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■春封(13)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-08-26
 
和実と淳は慌ただしくメイドカフェ《クレール》の開業に向けて作業を進める傍ら、東北でのボランティア活動も引き続きおこなっていた。
 
いまだに避難生活を続けている人たちに支援物資を届けたり、営業を再開したものの風評被害でなかなか売れない生産者の商品などを理解してくれる人たちの所に無償で運搬する作業などをしていた。
 
そんな中、和実は11月下旬、福島県内で活動をしていて、家具の工房の人と知り合った。やはり福島県産の木材を使っていると聞いただけで、商談が壊れたりするのだという。作っている家具を見せてもらったら、これがエミール・ガレ風の素敵な洋家具であった。
 
和実は思わず
「可愛い!」
と言ってしまう。
 
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材質は福島県産のオニグルミ(鬼胡桃)らしい。念のためガイガーカウンターでチェックさせてもらったが、全く問題は無かった。
 
「お嬢さん、気に入ったら、1〜2個買ってかない?あんたなら半額にするよ」
などと言われる。
 
(自分の妻である)和実が「お嬢さん」と呼ばれて、淳は苦笑していたものの、工房の人は
 
「お母さんの方もどうです、この花瓶。1000円でいいよ」
などと言ったりして、なかなか商売熱心である。
 
確かに淳と和実は、“夫婦”よりは“母娘”に見えるかも知れない。現在和実は25歳で淳は35歳だが、和実はまだ18歳でも通るし、淳はやや年齢が上に見られることが多い。
 
それで結局テーブル10個、椅子40個、花瓶20個、まとめて100万円で買ってしまったのである(定価ベースでは240万円。花瓶はタダにしてくれた)。
 
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完璧な衝動買いである。
 
配送は家具屋さんが「置く場所ができた時点で」してくれることになった。
 

「でもこの家具、何に使うの?」
と帰りに淳は和実に訊いた。
 
「通常レイアウトでは60席を考えているけど、詰め込めばあのスペースには100席くらいは設定できると思うんだよね。だから増設用として使う」
と和実。
 
「なるほどー。あの家具なら今フランスに発注しているものと混ざってもあまり違和感無いよね」
 
「見る人が見たら系統が違うというのが分かるだろうけど、普通の人には違和感は無いだろうね」
 
「そのあたりが私にはよく分からん」
 
「今頼んでいるのはアールヌーボーでもパリ派の系統。シンプルなデザイン。ガレはナンシー派の代表、わりと装飾過多」
 
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「うーん。。。。フランスに頼んでいるのが来てから並べて比べてみよう」
 
「あとは夏にオープンカフェとかしてもいいんじゃないかな。その時にはこのテーブルを使う」
 
「ああ。それはいいかもね」
 
「50万円のテーブルはあまり直射日光にさらしたくないけど10万円のテーブルなら惜しくない」
と和実は言ったが
 
「私は10万円でも惜しい!」
と淳は言っていた。
 
ただし、定価が10万円なのを半額以下にしてもらったので実質4万円くらいで買っている。
 

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11月28日。千里と冬子が、上島雷太・雨宮三森・KL銀行とともに建設を進めていた体育館《深川アリーナ》(正式名91Club体育館)が竣工した。記念式典では冬子や千里もスピーチをする。その後、オープン記念試合を
 
40 minutes+江戸娘 vs ローキューツ+ジョイフルゴールド
 
という混成チーム同士で行った。資金は出していないものの設計段階で色々と助言などもして関わっているレッドインパルスの選手が審判を務めてくれた。
 
この後、この体育館は次のようなスケジュールが入れられている。
 
12.02(金) クロスリーグ 江戸娘vsローキューツ、40 minutes vs Joyful Gold
12.03(土) Wリーグ レッドインパルス vs ブリッツ・レインディア
12.10(土) ローズ+リリーのライブ
 
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11月28日のセレモニーの後、千里は、冬子・上島雷太と3人で料亭で食事をする予定だったのだが、上島さんは何でも都会議員さんに呼び出されてキャンセルということだった。それでちょうどそこに来ていた花園亜津子を代わりに連れていって3人で食事をした(食事代は千里と冬子で割勘にした)。
 
