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■春封(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-08-20
 
2016年11月25日(金)。
 
青葉は大学が終わった後、アクアで美由紀・明日香・世梨奈・星衣良を送った後、そのまま富山駅まで走り、アクアを駐車場に置いて最終の新幹線で大宮に出た。
 
富山21:00-23:06大宮
 
ここで彪志のアパートに泊まって、翌朝一緒に移動する。
 
大宮6:30-8:00仙台
 
ここで和実・淳と合流した。
 
「ごめんね。何度も」
「ううん。本当はもっと頻繁に来ておきたかったんだけど」
と青葉は言っておく。
 
淳の運転するプリウスで、和実が開くカフェの予定地に行く。今日は希望美は胡桃に見てもらっている。
 

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「きれいに出来上がっているね!」
 
と車を降りてから様子を見て青葉は驚いて言った。
 
「外側はね。今内側の細かい工事をしている所。8月のお盆の直後から工務店と具体的な打合せを進めて設計を固めて。工事に入ったのが9月下旬なんだけど、基礎工事に1ヶ月掛かったんだよね」
 
「うん。そのくらいは掛かると思う」
 
「ところがその後、組み立て始めたら家は1週間でできるし、お店も3週間でできちゃった」
 
「ユニット工法って手作りの家とはそのあたりのスケジュール感が全然違うよね」
 
「秀吉の一夜城なんてのも、ユニット工法だよね」
 
「そうそう。上流で城の部品を全部作っておいて、闇に紛れて川を下り、部品を運び込んで全力で組み立て。昨日の夕方まで何も無かった場所に朝になると忽然とお城が姿を現す。まるで魔法でも見ているかのようだったろうね」
 
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青葉はそんなことを言いながら、多数の作業員さんが仕上げの作業をしているのを見ていたのだが、やがて考え込んでしまった。
 
「ねえ、和実、私そういうの気にしないけど、もしかしてここ誰か他の霊能者さんにも見せた?」
 
と青葉は遠慮がちに訊いた。
 
「ちょうど基礎工事を始めて1週間くらいの頃だったかな。千里が来たよ」
と和実が答える。
 
青葉は脱力した。
 
「ちー姉の仕業か!」
 
「何だかすごくきれいになっちゃったんだよね」
と和実。
「うん。なんでこんなにここきれいなの〜?と思った」
と青葉。
 
「慰霊碑もまだ立ててないのに、ここに来る度に成仏していく霊を見かける」
と和実。
 
「ああ、成仏もするだろうね〜」
 
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と青葉は言ったが、それは“和実が居た”から成仏できたのもあるだろうと思う。和実は震災直後の異様に霊感が発達した状態からは収まっているものの、未だに充分強い巫女のままである。
 
「結界は四隅にしたの?」
「そうそう。何かを埋めてた」
 
ここで“龍”を埋めたと言わないのが、和実の偉い所だなと青葉は思った。霊能者のお仕事は各々独特なので、たとえ姉妹といえども簡単に作業してもらった内容を他の霊能者に言うべきではないと配慮してくれたのだろう。
 
もっともこちらは和実の思考を読んじゃうから分かったけどね!
 
この日は既に制作だけしていた慰霊碑を“最適の場所”に設置する作業も工務店の人にしてもらった。建築とは無関係の余分な工事なので作業代はその場で現金で支払う。ただ、その設置場所は青葉が当初予定していた場所とは別の場所になった。千里が作った結界があまりに強すぎるので、その結界の“外側”に置かないと、慰霊碑が意味をなさないのである。
 
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工事が済んだところで青葉が般若心経を唱える。先日の布恋さんの家の結界と同様、本当はそんなもの唱えなくてもちゃんと霊的な処理はしたのだが、ここでお経をあげておくことで、いかにももっともらしく見えるのである。サービス上の演出だ。今日の青葉はそのためにちゃんと法衣を着てきていた。
 
