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■神様のお陰・神育て(10)

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そんな雑談をしながら、星の部屋にみんなを案内すると、みんな一斉に「可愛い〜!」と言う。
 
「何ヶ月だっけ?」
「1月16日に生まれたから8ヶ月半。おっぱいだけじゃなくて離乳食も結構食べるし。最近少しハイハイしたりもするし」
「わあ、もうそこまでするんだ!」
 
「抱っこしてもいいですか?」
「うん、いいよ」
という訳で、女子3人が、代わる代わる星を抱っこした。星はご機嫌で笑っていた。
 
「人見知りしないんですね」
「ああ、田舎に連れ帰って、村の人たちにも抱っこされてたけど、誰に対してもご機嫌なのよね」
 
「でも、そしたら奥さんとしては、彼氏がこんな格好してて、性転換しちゃったのも、構わないんですか?」
 
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「あ、それは平気。むしろ昔から私が命(めい)には女装を唆してたし、私は医学部だから、その内私が性転換手術してあげようか?なんて言ってたんだけど、私が医師免許取る前に女の身体になっちゃいましたね」
 
「へー。でも奥さん公認で女装・性転換できて、良かったじゃん」
「うん、まあね」
 
なんか自分の性転換は既成事実になっちゃってるなあ、と命(めい)は頭を掻きながら思った。
 
星の「見学会」はその後4日間続き、去年のクラスメイトだけでなく、今年のクラスメイトの友人男女までやってきた。そして抱っこしてくれた女子全員に星は愛想を振りまいていた。
 

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復学した翌日、命(めい)は保健センターから呼び出しを受けた。休学していたため今年春の健康診断を受けていないので、受けるように言われたのであった。
 
朝の内にネット上で問診票に記入しておき、尿を持参して身長・体重・血圧などを計られる。問診票で「妊娠したことがありますか」に「はい」、「いちばん最近の月経は」に「2012年6月20日」と書いたので、健診医から声を掛けられた。
 
「1年以上月経が無いのですか?」
「はい。昨年妊娠して今年の1月に出産したので。出産のために休学していたんです」
「ああ、そういうことですか。だったら問題無いですね。悪露は止まりました?」
「ええ。2ヶ月ほどで出尽くした感じです。まだ、おりものが、妊娠前のふだんの頃より多いかなという感じで、パンティライナーはずっとしていますが」
 
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「うんうん。そのくらいは普通でしょう。赤ちゃんは元気ですか?」
「ええ。もう元気で元気で。調子がいいとハイハイして回るので、家の中をしっかり掃除させられています」
 
「あはは。いいことですね。あなた自身の体調の方はどうですか?」
「ホルモンの関係か、時々ブルーな気分になりますが、母からはそのくらい普通と言われています」
「うんうん。御主人や親御さんは子育てに協力的ですか?」
 
「ええ。いろいろしてくれて助かってます。双方の母が私たちの子育ての方針に基本的に口出しせずに私たち夫婦の方針を追認してくれているのでストレスが小さいです」
 
「それは恵まれた環境ですね」
「それで私が学校に出ている間も、双方の母が交替で見ていてくれるんですよ」
「良かったですね。じゃ、勉強も頑張って下さい」
「ありがとうございます」
 
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去年の健康診断を受けた時に、こんなやりとりを1年半後にすることになるとは夢にも思わなかったなと命(めい)は思った。なんか自分って戸籍以外はほぼ完全に女になっている気がする・・・・
 

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この時期命(めい)は、このような健診などの場ではふつうに出産した女として扱われ、大学や高校の同級生たちには性転換して男から女に変わった人と思われていた。麻矢は命(めい)のことを元々女の子だと思っていたし、妙香や菜摘たち、また浩香や玖美たちは(おそらく高校時代に)性転換したのだろうと思っていた。
 
ただ友人たちの共通認識として「命(めい)は身体的に女性」というのがあった。
 
この時期、命(めい)にひょっとしたらまだ男性器があるのかも知れないと思っていたのは、春代くらいである。理彩でさえ、本当に命(めい)はまだ男性器を持っているのか疑心暗鬼であった。「Hしよう」と言ってから脱がせると確かに付いているのだが・・・・
 
