広告:放浪息子(12)-ビームコミックス-志村貴子
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■春二(7)

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ところで吉田邦生は、この春に投資課に配属変えになったのだが、最初は投資のことが全然分からなかった。セミナーに出たりしていたが、千里さんが
「投資のゲームがあるからやってみない?」
と言ってゲームのURLを渡してid/passwordを教えてくれた。それで彼はそれをやってみることにした。
 
ゲームの初期状態では口座に1000万円があり、これを株式・FX・仮想通貨などに投資して増やして行くというゲームである。資金がゼロになったらゲーム・オーバー。実際には10万円未満になったら投資先がほぼ無くなり、ゲームの続けようが無くなると思った。
 
始めてすぐの頃にFXでロスカットされて10万円(レバレッジに25倍も掛けたので250万円の投資)を失う目に遭う。この時邦生はロスカットという仕組みを理解していなかった。レバレッジが大きすぎたことから相場の僅かな変動でロスカットが作動してしまったのである。
 
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「うっそー!?相場はすぐ戻したのに」
と言ってもムダ。僅かでも一瞬でも限度額を越えたらロスカットは実行される。
 
「でも10万円で良かったぁ」
と邦生は思った。
 
「それとゲームで良かったよ」
とも思う。
 
リアルで10万円失ったら真珠から叱られるよ。
 

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しかし邦生はそういう痛い目にも遭いながらも少しずつ主として株式で資産を増やして行った。
 
「FXはやはり専業の人向きだな。常時相場に貼り付いていられない一般人は株式がいちばん安全な気がする」
と邦生は思いながらも、ゲームの目的は様々な投資を知ることだからというので、FXや仮想通貨も少額ながら継続した。6月には仮想通貨で1000ドル(約13.5万円)分の仮想通貨が40倍の約4万ドル(540万円)になるという思わぬ出来事があり一瞬
「1万ドル(135万円)買ってたら40万ドル(5400万円)になってたのに」
と思ったが
「まぐれまぐれ」
と考えて、すぐドルのリアル通貨に戻し、それ以上高額の投資はしないように自分を戒めた。
 
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実際相場はその後50倍くらいまで上がったものの急落してほぼ無価値になった。あそこでやめといて良かったぁと思った。
 
(投資の格言「まだはもうなり、もうはまだなり」欲の強い人は相場に向かない)
 
そんな感じで1000万円から始めた投資“ゲーム”の口座残高は8月時点で5000万円と5倍になっていた(間違い無くビギナーズラック)。
 

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真珠は何通か、未開封の封筒が散らばっていることに気付いた。
 
「くーにん、これ何?」
「ああ。投資ゲームの配当金」
「配当金?」
「4月から千里さんに勧められて投資の練習で投資ゲームしてるから、それの配当金領収証が送られてきてるんだよ。ゲームなのにこんなのまでわざわざ送ってくるって凄い凝ってるよな」
 
「・・・・ねぇ、これ郵便局で交換してと書いてあるけど、ほんとに郵便局に持って行ったら現金と交換できたりしない?」
 
「まさか。何千円とかじゃなくてゲーム内のお金で何千ゴールドとかになるのでは」
「てもこれ凄くリアルっぽいよ」
「え〜〜!?」
 
邦生はてっきりゲームの中のものと思っていたので、まじめに見ていなかったのだが、真珠に言われてよくよく見てみると本当に本物っぽい。
 
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邦生は千里さんに電話してみた。
 
「何だか凄くリアルっぽい配当金領収証が送られてきているんですが、これってゲームのアイテムですよね?」
 
「リアルの配当金領収証だと思うけど」
「なんでゲームをやっててリアルの配当金が送られてくるんです?」
「投資もリアルだから」
「え〜〜!?ゲームじゃなかったんですか!?」
 
「だってゲームと思ってたほうが気楽に投資できるでしょ」
「確かにゲームと思ってたから大胆な投資してました」
「お金はいくらか増えた?」
「今5200万円くらいあります」
「随分増やしたね!」
と千里さんが感心していたが
 
「ビギナーズ・ラックだよ」
と隣で真珠が言う。
 
「これどうましょうか?id/passをそちらにお返しすればいいですか?」
「そのまま投資の練習を続ければいいと思う」
 
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邦生は少し考えた。
 
「確かにそうかも知れません。最新の投資の経験をしておいたほうがお客さんにいいアドバイスができる気がします」
「じゃそのままで」
「せめて最初の1000万円はお返ししますよ」
「5000万円になったのなら1000万円返して残り4000万円でも充分投資続けられるね」
「あと儲けの半分も」
「それは受け取る名目が無い。最初の1000万円は私がくにちゃんに貸したお金ということでそれを返してもらうという名目で受け取れる。でも儲けは受け取ると贈与税を取られてしまう」
「あぁ・・・利子ということでは?」
「そんなの無しでいいよ。くにちゃんの力でそこまで増やしたんだから持っておきなよ」
「そうですね」
「あと忘れてはいけないのはこの儲けには約半額の税金がかかるということ」
「今言われるまで忘れてました!」
「だから私に1000万円返して残り4000万円から半分税金で取られることを考えて無利子普通預金か何かに移動して,残り2000万円のうちの半分は“投資しない資金”にして。残り1000万円で更にゲーム続ければいいよ」
「それがいい気がします.卵はひとつのカゴに盛るなですね」
「そうそう」
 
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それで邦生は年明けくらいまで掛けて、所有株式を売れるタイミングで少しずつ売却して現金に換え、まずは千里さんに1000万円返した上で税金の分を確保。そして1000万円は安全度の高い国債に移し、残りの約1800万円(売るタイミングが良くて増えた)で翌年以降の投資を続けたのである。しかし翌年は1800万円が2600万円にしかならなかった!
 
