広告:素晴らしき、この人生 (はるな愛)
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■春二(21)

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その日初海は来年春から就職する予定の企業に行き、説明会に出席した。そのあと、〒〒テレビに行く。通用口で入館証を提示するが守衛さんは誰かアイドルっぽい女の子とそのマネージャーさんみたいな人と話しており、初海の入館証を見もしない。でも咎められないし、いいだろうと思って中に入る。そして『霊界探訪』の編集部に行こうとしたのだが・・・
 
「あれ?なんでこんな所に出るの?」
ということで局内で迷い子になってしまったのである。
「おかしいな。こんな狭いテレビ局内で迷うなんて」
 
それで20分ほど悪戦苦闘していた時、人形美術館の遙佳・歩夢姉妹に遭遇する。
 
「こんにちわー」
「こんにちわー」
と挨拶を交わす。
 
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「編集部に行くの?」
「美大のイベントがあったんで見に来たんですよ。そのついでにと思って」
「うん。いつでも来てね」
 
と言いながら歩いていたら『霊界探訪』の編集部にすぐ着いちゃった。
 
あれ〜何私迷ってたんだろう?と初海は思った。
 

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編集部に行くと、妹の双葉が手を振っている。ほかに明恵もいた。
今日はおやつに中田屋の“きんつば”があるので
「豊作豊作」
と言っていただく。ここはいつもおやつが豊かである。
 
食べていたら幸花(一応ディレクター)が入ってきて
 
「ネダは、ね〜が〜」
と言っている。
 
「幽霊屋敷探訪でもやります?」
「それドイルさんが居ないとマジでやばい幽霊屋敷があるから」
「近寄るだけで危険ってとこありますもんねー」
 
「寺社探訪は以前やってるしなあ」
「寺社はたくさんあっても霊界探訪で取り上げたいような寺社はそう無いんだよね」
 
そんなことを言ってたら真珠が入ってきて言う。
 
「南砺市で§§ミュージックの大型時代劇の撮影やるけど取材に行きます?」
「行く行く!」
 
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それで南砺市の水田で撮影している様子を撮影させてもらった。
 
ここで取材許可が出たのは、『霊界探訪』は石川・富山では12月中旬に放送されるので大型時代劇の前宣伝になる。そして他地域では1月に入ってから放送されるので舞台裏を流す感じになってちょうどよい効果になるのである。
 
取材班はロケ現場の他、津幡北体育館内に作られたセットの様子や、別館に作られた台詞録音スタジオの様子なども撮影させてもらった。
 
ちなみに、真珠はこの制作の中でTIFのメンバーの1人として忍城の守備兵の役で甲冑を着けて戦闘シーン、開城シーンに出演している。初海は取材に行ったつもりが「君も参加しよう」と言われて、やはり戦闘・開城シーンに加わった。明恵、双葉、更にはたまたま顔を出しただけの川口遙佳・歩夢姉妹も参加して、結局幸花が撮影した。
 
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「初海ちゃん、凄く上手いね」
「剣道、小学4年生までやってた.中学と高校の体育でもやった」
「おお経験者か」
「お兄ちゃんの防具と竹刀を借りたけど」
「ああ、そのお兄さんもお姉さんになったんだっけ?」
「そうそう」
 
兄貴今頃ちんちんに痛みを感じてないかな?
 
「双葉ちゃんも元男の娘だっけ?」
「ああ、ぼくは手術はまだなんだよ。高校出てからと言われてる」
 
などと双葉はノリで言っている!
 
「あ、そうかもね」
「一応18歳になったら手術可能になったけどね」
「でも玉は取ってるんでしょ?」
「うん。中学に入る前に取ってもらった」
「やはりそうだよね。双葉ちゃん、天然女子かと思っちゃうくらいだもん」
「ああ。だいたいパスしてる」
「そうだよね」
 
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初海はパスしてない?
 

