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■春二(3)
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青葉は9月2日に結婚式をあげ、それを機に桃香は10ヶ月に及ぶ伏木滞在を終えて浦和に帰還したが、荷物はそのままだった。
「すまない。中高生の教科書・参考書・問題解法集と辞書だけでもこちらに送ってくれない?」
と母に電話がある。
それで朋子が荷物をまとめようとしたのだが・・・・
全然分からない!!
真珠に声を掛けて見てもらう。
「かなりの量ですね」
「中学生とか高校生の通信教育の採点をやってるのよね」
それで明恵も入れて3人で整理していたが、元々桃香の部屋が酷くちらかっているので、布団やゴミ?の大群を片付けながらテキストを捜索するので大変である。
「もうキリが無い!」
と言っていたら、千里が若い男性2人を伴ってやってきた。
「部屋の中身丸ごと持って行けばいいよ」
「はあ」
「コンテナ持って来たから、全部放り込んじゃおう」
「ああ、それがいいですね」
それで千里、助手のコリン、2人の男性、更に明恵と真珠の6人で桃香の部屋の荷物をまるごと、庭に駐めたトラックに積んだ10Fコンテナの中に放り込んだ。
(10Fコンテナは国際規格で4畳半程度のサイズ。JRコンテナより少し小さい)
「じゃ浦和までよろしく」
「分かりました」
と言ってコリン及び2人の男性が乗ったトラックは出発して行った。
(キツネは運転免許を持ってないのでコリンが運転する)
「また伏木に来る時はあのコンテナごと運ばれてきたりして」
「ああ桃香はそれでもいいかもね」
「桃香さんの住所がコンテナだな」
青葉は2022年9月17日(土), 18日(日), 19日(祝) と伏木の自宅でミュージシャン・アルバムの取材をした。
それが終わったところで、青葉の母・朋子は9月20日(火)、真珠に留守番をお願いして、千里のHonda-Jet
blackで、能登空港から熊谷の郷愁飛行場に飛んだ。この飛行機の操縦席に座っていたのは、千里の専属パイロット、エリサと、千里である。“この”千里はライセンスこそ持っていないがHonda-Jet, Gulfstream G450/G650, Cessna Citation Jet CJシリーズ, Hawker400XPR, などの代表的な小型機の操縦ができるらしい。(で、どの千里?)
朋子が飛行場の喫茶室で少し待っていると、Beach Jet 400 (*10) が飛来する。この飛行機に札幌の丘珠空港から千里の実妹の長内玲羅(札幌市在住)が千里自身と一緒に乗ってきた。
それで朋子は玲羅・千里と合流し、千里の運転する青いロッキーで浦和の千里の家に向かった。
(*10) 三菱MU-300 (ほんの数機しか売れなかった)の製造権がビーチクラフトに売却され、Beach Jet 400として大量に売れた。この飛行機はその後、販売チャンネルの整理により Hawker400 として販売されている。
今回使用した機体は千里4の使用機で、丸山アイが九州と関東の往復のために所有し郷愁飛行場に駐めていることの多いものと同型機。
オリジナルの400(MU-300)では乗員2名・乗客4名であったが、その後ビーチにより、改訂版の400A(1990), 400XP(2003)が作られており、400XPでは乗員が最大9名になっている。ただ400は元々の設計が古いため若いパイロットにはかなり扱いにくいものだったし、エンジンも非力だった(実用上は乗客は3人しか乗せられないと言われた:6人乗せると航続距離が2000km程度しか出ない)。
2013年からこれを最新鋭のシステム・エンジンに載せ替える改造が行われるようになり、この改造版を400XPRという。ウィングレットが取り付けられているのが特徴で外見で見分けが付く。
千里の使用機は400XPで買ってXPRに改造したものである。丸山アイの所有機は最初からXPRの状態になっているものを買ったものである。
それで浦和の家に到着する。千里は2人を降ろすと車を立体駐車場に格納した。この駐車場には8台の車を収納できるが、7台分使用中である。
普段収納している車
ロッキー(主として1番が使う)
オーリス(主として2番が使うが、2番は現在運転禁止中)
アテンザ(主として3番が使う)
フリードスパイク(彪志の車)
ランドクルーザープラド(貴司の車)
セレナ(家族移動用)
アクアのアクア(子供たちの千葉との往復用)
千里が運転する車から玲羅と朋子が降りて玄関のところまで行くと、
「お疲れお疲れ」
と言って桃香が出て来て2人を中に入れた。
「桃香、千里ちゃんの様子はどう?」
