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■神様のお陰・神育て(17)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-08-25
 
まどかの家を出た後、命(めい)と理彩は神社にお参りしてから、この3月に命(めい)が植えた桃の木を見に行った。
 
「この場所が凄く理想的な感じだったから、ここの畑を買ったんだよ」
 
命(めい)が買ったのは、廃屋に隣接した畑で、畑自体も長年放置されていたものである。広さは30坪ほどで、半ば家庭菜園に近い状態で耕されていたようであった。
 
「去年の秋から何度も来ては土の改良とか周辺の病害虫駆除とか、水はけの調整とかしてたんだよね」
「頑張るね」
「星が戻って来てなかったら、ここもそのまま放置してたな」
「・・・・・いつ頃、実がなるの?」
「桃栗3年というから3年後かな」
「そんなにかかるんだ!」
 
「嘘嘘。3年ってのは種から育てた場合だから。苗木からなら来年には結構実ると思うし、今年も少しは実ると思うよ」
「よし、秋には桃を食べに来よう」
 
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「ふふ」
「でもお世話大変そう」
「うん。果実はどうしても虫が付きやすいからね。農薬は遠慮無く使うつもり。どういう農薬をいつ使えばいいかは農協の人に聞いて勉強中。既に予防薬は散布してる」
 
「わあ。でもなんで突然桃なんて育て始めたの? しかもわざわざ土地まで買って。うちの庭に植えても良かったろうに」
「実のなる木は屋敷の中に植えちゃいけないんだよ」
「ああ、それは聞いたことある」
 
「でも4本も?」
「桃はね、最低2本以上で育てないと実が付かない」
「へー」
「それと、桃といっても品種によって結構差があるから、幾つかの種類を経験しておきたいと思ってね」
「ふーん」
 
「これ、私もお世話しなくちゃいけない?」
「ううん。僕が頑張るよ。うちの母ちゃんには週に2〜3回でいいから、様子を見に来てとは言ってあるけどね」
 
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「子供育てるのも、桃育てるのも大変そうだ」
 

理彩はあたりを見回すと、桃の木の下で命(めい)に抱きつきキスをした。
 
「今夜Hしようね」と理彩。
「いつでもしてるじゃん」
「事前に言っとかないとさ、命(めい)のおちんちん無いんだもん」
「いつでもあるよ」
 
「それ絶対嘘だ」
「それにおちんちんは別にHには使わないし」
「まあ2cmのおちんちんはクリちゃんと同じ使い方しかできないからね」
「えへへ。自分では結構クリちゃんだと思ってる」
「うん。それでいいよ」
と理彩は笑顔で言った。
 
「命(めい)、じゃんけんしよ」
「うん。じゃんけんポイ。。。。負けた!」
「よし。今日も私が入れる係ね」
「あはは。もう4日連続」
 
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この時期ふたりが小道具に使っていたのが、命(めい)の「生前のおちんちん」
から型取りしたディルドーをペニバンに装着したものである。じゃんけんに勝った側がそれを付けて負けた側に入れることにしていたが、このじゃんけんでは理彩の勝率が高かった。理彩はいつも楽しそうに命(めい)に入れていた。
 
「私たち、命(めい)が性転換しちゃっても、この方式で楽しめるね」
と理彩は言っていた。
 

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「でもまどかさんがRX-7からエコバッグ持って降りてきたのにはびっくりしたなあ。マジであの車でお買物に行ってるのね」
と自宅に戻りながら理彩が言う。
 
「あの人も何十年と人間みたいな暮らし方してきてるから、毎日三度の食事をするのとか、習慣になっちゃってるみたいね」
 
「吹田の家でも、しばしば一緒に朝御飯とか食べてるね」
と理彩は笑顔で言った。
「朝はうちで食べて夕方は自分で作って村で食べるのが好きなんだって」
「移動が大変だ」
「移動はしてないよ。遍在してるんだよ」
「・・・意味が分からん」
 
「神様ってのはサーバーみたいなものだよ。全世界のパソコンが同時にひとつのサーバーの資源を使えるでしょ? 東京と大阪と村とで、同じゲームの同じ場所を表示させられる」
「あ、そうか。吹田のおうちの端末で私たちと一緒に朝御飯を食べて、村のまどかさんちの端末でロデムと一緒に夕ご飯を食べるわけか」
「そそ、そんな感じ」
 
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「でも何か最近まどかさん、よく私のパソコン勝手に使ってゲームしてるよね」
「うんうん。忙しい時ほどゲームしたくなると言ってた」
「人間と同じだなあ」
 