「だから中学も高校も女子制服で通学してるし」
「えらーい」
「うらやましー」
「最近はけっこう学校も柔軟だよね」
 
「でも3人兄弟が3人姉妹になっちゃうって凄いねー」
 
遙佳は「うちの広詩は大丈夫だよな?」などと思っている。
 
「ついでにお父さんまでお母さんになっちゃったというのも聞いたことある」
「ああ、それも何度か聞いたことある。長年性転換したいのを我慢してたのを子供が独立したのを機会に実行するパターンだよね」
 
「アメリカで一家揃って性転換したってのが報道されてた」
「それは凄い」
「息子は娘に、娘は息子に、父が母に、母が父に、変わっちゃった」
「へー」
「それ生殖器を融通できないのかな」
「難しいと思うなあ。拒絶反応起きるよ」
「捨てちゃうの、もったいないねー」
「ペニスはたぶん移植可能」
「あ、それはいけると思う」
「ペニスっていい加減だからくっつきそう」
「それと生殖細胞は融通できるだろうけどね」
「あ、それは絶対やってるよね」
「うん。冷凍精子・冷凍卵子作ってると思う」
 
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千里2Aが9月27日(火)に夕月を出産し、それに付き添った妹の玲羅(30)は翌日28日夕方に来た時と同じBeachJet400XPRで丘珠空港に帰還して行ったが、それと入れ替わりに千里の両親、武矢(61)・津気子(55)がこの飛行機の折返しで熊谷まで飛んできた。千里の“表の”ドライバー・矢鳴さんが迎えに行ってくれて、千里と夕月が入院している病院に連れて行った。
 
津気子としてはもっと早く来たかったのだが、あまり大勢で押しかけても邪魔だろうということで“役に立つ”玲羅に任せたのである。2人とも“何人目かよく分からないが”孫の誕生に、はしゃいでいた。
 
千里と夕月は出産の1週間後の10月4日(火)に退院した。武矢と津気子も朋子とともにこれに同伴した。(貴司が運転するランクル使用)
 
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武矢・津気子滞在中の部屋割り(2022.9.29-10.7)
 
101(和室6) 千里2A・夕月・サハリン
102(和室6) 彪志
103(4.5J) 桃香
201(6J) 貴司・京平
202(8J) 早月・由美・緩菜
203(6J) 朋子
204(6J) 武矢・津気子
205(4.5J) プリマ
2SR(防音室)
 
(部屋割を決めてるのは多分千里3。↑とかかなり政治的)
 

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武矢と津気子は浦和の家でも孫たちとたくさん遊んで楽しそうだった。
 
「どれがうちの孫だっけ?」
と武矢が訊くが
「私もよく分からないから全員孫でいいんじゃないですか?」
と朋子が言い、それでいいことにした。
 
「だいたい複数の家族が共同生活してますしね」
「何組の家族がいるんだっけ?」
「さあ」
 
「まお男の数を数えてみればだいたい分かる」
と千里が言う。
「ああ、それはうまい手だ」
と桃香。
「男の数というと?」
と貴司が訊く。
「貴司に、彪志君に、桃香だね。3家族じゃないかなあ」(*58)
と千里。
「私も男なのか」
「似たようなもん」
 
朋子が笑って頷いている。
 

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(*58) 数え方が難しいが、4家族ではないかと思われる。
 
(細川家)貴司・千里2A・京平・緩菜・夕月
(鈴江家)彪志・(青葉)
(高園家)桃香B・千里1・早月・由美
(村山家)千里3
 
だから桃香を男に数えるとだいたいうまく行きそうだ。
 
戸籍上は“川島家”もあるが、川島由美は遺伝子的には桃香の娘だし戸籍上の母である千里1は桃香Bと事実婚したので高園家(桃香・早月)と合体したと思われる。
 
この他に龍虎たちの部屋が用意されている。元々は龍虎Fが妊娠した場合にマスコミの目に触れることがないように秘密に出産させるための部屋でMの部屋はついでだったが、今年初めの増築時にFの要望によりNの部屋も作った。
 
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また玲央美や冬子がプールで泳ぎに来ることがあるがゲスト扱いでよいと思う。プールに入れる人は地下のトイレやお風呂が使える。
 