「暇だ暇だと言ってる」
「普段が仕事のしすぎだから、こんな時くらい少しは休めばいいのに」
というわけで、9月26日が予定日の千里の出産をサポートするために、朋子と玲羅が出て来たのである。
玲羅と朋子が、千里の入っている1階の和室に入ると千里と夏川早羽子(サハリン)が
「お疲れー」
「お疲れ様です」
と言っている。2人は囲碁をしていた。
「運動したらいけないと言われて暇で暇でたまらん」
などと千里は言っている。
「それゃ臨月でマラソンしたら赤ちゃんがびっくりするよ」
と玲羅は言う。
「サハリン、久しぶりだね」
と玲羅は続けて言った。
「はい、だいぶごぶさたしておりました」
とサハリンも笑顔で答える。
「朋子母さんは初めてだよね。こちら私の助手で夏川早羽子。ニックネームは“さはこ”から“サハリン”」
「へー。初めまして、桃香の母の朋子です」
「サハリンは千里姉のドライバーを昔からしてたんですよ」
と玲羅が説明する。
「ああ、そうなんだ」
「今回は本来の業務外なんだけど、絶対的に信頼できる人をそばに置いておきたかったから、この春から頼んでいる」
と千里は言う。
「桃香は危ないしね!」
1月に千里の妊娠が判明した時、誰をそばに置いておくか、千里3,4,5,6の4人で話し合った。その結果、サハリンが常時付いていることにしたのである。また調理人として、前橋虹彩(アイリス)の友人で、ちょうどフリーだった横井一子(プリマ)を雇うことにした。
「臨時雇いがいい?眷属になるのがいい?」
「眷属にしてくださーい」
「じゃそういうことで」
といって眷属にしたが、複数の千里が出入りするりのを見て
「千里さんって三つ子か何かですか?」
と訊く。
「自分でもよく分からないけど、きっと千里は20人くらい居る」
「あのぉ、千里さんって人間なのでしょうか?」
「あまり自信無ーい」
千里研究家?の虚空にも千里が何人居るのかはよく分からないようである。「5人いるのは確実。多分6人以上」と彼は言っているが、千里たちはお互いに“別の千里”のふりをするので、把握出来なくなる。
「6人ということでもいいよー。私たちは女子十二楽坊みたいなもの」
「女子十二楽坊?」
「女子十二楽坊って“ステージには”12人出ている」
「なるほどねー。で実際は何人?」
「分かんなーい」
と本人も言っていた。
千里3,4,5,6の会議で、フランスのLFBは千里2B, アメリカのWBDAは千里1が参戦することも決めた。またサハリンがしていた業務には左倉ハルを徴用している。
(2Bは『2Aが体調悪くて次の試合出られないから代わりに出て』と言われて出ただけだったのに、その後『2Aは妊娠してた。今年いっぱい頼む』と言われた)
左倉ハルは現在大学4年生で本人が忙しい時は飼いネコ?のアキが代行する。アキは佐藤玲央美の影武者をしているのだが、LFB 2021-2022シーズンが5月で終了したので6月以降、こちらの仕事に入っている。LFB 2022-2023シーズンは10月下旬から始まるので10月中旬からまたフランスに行く予定である。
「夏の間は休んでいられると思ったのに」
と本人(本猫)は文句を言っていた。
しかしネコが運転していいのか?
11月 青葉の新居完成で桃香と子供たちが伏木へ。京平はすぐ帰る。
1.08 早月も幼稚園入園準備で浦和に戻る。
1.26 2Aの妊娠発覚。LFBは2Bが代理。
2月 サハリンが2Aに付いておくことに。プリマを雇う。
5-6月 2Bがマルセイユとグラナダで水泳日本代表をサポート
5.06 千里1が渡米
7.11 青葉の妊娠発覚
7.17 青葉が分裂♪
8.08 千里1が帰国
9.02 青葉の結婚式(越谷)
9.03 桃香・由美・緩菜が浦和に帰宅
9.20 朋子・玲羅が浦和を訪れる
さて、桃香が伏木に戻っている間に、浦和の家は増築をしていた。
この家には最大14人?が住み、更に来客も多いというのに、トイレ3個はまだいいとしてお風呂がひとつしかないのは、大きな問題だった。更に客間というものが無いのも問題点。
それで昨年桃香が伏木に行った後、千里たちで話し合い、大規模な増築をすることにしたのである。
(before)
(after)
家の南側に 4H(2間)軒(のき)を延ばして、お風呂を3個にし、部屋も4つ増やした。工事は1月まで掛けて設計して建築確認を取り、2月に入ってから始め一週間で完成した(播磨工務店はいつもこんなもの)。それで妊娠した2Aは101の部屋に入れることにしたのである。
2022.2 の部屋割
101(和室6) 千里2A・早月・サハリン
102(和室6) 彪志
103(4.5J)
201(6J) 貴司・京平
202(8J)
203(6J)
204(6J)
205(4.5J) プリマ
2SR(防音室)
