広告:まりあ†ほりっく 第6巻 [DVD]
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■△・第3の女(18)

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千里が他の男性と結婚することにしたという話に困惑した、貴司の母・保志絵は2017年9月24日、大阪のマンションまで来て貴司に直接話を聞こうと思った。
 
ところが貴司は不在で、阿倍子が居て、保志絵は貴司と阿倍子の結婚以来初めて阿倍子と会うことになった。その阿倍子も出かけてしまい、保志絵は京平と2人マンションに取り残されるが、そこに千里(千里2)がやってくる。
 
「千里ちゃん、結婚するって聞いたんだけど?」
 
すると千里は答えた。
 
「千里は結婚するみたいですね」
 
保志絵がその他人事(ひとごと)のような返事に戸惑っていると、保志絵の携帯に電話が掛かってくる。出ると電話を掛けてきたのも千里だった。千里は目の前にいるのに!?
 
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電話を掛けてきた千里(千里1)はしきりに謝り、熱心に求愛されて断れなかったなどと言っていた。保志絵は微笑んでいる目の前の千里に困惑しながら電話を掛けてきた千里に言った。
 
「こちらこそ貴司が曖昧な態度をとり続けてごめんね。幸せになってね」
 
電話を切ってから保志絵は目の前にいる千里に尋ねた。
 
「千里ちゃんって2人いるの?」
 
「それが3人いるんですよね」
 

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千里は4月に落雷に遭った時に自分が分裂してしまったことを語り、3人は最初はお互いに自分が3人いることに気付かなかったものの、周囲の人たちの反応から、やがて自分はそのことに気付いたこと。そして3人の千里がかち合わないように調整していることを語った。
 
「7月4日に東京駅で事故にあって霊的能力を失い、身体能力が大きく低下し、今、川島さんと結婚しようとしているのが1番。実は1番は事故のショックで酷い記憶喪失になって、貴司さんのこと自体一時的に忘れていたんですよ」
 
「それで他の男の人と交際してしまったのか」
 
「今は思い出して、本人は貴司さんのことも好きなのに困ったと思ってますけどね。私は2番で千里同士の衝突回避のため海外で生活しています。そして1番の事故の後で代わって日本代表になり、レッドインパルスの1軍で活動しているのが3番です」
 
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「千里ちゃんじゃなかったら信じられないよ!こんなこと」
 

夕方貴司が帰ってくるので千里はいったんマンションを出た。そして貴司と少し話し合った保志絵が出てくるので一緒に伊丹空港に行き、札幌に飛んだ。そしてそこで「説明」を要求して待機していた、妹連合(玲羅・理歌・美姫)と会う。
 
千里はホワイトボードに3つの電話番号を書き、理歌に電話させてみた。2番の番号に掛けると、千里自身が持っているガラケーT008が鳴る。3番の電話番号に掛けると電話の向こうに居るのも千里である。理歌は驚いたが、しばらくその千里と話し、全日本のチケットが取れたらお願いなどと頼んだ。
 
「電話の向こうに居たのも千里姉さんだった。これどうなってんの?」
と理歌は目の前にいる千里(千里2)に尋ねる。
 
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「もしかして1番の電話番号の向こうにも、姉貴がいる訳?」
と玲羅が言う。
 
それで千里は妹たちに、4月の落雷の際に自分が3つに分裂してしまったことを語った。また自分の占いでは、千里1の信次との結婚は来年の7月で終了し、また貴司も来年早々に離婚するというのが出ていることを語る。
 
妹たちはその説明で、たとえ1番が他の人と結婚しようとしていても、2番も3番も貴司のことを愛していて、貴司の妻だと思っていて、また1番も来年には離婚するというのであれば、自分たちは千里をこれまで通り応援していくと言った。
 
「でも千里お姉さんが3人に別れたまま、兄貴と結婚したらどうなるんだろう?」
「自分には嫉妬しないし一緒に暮らせばいいと思う。まあ貴司さんには日替わりで相手してもらおうかな」
 
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「兄貴、早死にしそう!」
 

10月22日、千里3は名古屋での試合を終えた後、新幹線で大阪に移動し、いつも待ち合わせ場所に使っている中央区のNホテルに行った。ロビーに貴司がいるので笑顔で寄っていく。貴司はこの日会えるかどうか半信半疑のまま待っていたのだが、千里が来たので泣いて喜んでいた。その様子を見て、千里は
「どうしたの?」
と不思議そうに尋ねた(演技)。
 
