広告:ここはグリーン・ウッド (第4巻) (白泉社文庫)
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■神様のお陰・神育て(4)

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ゴールデンウィーク。昨年はバイトをしていて帰省しなかった命(めい)と理彩も、今年は星を連れて村に帰省したが、そのゴールデンウィーク期間中に高3の同級生女子で集まった時、成人式の振袖のことが話題になった。
 
「あ、じゃ京都組は1月に予約したんだ?」
「うん。4人で一緒に見に行ったんだよ」と小枝。
小枝・百合・愛花・杏夏の4人は通っている大学は違っても、高校の時以来の友情で団結力が堅い。
 
「私も奈良市内の呉服屋さんで1月に予約した」と玖美。
「私はレンタル。予約済み」とあおい。
「私も同じく」と博江・須美。
 
「私はお母さんが昔着てた振袖を着る〜」と綾。
「お母さんが着てたのなら、かなりいい品じゃないの?」
「見たけど、良い物か安物か、私には分からん」
「きっと良い品だよ。昔は今みたいにインクジェット・プリンタで染めたりしないもん」
 
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「しかし、そうなると、まだ振袖を確保してないのは?」と理彩が見回す。「はい」と言って手を挙げたのが春代と浩香である。
 
「じゃ、どこかに一緒に見に行かない?」
「そうだね」
「見に行くんなら、うちに奈良市の呉服屋さんから展示会の案内が来てたよ」
と言って、玖美がパンフレットを出して来た。
 
「あ、いいかも。うちにも全国チェーンの呉服屋さんからDMは来てたけど、どうも微妙な気がしてたのよね」
「ここの呉服屋さんは良心的だよ。うちは20年来の付き合いなんだ」と玖美。
「じゃ、行ってみようか」
 
「行くのは、私と理彩と春代の3人?」と浩香が訊くが
「当然、命(めい)も一緒だよね」と理彩・春代。
 
「あ、命(めい)も当然成人式は振袖なんだよね」
「うん。背広着るなんてふざけたこと言ってたから、もう背広着れないようにおちんちん没収したから」と理彩。
「命(めい)が背広はあり得ない」とその場にいたみんなが異口同音に言う。命(めい)は苦笑している。
 
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「没収も何も、命(めい)のおちんちんは高校時代には既に無くなっていたはず」
と百合。
「その胸も本物なんでしょ?」と綾。
「本物だよ〜。Eカップあるよ」と理彩。
「張り切って大きくしたね〜」
「そのバストでは背広なんて着れないよね、そもそも」
「そうそう、私もそう言ったんだよ」
 
「あれ?命(めい)って高校時代、振袖着てなかった?」
「あれは理彩のを借りたんだよ」
「じゃ、理彩は振袖持ってるんだ?」
「うん。持ってるというか、お母ちゃんのなんだけどね。でも成人式のはそんなに高いものでなかったら、新たに買ってもいいんじゃない?って言われてるのよね」
「なるほどー」
 
「じゃ、行くのは私と理彩・命(めい)・浩香の4人かな」と春代が言うと「あ、そうだ。正美は?」と愛花が言い出した。
「おお、ぜひ誘って行こう」
と春代が言い、早速電話を掛ける。
 
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「だいたい正美は、この集まりにも誘ったんだけどね〜、何かごちゃごちゃ言って遠慮しとくとか言ってたし」と玖美。
「もっと女の子としての自覚を持った方が良いよね」と小枝。
命(めい)はまた苦笑している。
 
「は〜い、正美」と春代。
「どうしたの?」と正美。
「正美さ、成人式は何着るの?」
「えっと・・・まだ決めてない」
「振袖着ない?」
「えー? 着たいけど着ていいものなのかなあ」
「だって、正美は女の子でしょ? 女の子なら振袖着なくちゃ。命(めい)も振袖着るんだよ」
 
「ああ。。。命(めい)も着るなら、僕も着ていいかなあ」
「着ていいって。命(めい)なんて既婚でママなのに振袖着る気満々だから」
「ああ。僕は一応まだ未婚だし子供もいないし」
「うんうん。明日、奈良市に見に行くからさ、正美も一緒に行かない?」
「うん。じゃ見に行く」
「よし。9時頃迎えに行くね」
「うん。ありがとう」
 