(それでもかなり優秀な投資成績だと思う。実際問題として邦生は“経験のため”低位銘柄を広く買っているので、突然値上がりした時大きな利益が出やすい)
 
ちなみに配当は全部真珠がもらった!!更に株主優待もたくさんもらった!もっとも宝石購入の優待券みたいなのは使い道が無いのでゴミ箱に捨てていた。
 
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杜屋鈴世(もりや・りんぜ/すずよ:水巻アバサ)は『竹取物語』の撮影が終わった後も、しばらくは東京に滞在して、§§ミュージックの様々な制作に参加したり、ライブに出演したりした。8月31日に母に迎えに来てもらい水戸の実家に戻った。
 
東京に居た間は妹の幸代(水巻イビザ)にかなり唆されて100%女装生活を送っていた。彼は元々女装好きというより、物心付いた頃から女の子の服を普通に着ていた。彼の兄弟はこうなっている。
 
杜屋月夜(つきよ♀大1)
杜屋鈴世(りんぜ△高1 水巻アバサ)
杜屋幸代(さちよ♀中2 水巻イビザ)
杜屋和誉(かずほ♂小6)
 
洋服の“お下がり”のサイクルが、月夜→鈴世→幸代となっていて、鈴世は元々“女の子サイクル”に組み込まれていたのである。だから実は彼は女物の服を着てても女装しているという意識がほとんど無かった。それで鈴世は姉からもらった、高校の女子制服も所持していた。
 
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9月3-4日(土日)は文化祭があり、それに友人のガールズバンドに、直前に怪我したメンバーの代理で出た。ガールズバンドなので女子制服(ブラウスにスカート、胸元にはリボン)を着た。彼は友人たちからは“半分女の子”とみなされているので彼が出ていても“ガールズバンド”からは逸脱してないとみなされた。
 
これの練習のため、9月1-2日も女子制服を着た。
 

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文化祭の代休で5-6日は学校がお休みである。そして9月7日から学校は再開された。彼は普通に?ワイシャツとズボンで学校に出て来た。
 
「すずちゃん、どうしてズボンなの?」
「え?ズボンじゃいけない?」
「女子はスカートだよ」
「それに上もそれワイシャツじゃん。ちゃんとブラウス着なきゃ」
「ぼく男子なんだけど」
「でも女子になったんでしょ?」
「なってないよー」
「いや、すずちゃんは東京で性転換手術を受けてきたという確かな噂がある」
 
“確かな噂”って何〜〜?噂って不確かなものなのでは?
 
「そもそも胸があるよね」
と言って胸に触っている。
 
「このバストはBカップはある」
「それにブラジャー着けてるし」
「ブラジャーなんて昔から着けてたじゃん」
 
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「とにかく女子制服に着替えなよ」
「やだ」
「着たくないの?」
「着たいけど、着てたら自分に歯止めが効かなくなるから着ない」
「歯止めなんて利かせなくてもいいのに」
 

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まあそれでも友人たちは彼が男子制服を着るのを一応容認してくれたように見えた。
 
この日の1時間目には身体測定が行われた。最初に男子が行く。鈴世は自分も立って保健室に行こうとした。ところが男子の保健委員から言われる。
「杜屋(もりや)さん、先に男子の測定するからまだ待ってて」
「えっと。ぼく男子だけど」
「そういう建前で中身は女子なんでしょ?杜屋さんの書類は女子の方に入れておいたから」
「え〜〜!?」
 
女子の保健委員が言う。
「大丈夫だよ。みんなすずちゃんが本当は女子だというの知ってるから」
「でもぼく男子制服着てるのに」
「だから女子制服着てくれば良かったのに」
 

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鈴世は「まあいいか」と思った。東京でテレビ局に出る時とかは女性用楽屋を使ってたし。女子の下着姿見て変な気持ちになることもないし。
 
それで女子たちと一緒に身体測定に行く。男子制服着て女子と一緒に保健室に入るのは少し気が咎めたが、服を脱いでしまうと下は女子下着である。すると他の女子たちも当然女子下着なので、かえって目立たなくなってしまった。
 
「これで男子と一緒には測定できないなあ」
と女子たちから言われる。実は身体測定のこと忘れてて女子下着で出て来てしまったのである。
 
「少なくとも下着姿を見る限りは女子にしか見えん」
「解剖検査してみたい」
「お代官様、それはご勘弁を」
「まあいいや。体育の時の着替えも女子更衣室に来なよ」
「いいのかなあ」
「少なくともこの身体ではもう男子更衣室は使えないよね」
「せっかく性転換手術まで受けたのに勇気無いね」
「そんな手術受けてないんだけど」
 
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「だいたい、すずちゃんって雰囲気が女子だよね」
「ああ、それは昔から意識してる」
「手とか触った感触も女の子の手だし」
「そうかなあ。男っぽいと思うけど」
 
などといったら10人くらいの女子と握手することになる。
 
「少なくとも男の子の手ではない」
「この程度の感じの女子はわりと居る」
「うーん・・・」
 
「性格的にも優しいし、可愛いものが好きだし」
「それは昔からだよ」
「普段はスカート穿いてるんでしょ?」
「ぼく制服以外のズボン持ってない」
「ああ」
「だったらスカートの制服着て来なよ」
「やだ」
「今日はスカート持って来てないの?」
「持っては来てるけど穿かない」
「持って来てるなら穿けばいいのに」
「やだ」
 
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このあたりが真和とかなら乗せられて穿いてしまうのだが、鈴世は女子の服を着慣れているがゆえに冷静である。
 
しかし彼は初めて女子たちと一緒に身体測定されたのであった。
 

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