貴司は千里がスマホに(自分が再度贈ったと思っている)リング状のストラップが付いているので、やはり自分を愛してくれているんだ、と感動していた。
 
そういう訳で貴司とデートした千里は、5-6月は1番だったが、7月以降は3番である。2番は自分がデートした場合、次デートした時に混乱が生じやすいので、最初は1を毎回デートさせるつもりでいたのだが、1に事故が発生したため、その後は3にやらせている。
 
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実際の所、千里3としては「混乱が生じにくいように」という千里2の配慮を利用して、まんまと毎月貴司と“いいこと”をして楽しんでいるのである。しかしさすがに自分だけでは悪いので、この年、3番は何度か貴司に市川ラボでの練習を勧めておいて《きーちゃん》に
 
「ごめん。貴司が市川に行くけど、私忙しいから誰かに代わりに食事を用意させて」
と言って、その機会を利用して千里2は市川でデートしている。2番もそれが実際には3番の配慮であることには、この年は気付かなかった。
 

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11月10日、与党の老齢の大物代議士が亡くなった。そこから半年後に始まる“上島騒動”を予測した人が3(+1)人だけ存在した。
 
千里2はこの事件に冬子が巻き込まれないようにするため、青葉からの警告を装って、しばらく上島雷太と会わないようにして、何かに誘われたりしても絶対にその話に乗らないようにしてと伝えた。
 
またもっと巻き込まれやすそうな雨宮先生については、先生の居場所をほぼ常時把握している三宅先生に、
「近々上島さんがトラブルに巻き込まれます。雨宮先生がそれに連座しないよう、あまり上島さんと会わせないように気をつけてください」
 
と言った。三宅先生は、怪しげなダイエット商品や毛生え薬などの類いのトラブルを想像していたようであるが、
「だったらしばらく海外にでもやっておくか」
と言い、数回にわたって雨宮先生に、アメリカやドイツなどでの用事を作り、渡航させている。雨宮先生は「海外なら浮気ができる!」などと思い、浮き浮きして出かけていたようである。
 
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しかしそのお陰で雨宮先生は連座を免れた。今回の事件では上島さんと親しい同じワンティスの水上信次も逮捕まではされなかったものの、任意で事情を聞かれ、起訴猶予処分になる(上島さん同様1年間の謹慎になった)。
 

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沖縄でノロをしている明智ヒバリは紅川会長を沖縄に呼び、深刻な事態が起きかけていることを伝えた。紅川はそれを持ち帰り、コスモスと協議したが、コスモスがその問題を知っていたので驚いていた。むろん千里3から言われていたのである。
 
「ヒバリちゃんも醍醐君も言うのなら間違い無いな」
 
ということで千里(千里3)も呼び、3人で協議して“脱上島作戦”(MIU - Maneuver of Independence from Ueshima) を開始する。
 
この時点でこれを知っていたのはその3人だけで、ゆりこにも言っていない。
 
実際の作戦では、§§系の歌手の楽曲にかなり上島作品を使用していたのを、東郷誠一・醍醐春海・山下鐵カ・阿木結紀・寺内雛子などの作品に切り替えていく。それだけでは足りないので、過去の§§プロの歌手の作品で、上島以外の作曲家が書いたものを、必要な許諾を取った上で、新たなアレンジにしたり、新歌詞を乗せたりして再利用した。コスモス自身が忙しいのでこのあたりは紅川が走り回って進めていった。
 
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(話を聞いていないゆりこは“春風アルトの父親代わり”を自称する紅川会長が、上島さんの度重なる浮気に怒って上島作品を外し始めたのかと思っていたらしい)
 
編曲は台湾の編曲工房サンフラワー・ミュージック・スタジオ(向日葵音楽工作有限公司)で進めることにした。海外の工房を使うのは、むろん目立たないようにするためであるが、この年から翌年度に掛けて同工房は特需になった。
 
元々台湾ではJ-POPが人気なので、J-POPの構造やセンスに慣れたミュージシャンが多いこともあり、この工房は料金が(日本の工房に比べて)安いわりにセンスよい編曲をしてくれる。以前日本の音楽界で活動していた台湾系の作曲家が数年前に開いた工房である。コスモス自身が過去にこの作曲家の作品を何度か歌った縁があったので、コスモス自身が実際に渡台して契約をまとめた。
 