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「そういえばさ、1月の成人式の時、まどかさんの仕事を聞かれて、命(めい)はお医者さんだよって言ってたよね」
「うん」
「あの後、期末試験の勉強で忙しかったし、星がいなくなる事件があって、私も忘れてたけど、マジあの人、お医者さんなの?」
 
「医師免許持ってるよ。一度見せてもらったから」
「へー」
「東京の病院で17年くらいお医者さんしてたらしい」
 
「そうだったのか。いや星の12ヶ月健診の時にさ、診てくれた40代くらいのお医者さんが、まどかさんのこと『西沢先生』って呼んでたから。でもその場ではあまり詳しいこと言わなかったんだよね、まどかさん」
 
「治せるかどうかは別として誤診は絶対無かったろうね、あの人」
「だよね」
「そしてあの人は治療には絶対『力』は使ってなかったと思う」
「ああ、多分そうだ。そんな親切じゃないもん」
 
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「ちょうど色々あって病院を辞めて、さてこの後何をしようと思ってた時に、今の宮司のお父さんがまどかさんを神社に勧請してくれたので、村に来るようになって、その直後に僕たちに出会ったらしい」
「ああ。あの頃そうだったのか」
 
「もう明日にでも死にそうな感じの僕を見て、医師としての使命感半分、好奇心半分で、この子を生きながらえさせてみようと思ったんだって言ってた」
「なるほど。命(めい)はまどかさんの実験台だったんだ」
 
「そうそう。それでも12〜13歳が限界かなと思ってたらしいよ、最初は」
「こないだは70歳までは生きさせるみたいなこと言ってたね」
「うん。だから、やはり僕って、星を産んで育てるためにこの世に生まれてきて、そして生かしてもらってるんだと思う」
 
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「でも、私も命(めい)がいるから有意義な人生を送れているからね。命(めい)は私にとっても大事な人だということを忘れないでね」
「もちろんだよ。僕にとっても理彩はこの世で一番大事な存在だよ」
と言って命(めい)は理彩にキスをした。
 

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40年ほど前に戻って1972年11月。
 
まどかが西沢公子の許で暮らし始めてから12年ほどたち、まどかは女子大生になっていた。
 
この月、公子が癌のため67歳で死去した。まどかは「癌くらい私が治すよ」と言ったものの、公子は「そういうことに神様の力を使ってはいけない。世の中の全ての癌患者を治すつもりがあるかい?」と言って、ふつうの病院の治療だけを受けていた。ただまどかは、公子があまり苦しまなくていいように、神経のブロックをしてあげたりだけしていた。
 
まどかは戸籍上、公子の養女になっているのでお葬式では喪主を務めた。野辺の送りが終わった後、まどかの本来の母である多気子は「うちに来る?」と言ったものの「ううん。私も19だもん。ひとりで暮らせるよ。お母さんの所には今までと同じように時々顔を出すから」と言った。
 
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公子が経営していた産院に関しては、これまでも協力してくれていた助産師さんに実質譲ることにした。産院の名義で銀行などから借りていた借金をまどかが多気子名義の口座(辛島家から送金を受けていたもので実質まどかに任されていた)に入っているお金を使って清算し、その上で、限りなく譲渡に近い低価格でその人に売却した。(この時多気子から借りた形になったお金は後に全額返済した)
 
公子がしていた霊能者の仕事に関しては、公子の知り合いの他の霊能者さんたちに引き継ぎをお願いした。
 
そして養母を癌で失ったことから、まどかは医科大学への編入試験を受けることを決めた。
 

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翌年1月。
 
成人の日の午前、多気子がまどかの家を訪れると、ふつうの服装をして髪も適当で、何やら勉強をしている様子なので「お前、美容院行かないの?今日成人式でしょ?」と言った。
 
「成人式は行かないよ。喪中だし。振袖も無いし。勉強も忙しいし」とまどか。
 
「いや、喪中だって成人式には行っていいでしょ。勉強も1日くらいいいじゃん。お前、振袖持ってなかったんなら、今から貸衣装屋さんに行って借りようよ」
「いい。私、勉強してる」
 
そう言ってまどかは成人式に出席しなかった。
 
その日の夜、押し入れから振袖を出してきたまどかは、自分で着て写真を撮った。生前公子が買ってくれた振袖であった。その写真の現像ができてきてから、まどかは公子のお墓に行ってその写真を見せ、涙を流した。
 