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そういう訳で理彩と命(めい)、春代と浩香、正美の5人で奈良市内の呉服屋さんまで出かけることになったのであった。星は命(めい)の母が面倒を見てくれるということだった。5人なので、理彩のヴィッツでは少し苦しい、理彩の父の少々年代物のスカイラインを借りることにした。免許を持っているのが理彩と正美なので、2人で交代で運転することになった。
 
「浩香、河合君は成人式、何着るの?」
「コスプレしようかな、なんて言ってたから、してもいいけど私のそばに寄らないでと言っておいた」
「河合君にも振袖着せちゃおう」
「かなり、唆してるんだけどねえ。何とか、じゃちょっと私の振袖を試着させて、ってところまでは漕ぎ着けたけど」
「あと一押しだな」
 
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「なんで、そんなにみんな男の子を女装させようとするの〜?」と正美。そう言う正美は少しドレッシーなカットソーに膝下サイズのプリーツスカートを穿いている。耳には赤いウサギのイヤリングをしている。
 
「だって楽しいじゃん」と理彩。
「そうそう。特に嫌がるのを無理に女装させるのが楽しい」と春代。
「そういう意味では、高校時代、正美がいちばん楽しかったね」と浩香。「命(めい)は全然嫌がらないで、喜んで女の子の服着てたからね」と理彩。「いや、喜んでというより、当然のように女の子の服を着てた」と春代。
「確かに」
「みんなに乗せられて、僕はこんな感じになっちゃった」と正美。
 
「いや、元々女の子になりたかったんでしょ?」と春代。
「たぶんGIDだよね〜」と浩香。
「うーん。そうかも知れないという気はする。今完璧に女の子ライフにハマっちゃってるし。フラフラと豊胸手術受けたくなるんじゃないかと自分が怖い」
「受けちゃえばいいののに」
「そうだ、そうだ」
「今おっぱい大きくすれば今年の夏はビキニの水着を着れるよ」と理彩。「ビキニの水着・・・ああ。着たい!」と正美はかなり迷うような声をあげた。
 
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「河合君はGIDの傾向は無いの?浩香」
「うーん。女装が嫌いではないみたいだけどね。ちょっとナルちゃんだし。でも女の子になりたい訳じゃないみたい」
 
「命(めい)の場合はどうなんだろ?」
「命(めい)はそもそも女の子だから、GIDでもないね」
「むむむ」
 

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奈良市街地の駐車場に駐め、玖美お勧めの呉服屋さんの展示会場へ地図を見ながら歩いて行っていたら、信号待ちのところで浩香が『意外』な人影を見た。
 
「あら、まどかさんでしたよね?」と浩香が声を掛ける。
「あら、あんたたちここで何してるの?」とまどか。
 
浩香は先日の友人達による結婚祝賀会で、まどかと一緒に徹夜で飲みあかしている。
 
「成人式の振袖を見に行くんです」
「へー、じゃ私も付いて行こうかな」
と言うまどかは、センスの良い付下げを着ている。和服姿のまどかを久しぶりに見たなと命(めい)は思った。命(めい)たちが小さい頃はよく彼女のシンボルマークである丸い輪を染め抜いた小紋をよく着ていたが、命(めい)たちが小学校の4〜5年生になった頃以降はだいたい洋装をしていた。
 
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春代と正美はまどかと面識が無かったので、命(めい)の親戚の『お姉さん』と紹介する。今日のまどかは少し若めのメイクをしていたので、充分30前後、ひょっとしたら28〜29かも、という感じに見える。
 
「まどかさんは訪問着か何か見られるんですか?」
「そうだね。私も振袖買っちゃおうかな。とりあえず独身だし」
「あ、独身なら年齢関係無く振袖でいいと思いますよ。ここに既婚なのに振袖を着ようなんて子もふたり居ますけど」と春代。
 
「ひとりは既婚で男なのに振袖着たい着たいというから連れてきたんですよ〜」
などと浩香。
「僕は成人式には背広を着ると言ってたんだけど」と命(めい)が言うが
「命(めい)の背広なんてあり得ない。そんな馬鹿なこと言うなら、今すぐ性転換しちゃおう」などとまどかが言う。
 
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その瞬間、命(めい)は女体に変えられてしまった。「ぎゃっ」と命(めい)は心の中で叫んだ。
 
「僕も男なんですけど、振袖着てもいいですよね?」と正美。
「ああ、いいと思うよ。好きな服を着ればいいんだよ、成人式なんて」
とまどかは笑って言う。命(めい)はまどかがよけいな親切心を起こして正美を女の子の身体に変えたりしませんように、と心の中で祈った。
 
