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■△・第3の女(6)

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“鱒渕”は16時頃戻って来た。
 
「済みません。長時間眠ってしまって」
「ああ、少し元気になったみたいね」
と和泉は言っているが、アクアは内心びっくりしていた(無論びっくりしたことを顔に出すようなアクアではない)。
 
しかしこの後の撮影では、“鱒渕”がずっと撮影現場に付いているので、少し疲れてきたかなと思われたら即NとMを交替させることにより、元気なアクアの写真をたくさん撮ることができた。
 
パートナーの西湖の方は夕方くらいにはかなり疲れてきていた!
 
初日の撮影はビーチでの夕日撮影を挟んで20時頃まで続けられ、そのあと夕食となった。アクアは3人前の食事を平らげて、コスモスを驚かせたが、実は3人が同じ服を着ていて、交替しながら食べていたのである!
 
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そんなに食べて体型が崩れないか?とコスモスは心配したが、3人分食べた割にはあまりお腹が膨らんでいない様子なので
 
「アクアの身体は神秘だ」
などと言っていた。
 
2日目の最後には“佐斗志が女の子水着を着ける”という写真を撮った。
 
「なんか意図と違うものが撮れた気がする」
「普通に女の子が水着姿になっている様子にしか見えない」
と文句?を言われていた。
 
「でも胸が無いんですけどぉ」
「それは気にならない」
 
「アンドレア・ペジックの男性時代の写真っぽい」
「ああ。あの人はおっぱい大きくする前から女の子にしか見えなかったですもんね」
 

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23-24日には今度は“女の子・友利恵”の写真撮影をする。女の子水着を着けての撮影だが、アクアが男の子水着を着けての撮影では凄く恥ずかしがっていたのに女の子水着ではむしろリラックスしているようなので、桜井さんは
 
「もっと心細そうな顔してよ」
と注文を付けて何度も撮り直していた。
 
「君はどうも男の子水着より女の子水着のほうに慣れているようだ」
と呆れて言っている。
 
しかし桜井さんもやはり男の子を写すより女の子を写すほうが熱が入るようでたくさんの水着の着せ替えをしてたくさん写真を撮っていた。結構ハードな撮影なので、そばに付いている“鱒渕”は適宜FとNを交替で対応させて疲れが溜まりすぎないようにしていた。“アクアたち”も2時間交替で休めるような感じなのでFもNも美容液パックのシートを顔に貼り付けて仮眠し、顔に疲れが出ないようにしていた。
 
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後半の2日間は西湖が佐斗志の役を演じたのだが、
「女の子の胸を露出するわけにはいかないから」
と言われ、男子水着はつけるものの、ラッシュガードを着せられていた。実際西湖は前半の撮影でつけていたブレストフォームを外そうとしたのだが、
 
「それ着けたままでいいよ」
とコスモスから言われ、バスト偽装・股間偽装でほぼ女体のまま佐斗志を演じた。
 
しかしアクアは交替で演じているものの、西湖は1人なので、かなりくたくたになり、最終日などは随分疲れた顔のまま撮影をしていた。
 
「アクアさん、体力ありますね。僕はもうくたくたなのに」
「ボクもくたくただけで空元気(からげんき)だよ」
「すごーい!見習わなくちゃ」
 
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そんなことを西湖から言われてアクアも少しだけ良心が痛んだ。
 

ところで、後半の2日間はアクアFとNで撮影をし、Mは出演しない。そこで《わっちゃん》はMを先に帰国させることにした。この時、千里のパスポートを使うのである。
 
《わっちゃん》はタイに来る時、千里に擬態して千里のパスポートを使用しているが、現在鱒渕に擬態しているので帰りは鱒渕のパスポートで帰国する。それで誰かに千里として帰国してもらいたいのでアクアMにそれを引き受けてもらうことにしたのである。
 
そういう訳で23日夜の便で、アクアMはスカートを穿いて女装して(アクアは女装は全く平気である)千里に変装して帰国した。タイ出国の時は全く問題なかったものの、日本入国の時は自動化ゲートで偽装指紋を使用するので少しドキドキした。しかし《くうちゃん》が用意してくれた偽装指紋はさすがに完璧で、アクアMは“女性として”ノートラブルで入国。24日朝、葛西までパスポートを返しに行った。
 
