広告:メイプル戦記 (第1巻) (白泉社文庫)
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■△・第3の女(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2019-03-29
 
4月20日(木)の放課後、アクアは鱒渕さんの運転する“白いアクア”に乗って羽田空港に向かった。プーケットで写真集の撮影をするためである。
 
21日の金曜と24日の月曜は学校を休み、4日間で写真集の撮影をしようという魂胆なのである。実際の撮影予定は次のようになっている。
 
21-22 男の子の“佐斗志”の水着写真
23-24 女の子の“友利恵”の水着写真
 
そこで“龍虎たち”と千里3は話し合い、次のような分担にすることにした。
 
20(学校)龍虎F
21 AM 龍虎N PM 龍虎M
22 AM 龍虎N PM 龍虎M
23 AM 龍虎F PM 龍虎N
24 AM 龍虎F PM 龍虎N
25(学校)龍虎M
 
準備作業のため《わっちゃん》が千里に擬態し、千里3のパスポート(M3)を持って一緒にプーケットに渡り、アクアが泊まる予定のホテルに入ることにした。《わっちゃん》は《くうちゃん》から転送(正確には交換と転送)の“鍵”を預かっており、撮影中でも疲労が来ているなと思ったらすぐに交代させることにしていた。
 
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今回(公式に)プーケットに行くのは下記である。
 
アクア、コスモス、鱒渕、西湖、KARIONの和泉(アクアのディレクター)
写真家の桜井理佳と助手の四家芳絵
 
桜井さんと四家さんは数日前に先行してプーケットに入り、ロケハンをしているし、和泉も彼女たちと打ち合わせて計画を練るため19日に現地入りしている。
 
それでアクアは、コスモス・鱒渕・西湖と一緒に4人で同じ飛行機に乗る。
 

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西湖は20日、学校の授業が終わるとタクシーで駅まで行き、電車で羽田に移動した。
 
桶川15:58-16:55品川17:02-17:25羽田空港国際
 
荷物が多いなあと思い、荷物を少し整理して学校の教科書やノートなど、向こうで使わなそうなものを空港のコインロッカーに預けた。
 
待ち合わせ場所の“江戸舞台”に行くと、コスモス社長(とサポートのために来ている沢村マネージャー)がいたが、コスモスが顔をしかめる。
 
「その格好で来たの?」
「え?まずかったですか?」
 
西湖はいつも放送局などに入る時のセーラー服を着ているのである。
 
「あんた、パスポートの性別は?」
「あ、男かも」
「念のため確認して」
「はい」
 
それでバッグからパスポートを取り出してみるが、このような記載である。
 
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Surname AMAGI
Given name SEIKO
Nationality JAPAN / Date of birth 20 AUG 2002
Sex M / Registered Domicile SAITAMA
Date of Issue 02 NOV 2012
Date of Expiry 02 NOV 2017
 
「男の子になってるね。航空券も男で取っているよ。その格好では男の子に見えないから着換えよう」
 
ということで、西湖はポロシャツにジーンズ(ズボン)という格好に着換えてくることにした。
 
「戸籍上の性別を変更したら女の子の格好でもいいけどね」
「それどうやったら変更出来るんですか?」
 
「性転換手術を受けて女の子の身体になった上で家庭裁判所に申請すれば変更できるけど」
「私、性別変更した方がいいですか?」
「君が性別変更したいというのなら止めないし、契約にも反しないけど、あまりお勧めはしない」
 
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「ちなみにアクアさんのパスポートは?」
「男の子だよ」
「だったら私も男のままでいいです」
「君はアクアがもし女の子になったら、君も女の子になるの?」
とコスモスは呆れぎみに言う。
 
「その時考えさせてください」
 

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龍虎は16時に授業が終わると、その後の掃除まで参加して、その後16時半頃、迎えに来てくれていた“白いアクア”に乗り込み、羽田空港に向かった。
 
ちなみに、学校で掃除まで参加したのはアクアFであり(この日はスカート姿で授業に出ていたものの誰も何も言わなかった)、鱒渕の車に乗ったのはアクアMである。赤羽のマンションでM・Nと一緒に待機していた《わっちゃん》がトイレの個室内のFから“直信”をもらい、MとFを入れ替えたのである。Mは体操服を着ていたので、制服で個室に入った龍虎が体操服を着て出てきたことになるが、龍虎がトイレの個室内で着換えるのは、わりとよくあることなので、誰も疑問に思わなかった。
 
ちなみに使用しているのは女子トイレである!
 