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また、おりしも千里1は“埋め曲”ならどんどん書ける状態になっていたので、大量の楽曲を調達することか出来、随分助かったのである。
 
脱上島作戦でコスモスは千里2とも千里3とも(千里1とも)頻繁に会っているが、どの千里なのかは、千里3にも言われたようにそれぞれの“雰囲気”と“パワーレベル”で判断していたので、千里2がアクオスを持っていても、欺されることなく、よけいな情報はしゃべらないように気をつけていた。それで
 
「コスモスは使えん」
と千里2がグチを言ったりしていた。
 
この時期、正確に千里2と千里3を見分けていたのは、京平・コスモス・アクアの3人くらいで、《きーちゃん》や丸山アイ!でさえ、しばしば欺されている。
 
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丸山アイはP代議士の死去で、いよいよ数年前から構想を練っていた自動作曲システムを稼働させる時が来たと思った。それでTS大学の助手で、この方面の研究をしていたものの、資金不足で充分な研究ができないとこぼしていた山鳩さんをスカウトする。そして研究費は何億円使ってもいいから、自動作曲システムを構築して欲しいと依頼した。
 
「ほんとに何億使ってもいいんですか?」
「1000億くらいまではいいよ」
「さすがにそんなには必要ないです!」
「お金は充分あるから、個人的に持病の治療とかがあったら、それに使ってもいいよ。社員福祉ということで出してあげるから」
「特に持病は無いです」
「もし性転換したかったら、手術代くらい出してあげるし」
「僕が性転換したら、女房が仰天します!」
 
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山鳩はアイと相談の上、TS大で2014年に運用終了したスーパーコンピュータが、倉庫に眠っているのを買い取れないかと大学側と交渉した。
 
そのスパコンは実際には「廃棄した」ことになっていたのだが、廃棄するための予算が取れず、倉庫に眠っていたのである。それを結局「ゴミ買い取り」の名目で1000万円で丸山アイが買い取ることにした。このスパコンの製作費はわずか4000万円で、当時物凄い低予算でスパコンを作ったというので話題になっていた。T大・K大で制作したものと共通仕様なのだが、潤沢な予算が使えるT大などと違って予算が無いので、ほとんど汎用部品で組み上げたのである。
 
丸山アイはこのスパコンを動かせる、電力事情の良い土地を探し始めた。
 
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そして千里3は2ヶ月前に偶然S代議士から直接P代議士の容態を聞いて既に動き始めていた。“手駒”として必要になりそうな数人の人物、《せいちゃん》、《げんちゃん》《すーちゃん》、青葉、鮎川ゆま、木ノ下大吉、ひまわり女子高2年A組15番,17番などなどとの繋がりを確保し、その中の数人には密かにマーカーも付けておいた。
 
それと同時に千里3は千里1が7月の事故以降、大量に書きまくってくれている“埋め曲”の作り方を観察して、それをロジックとして整理していたのである。(実は千里3はわりとコンピュータに強い)
 
そういう訳で、丸山アイがスパコンを使った自動作曲システムの構想をまとめていた時期、千里3もチープな自動作曲システムの構想を練っていた。夢紗蒼依と松本花子の戦いは、実は2017年10月頃から始まっていたのであった。
 
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11月11日、青葉は東京辰巳で行われる短水路日本選手権水泳大会(13-15日)に参加するために東京に出てきた。実際には彪志のアパートに泊まっているのだが、そこで彪志が会社に行っている間に掃除をしていたら、ふと先日§§ミュージックに行った時、鱒渕水帆の新しいマンション選びをしている所に遭遇し、意見を求められたので、各々の物件の写真等を見て感じたままのことを伝えたことを思い出す。
 
その時、鱒渕がどれかの物件の話をした時にピクッと顔の表情が変化したことを思い出したのである。私、何かショッキングなこと言ったっけ?と思って考えている内に、鱒渕が反応したのは
 
「そこに住むと女性機能が停止して男性化するかも」
 
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という言葉だったことに気付く。
 
「もしかして鱒渕さん、生理不順か何かかな?」
 
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