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「お疲れ様。大変だったでしょ?」
「大変でした。2人で交替でやっててもかなりハードなんですよ」
「だったら西湖はグロッキーだな」
「かなり疲れが顔に出てましたけど、君の顔は写真集に残らないから問題無いとか言われてました」
 
「ああ。可哀相。あとで焼肉にでも連れて行ってあげなよ」
「そうします。私も焼肉食べたい」
「じゃ上質の神戸牛でも届けさせよう」
「わあ、ありがとうございます!」
 
それで千里は矢鳴さんに電話して、プライベートな用事で申し訳無いが神戸牛特上ロースを1kg預けている現金で買ってアクアのマンションに明日の夕方くらいに届けて欲しいと頼んだ。矢鳴さんは「アクアさんのことなら全然プライベートじゃないですよ」と言って引き受けてくれた。
 
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24日はMは丸一日ぐっすりマンションで寝ていたようである。
 

4月17日から24日までの一週間、《きーちゃん》と千里2は、千里1と千里3が同じ場所に帰って寝ようとしないか、あるいは同時に川崎や深川の体育館に出て行ったりしないか、ヒヤヒヤしながら調整していたが、実際には何も考えずに行動しているのは千里1のみで、千里3は1の動きを把握した上で、そちらと遭遇しないように行動していた。寝る時も用賀・経堂・葛西の中で、1番が入らなかった所に3番が入り、最後に空いている所で2番は寝ていた。
 
2番と《きーちゃん》は話し合い、3人の千里が国内で勝手に動き回っていたら、いづれ破綻は避けられないとして、3人の内2人は海外に出るようにしようと計画した。それでまずは3番をフランスに派遣しようということにしたのである。その上で自分はアメリカに行くのである。
 
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4月24日(月).
 
午前中、千里3は深川アリーナで練習していた。
 
するとそこに日本代表の坂口代表に扮した月夜(つーちゃん)と風田アシスタント・コーチに扮した絵姫(えっちゃん)がやってくる。千里3は笑いをこらえながら彼ら(彼女ら?)に応対する。
 
千里は小学生の時にこの2人と会ったことがあるのだが、もう15年ほど前のできごとなので、2人はまさか覚えていまいと思っているのだろう。
 
2人は今回のアジア選手権は若手中心に臨みたいので、来年の世界選手権の中核になるであろう千里と玲央美には日本代表チームからは外れて、海外で実力を磨いて欲しいと言った。千里は不満そうな顔をしてみせながらもその話に同意する。それで千里はフランスのLFB(Ligue feminine de basket)、玲央美はスペインのLFB(Liga Femenina de Baloncesto)に派遣されるということだったのである。
 
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坂口(に扮した)月夜は千里のパスポートを確認するような振りをしてそれをすり替えた。むろん千里3は気付かない振りをしている。
 
実は千里3が持っていたパスポートは(M3)といって、千里1が持っているパスポート(M1)のクローンなので両者は記録が連動する。千里1が4月30日に日本代表の活動でアメリカに渡るので、入出国記録が混乱しないように千里3にはもうひとつのパスポート(F)を渡したのである。
 
(千里は今朝帰国した龍虎Mからパスポートを受け取ってから、ここに出てきていた。ここは綱渡りになってしまい、千里3も少し焦った)
 

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千里3は自分の行動が全て監視されていることを想定した上で“この千里”は桃香が大間産婦人科に入院していることを知らないはずだからと考え、桃香に電話した上で、入院しているという話に驚いてみせ、アテンザに乗って病院に行った。それで桃香にしばらくフランスに行ってくると告げた。桃香は午前中に来た(来たのは千里1)時はアメリカに行くと言っていたのに!?と思うが、ここ数日の千里の混乱状態にはもう慣れてきていたので「気をつけてね」と言っておいた。
 
その上で千里3が用賀のアパートに戻って荷造りをしていたら《きーちゃん》がやってくる。そして海外ではもうガラケーは使えないから三宅先生から渡されたAquosを使えばいいと言い、T008はいったん預かると言った。千里は《きーちゃん》も言い訳考えるのが大変だなあと思いながら"T008"を彼女に渡す。それで《きーちゃん》はまんまとT008の回収に成功したと思っている
 
