で体育館の怪を解決している。
 
「こないだ話した時に、青葉がピクッとしたような感じだったから、もしかしてこれ心霊現象?とも思ったんだけど」
「たぶんそうだと思います。その手のものに関わった時だけに反応するセンサーみたいな感覚が反応したんですよ」
 
「なるほど〜。でもうち貧乏だから、依頼料とか払えないよ」
「水泳のタッチの仕方をたくさん教えてもらったから、そのコーチ代と等価交換ということにしません?」
「ああ、それならいいよ」
と言って、布恋は話してくれた。
 
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「実は私以外の家族全員がその変な夢っぽいものを見ているのよ。ただ弟のがいちばん激しいみたい」
 
と布恋は言った。
 
「布恋さんが見ていないのは、金沢市内に住んでいるからかな?」
と青葉。
 
「だと思う。弟も今高校3年生だから、大学に入って独立すれば、そんな夢も見なくなるかも知れないけどね」
 
「でも受験に影響したらまずいですね」
「それはあるのよね〜」
と布恋は言っている。
 
「お父ちゃんの夢は、時代劇みたいなのが多いらしい。なんか戦場みたいな所にいて、夢の中で何度も殺されているって。刀で斬られたり、鉄砲とか矢とかで撃たれたり」
 
「すると戦国時代ですか」
「ああ、そうだと思った」
 
「お母ちゃんの夢は家族関係に関わるものが多くて、私が不良になって髪を真っ赤に染めて、タバコ咥えて、バイクを乗り回しているんだって」
 
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「なんか30年前の不良のイメージですよ、それ」
「思った思った。お母ちゃんが中高生頃のスケバンとかの格好じゃないのかなあ」
 
「あと、お父ちゃんが暴力を振るって、それでお母ちゃんはひたすら殴られるらしい」
 
「ここだけの話にしますけど、お父さんは暴力を振るうことは?」
 
「そういうのは見たことない。ボクシングの試合に出たとしても相手を殴りきれずに負けてしまうんじゃないかというくらい、おとなしい人だよ。高校時代の体育で剣道をやった時以来、人を叩いたりしたことはないと本人は言っていた。私がお父ちゃんから殴られたのは、小学5年生の時に、ライターを悪戯していた時だけだよ」
 
「危険な行為だけは別でしょうね」
 
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「私もそう思う」
 
「だけど、面白かったのは、一度お父ちゃんが夢の中でお母ちゃんをひたすら殴るので弟がそれを停めてくれた夢があったらしい」
 
「へー!」
 
「それでさ。弟はお父ちゃんのおちんちんを切っちゃったんだって。こうすれば暴力を振るうこともないだろうと言って」
 
「へー!!!」
 
「それをお母ちゃんが話してたら、お父ちゃんは嫌そうな顔をしていたよ」
「まあ男性は、去勢の話が苦手な人が多いようですね」
 
「うんうん。馬や牛の去勢の話でも嫌がるよね」
 

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「でも弟はむしろ自分が去勢してもらいたいんじゃないのかね」
などと布恋は言っている。
 
「弟さんの夢は?」
 
「いくつかのパターンがあるみたいだけど、ある時は平安時代かなという感じで古風な衣装をつけた女の人がたくさんいたんだって。それで弟は『そなた、何という格好をしているのじゃ?』とか言われて、着ている服を全部脱がされて十二単(じゅうにひとえ)みたいなのを着せられたって。実際には夢を見た後で起きてきた時は、スカート穿いていたんだけどね」
 
「そのスカートは布恋さんの?」
「ううん。弟の彼女のものらしい。本人は否定しているけど、もう彼女とは体験済みみたいだから。それで彼女も気を許して自分の服を結構弟の部屋に置き去りにしているみたいなのよね。それでその置いてある服を時々勝手に着ているみたいで」
 
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「なるほど〜」
 
「なんかAKB48のオーディションに出た夢もあったらしいよ。それもやはり、『君、オーディションにはスカート穿いてきてもらわなきゃ』と言われてスカートを穿かされたと」
 
「どうしても女装させられる訳ですか」
 
「でもそれって本人の願望なんじゃないかね。朝、起きてきた時にスカートとか女物のパンティとか穿いてるのも、実は女の子になりたい気持ちがあってそういうの身につけたまま寝ていたんじゃないかという気もするよ」
 
「でも彼女がいるんでしょ?」
「うん。だから自分も女の子になりたいけど、恋愛対象も女の子なんじゃない?」
「まあ、そういう人は結構多いですね」
「でしょ?」
 

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青葉はそこまでの話を頭の中で簡単に反芻してみた。
 
「もし良かったらですね。一度そちらのお宅にお伺いさせてもらえません?」
「いいよ。いつでも来て。今週末にでも来る?」
「はい、それでは10月9日・日曜日とかでは?」
「うん。いいよ。何で来る?」
「布恋さんは、いつもどうやって実家に戻られるんですか?」
「お父ちゃんに車で迎えに来てもらう」
 
「なるほどぉ!」
 
「車なら8号線を回っても1時間ちょっとなんだけど、IRいしかわ鉄道・あいの風富山鉄道・JR城端線と乗り継ぐとバスでの移動時間も含めて4時間近く掛かるんだよ」
 
「ああ。掛かるでしょうね〜。私も鉄道乗り継ぎでは凄い時間掛かるから高岡から自家用車往復なんですよね」
 
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と嘆くように言ってから青葉は言った。
 
「だったら、10月9日に私、布恋さんのアパートまで自分の車で行きますから、布恋さんを乗せて南砺市まで行くというのでいいですか?」
 
「うん。OKOK。よろしく〜。私のアパートまで迎えに来てくれたら、実家までは私が運転するよ」
 
「そうですね。それもいいかもですね」
 
布恋は夏休みにはお父さんのものというトヨタ・ナディアを運転していたが、わりと(悪い意味ではなく)上品な運転をすると思っていた。
 

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