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墓場劇団のネット公演は本来10月1日(土)に放送予定だったのだが、ΛΛテレビの大型時代劇の制作に協力したため準備できなかった。そのため今月は生中継をお休みし、代わりに2年前に上演された『セーラー服とニンジンジュース』の録画を放送した。なんとカノン(槇原歌音)のデビュー作である。まだ初々しい歌音の熱演が多くの視聴者に反響を呼んだ。
 
「歌音ちゃん、この時点で既に女の子にしか見えない」
「きっと小さい頃から女の子として育ってたんだろうね」
「この子きっと学校にもスカート穿いて登校してるよ」
とみんな勝手な噂をしていたようである。
 
歌音本人も「凄い。女の子にしか見えない。ぼく熱演してる」と自分の“女らしさ”に呆れていた。
 
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松崎元紀(月城すずみ)は10月3日の朝、女性の服を着て顔は化粧水・乳液の後カラーリップだけ塗って、ドキドキしながら大学に出て行った。
 
教室に入っていき適当な席に座る。何か言われるかなあと思ってドキドキしている。そこに、同級生の皆川さんが入ってくると、元紀の近くに来て声を掛けた。
 
「おはよう、松崎さん」
「おはよう、皆川さん」
「今日の松崎さんの服可愛いよ」
「ありがとう。皆川さんのもそれいい服だね」
「ああ、分かる?つい買っちゃったから取り敢えず大学に着て来てみた」
「実は私も。通りがかりに見かけて可愛い!と思って」
「うんうん。でも久しぶりに大学に出てくるのに、なんか休み癖が付いてて今日はしんどかった」
「私も!」
 
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ということで、元紀は他の女子ともなんかごく普通に会話してしまった。誰も元紀が“女性の服”を着ていることには何も言及しなかった!
 
なおこのクラスは35人の学生の内8人(元紀を入れると9人)が女子で、その内時間ギリギリで入ってきた2人をのぞく6人と元紀は声を交わした。
 

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一時限の授業が終わりトイレに行こうと思ってトイレの前まで行くが、そこでハッとする。
 
私女子トイレに入っていいのかなあ。
 
そこで悩んでいたら皆川さんが来る。
「あれ?トイレ満杯?」
と声を掛ける。
 
「あ、いやその・・・」
 
彼女はトイレのドアを開けて中を覗く。
 
「今列できてないよ。入ろ入ろ」
と言って、彼女は元紀の手を握ると一緒にトイレに入ってくれた。彼女の手が柔らかくて『わあ女の子の手だ』と思った。
 
それで元紀は彼女とおしゃべりしながら順番を待つ。待っている間に何人か入ってくる。でも何も言われない。やがて個室が2つ続けざまに空いたので各々の個室に入った。
 
こうして元紀の“女子学生初日”はごく普通に始まったのであった。
 
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女子学生たちの陰の会話。
 
「元紀ちゃん美しくなってたねー」
「いや、ああなるのは時間の問題だと思ってた」
「手に触った感触が完璧に女の子の手だったよ」
「きっとずっと女性ホルモン飲んでたのね」
 
「喉仏が無くなってた。あれ削ったんだと思う」
「声も女の子らしい声になってた」
「きっと発声の訓練受けたんだと思う」
「睾丸は既に取ってるよね」
「それは間違い無いと思う。“男の子の臭い”がしないもん」
「どちらかというと“女の子っぽい匂い”がする」
「今体質を女性化している最中だと思う」
 
「女子トイレの使い方ちゃんと分かってるみたいだった」
「最初から“男の子ではない”とは思ってたけど“女の子”になっちゃったみたい」
「今度から女子の飲み会に誘ってあげようよ」
 
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(↑君たちお酒は20歳からだよ)
 

元紀が教室で3時間目の授業が始まるのを待っていたら後ろから何かされる。
 
「わっ」
「動かないで。動かないで」
と松元さんの声。
 
「うん」
と答えてしばらくじっとしてる。
 
「イヤリング着けてあげたよ」
「あ、ありがとう!」
 
手鏡で見てみたら、キリンが逆さまにぶらさがっているイヤリングである。
 
「可愛い」
「気に入ったらあげる」
「ありがとう」
 

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