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■春二(12)
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この小田原攻めの中で、歴史的な重要性は低いのだが、エピソード的に面白いのは、忍城(おし・じょう:埼玉県行田市(ぎょうだし))の攻防である。
(「行田市の忍城」って、とっても難読)
当時北条氏は“小田原評定(おだわら・ひょうじょう)”の末に、籠城戦を採ることにし、配下の全武将に小田原城に来て籠城戦に加わるよう指令を出した。しかし例によって秀吉の進軍はスピーディーなので、武将達が小田原城に到着した時は、既に城は秀吉たちの軍勢に取り囲まれていた、というのも多くあった。
「あのぉ、北条の殿様に小田原城に来て籠城に参加するよう命令されたのですが」
「ああ、行っていいよ」
と言って秀吉は彼らを行かせたらしい。殿様の命令に従えないのは武士として恥ずべきことである。わざわざ死にに行くようなものであっても、彼らの武士のメンツを大事にしてあげた秀吉の温情である。
(籠城したいと言った武将:地獄大佐、随伴の武士:三途川守、秀吉:アクア)
さて、武将たちがみんな小田原に行ってしまったので、各支城には、わずかな守備兵や雑兵・女子供ばかりが取り残された。それでこれらの城のほとんどは秀吉・家康・上杉景勝などの連合軍が行くと、みんなあっけなく城を明け渡した。
ところが幾つか、守備兵たちが物凄く頑張った城があった。八王子城などは頑張りすぎて、女子供を含めてほぼ全滅、滝が血で染まったという悲惨な展開になったのだが、唯一事実上籠城側が勝ったのが忍城であった。
忍城でも城主の成田氏長(死神大鎌)は小田原城に行ってしまい、城代の成田泰季(泣原死亡)が城を任されたものの、彼は病気に倒れ亡くなってしまう。それで城代の息子・成田長親(入瀬トラン)が臨時の城代となって指揮を執ることにした。しかし城には兵士が少ない。城代の奥方(黒衣魔女)は城主・氏長の娘である甲斐姫(川泉スピン)と話し合い、女たちも頑張って戦おうと決めた。それで、可愛い服を来て不安そうな顔をして並んでいた妹の巻姫(入瀬ホルン)・敦姫(入瀬コルネ)にも甲冑を着け槍を持って戦うように命じるのである。
さて、秀吉軍で、この城を開城させるよう命令されたのは石田三成(水巻アバサ)である。彼は最初穏やかに開城を呼びかけたが応じないので攻撃をしかける。圧倒的な戦力で打破して秀吉方は城に迫る。ここで臨時城代の成田長親(入瀬トラン)が出て行こうとするのを甲斐姫(川泉スピン)が押しとどめ、妹の巻姫・敦姫(入瀬ホルン・入瀬コルネ)を連れて出陣する。正木利英(夜野棺桶)・福島主水(成仏霊子)らがこれを支援する。すると甲斐姫は相手兵士をバッタバッタと斬り捨てる。秀吉軍は「これはとんでもない強者(つわもの)が出て来た」というので兵を引き、最初の強行突破は失敗に終わるのである。
実は甲斐姫の母も剣の達人で甲斐姫は幼い頃から母に鍛えられていて物凄く強かった(映像は母と幼い甲斐姫が剣の稽古をしているシーン)。(*33)
ここで川泉スピンはインターハイ出場経験もある剣道三段のマジ猛者(もさ)である。そして石田方の兵士を演じているのも氷見南剣道錬成会のメンバーで、この殺陣(たて)が物凄く真に迫っていた。それで監督も
「すごくいい絵が撮れた」
と言って大満足であった。
(*33) 甲斐姫の母を演じるのは千里の親友・木里清香六段。幼い甲斐姫を演じるのは木里六段の弟子で小学4年生の守めぐみ。小学生なのでまだ段位が取れないが実力は既に二段レベル。この映像は姫路で撮影した。
「この城には精鋭が立て籠もっているようです」
という石田三成からの報せで秀吉(アクア)は