「まどかさんは事情があって、20歳の時には成人式に出られなかったんだよ」
と命(めい)が説明すると。
「あ、だったら、来年うちの村の成人式に出ませんか?私、実行委員だから、特別参列者として登録しておきますよ。うちの村の出身者なら大歓迎です」
と春代が言う。
 
「大歓迎? じゃ、お願いしようかな」とまどか。
 
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まどかがマジで嬉しがっているのを見て、命(めい)は今年の作物の出来が5%は上がったなと思った。
 

展示会は公共の会館の小会議場を利用しておこなわれていた。
 
みんなでひととおり会場内を見て回ってから、理彩が「振袖を選ぼうと思っている」と30歳くらいの女性スタッフに伝えると、ひとりひとりに好みと予算を尋ね、パソコンの画面で、こんな生地はどうでしょう?と言って見せてくれる。
 
「お写真を撮らせて頂けますと、着付けした状態を画面で見られます」
というので、まどかも含めて6人写真を撮ってもらった。19歳の5人はいいとして29歳?のまどかも振袖を選びたいという話に、変な顔をすることもなく普通に対応しているスタッフさんはプロだなあと命(めい)は思った。
 
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「へー、世の中進歩したもんだねぇ」とまどかはパソコンの画面をのぞき込んでマジで感心している。
 
まどかはさすがに和服の知識がしっかりしているので、あれこれアドバイスしてくれる。スタッフの人と専門用語?で会話したりしているので、理彩たちは「へー」という感じで、頭の上で飛び交う会話を聞いていた。
 
全員けっこう満足のいく買物が出来た。
 
春代は無難なピンク系伝統柄の型押し振袖を選んだ。浩香は現代的なデザインの赤系統のプリンター染め、正美は可愛らしい感じの青系統のプリンター染めを選ぶ。まどかは「私の年齢じゃさすがにプリンター染めは着られない」と言って京友禅ゴム糸目の黒地に赤と金の波模様が入り桜と蝶が染め抜かれた振袖を選んだ。理彩と命(めい)は最初はプリンター染めでいいかなあ、などと言っていたものの、春代やまどかにうまく乗せられて、結局型押しを選ぶ。星と三日月が描かれた同じ模様で、理彩は白地、命(めい)は薄紫地のものを選んだ。
 
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呉服屋さんの後、みんなでカフェに入ってお茶を飲む。
 
「正美はお客様カードの性別、女にしてたね」
「最近けっこう女で登録してる」
「正美って髪はどこで切るの?床屋さん?美容院?」
「美容院に行くようになった」
「やっぱりねぇ」
 
「命(めい)はお客様カードの性別、男に○付けたのに、店員さんが女に修正しちゃったね」
「当然だね」
「命(めい)は髪の毛は?」
「命(めい)は小さい頃から美容院で切ってたよ。いつも一緒に切りに行ってた」
と理彩。
「やはりそうか」
 
「年季が違うな」と正美。
「でも正美も小さい頃から女の子になりたかったんじゃないの?」と浩香。
「うーん。よく女の子だったら良かったのにとかは言われてたけど」
「おちんちん切ろうとしたことない?」
「ある。でも切れなかった」
 
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「命(めい)の場合は私が3歳頃におちんちん切っちゃったからね」と理彩。「なるほど、早く切っちゃうに限るね」と春代。
 
「おちんちん無くなって泣いてたから『私がお嫁さんにしてあげるから』と慰めてたんだよね」
「ほんとにお嫁さんになっちゃったね」
 
「命(めい)、マジでもうおちんちん無いの?」と正美。
「ああ、無い筈だよ」とまどか。
「叔母さんが言うなら確かだね」と春代。
「何なら裸にしてみる?」
「裸にしてみたーい」と浩香が言った。
 
「じゃ、このメンツで温泉センターにでも行ってみる?」
「あ、行きましょう、行きましょう」
「命(めい)、男湯に逃げてったりしないよね」と浩香。
「あ、大丈夫、大丈夫。絶対男湯には入れない身体だから。高校時代にも何度か女湯に入ってるよ、命(めい)は」と理彩。
「じゃ、確認できるね」
 
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「あ、じゃ僕は車の中で寝てるから結果を報告して」と正美が言うが
「正美も女湯に行こう」と春代が言い出す。
「さすがに無理。僕は何も身体には手入れてないもん」
「水着を着てれば行けるよ」
「ああ、水着くらい買ってあげようか?」とまどか。
「ひぇー」
 
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