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ただ、当時の命(めい)の男性器は女性ホルモンの影響でかなり萎縮していた。ペニスは長さ2cmほどで刺激しても大きくなることはなく、睾丸も小学生並みのサイズになっていて、理彩がサイズを測定して『6mlくらいだね』と言っていた。成人男性の普通の睾丸のサイズは22mlくらいらしい。陰嚢も萎縮して「袋」としては認識できない状態であった(ただの色素の濃い肌の部分に見えた)。小さい陰茎は陰毛の中に埋もれてしまっているので、理彩は
「これって何も偽装工作しなくても女湯に入れるかも」などと言っていた。
 
「短すぎて、お股に挟んで隠すことができないよね」
「タックするのも無理だね」
「性転換手術しようとしても小さすぎて女性器を作る材料にできないね」
「これ性転換手術の必要が無いって言われるかもね」
 
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「性別変更に必要な診断書がもらえたりして」
「いや、それはさすがに無茶でしょ。陰茎も陰嚢も睾丸も存在するし」
「この陰茎は陰核だと主張できそう。陰嚢も陰唇と主張できるかも。睾丸は30分もあれば私が摘出してあげるよ。ついでに割れ目ちゃん作ってあげてもいいし」
「結局切りたいのか!」
 

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10月12日(土)は今度は理彩の誕生日であった。理彩が「お寿司が食べたい」と言うので、理彩の母、星と一緒に4人で、くら寿司に行った。
 
「僕が授乳中だから、お刺身とか最近買ってきてなかったもんね〜」
「命(めい)、青魚はお乳の味が落ちるって言うから、白身魚系を食べるといいよ」
「どれなら食べていいんだろ?」
「鮭(さけ)とか、鯛(たい)とか、平目とかかな」
「鰤(ぶり)は?」
「鰤は青魚だよ」
「鰻(うなぎ)は?」
「鰻は白身魚には分類されるけど、お乳には良くない」
「鰯(いわし)は青魚?」
「鰯は青魚だけど、わりとお乳には良い」
「鮪(まぐろ)は?」
「鮪は油脂分が多いからNG」
「概して、美味しいネタはNGかも」
「うーん。。。。」
 
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ちなみに星は搾乳しておいたものを哺乳瓶で飲んでいる。
 
「今日も命(めい)には可愛い服を着せようとしたのになあ」
「赤ちゃん抱っこしてミニスカとかはあり得ないから」
 

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食事の後、理彩の母が「水入らずで少し楽しんでおいで」と言って、星を連れて帰ったので、命(めい)と理彩は、しばし夜の大阪の町を散歩する。
 
「ね、寄りたい所があるんだけど」と命(めい)。
「どこ行くの?」という理彩を連れて行ったのは宝石店である。
 
「こないだ理彩が言ってたファッションリングを、誕生日プレゼントに」
「えー!? ホントに買ってくれるの? 命(めい)、だーいすき!」
と言って、理彩は人目を無視して命(めい)に飛びつきキスをした。
 
女性同士でキスをしているので周囲がギョッとしている。
 
「あ、えーっと、それでサファイアのリングを選びたいのですが」
と命(めい)は冷静にお店の人に言った。
 
「サファイアは誕生石か何かでございますか?」とお店の人。
「いえ、私の誕生石って、オパールにトルマリンにローズクォーツにと安い石ばかりだから、隣の月のサファイアに浮気を」
「なるほど。ご予算はどのくらいでしょう?」
「命(めい)、どのくらいまでいいの?」
「うーん。まあ20万くらいまでかなあ」
「よし」
 
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理彩がお店の人と、話ながら店頭の指輪を品定めし、何個かは手に取って眺めたりした。
 
「あ、これ何か好きだ」
と言って理彩が手にしたのは、やや紫がかった淡い色のスターサファイアの指輪だ。指輪本体はホワイトゴールドである。理彩は良さそうな指輪に「Oリングテスト」をしてみていたが、この指輪はOリングが離れず、しっかり指がくっついたままであった。
 
「これ産地はどこですか?」と命(めい)は訊く。
「スリランカです」
「こんな淡い色のスターサファイアは珍しいですね」
命(めい)はしばらくその石を見つめていた。
 
「へー。この石、熱加工されてないみたい」
「よくお分かりですね。確かにこの石は熱処理をしておりません。完全に天然のスターサファイアです。そのため、サファイアの色合いとしては多少劣る面もありますし、またそれにも関わらず、このお値段になっております」
「なるほど」
 
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「ねえ、命(めい)、これ買って〜。ちょっと予算オーバーだけど」
「うん。いいよ」
と命(めい)は笑顔で言った。
 