「だったらその城は水攻めしろ」
と命じる。(秀吉と三成の間の使者:滝沢小鞠 (*34))
「水攻め?」
秀吉としては支城の動きは停めておいて、小田原開城に持ち込めばいい。支城は殲滅するのが理想であるが、動けなくしておけば充分なのである。でも秀吉は現場の地形を見ずに命令している。
それで三成は近隣の百姓たち(演:H南高校男子バスケット部)に高額報酬を払って動員し、わずか1週間で28kmにも及ぶ長大な堤(つつみ)を作っちゃった。
これが現代でも遺構が残る“石田堤”である。恐らく大量の農民を徴用したのだろうが、それにしても1週間で28kmの工事をするというのは三成は天才だと思う。
(でもとんでもない費用が掛かったはず)
(*34) 滝沢小鞠ことkomatta(♀)は、スカイロードのkomatsu(♂)のそっくりさんなので視聴者の中にはkomatsuがカメオ出演してるかと思った人もあったもよう。
普段はマリ・ベーカリーの店長さん。彼目当てで来店する女性客は多い。男にしか見えないので女子トイレに入ると悲鳴をあげられる。それでもう15年ほど女子トイレは使ってない。若い頃はスカイロードの歌を歌った上で裸になって、ちんちんが無くておっぱいがあるのを見せ「うそぉ!?」とおばちゃんたちに言われる(*35)という温泉芸をしていたが、さすがに裸になる芸は卒業した(警察にもだいぶ搾られたし)。
(*35) おばちゃんたちから「こんなに男らしいのにちんちん切っちゃったなんてもったいない」と言われる。誰も天然女とは思ってくれない。ゲイの男性からデートに誘われホテルに行ってから「嘘!?性転換手術しちゃったの?」と言われたことも。
それで利根川の水を引き入れるが、水が思ったより少なくて全然溜まらない。(囲いが広すぎるのもある気がする)
しかしやがて雨が降って「やっとこれで溜まるか」と石田方が思った夜のこと。
忍城の下忍口責任者・本庄泰展(麻生ルミナ)は部下に命じた。
「おまえら、あの堤を2ヶ所ほど壊してこい」
「なるほどー」
「壊すのはこことここ」
「うまいですね」
ということで、脇本利助(古屋あんころ)と坂本兵衛(古屋あらた)が夜の闇に紛れて堤を壊しちゃった♪
水が溜まりかけた人口湖の堤を破壊したら、当然そこから鉄砲水が発生する。この水にやられて、石田方で272名にも及ぶ死者が出た。ちなみに忍城に籠城しているのは女子供を含めてわずか500名ほどである。
石田三成がこの小さな城の攻略に手をこまねいているので、とうとう浅野長政(ねね様の義兄。演:花園裕紀)・ 真田昌幸(真田幸村の父。演:三田雪代)・直江兼続(上杉景勝の家老。演:花貝パール)が応援にやってきた。この後この城の攻略は浅野長政が中心になって進めることになる。
しかし水攻めの失敗のあとで現地は馬の蹄が立たない泥沼の湿地である。長政は馬が使えないものの、攻撃陣を3つに分けて城を3方向から同時に攻めた。
しかし奥方とともに出陣した甲斐姫は妹2人と一緒に、この攻撃隊をじゃんじゃん斬るわ、弓矢で撃つわして、全部退けてしまう。
かくして城は秀吉方の精鋭の攻撃にも耐えきったのである。
(スピンは青森の高校では弓道大会の助っ人をしたこともあり、弓矢もわりと様になっていた)
結局小田原城のほうで先に、北条氏直(涅槃安楽)が降伏する。それで秀吉方の許可の元、(小田原城に詰めていた)忍城の城主・成田氏長(死神大鎌)からの使者(槇原合掌)が出る。城主からの手紙で「小田原城が開城したのでそちらも開城するように」とあるので、忍城も開城することになる。
それで城門が開かれ、どんな猛者が出てくるかと思って浅野長政らが見ていると、出て来たのは甲冑を着けた甲斐姫・巻姫・敦姫の三姉妹(川泉スピン・入瀬ホルン・入瀬コルネ)を先頭に一部男もいるが多くが、甲冑を着けた女性たち(演:TIFの男の娘♪たち)だったので長政たちは呆気にとられていた。