「でもこないだ基礎工事に来た人は普段着だけど巫女さんっぽかったけど、今日は尼さんなんですね」
と現場監督さんが言う。
 
「姉妹なんですよ」
と和実が言った。
 
「え?あの時に来た人と今日の人とは姉妹?」
「そうなんですよ」
と青葉は微笑んで言う。
 
「姉妹で片方は巫女で、片方は尼さんって珍しいね」
「曾祖母とか凄かったですよ。鈴(りん)とか木魚打ちながら、祝詞(のりと)を奏上してましたから」
 
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「それはまた凄い!」
 
「江戸時代まではそういうのが多かったらしいですよ。明治の神仏分離でお寺と神社、僧と神職は分けられてしまいましたけど」
と青葉。
 
「何かお寺と神社がくっついている所、多いもんね。浅草寺と浅草神社とか、青葉神社と東昌寺とか」
と現場監督。
 
「昔の名残ですよね。もっとも青葉神社と東昌寺は単に敷地を融通しただけなんですけどね」
と青葉は言う。
 
「へー。じゃ関係がある訳では無いのか」
「そうなんですよ」
 
現場監督さんは感心したように言っている。
 
「でも基礎工事の時は《妹》の巫女さんがやって、仕上げは《お姉さん》の尼さんがするんですね?」
 
と現場監督が言ったのに、青葉はショックを受けてしばらく言葉が出なかった。
 
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和実はこらえきれずに吹き出した。
 

仙台市内でお昼を4人で一緒に取り、胡桃へのお土産を買って和実に渡してから、青葉と彪志は和実と別れて新幹線で盛岡に行く。そこで彪志の実家に寄るが、お土産を渡してお茶を頂いたら、彪志をそこに置いて!青葉はひとりで彪志の母の車・N-ONEを借りて大船渡まで走り、山麓にある自分の家(旧平田家)に入って色々と準備を進めた。
 
一方彪志は翌日曜日の朝、父のグレイスを借りて、盛岡駅で、東京から来てくれた瞬法を迎える。
 
「お忙しい所、ご足労頂いて、本当にありがとうございます」
と彪志が言うと
 
「実は瞬葉(青葉)君ひとりでもできるんじゃないの?と思ったんだけどね」
などと瞬法は言っていた。
 
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瞬法を乗せて、彪志がグレイスで大船渡まで走る。まずは青葉の自宅に寄って“受入側”の状況を確認する。
 
「きれいに出来てるじゃん」
と瞬法。
「これで受け入れられると思います?」
と青葉が訊く。
 
「それは送り出し側を見てから考えるよ」
 
それでグレイスの方に3人で乗って、海岸近くの佐竹家に向かった。
 

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瞬法はその家を見上げて絶句している。
 
「どうかなさいました?」
「前からこんな感じだったっけ?」
「済みません。何かおかしな所がありますか?」
 
「どうやってこの結界を作ったのかが分からない」
「封印物のことは言ってませんでしたっけ?」
 
瞬法はかなり悩んでいるようだ。しかし5分ほどすると
 
「悩んでも仕方ない。内側を見ようか」
と言って中に入る。
 
そして祭壇で般若心経を唱えてから、資料室に入った。
 
「かなり復活したね」
「苦労しました」
 
瞬法は震災に遭う前の佐竹家と資料室も見ているのだが、資料室の本自体は当時よりまだ随分少ないはずである。
 
「一応全部こちらのコンピュータシステムの中に昔の本のほとんどが収納されているんですよ」
 
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「ふーん。ちょっと見せて」
と言うので、その場でid/passを発行して渡す。それでログインする。
 
「これ書籍自体にパスワードが掛かっているけど、教えてもらえない?」
「瞬法さんなら分かるはずです」
「・・・まさかこれ、勘でパスワードを見つけないといけないの?」
 
