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■神様のお陰・神育て(9)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-08-19
 
誕生日の翌日、命(めい)は星を連れて7ヶ月健診を受けに総合病院に行った。理彩も付いて行きたそうだったが、9月からの授業再開を前に、まとめておかなければならないレポートがあって、時間が取れないなどと言っていたら、最近朝御飯を一緒に取るのがデフォルトになっているまどかが「あ、私が付いてっちゃおうかな」などというので、付いてきてもらった。
 
「僕病院って苦手」と命(めい)。
「この独特の臭いをかいだだけで憂鬱な気分になる」
 
「ふーん。小さい頃病院の常連だった人にしては」とまどか。
「トラウマになってるんだよ。病院に行くってのは死の予感だったし。ああ今度こそ僕死んじゃうのかな、とよく思ってた。去年・今年は妊娠出産、それに星の健診や予防接種で頻繁に来てるけど、本当は逃げ出したい気分」
「私はこの臭い嗅ぐと、気が引き締まるな」
 
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「・・・・・僕が出産した時、まどかさん、助産師さんと何か難しい言葉で会話してたよね。理彩くらいしか分かってなかった感じだけど。もしかして病院関係の仕事とかしてたことあるの?あの時は産婆の助手してたなんて言ってたけど、助手でそんなに専門的な知識あるのかな、と少し引っかかってたんだよね」
 
「うん、まあそんなことしてた時期もあったかな。でも産婆の助手もやってたよ。中高生の頃から」
 
「まどかさん、中学や高校に通ったの!?」
「なんで?私だって、そんな時期はあるさ」
 
「まどかさん赤ちゃんの時に死んじゃったと言ってたから、その後はずっと霊体だったのかと思ってたのに」
「まあ、人間の振りすることだって出来るからね。今だってそうだ」
「なるほどね。へー。セーラー服姿のまどかさん見てみたい。写真無いの?」
「あはは、いいじゃん、そんなの」
命(めい)は、はにかむようなまどかの顔を初めて見た。
 
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「命(めい)のセーラー服姿なら、私も写真何枚か持ってるけどね」
「僕の学生服の写真、お母ちゃんも持ってないと言ってた。中学の入学式の時の写真でさえ、友だちにふざけてセーラー服を着せられた所が写ってるし」
「なんなら、命(めい)が男だったという歴史を消しちゃおうか?」
「いや、いい」
 

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健診の方は、体重・身長なども標準で、見た目も聴診器での診断でも健康そのものと言われる。
 
「お乳は出てますか?」
「ええ。よく出るので、ミルクはほとんど使わず9割以上母乳で育ててます。ミルクは、ミルクにも慣らしておかないとという程度にあげている感じです」
 
「そうですね。あなた自身の体調が悪い時とかに困りますからね。離乳食食べてます?」
「ええ。先月、ちょうど生まれて6ヶ月目から少しずつ始めました。手作りしたり、市販のものを利用したりしてますが、どちらもよく食べます。でも今の段階では、おっぱいの方が好みのようで」
 
「うんうん。まだそんなものでしょう。時期も昔は2ヶ月くらいから始めろなんて意見もあったけど、最近は早く始めるとアレルギーの元になるから、遅い方がいいという意見の方が多いですね。私も5〜6ヶ月からとお勧めしてますよ」
 
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9月の上旬。命(めい)は理彩に吹田の家の留守番を頼んで星を連れて村に戻った。不動産屋さんに頼んでいた空家の買い取り契約のためである。これまで何件かの候補を伝えてもらったのを地図上でチェックしていたが、この物件は良さそうなので実際に現地に行って確認することにした。
 
「5年ほど空き家になっていたんですけどね」
「あまり痛んでない感じですね」
命(めい)は不動産屋さんに案内されて実際の物件を見てまわった。命(めい)がいちばん重視したのが「気の流れ」である。山の地形との関係、神社との位置関係からおそらく良好な状態にあることは想像していたが、現地で確認して、間違いなくここは良い場所だと確信した。空き家になっていたのにあまり痛んでいないのも、そのせいだろう。星の顔を見るが、星もニコニコしている。
 