この場で亜津子は自分は来季からアメリカのWNBAに行くと言った。つまり亜津子と千里が同じリーグで戦えるのは、今季が最初で最後ということになる。千里と亜津子は、今年のWリーグプレーオフ、オールジャパン、オールスターで《スリーポイント女王》の座を賭けて戦おうということを誓った。
 

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料亭で食事を終えてお店を出ようとしていたら、セレモニーには来ていなかった雨宮先生から電話が入る。千里は冬子と亜津子の顔を見て、このメンツなら構わないだろうと思い、そのまま電話を取る。
 
「千里、喜べ」
と雨宮先生はいきなり言う。
 
「では失礼します」
と言って千里は切ろうとする。
 
「こら、待て!変な話じゃないから」
「なんですか?いったい」
 
「あんたYS大賞になったから」
「へ?」
「あんたが書いて小野寺イルザが歌った『マジックスクエア』がYS大賞の大賞に決まった」
「ほんとですか!彼女はそろそろ大きな賞を取ってもいいと思っていましたよ」
「授賞式は12月4日、会場は東京赤坂##放送Bスタジオ。小野寺には津森千里デザインのドレスを着せるから、あんたもお揃いのドレス着る?」
 
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「すみません。12月4日は、Wリーグの試合があるので出席できません」
「何〜〜!?」
と雨宮先生は怒ったような声を出す。
 
「YS大賞といえば、RC大賞と並ぶ、J-POP界の最も名誉ある賞だよ。1試合くらい休めないの?」
「そういう訳にはいきません」
 
「そもそも千里って3〜4人居るんでしょ?ひとりくらいこちらに寄こせないの?」
「そんなに自分が何人もいたら楽でしょうけどね」
 
千里が自分でその言葉を発した時、どこかで『ピキッ』という感じの、何かにヒビが入るような感じの音が聞こえた気がした。千里は何だろう?と思った。
 

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雨宮先生はしばらく文句を言っていたものの
「仕方ない。鈴木社長に津森千里のドレスを着せて代理出席させるか」
と言う。
「さすがに鈴木さんは女装しないと思いますが」
 
「それとも千里の恥ずかしい写真を大伸ばししてカメラに映してやろうかしら」
「それやると先生、1年くらい謹慎くらうと思います」
 

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15分ほどにわたる電話を切ると冬子が
「大賞おめでとう」
と言って握手を求めた。
 
「ありがとう」
と言って千里も笑顔で握手に応じる。
 
「でもローズ+リリーの『振袖』が大賞かと思ったのになあ」
と千里は言う。
 
「ローズ+リリーは高い年齢層にはあまり売れてないから。イルザちゃんは30代以上の層にすごく支持されているんだよ」
 
「だったらローズ+リリーはRC大賞の方で受賞するんじゃない?」
「RC大賞は珠妃の『還流』か、あるいはひょっとするとアクアの『エメラルドの太陽』かも知れない」
と冬子は言う。
 
「あの『エメラルドの太陽』だけどさ」
と千里は言った。
「うん?」
 
「あの歌、一度オリジナル歌詞で、何かの機会に歌わせてごらんよ。インパクトが違うから」
 
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「インパクトはあるかも知れないけど、警察が『失礼ですが』と言ってきそうな気がするよ。それにアクアのファンは10代の子が圧倒的だから、その子たちへの影響もよくない」
 
「だったら10代のファンがあまり聴いていないような所で」
と千里は言うが
 
「うーん。。。。アクアのライブはだいたい10代の女の子が4割、10代の男の子が3割だからなあ」
と冬子は言って悩んだ。
 
「ちなみに、千里、どこでそのオリジナル歌詞を見たのか訊いていい?」
と冬子が尋ねる。
「政子があれ何人にも歌詞のコピーを渡して、不満だ不満だと言っているけど」
と千里は言って、そのコピーの現物を見せた。
 
「え〜〜〜!?」
と言って冬子は超絶驚いていた。
 
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12月1日。和実は店舗及び自宅の中間検査が完了したのを受け、自分と淳の住民票を新しい住居に移動させ、あわせて住居と店舗の建物の登記を司法書士さんに依頼した。だいたい1週間程度で登記は完了するはずである。
 
まだ完成していないのに登記するのは変な気もするのだが、登記が終わってないと銀行が抵当権を設定できないので、融資も実行されず、支払いができなくて建物の引き渡しを受けることができない。それで登記は完成前に行っておかなければならないのである。
 