このTIFのメンバーには剣道の経験がある子が半数ほどもいて、彼らの戦闘シーンもかなり映したので、忍城攻防戦は全体的に殺陣(たて)のレベルが高かった。
(だいたいみんなパターンは同じである。男らしくない→武道でもしろ→男の子と組み合う柔道は嫌(相手も“女の子”と組むのを嫌がる)→剣道をする)
ということでこの忍城の攻防戦には、入瀬ホルンの兄姉、古屋あらたの姉、が出演することになり、実は富山県内で撮影が行われた。富山県で撮影することになったことから、津幡教室→カノンのツテで墓場劇団・死国巡礼のメンバーが出てくれた。また真珠のコネからTIFのメンバー、千里のコネから氷見南剣道錬成会(H南高校剣道部員を含む)やH南高校男子バスケ部のメンバーも出てくれたのである。
撮影は夜のシーンが多いことから、平日の夜に多く撮影している。中高生の子は金曜の夕方に富山空港に連れて来て、日曜の夜に熊谷の郷愁飛行場に送り届けている(*36).
(*36) 水戸在住のアバサは茨城空港から富山空港往復である。ビジネスジェットの1人乗りを恐縮していた。でも機内では寝てた!実は彼の、頭が良さそうに見えるのに結構抜けている雰囲気なのを「石田三成役に最適」と監督が惚れ込んでこのキャティングになった。(アバサは褒められているのかけなされているのか良く分からんと思ったがあまり気にする子ではない)
この忍城のシーンを撮影するのに、実は富山県内の休耕田を1haほど農協と交渉して借りている。水田を使うのは、そこに簡単に水を溜められるからである。それで人工湖のできた場面も撮影できた。うまい具合に、休耕田の中に貯め池のある場所があり、この貯め池のところに忍城(二ノ丸)のホリボテを“一時的な構造物”として建てたのである。
もともと忍城というのは沼の中の複数の島に橋を渡して繋いで構成された城である。今回の撮影でもそのようにして城を構成している。こういう城は橋を外してしまうと物凄く攻めにくくなるので防御に非常に強い城なのである。それで秀吉軍の精鋭をもってしても落とせなかった。
一方今回のドラマで多くの場面はスタジオ撮影である。時間が限られていること、天候を気にせず撮影したいことから津幡北体育館の“内部”にオープンセットを組んで、そこで撮影している。また監督などのスタッフ、三田雪代や桜井真理子などの学校が無い出演者は、火牛ホテルに泊めている。墓場劇団の大半の出演者もこのホテルに泊めた。これは感染対策もあるので、撮影中は基本的に外出禁止である(学校がある合掌は例外)。
このドラマも例によってセリフ先録り・クチパク演技である。最初は英語で朗読劇のようにして録音し、今回はそれの日本語版も作ってから演技をするという方式を採った。こうしないと、演技の後でアフレコすると台詞と演技を合わせられなくなるからだと言うと、墓場劇団の人たちが「なるほどー」と感心していた。アクア主演ドラマは海外でも放送・ビデオ販売されるので、最初から英語台詞を意識して制作しないといけないという話にも感心していた。
「アドリブ入れると合わなくなるわけか」
「いえ。アドリブ入れていいですよ」
「そうなの!?」
「英語台詞を録り直しになりますけど」
「あはは」
「ただし下ネタとか男女差別ネタ・人種差別発言はやめてくださいね。人種差別発言は世界的に叩かれるし、東南アジアとかは宗教的に厳しいので性的な表現は日本では許されても、タイとかベトナムでは認められないことがあるので」
「あぁ」
「『ちょっと女房を貸してやった』とか『どこどこ人がやった仕事はいい加減』とか『息子があまり腕力無いからちんちんチョン切って女の子に変えた』とかは過去にアドリブで言った役者さんがいて、倫理委員会の指示で録り直しになりました」