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「ええ。廊下の板が少しぐらぐらしていたり、畳がけっこう痛んでいたりしますが、気になるようでしたら、大工さんに頼んで少し補修してもらったり、畳も新しいのに取り替えるといいかも知れないですね」
「ああ。それ、頼めます? 仲介手数料も払いますので」
「了解です。補修の範囲は?」
 
「廊下の板のぐらぐらする所。それから座敷の所で雨漏りしますよね、この家」
「ああ、それ言い忘れてました。すみません」
「その補修かな。必要なら瓦の交換も。それとトイレを洋式に交換して下水道に接続してもらえませんか? それから畳と障子の張り替えを。傷んでいるものは畳ごと交換してください」
「分かりました。じゃ、見積りを作らせてそちらにFAXします」
「お願いします」
 
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この一連の補修作業は下水道工事を除いては1ヶ月半ほどで終了し、10月の中旬には入居可能な状態になった。
 

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理彩の医学部は9月から授業再開だが、命(めい)の理学部は10月からである。
 
9月の下旬。命(めい)は翌月から1年間の休学を終えて学校に復帰するため、モノレールの定期券を買うのに、通学証明書を取りに学校に出て行った。
 
「それでは後期はもう休学せずに復学するんですね?」
と学生課の人から訊かれて
「はい。また頑張りますのでよろしくお願いします」
と命(めい)は答える。この係の人は初めて見たので今年から入った人かな。
 
係の人は書類を見ながら
「ああ、出産のために休学していたんですね」
「ええ。今年の1月に産まれて、もうかなり手が離れるようになってきたので」
「なるほど・・・・あれ? あなた学籍簿上は男性になってますよ」
「ああ」
「あれれ? でも健康診断カードではちゃんと女性になってますね」
「えっと・・・」
 
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「赤ちゃんを産んだんだから、あなた女性ですよね?」
「そうですね」
命(めい)はもう何か性別なんかどっちでもいいやと思い答えた。
 
「じゃ、学籍簿を修正したいので、記載事項の変更届けを書いてもらえませんか?」
「あ、はい」
「念のため、性別を確認できる書類、健康保険証か何か持っておられますか?」
「あ、健康保険証ならあります」
 
といって命(めい)はバッグの中から健康保険証を取り出す。その時、ちょうど学生課に麻矢が入ってきた。
 
「ハーイ!麻矢」
「ハーイ!命(めい)」
 
「ああ、通学証明書取りに来たのか。ん?性別変更届け?」
 
係の人が氏名変更届の用紙の「氏名」というところを消して「性別」と書き直した用紙を渡してくれたので、命(めい)はそれに記入していた。
 
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「ああ、僕の学籍簿がなぜか男性になってるから女性に直しましょうって」
「へー。でもこんな書類書いてたら、まるで性転換でもしたみたいね」
と麻矢が笑う。
 
命(めい)は性別変更届に、健康保険証を添えて係の人に提出する。性別・女と記された健康保険証を麻矢も眺めて
「やっぱり、命(めい)って女の子だよね〜」
と言う。
「なんで〜?」
と言って、命(めい)は笑う。
「男の子が妊娠出産できる訳無いしね」
「そうだね」
 
係の人は健康保険証の「氏名:斎藤命 性別:女」という記載を目で確認して、学生データベースの修正を掛ける。その上で、通学証明書を発行してくれた。
 
通学証明書と健康保険証を受け取る。命(めい)は「性別:男」と印刷されている健康保険証を麻矢の目に触れないよう、上に通学証明書を重ねてバッグにしまった。
 
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『ありがとう、まどかさん』と心の中で言いながら『あぁ、でもこれで僕って完全に女子大生になっちゃった!』と思った。
 
もちろん通学証明書にも「斎藤命・女」と印刷されていた。
 

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翌日の土曜日、理彩が「ちょっとデートしよ」と言うので、星のお世話は母に任せて、一緒に梅田に出た。
 
「命(めい)の通学服を買おうよ」と理彩が言う。
「え? 通学ならふつうにポロシャツかカットソーにジーンズとかでいいと思うけど」
チッチッチと理彩が指で否定の仕草をする。
 