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そうしてまどかの成人式は40年後まで保留になった。
 

2014年に話を戻そう。
 
ゴールデンウィークの期間中はのんびりと実家で過ごし、双方の親も集まり星も入れて7人で一緒に御飯を食べたりしていたのだが、5日に東京の産能大に行った紀子と電気通信大に行った西川君がこちらに来るということで、集まれる人だけ集まろうということになる。
 
紀子と同じ勉強会で頑張っていた玖美・博江・綾・浩香に、浩香が来るなら当然付いてくる河合君、西川君と最も親しかった服部君、服部君と同じ大学に行った三宅君・六田君、元学級委員の松浦君、そしてこの手の集まりがあるとまず出てくる春代と香川君、そして春代に誘われて理彩と命(めい)、そして春代から電話で呼び出された正美も参加する。総勢16人でけっこうな人数の集まりになった。会場は町のファミレスで昼食を兼ねての寄り合いになったが、元々あまりお客さんのいない店なので実質貸し切り状態であった。
 
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「東京の生活はどうよ?」
「この町の美味しい空気が懐かしくなることある」
「ああ」
「大阪もだけど、都会の空気は美味しくないよね」
 
「しかし大阪組も神戸組も早々にくっついちゃったな」
「大阪組なんて子供まで作っちゃうし」
 
「私は両親と同居だから東京暮らしでも全然羽が伸ばせないよ」と紀子。
「両親と一緒なら、誰かさんみたいに入学していきなり妊娠したりはしないな」
 
「俺は親父とふたり暮らしだから、凄まじく不毛だぞ」と西川君。
「一応、朝ご飯は親父の担当、晩御飯は俺の担当だけど、男ふたりで飯食っても全然うまくないからなあ」
 
「でも小さい頃からずっとその生活て言ってたよね」
「高3の1年間はひとり暮らしだったから気楽だったな」と西川君。
「ああ、いっそひとりの方が気楽か」
 
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「お父さん再婚しないの?」
「再婚ってか、そもそも結婚してないんだけどね、俺の両親」
「あ、そうだったんだっけ?」
「母ちゃんの逆通い婚って感じ。でも実は高3の1年間は母ちゃんがかなり高頻度で俺の所に来てくれたんだ」
 
「へー。良かったじゃん」
「気仙沼で過ごした小学校高学年の頃がいちばん来る頻度が少なかったかな。高槻にいた小学校低学年の頃は週一、太宰府にいた中学生の頃も月1〜2回来てた」
「地理的な問題かな?」
「お母さんもしかして関西に住んでる?」
 
「そんな気はする。親父と母ちゃんは普段は手紙でやりとりしてるみたい」
「手紙か〜。メールじゃないんだ?」
「でも交際が続いてるなら、その内入籍しちゃうとか」
「あ、それはお互いにその気は無いって言ってたけどね。それ20年やってるから、入籍するつもりならとっくの昔にしてるでしょ」
 
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「母親不在はうちもだなあ」と正美。
「うちは離婚でだけど。それで何となく小さい頃から僕が兄ちゃんたちに御飯作ってあげたりして妹みたいなポジションになってたから」
「ああ、それで女に目覚めたのか」
 
などと言っていたら、浩香が正美に後ろから抱きついて胸を触る。
「ちょーっ! 抱きつく相手が違うだろ?」
「この胸の感触、間違いなく本物だと思うけど」と浩香。
「えーっと」
 
「白状せい」
「うん。去年の夏に大きくしちゃった」
「ああ。やはり」
「下はまだ手術してないの?」
「最近大学の友だちから、って女子ばかりなんだけどね、タマ取っちゃえ取っちゃえ、と唆されてるんだよねー」
「取っちゃえばいいのに」
「早い方がいいよ。どうせ取るなら」
 
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命(めい)のように休学したりしていない子はたいてい3年生になっているので就職活動のことも話題になる。
 
「じゃ、斎藤は女として就職するつもりなんだ?」
「うん。でも無理せずに村に戻って畑買って農業やるかも」
「ああ、農業やるなら性別は割とどうでもいいかもね」
 
「橋本はどうするの?」
「まだ迷ってる。就職カード出さなきゃいけないんだけど、性別をどちらに丸付けるか悩んでる」
「悩むこと無いよ」
「ねー」
「女に丸付けちゃいなよ」
「卒業するまでに性転換しちゃえばいいじゃん」
「うーん。。。」
 

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