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「嬉し〜い。今夜はたっぷりサービスしてあげるね」
 
宝石店の後入ったスタバで、理彩は今買ったサファイアリングを、左手薬指に、結婚指輪と重ねて付けて、ほんとに嬉しそうにしていた。
 
「やっぱりあれかな。石の中に星が入ってるから惹かれたのかな」
「うん。僕もそれ思った」
 
「早くうちに帰ってHしたいなあ」
「ふふ。でもお母さんにお土産買ってかなくちゃ」
「たこ焼きでも買ってく?」
「ケンタッキーにしない?」
「あ、いいネ!」
 
家に帰って指輪をお母さんに見せると
「わあ、いいわね〜。ここで親孝行な娘が私にも指輪を買ってくれないかしら。そんな高いのでなくてもいいから」
などと言っている。
「あ、それはこちらにいる義理の娘に言ってください」
 
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「僕って、義理の娘なんだっけ?」
「義理の子供で女の子だから、義理の娘だよ」と理彩は言う。
 
「じゃ、来週また出て来られた時にでも」と命(めい)。
「やったね。やっぱり命(めい)ちゃんって、いい娘だわあ」と理彩の母。
 
指輪をちょうど起きてきた星に見せると、何か不思議な顔をして眺めていた。首を右にやったり左にやったりして、スターが動くのを見つめている感じだった。
 

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10月19日(土)。命(めい)は6時すぎに朝の祝詞をあげてから理彩・星と一緒に村に戻った。この日はまどかの「お引越し」の手伝いなのである。
 
まどかが東京の住まいから引越し屋さんに頼んで送ってもらった荷物が届いていた。ふたりは双方の両親にも手伝ってもらい、その荷物をほどいては、まどかの指定の場所に設置していく。
 
「けっこう荷物がありますね」と命(めい)の父。
「東京でかなり長期間暮らしましたからね〜」とまどか。
「向こうは引き払ったんですか?」
「ああ。向こうに行った時に泊まれるように、寝具と冷蔵庫だけ残して来ました。こちら用には、その分新たに買ったんですよ」
 
理彩がぽつりと
「なんか普通の引越しだ」
と言うので、理彩の母から
「普通じゃない引越しって何よ?」
と訊かれている。命(めい)は微笑んだ。理彩は神様の引越しというので何か不可思議なものを想像していたのだろう。
 
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まどかまで入れて7人で作業したので、お昼頃までにはかなり片付いた。カップ麺でお昼にしていた時、どこからか黒猫が迷い込んできた。
 
「あら、可愛い」
「何かお腹空かせてる感じ」
「何か猫が食べられそうなものないかな?」
 
結局「サトウの御飯」をチンして、鰹節と混ぜてあげたら、凄い勢いで食べている。
 
「まだ生まれて2ヶ月くらいの雰囲気だね」
「この子、どこかのおうちの猫かな?」
「じゃ無さそうな感じ。捨てられたのかも」
「だったら私飼ってもいいかな」とまどかが言うので
「あ、いいんじゃない? 女の一人暮らしだもん。猫がいると寂しくないよ」
「そうだねー」
 
「名前付けなきゃ」と理彩が言うが
「待った。理彩に任せると変な名前を付けそうだ」
「シュヴァルツェ・カッツェ(ドイツ語で黒猫の意味)って付けようと思ったのに」
「まんまじゃん!」
 
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「ロデム(バビル2世に出てくる黒豹)なんてどうだろ?」と理彩の母が言った。「ああ、私ロデム好き」とまどか。
へー。神様も漫画を読むのかと命(めい)は思った。
 
「ロデム、結構いいなあ。ね、ロデム」
とまどかが黒猫に呼びかけると、猫は「ニャー」と可愛く鳴いた。
「あ、本猫も気に入ってるみたい。ロデムにしちゃおう」
と、まどかは微笑んで言った。
 
その日の午後には辛島宮司に来てもらって、神棚を設置した。辛島宮司はまどかの正体を知らない。ただこの村で生まれてしばらく東京や和歌山に行っていて、久しぶりに村に戻ってきた女性と紹介した。それで宮司もふつうに家庭の神棚として設置し、家の守り神を降ろしてくれた。
 
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降りてきた守り神たちが神棚に納まってから、まどかを見てギョッとした様子を見せたので、命(めい)は微笑んだ。出先に行ったら社長がいた、などという感覚だろう、
 

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神様のお陰・神育て(10)

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