2020.11 この家を買う(4LDK2S 3WC1Bath)
2020.11 地下室を作る(1S->BS)
2020.12 初代の立体駐車場(6台)を作る
2021.01 立体駐車場を交換(8台)
2021.01 プールの作成
2022.02 増築(8LDK2S 5WC 3Bath)
部屋割は桃香たちが戻って来た時点でこのように変更した。
2022.9.3 の部屋割
101(和室6) 千里2A・サハリン
102(和室6) 彪志
103(4.5J) 桃香
201(6J) 貴司・京平
202(8J) 早月・由美・緩菜
203(6J)
204(6J)
205(4.5J) プリマ
2SR(防音室)
そして玲羅と朋子が来たところでこうした。
2022.9.20 の部屋割
101(和室6) 千里2A・サハリン
102(和室6) 玲羅・朋子
103(4.5J) 桃香
201(6J) 貴司・京平
202(8J) 早月・由美・緩菜
203(6J)
204(6J) 彪志
205(4.5J) プリマ
2SR(防音室)
玲羅と朋子は千里のそばに交代で付いていることにした。だいたい昼間が朋子、夜間が玲羅の担当である。それでサハリンは夜間は寝ていることにした。つまりサハリンか玲羅はいつでも運転できる状態にしておく。
なお千里3・千里1は地下の自分の部屋(B03,B01)に住んでいる。ここは京平・緩菜・青葉くらいしか入ってくることはできない(*11)。千里3は「私に用事がある時は電話で呼んでね」と玲羅に言っていた。
(全体図)
(*11) 地下のラウンジや千里・龍虎の隠れ部屋は、基本的には女子専用だが、京平はスカートを穿いていれば入域OKにしている。京平は彪志の影響でだいぶ男らしくなってはきたが、まだ所有している服は、ズボンよりスカートの方が多い。パンティはほとんど女児用である。これはプリキュアのボクサーが無いから!らしい。
彼は学校で女児用ショーツを穿いているのを友人たちから見られても平気だし、オカマとかからかわれても全然平気である。彼は体育は大得意で飛び箱は6段飛べるし、逆上がりが出来て50m走もクラスで一番なので、わりとみんなから尊敬されている。
でも運動会ではスカート穿いてチアをしてた!実はダンスもいちばんうまいので女の子たちからうまく乗せられた。
朋子は102の部屋の窓を開けて外を見た。
「あのコンテナ、そこに置いたんだ!」
「コンテナ持って帰りたいから早く荷物を整理してくれと千里からは言われているがなかなか片付かない」
と桃香は言っている。
部屋の前に小型コンテナが置かれて、桃香の部屋(103)との間にボーディング・ブリッジ?まで掛けられている。
↓再掲
「いっそあの中で仕事しようかと思ったがコンテナの中は暑いし、スマホがつながらないから無理だった」
「早く返さないとコンテナのレンタル代もかかるのでは?」
「1日200円+消費税取ると言われた」
「それは早く片付けなければ」
この家のご飯は、基本的にはプリマが作るが、千里1,2A,3 も結構手伝う。特にパンを焼くのはだいたい千里3である。
朝焼きたてパンを食べるには深夜2時頃ホームベーカリーに材料を入れてスタートさせる必要がある。これはプリマの業務時間外である。3の合宿中は千里1が、1の渡米中は5番か6番がホーム・ベーカリーをセットしていた(星子やコリンが代行することもある)。材料の強力粉はH新鮮産業から買った帯広産の非F1小麦粉。
サハリンは常に千里のそばにいることにしているので、調理はしない。買物はだいたい、すーちゃん・てんちゃんがしてくれている。
朋子たちが来てからは、朋子も少し手伝った。
「作る量が凄くて大変でしょう」
と朋子はプリマに言う。
「ご飯を作る仕事頼むと言われた時は、普通の家政婦程度の仕事かなと思ったんですけどね」
とプリマは言う。
「これは給食のおばちゃんの仕事でした」
「ですよね。人数が凄いもん」
「それに子供たちの好き嫌いが」
「ああ、最近の子供は嫌なら食べるなと言うと、おやつ食べるもんと言うし」
「みんながマリー・アントワネットになってる」
「ひもじさを知りませんからね」
「困ったもんですよね。みんな食べてくれるのは、カレー、スパゲティ、ハンバーグ、唐揚げ、やきそばといったところで」
「ワンパターンになりがちですよねー」
「一応千里さんから、だいたいのメニューは渡されているんであまり考えなくてもいいんですが」
「なるほど」
「子供たちは炊き込み御飯でキノコやニンジンを選り出そうとして千里さんに叱られたりする」
「ああ」
「ついでに桃香さんまでピーマン選り出そうとして叱られる」
「子供たちに示しが付かないもんね」
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