「はい、そうなっています。ある程度の力がある霊能者にしか開けることができません。しかもパスワードはユーザー毎にそして毎日変わります」
 
「なんつーシステムだよ!」
 
と言っていたが、実際には即パスワードを撃ち込んで開くことができた。
 
「良かった。これも開(ひら)けなかったら、恥ずかしくて即東京帰還コースだった」
 
などと言っている。
 
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「この本、必要でしたらデータあるいはプリントでお持ち帰りになります?」
「プリントしてくれる?体調が悪い時はパスワード開けきれないかも」
 
「だったら印刷掛けますね」
と言って青葉は印刷指示をする。レーザープリンタが動き始める。
 

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「それでこの資料室だけを高台に移そうという魂胆なんだ?」
「そうです」
 
「うーん・・・・」
と言って瞬法は悩んでいる。再度家の外に出て、結界の全体の様子、そして封印を埋め込んでいる場所も観察する。祭壇にも行く。
 
そして言った。
 
「悪い。来週また来る」
「分かりました。私もまた来週来ます」
 
それで瞬法は印刷していた本(簡易製本機があるので、慶子が製本までしてくれた)ができあがると、それを持って青葉の運転するグレイスで盛岡に戻り、新幹線で帰京した。(帰りは彪志がN-ONEを運転した)
 

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翌週。青葉は先週と同様に12月2日(金)夜の新幹線で東京に出て彪志の所に行くが、そのまま駐車場に駐めてある彪志のフリードスパイクを勝手に出して、東北道を走った(青葉はこの車のスペアキーをいつも持っている。むろん彪志のアパートの鍵も持っている)。休憩しながら運転し、朝8時に花巻空港に到着する。
 
ここで大阪からやってきた(伊丹7:05-8:25花巻)瞬高・瞬醒を迎える。
瞬高は公演や大規模な法要などで出かけることもあるが、瞬醒が高野山の自分の寺の周囲から離れるのはひじょうに珍しい。本人も
 
「俺、飛行機に乗るのはこれが最後になるかも知れん」
などと言っていたが、瞬高が
 
「お前そんなこと言っていると本当に寿命が尽きるぞ」
と注意している。
 
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「遠くからご足労頂いて、本当にありがとうございます」
と青葉は言った。
 
「面白いものが見られると瞬法から聞いたからやってきたよ」
と瞬高は言っていた。
 
2人を乗せて、新花巻駅に行く。ここで東京から出てきた(東京6:04-9:07新花巻)瞬法を拾う。
 
「何度も足をお運び頂いて申し訳ありません」
「いや、あれは俺ひとりではどうにもならんと思ったから。師匠ならモーニング娘。の歌でも鼻歌で歌いながら、ひょいとやっちゃうんだろうけどね」
 
「まあ師匠は人間じゃなかったから」
「確かに確かに」
 

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「でも師匠ってアイドルマニアだったよな?」
「そうそう。実はおニャン子クラブの歌は派生ユニットまで含めて全部歌えた」
「高井麻巳子のファンだったから秋元康と結婚した時、呪い殺しちゃろかとか言い出して、慌てて停めた」
「師匠が呪いなんか掛けたら、恐ろしい」
 
「ハロープロジェクトにもかなりハマってたな」
「モーニング娘。のメンバー全員の名前と加入順序が言えたし、℃-uteやBerryz工房も好きだった」
「わざわざ山から下りてきて℃-uteのライブに行ったこともあった」
 
「実は男の娘も好きだった」
「そうだった!?」
「シスターボーイと言われた頃の丸山明宏(後の美輪明宏)にも入れ込んでいたし、ピーターのファンクラブに入っていた」
「そういうのは知らなかった」
「SHAZNA(シャズナ)とかMALICE MIZER(マリスミゼル)とかのビジュアル系にも入れ込んでいたし」
 
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「師匠って性的な傾向は?」
「とっくの昔に性別も性的志向も捨てたとは言っていたが」
 
「意外に小さい頃は可愛いお稚児さんだったりして」
「いや、それあり得る気がする」
 

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