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■春二(2)
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14時までの予定だったが、男の子衣裳での撮影が終わったのは15時だった。そこから葉月との2ショットを撮る。葉月はほとんど女性衣裳である。アクアは男性衣裳と女性衣裳が半々くらいであった。これが19時頃、日暮れまで続いた。
ライトが欲しいくらいだったが“自然の光の中で撮りたい”ということからライトは使わなかった。増感が必要だろう。
そして24日は朝6時に起こされ、7時少し前から女性衣裳での撮影が始まる。男性衣裳での撮影を朝から昼に掛けてやったので、同じような光線具合になる時間帯に女性衣裳での撮影もしたかったのである。
なお女性衣裳での撮影は主としてM(みちお)が担当する。
アクアたちは、女役をMが、男役をFがやっていることが多い。男役のMと女役のFは雰囲気が違いすぎて同一人物に見えないからである。ふたりの顔の形や体形は完全に一致しているのだが、各々の性別意識があるので雰囲気が女性的・男性的になる。女性意識のFが男装しているのと男性意識のMが女装しているのが、ちょうど似た雰囲気になる。だからたまにFが女装していると桜井さんが「あ、その雰囲気凄くいい!」などと声を掛けたりする。
信濃町ガールズたちは、昨日は青いドレスを着たが今日は白いドレスで撮影されている。今回はあまり物語的な演出はされておらず、青銅の国の住人たちとアクアやガールズたちが遊んでいるような演出が行われた。
12体の彫像が並ぶ大作『お茶会』では、アクアがこのために制作した豪華衣裳を着て、タキシード姿の葉月、そしてミューズのように彫像たちと並ぶ信濃町ガールズがお茶会を楽しんでいるような絵にした。
アクアたちが1人ずつ彫像の間に座ったが、アクア・葉月に8人のガールズで10人なので、高村マネージャーと緑川マネージャーも白いドレスを着て参加した。
神戸市の『阪神淡路大震災復興祈念像』の小型版(高さ1.5m)も置かれている。実はこちらは習作で、これを元に神戸市・三宮公園に置かれた像(高さ7m)が制作された。三宮公園のものは西村氏が4年掛けて作り上げた力作である。ここではアクア(白いドレス)と葉月(タキシード)がミューズたち(白いドレス)とともに祈りを捧げるところが撮影された。
またこの森のシンボルともいえる『希望』は、2人の乙女が肩を組んで各々反対側の手で何かを指さすポーズだが、ここは青いドレスのアクアと白いドレスのアクアが並んでいるショットである。これはもちろん、葉月をボディダブルにして2度撮って合成したもの(ということにしておく)。でもこの写真は写真集の表紙に使われることになる。
24日前半?の女性衣裳での撮影は大幅に予定が伸びて18時まで掛かる。それで桜井さんと現地責任者である花ちゃんが話し合った結果、水着での撮影は翌日25日に行うことにした。明日は雨の予報だが、屋内での撮影なら問題無い。
「え〜〜〜!?」
「明日は丸一日やるし、1人だけではとても体力持たないから2人で適宜交替でね。だから、みちおちゃんは明日までに性転換して女の子になっててね」
と花ちゃんは言った。
「嫌です」
でもF(ふじえ)が拍手をしていた。
コテージに戻ってから
「さあ、潔く女の子になろう」
「いやだ、なりたくない」
と言っていたら千里さんが入ってくる。
「じゃみちおちゃん、女の子にしてあげるね。寝てていいからね。目が覚めた時はもう女の子だから。明日からは“みちよ”ちゃんだね」
と千里が言う。
「ちょっと待ってください」
とMは言ったが、千里は構わず彼にタッチして部屋を出て行った。
25日朝。
FがMの寝床を襲撃する(龍虎家では日常風景:理史には絶対見せられない)。
「おお、きれいに女の子になったね」
Fをベッドから蹴落として(本人間暴力)からMは自分の身体をチェックする。
「嫌だぁ。おっぱいができてる」
と龍虎M(みちお/みちよ?)は困ったように言った。
「お股も完全な女の子の形になったみたいね。これまでが変則的だったからこれでよけいスッキリしたじゃん」
「うーん・・・」
「取り敢えず撮影頑張ろう」
「まあいいや。後で千里さんと交渉しよう」
とMは自分の身体のことは後回しにして今日の撮影の準備態勢である。
今悩んでも仕方ないことは悩まないというのはアクアの良い性格である。
それで2人はあそこの毛が水着からはみ出したりしないように、お互いの毛をきれいに処理してあげた。
普段は竜崎由結か和城理紗にしてもらっているが「今日は女の子同士だから自分たちでやる」と言った。Mが女の子に変えられても2人がいつもと変わらないので由結も理紗も呆れていた。
「普通性別変えられたらもっと動揺しません?」
「ぼく女の子に変えられるの慣れてるもん」
「ああ」
信濃町ガールズたちには露出度の少ないワンピース型水着を着せた。それで彫刻の森に隣接するアクアゾーン(室内温水プール)に行き、ここで水着写真の撮影をする。アクアはほとんどの写真でビキニを着ており、その豊かなバストが確認できる。
「これ布面積が小さすぎません?」
「大丈夫。写してはいけない場所はちゃんと隠れてる」
ここのアクアゾーンは、このようなプール・施設で出来ている(*7).