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実際にはT008, Aquos Serie mini, Zenfone は全てクローンを作っていて片方を《わっちゃん》が持っているので1個渡しても千里は困らない。再度《わっちゃん》が持っているもののクローンを作ってもらってそれを自分が持っておけばよい。
 
《きーちゃん》は「T008からSerieにアドレス帳をコピーしてあげるよ」と言って、T008側でアドレス帳をいったんSDカードにコピーし、それをスマホにセットして本体にコピーしてくれた。
 
この時彼女が手品のように素早くSDカードをすり替えたのを千里は見逃さなかった。それで《きーちゃん》が帰ってからスマホのアドレス帳を見ていると、怪しい“気”が漂っている項目がある。
 
玲央美の電話番号である。
 
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開いてみる。
 
Zenfoneの方に登録されている番号とは違う。
 
千里は笑いをこらえながら“玲央美”に電話した。出たのは玲央美の声ではあるものの、実際には先日風田コーチに扮していた絵姫である。これで欺そうとするのはさすがに私を舐めてるぞと思いつつも、千里は彼女たちの“工作”には全然気付かないふりをして“玲央美”と会話し、スペインと・フランスと別れるけど、お互い頑張ろうと言った。
 

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千里(千里3)は渡航の準備をして、翌4月25日(火)に成田空港に向かった。ここで日本代表の坂口チーム代表に扮した月夜から、バスケ協会の人で雑用係の工藤映玲南と名乗る絵姫!を紹介される。
 
なんか少人数で頑張って役を回している零細劇団のようだ、などと思いながら、千里3は月夜に見送られ、絵姫と一緒にシャルル・ド・ゴール空港行きのエールフランス便に乗り込んだ。
 

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プーケットに行っていた龍虎たちは24日の午後まで撮影をした。この日の最後には、“友利恵が手ブラしているシーン”、“佐斗志と友利恵が手をつないで海に向かって走って行くシーン”を撮影した。
 
実際に手ブラをしたのはアクアNである。Fは「女の子のそんな写真撮るなんて」と怒っていたが、撮影スタッフは全員アクアを男の子だと認識しているので仕方ない。NがFをなだめて、自分が撮影に応じた。従って写真に写ったのはFの本物バストではなく、Nの偽装バストである。
 
手を取って走って行く後ろ姿のシーンは、佐斗志をアクアN、友利恵を葉月が演じた(Fは胸があるので佐斗志役ができない)。この写真集で唯一、葉月の身体の全体が映像に残ることになった写真である。
 
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葉月の身体を写真に残したのは、女の子のビキニ姿などは実は身体だけ葉月の身体を使い、顔をアクアにすげ替えたコラージュではないかという疑いを持たれないようにするためである。葉月の身体を写真に残すことで、それが他の“友利恵”の写真とは体型が異なることを示している。
 
(葉月はほぼ全てのファンから女子だと思われている)
 

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撮影が終わると、“アクア”・西湖・コスモス・和泉・“鱒渕”の5人はその日の夕方の便で帰国した。到着したのは25日の朝7時である。
 
アクアはそのまま学校に行った・・・ことになっているが、実際には飛行機で帰国したのがアクアNで、学校には前日帰宅して1日休んだMが出て行っている。Fは《わっちゃん》にタイから日本の自宅へ転送してもらった。
 
結局25日の午前中、龍虎のマンションでは転送してもらって1晩マンションで眠ったFと、飛行機で帰国したNがいて、ふたりは
「疲れたねぇ!」
と言って、冷凍室の豚肉を解凍して焼いて食べた。
 
ところがお昼過ぎに千里(千里3)から神戸牛特上ロースが1kg届く。
「おお、素晴らしい!」
「そういえばそういう話があった」
 
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その話を聞いたのはMだが、Mが聞いた話はF・Nも知っている。
 
「そうだ。少しせいちゃん(西湖)にお裾分けしてあげようよ」
「OKOK」
 
それで《わっちゃん》に頼んで、お肉を250g分けて、西湖のマンションに届けてあげた。《わっちゃん》は事務所の月原に扮して西湖のマンションに行き、お肉を渡したが、感激してアクアに御礼の電話をした。
 
「醍醐春海先生から頂いたからお裾分け。今度醍醐先生に会った時に御礼言っておくといいよ」
「分かりました!」
 

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