「『息子を娘に変えた』ってうちの劇団でやったことある」
と座長が言うと
「それでぼくちんちん取られて女の子になっちゃいました」
などとカノンが言って笑いを取っていた。
(笑いながらこの子、ほんとにちんちん取ったのではとみんな思っている。ついでにアリアは全員が普通の女の子と思っている)
カノンは中央の映画やドラマでは無性の聖職者みたいな役柄が続いたが、本人はわりとコメディリリーフが得意なようである。
ただ戦闘シーンなどは日本語の撮影時同時録音になった。これはリアルタイムで録らないと臨場感が出ないからである。このような使い分けも墓場劇団の人たちには受け入れられた。
なおこの撮影に使った休耕田だが、朱雀ファームがこのまま借りて来年度から稲作をすることで農協側と話がまとまった。これらの水田は耕したくても水耕作業する人が居なくて事実上放置状態にあった。相続人がよく分からず所有権が曖昧になっている土地もあるが、農協主導で何とかしてくれるらしい。取り敢えずこの秋は野菜を育てることにして、朱雀ファーム側と農協(JAなんと)とで何を育てるか、話しあうことになった。
しかし南砺市で人(?)を雇うことになったので、“きつねうどん”の南砺店ができることになりそうである。
9月下旬、富山で「小田原攻め」の特に「忍城の攻防戦」が撮影されていた頃、関東のララランド・スタジオでは同時進行で「川中島」のエピソードが制作されていた。この2つは出演者がほとんどダブらないのである。(ダブったのは舞音だけだが、舞音とアクアの連れションは実は関東で撮影した。だから舞音は富山に行っていない)
古屋姉妹・入瀬兄妹が北陸で作業したが、ララランドの方には、広瀬兄(姉?)・月城兄弟(一部姉?)の九州組が参加した。
特に野球選手で堂々とした体格の月城朝陽(2001)には武田信玄を演じてもらった。対する上杉謙信は川泉パフェを当てた。(つまり川泉姉妹が別の場所で同時進行で主役級を演じた)
「今回は男役なんですね」
と彼は言う。
夏の『竹取物語』では終盤の主人公ともいうべき、かぐや姫の侍女・桃を演じてその熱演が一躍注目された。一部では“アクア2世”とまで高評価する向きもあった。
「上杉謙信は女性だけど」
「え!?そうなんですか?」
「上杉謙信が着ていた服が上杉神社に遺されてるけど、どう見ても女性の服にしか見えないから」
「へー」
パフェは、ひょっとして上杉謙信は男の娘だったということは?などと思っている。
「それに上杉謙信は毎月1回生理で休んでいるし、子宮癌で亡くなってる」
「生理があって、子宮癌で死んだのなら女性でしょうね!」
(↑中学生をからかうのはやめよう。これ絶対信じちゃってるよ)
でも“面白いから”このドラマでは上杉謙信は女性だったということにした。
パフェはくつろぐ時や作戦会議ではあでやかな小袖などを着て、髪も垂らし髪にしているが、戦場に赴く時は髪をまとめ、甲冑を着る。そして信仰している毘沙門天の印“毘”の鉢巻きをする。お化粧もしているが、この時代は男性の武将もお化粧する。これは打ち取られて首実検された時にみっともない顔ではいけないというので美しく化粧していたためである。
だから今回のドラマで武将役をする人は戦場の場面では全員お化粧している。信長なども美しく化粧していたはず。
出陣前のお化粧は武士として必須の身だしなみ♪
今回のドラマでは(男の子たちも含めて)全員メイクして出演している。化粧品は、当時使用されていた化粧品を時代考証した上でそれと似た色の化粧品を使用している。
同じ物を使おうとすると当時の化粧品には有害なものが多いので同じ物は調達できても使わない。
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