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(C学園には生徒用の男子トイレは存在しない。武野君は職員・来客用の共用トイレを使用している)
 
なお、3人の内Mが飛行機に乗ることにしたのは、万一入出国の時に性別を疑われて身体検査などされた場合に、男の子の身体でないとまずいからである。
 

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「アクアちゃん、空港で取材の人が居るかも知れないから、この服に着替えて」
と鱒渕マネージャーから言われて、車内で(男性用)スーツに着換える。
 
普段はこの車を鱒渕マネージャーが運転するのだが、今日は鱒渕自身も渡航するので、代わりに研修生で運転のうまい吉田和紗(後の桜木ワルツ)が運転していて、鱒渕は助手席に乗っていた。それで着換えた体操服は教科書などの入ったカバンと一緒に、和紗に預かってもらうことにした。
 
「自宅マンションに持って帰ってついでに洗濯しておきますよ」
「すみませーん!」
 
それで鱒渕マネージャーが持っているアクアのマンションの鍵を和紗に渡していた。このマンションの鍵は、アクア本人と母、彩佳!、鱒渕の4人が1本ずつ持っているほか、事務所の社長の机の引出しにも1本置いている。ただしこの引出しを開けられるのは、コスモス・ゆりこ・紅川の3人だけである。この鍵は電子式で、ミスターミニットなどでは合鍵を作れない。
 
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(アクアは現在不動産会社に頼んであと2本注文している。むろん3人のアクアが1本ずつ持つためである)
 

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首都高で事故による渋滞があったため、羽田国際ターミナルに到着したのは、17:40頃であった。アクアと鱒渕が降りて、和紗は龍虎の荷物を持って帰るため車を赤羽に向けた。
 
アクアが“江戸舞台”まで行くと、案の定記者が数人来ていた。それでアクア単独およびコスモスと並んだ所の写真を撮られ、取材もされたので笑顔で質問に答えておいた。記者たちが帰ってからアクアは尋ねた。
 
「葉月ちゃんは?」
「あの子、セーラー服で来てたから着換えに行かせた。パスポートが男だから女の子の格好しているのはまずい」
 
「あの子も少しずつ自分の性別が分からなくなってきつつある気が」
とアクアは言う。
 
「実際、あの子は女の子だと思っている人の方が多くないですか?」
と沢村が尋ねる。
 
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「たぶん男の子だと認識している人が20人以下という気がする」
とコスモス。
 
「うーん・・・」
 
やがてその葉月が戻ってきた。着換えたセーラー服は沢村さんに預かってもらった。
 
「これ君の自宅に届けておくよ」
「すみませーん」
 
(所属タレントの家の鍵は事務所の金庫に全部合鍵があるので、それで入れる。アクアのマンションの鍵だけ金庫ではなく社長の机の引き出しである)
 
全員パスポートを持っていて航空券と氏名(のスペル)・年齢・性別が一致していることを確認の上、取り敢えずみんなで夕食に行った。時間は充分あるので、その後お茶を飲み、21時頃、沢村に見送られて保安検査場に向かった。
 

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4/21 0:20のバンコク行きに乗る。これは4/17に千里が乗ったのと同じ便である。4:50にバンコクのスワンナプーム国際空港に到着するが、時差が2時間あるので日本時間では6:50である。
 
例によって入国審査で、アクア・葉月ともに「性別が違う」と言われてトラブる。ふたりとも学校の生徒手帳を見せて確かに「男」と記載されていたので、身体検査などはされずに何とか入国出来た(日本語が読める係官だった)。
 
その後プーケット行きの国内便に乗り継いで、プーケットには8時半に到着した。取り敢えずホテルに入り、荷物を置くが、この時、アクア(アクアM)は《わっちゃん》の部屋に行き、そこで(昨日の夕方、日本から転送してもらって)待機していたアクアNと服を交換して入れ替わった。つまりNはホテルのベッドで一晩ぐっすり眠ってから撮影に臨むことになる。
 
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「じゃ撮影頑張ってね」
と言って送り出し、Mは取り敢えずベッドで寝た。
 