・25mプール(20レーン。コロナ対策で仕切り板付き。立ち止まり禁止。家族友人以外ではレーンの共用禁止。2時間交代制)
・2つの遊泳プール(コロナ対策で各々8ゾーンに分けられている)
・子供プール(小学2年生までとその保護者のみ)
・フェアリープール
・造波プール
・ウォーキングプール(流れるプール)
・3基のスライダー
・ウォータートレイン
・スパ(水着で利用する。裸になるの禁止)
・身体を洗いたい人のための個室シャワー多数
といったものが作られている。この他に飲食店が10店舗ほど(*8)、水着ショップ、フェニックス・スポーツ、簡易診療所、などが並んでいる。
実はこのアクアゾーンは7月20日から8月21日まで開けていた(1日2000人限定)。交通機関さえ存在すれば便利な場所だし、コロナで安全に遊べる所が少ないし、ここの入場料は安いしで、その1ヶ月間に約6万人が訪れた。つまり33日間ほぼ毎日満員!アクアゾーンのみで3億円もの売上があった。
またアクアゾーンの北側は多数の花が咲く公園をはさんで、体育館・武道場・屋内テニスコート・競泳プールが並んでいる。このスポーツエリアは完全予約制で、4月から開けていたのでこちらもずっと利用者が出ている。
(*7) 実を言うと、西宮駅とのシャトルバスを運行する条件として、何かの遊戯施設を作って欲しいという要求がGPバス側からあり、それで朱雀リゾートとムーランリゾートが共同で、国内3つ目のアクアゾーンを建設した。既に熊谷・津幡とアクアゾーンを開設しているムーランが絡んでいたので行政はすぐ認可した。
(*8) この夏の暫定オープンに参加してくれた飲食店:ムーラン4種類(和洋中軽)、仙台クレール、峠の熊カレー、流氷パーラー(かき氷・アイスクリーム)、ニューポパイバーガー、マリ・ベーカリー、播磨の水(素麺・日本料理)、常州酒家、GPレストラン。つまりほぼ身内!でも全店黒字だった。
各テナントからはぜひ近日中の再オープンをと要望されている。
(若葉は「絶対赤字になると思ってたのに黒字になるなんて」と文句を言っていた。千里も赤字を覚悟していたのが黒字になりびっくりした)
今回の撮影では、おとぎ話のモチーフが多数使われているフェアリープールと七色の水のトンネルを通過するウォータートレインで撮影している。ウォータートレインでは七色の各箇所で列車を停めてもらって撮影している。
フェアリープールでは、白雪姫と小人の家、シンデレラとかぼちゃの馬車、かぐや姫とお月様、ロミオとジュリエットの窓、オズの魔法使いのエメラルド・シティ、不思議の国のアリスのお茶会、ピーターパンと海賊船、お菓子の家、人魚姫と難破船、アリババと盗賊の洞窟、などといったものが作り込まれている。
アクアはここで白雪姫、シンデレラ、かぐや姫、ジュリエットなどに扮して撮影された。多くの場面で相手役は葉月が務めた(多くは男装)。
昨年も着せられた人魚姫の水着が再登場し
「またこれ着るんですか〜?」
と言ったら
「去年のとは色違いだよ」
と言われた。
人魚姫の衣裳を着た時には千里がアクアを抱えて移動してくれた(足が動かせないので)。
なお今日の撮影では山村マネージャーは男性とみなしてプールに立入禁止にしている。
「俺、女なのに・・・。ちんちんも没収されたのに・・・」
と、いじけていた。
信濃町ガールズは25日で帰したが、26日の午前中は彫刻の森で少し“秘密”の撮影をした。そして夕方には神戸空港からHonda-Jet
Redで仙台に移動し、8月27日(土)のネット・サマフェスに出演した。
8月28日は東京でテレビ番組出演を4つこなした!