なお希望美の住民票は申請中の特別養子縁組が認可されるまでは動かしにくいので現時点では放置である。
 

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「ところでお店はいつオープンさせるんだっけ?」
とその日胡桃は和実に尋ねた。
 
「最初は7月から9月の線で考えていたんだよ」
「9月〜!?」
「だって銀行からの融資が下りるまでは、テーブルとか椅子、室内調度とかの発注ができないからさ。注文生産になるから、どうしても4〜5ヶ月掛かるんだよね」
 
「じゃ、それまで営業もしないまま、銀行にローンを返済し続ける訳?」
「それが政子さんが、その開店準備資金を貸してくれたんで、早めに発注を掛けることができんだよ。これで完全に3ヶ月早く開けられることになった。それでかなり候補日を絞ったんだよ」
 
と言って、和実はその選定過程を説明した。
 
「まず売りにしているアールヌーボー調の家具・調度や食器とかが来ないと開けるに開けられない。その内食器は意外に早くて、どうも近い内に入荷するみたい。家具調度も2月に入荷するから、その取り付け工事をして2月か3月には開店準備ができる。だから確実な線として3月下旬以降なら開けられるんだよね」
 
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そこで「吉日」を選ぶために、青葉に教えてもらった占星術的・時期選定法を適用することにした。
 
・水星が逆行していない時期(Mercury Prograde)
・朔から望に至る時期(Waxing phase)
・太陽と月が同時に地上にある時間帯(Double Luminary)
・ボイドに掛かっていない(non Voidtime)
 
これを仙台地方の日出・日入、月出・月入で計算してみた(国立天文台のサイトで数値を調べ、選定するプログラムを淳に書いてもらった。淳はこの結構難しいプログラムを3時間で書き上げた)。
 
上気の条件の他にこのようなことも考えた。
 
営業時間はメイドさんの主力が学生さんで、日中はあまり動きにくいことから16:00-22:00をメイン時間帯にしたい(それ以外は少数のスタッフで対応)。それで16時に開けられる日を選択することにする。また、休日にわざわざこんな所まで来る客がそう多いとは思えないので、平日に開けたいと考えた。
 
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すると下記の日付が開店に適した日であることが分かった。
 
3.01(水大安) 3.03(金先勝) 3.06(月仏滅) 3.07(火大安) 3.08(水赤口) 3.09(木先勝) 3.10(金友引)
3.28(火先負) 3.29(水仏滅) 3.30(木大安) 4.03(月先負) 4.04(火仏滅) 4.05(水大安) 4.06(木赤口) 4.07(金先勝)
5.26(金大安) 5.30(火先負) 5.31(水仏滅) 6.01(木大安) 6.02(金赤口) 6.05(月先負) 6.06(火仏滅)
6.26(月先勝) 6.27(火友引) 6.28(水先負) 6.29(木仏滅)
 
3月上旬は家具の納入日程がずれこんだ場合に予定通り開けられない可能性がある。ゴールデンウィーク直前に開けることも考えてたのだが、困ったことにこの時期は水星が逆行(4.10 8:23 - 5.04 1:26)しているので諦める。それで3月下旬あるいは5月下旬からのWaxing Phase(3.28-4.11 / 5.26-6.09)を使う方向で考えることにする。
 
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「やっぱり大安吉日だよ」
と胡桃は言った。
 
「やはり?新トワイライト(胡桃の美容室)は何の日に開けたっけ?」
と和実は訊く。
 
「震災から1年後の2012年3月11日。確か友引だった」
「ああ!友引というのもいいね」
「うん。来てくれたお客さんがお友達を連れて来てくれると嬉しい」
 
「すると、この日付か」
と言って和実は候補を5つに絞った。
 
3.30(木大安) 4.05(水大安) 5.26(金大安) 6.01(木大安) 6.27(火友引)
 
「まあ、迷ったら、早く開けた方がいいんじゃないの?さっきも言ったけど、営業してなくてもローンは毎月返さないといけないんだし」
 
「そうなんだよ!」
 
それで和実は最終的にオープン日を決めた。
 
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「じゃ2017年3月30日木曜日、大安吉日16:00グランドオープン」
 
パチパチパチと胡桃が拍手をした。
 

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