初日の撮影が始まるが、今回は水着写真がメインなので、アクア(アクアN)は男子水着を着せられて胸を露出する。Nは「恥ずかしー」と思った。今回の写真集の1つの目的はアクアの“女体疑惑”否定なので、胸を露出する写真が必要である。もっとも、桜井さんからブラ跡が取れてないことを指摘される。
 
ブラ跡が消えるように1週間前からブラジャーの着用を禁止されていたのだが、ずっと着けていたものを着けないようにしても、すぐには消えないようである。
 
「不本意ですけどPhotoshop上で修正してください」
とコスモスは言った。
 
(実はN・Mはブラを着けていなかったもののFがブラを着けていたので、Fのブラ跡がN・Mにも出ていたのである。3人の身体はシンクロしている)
 
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アクアが胸を写されるのを明らかに嫌がっているので、多くの写真はラッシュガードを着けて撮影することにし、胸露出の写真は少数に留めることにした。
 
そして最終的にはコスモスと和泉の話し合いでブラ跡は“修正しない”ことにした。
 
写真修正の跡は見る人が見れば分かるのでブラ跡が修正されていたらバストも実は存在するのを修正して無いように見せているのではと言われる。それで完全に無修正の写真であることをアピールした方がいいということになったのである。
 

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なお、最初の2日間は“男の子の佐斗志”の写真を撮るので、結果的に西湖が友利恵役を務める。それで西湖は女子水着を着ることになり「え〜!?」と叫んでいた。
 
「葉月ちゃん、お仕事お仕事」
「頑張ります」
 
最初ちゃんとタックしていなかったので、女子水着のお股が盛り上がってしまう。
 
「そのお股の所が邪魔なんだけど、ちょっと病院に行って手術して取ってしまったりできないよね?この島にはそういう手術してくれる病院もあるし」
 
「勘弁して下さい」
 
それで時間をもらってきちんとタックする。
 
「あ、盛り上がりが無くなったね。手術してきた?」
「そのあたりは企業秘密で」
 

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西湖が着せられる水着は最初はふつうのワンピース水着だったものの、その内ビキニなども着せられて、西湖は悲鳴をあげていた。
 
「でもおっぱいはあるんだね。ホルモンか何かで大きくしたの?」
「すみません。それも企業秘密で」
 
「だけどアクアちゃんも葉月ちゃんも中性的なのがいいなあ。これは普通の女の子の写真より売れる気がするよ」
 
などと写真を撮っている桜井さんは言っていた。
 
「正確にはアクアちゃんは無性体、葉月ちゃんは両性体かな」
と桜井さんが言うと
「私もそんな気がしていました」
と和泉が言った。
 

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撮影は10時頃から始まり、13時頃いったんお昼で休憩したのだが、お昼を食べている時、鱒渕さんが食べながら眠り掛けた。それでコスモスが
 
「鱒渕さん、少し休んできてください。私も和泉さんもいるから大丈夫ですよ」
と言うので
「すみません。でしたら1時間ほど休ませて下さい」
と言って自室に行った。
 
それをアクアからの直信で知った《わっちゃん》は《くうちゃん》に頼んだ。
 
『この人疲れてるみたいだし、今回の日程が終わるまでずっと寝せておきません?』
『ああ、その女性は今の状態では帰国前に死ぬと思った』
『死んじゃいます!?』
『全ての臓器が衰弱している。もう寿命が燃え尽きようとしている』
『嘘!?』
『千里のエネルギーの泉の中に入れよう。それで帰国まで眠らせておく。そうしたら多分1年程度は寿命が延びる』
『それでも1年?』
『僕が確信できるのはそこまで。その先は本人の生命力次第かな。取り敢えず帰国したらすぐ入院させた方がいい』
 
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『では入院については千里さんとも相談して。取り敢えずそのエネルギーの泉の中に入れる件、お願いします。私が彼女の身代わりになります』
『よし』
 
そういう訳で《わっちゃん》と《くうちゃん》の話し合いで、鱒渕は千里の“エネルギーの泉”の中に千里には無断で!放り込まれた。ここは普段は千里の眷属たちのホームステーションで、眷属たちはここで休むことにより身体と心を癒やされ、また活動するための活力を得るのである。
 

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