「これ絶対1人では無理〜」
8月29-30日の2日間は先日の『竹取物語』の完全版(最終的に映画版として公開)の追加撮影を行った。(この2日間のネットライブはセシルと舞音)
・石作皇子が初夜を前にして、雪兎に誘われて満月を見たら女に変わってしまうシーン
これは闇夜の翌日で満月のはずがない
→雪兎が“金の銅鑼珠”を渡しそれを食べたら女の子になる
・かぐや姫の日常シーンを追加(*9)
桃(川泉パフェ)と囲碁・双六をするシーン
姫が女房たちと合奏する場面
御飯を食べながら歓談するシーン
・大量の反物を乗せた大八車を福(山村勾美)が引いているシーン。
・かぐや姫と石上麻呂の月世界でのデートシーン
白雪姫の鏡みたいな大きな鏡が映っていて、桃と子供たちが遊んでいるところが見える。
・“NGシーン”をわざわざ撮影する。
−石作皇子が牛車に乗ってかぐや姫宅に向かうシーン。撮影していたら美高助監督が出て来て「奈良時代に牛車は無いんだけど」と言い一同「え〜!?」
−石作皇子が花嫁衣裳の裾を踏んで転ぶシーン
−車持皇子が玉の枝を落として玉の枝が転がっていくシーン
−車持皇子が船縁からうっかり転落するシーン
これに関しては没にしていた“鹿車”シーンが“NG場面”として復活した。実は8月に以下のようなシーンを撮影し(ようとし)ていた。それは桃が“鹿車”に乗って富士に向かうシーンである。ここで鹿車とは一輪車のことではなく本当に鹿が輓く車!
牛車が生まれる前だし、馬車は無かったしというので、鳥山プロデューサーの案で作られて撮影もしてみたものの、鹿がなかなか言うことを聞かず、撮影はうまく行かなかった。これやはり無理があるし、乗馬で充分、という複数のスタッフの意見からボツとなっものである。だいたいゴムが無い時代の車というのは極めて乗り心地の悪いものである。長距離の旅は歩くより辛い。
「サンタクロースになった気分で面白かったけど」
と鹿車に実際に乗った夕波もえこは言っていた。
語り手の元原マミにはこんな台詞も用意されていた(映画版にも収録してない)。
語り手「またこの鹿に牽かせる車は、女性や子供たちを連れて旅をするために桃と石上菘鳥が考えたものですが、やはり鹿は制御しづらく、平安時代になるとおとなしい牛に牽かせる“牛車”(ぎっしゃ)が生まれました。またこの鹿に牽かせる車のことを最初は“しかくるま(鹿車)”と言っていたのが、後に“しんかくるま”→“さんかくるま”→“さんたくるま”と変化して“さんたくるす”→“さんたくろーす”という言葉が生まれたそうです」
元原マミも
「これさすがに無理がありましたよー」
と言っていた。
(*9) 入瀬コルネの役は妹ホルンの親友・麻生ルミナが代役して後で差し替えた。ルミナは「顔も映らないのにきれいな服着て美味しい物食べるって超お得」と言って代役を喜んで引き受けてくれた。ルミナは本編では“看板係”を務めた。
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