「命(めい)、妊娠出産でしばらく実用的なママの服ばかり着てたでしょ。やはり大学に行く時は、可愛いの着なきゃ。まだ20歳の女子大生なんだから。まさか男物の服で出て行こうなどとは思ってないよね」
「ああ、さすがにその気は無くなった」
「よし。それでは可愛いの買おう」
 
理彩は「命(めい)は若く見えるから、ハイティーン向けの服で行けるよ」と言い、その手のショップを連れ回す。
 
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「このライトグリーンのカットソー可愛い!ちょっと合わせてみて」
「こ、こんな可愛いの、僕が着るの?」
「絶対合うって。ほら、鏡見てごらんよ」
「う・・・可愛いけど」
「よし、これ決まりね」
「わあ・・・」
 
「ね、ね、このスカート可愛くない?」
「えー、こんなに丈が短いの、恥ずかしいよ」
「その恥ずかしさを克服してこそ、可愛い格好ができるんだよ。ちょっと試着してみる?」
理彩は、めぼしいのを3着持って試着室に命(めい)を連れていく。
「おお、やっぱり、これがいちばん可愛いね」
「パンツ見えるよ〜」
「見えるくらい気にしない、気にしない」
「えーん」
 
そんな感じで、理彩は3軒ほどの店を回り、命(めい)の可愛い「通学服」を、取り敢えず1週間分買ったのであった。
 
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「来週の分は、また来週の土日に買いに行こうね」
「あはは」
 

10月1日。命(めい)が学校に、理彩に乗せられて買った服を着て出て行くと、昨年同じクラスだった友人たちから
 
「(ずっと休んでて)どうしてたの?」
「(その格好って)どうなっちゃったの?」
という質問が入る。
 
しかし昨年命(めい)の女装を見ている女子の友人たちは
「おお、ちゃんと女の子の格好で出てきたね」
「ちょっと可愛すぎるけどね。女子高生にも見えちゃう」
などと言っている。
 
「こいつ、こういう傾向だったの?」と女装の命(めい)を知らない男子の友人たち。「こんな格好で私たちと一緒に遊んだりしてたよ」と女子の友人。
「去年はここまで可愛い格好じゃなかったけどね」
 
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「えー!?知らなかった」
「いや、斎藤は何か女っぽいとは思ってた」
 
「やっぱり、こういう格好をするのが、もう癖になっちゃって」と命(めい)。
 
「まさか性転換手術のために1年間休んでいたとか?」と男子。
「ああ、別に手術はしてないよ」と命(めい)。
「いや、去年の春の段階で既に性転換手術済みだったよね」と女子。
「えー、やはりあの時点でもうチンコ無かったのか!」
「脱がせてみなくて良かった」
 
「でも1年間も休学してどうしてたの?病気」
「ああ、赤ちゃん作ってたから」と命(めい)が言うと
「赤ちゃん!?」と全員が驚きの声をあげる。
 

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見学希望者が多数いたものの、バイトなどの都合で男子3人と女子3人だけがその日は自宅にやってきた。ちょうどその日は先に理彩が戻っていた。
 
「奥さんですか? いつの間に結婚したの?」
「婚姻届けを出したのは年末なんですよ。この子が1月16日に生まれたから、もうギリギリ直前」
「斎藤君ってアバウトなのね」
「いや、ごめんごめん。僕自身男性能力が無くなっちゃったから結婚してなんて言えないと思ってたんだけど、彼女がそれでも結婚しようと言ってくれたから」
 
「でも男性能力が無くなることは承知で手術したんでしょう?」
「やっぱり無責任〜」
「まあ、おちんちんが無くても精液ちゃんと冷凍してるから大丈夫。あと3人か4人くらい産むつもりだから」と理彩。
「おお、たくましい!」
 
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「精液あるんなら、おちんちんは別に要らないよね」とひとりの女子が言うと「ちょっと待て。精液冷凍保存してたら、チンコは用済み?」と男子。
「もちろん」
「結婚したら精液5〜6本冷凍して、去勢させちゃうのもいいかもね」とひとりの女子。「怖い時代になったもんだ」とひとりの男子。
 

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