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■△・第3の女(2)

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2017年4月16日の夜、龍虎(アクア)は22時すぎに仕事が終わり、西湖と一緒に鱒渕水帆が運転する“白いアクア”で港区のスタジオを出た。鱒渕は赤羽に行って22:50くらいに龍虎と西湖を降ろした。正確には龍虎はマンションの前で、西湖は赤羽駅で降ろす。西湖はそこから電車で桶川まで帰る。鱒渕はふたりを降ろした後、川崎市麻生区内の自宅まで戻る。近くの月極駐車場に駐め、学生時代から暮らしている1Kのアパートに入る。
 
今もらっている給料なら3LDKくらいのマンションに充分住めるが忙しすぎて引越を考える余裕もないのである!
 
到着したのは0時すぎである。鱒渕はシャワーも浴びずにベッドに潜り込んで眠った。
 
夢の中ではアクアが3人に分裂して仕事が3倍になり、鱒渕はとても手が回らずに「もう死ぬぅ!」と叫んでいた。
 
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西湖は赤羽駅で降ろしてもらうと高崎線に乗って30分で桶川到着。そこからタクシーで自宅マンションに戻った。西湖は念のため冷蔵庫の中に何もないのを見てから、コンビニに行くことにした。スタジオを出る時に着ていた制服を普段着に着替える。ちなみに着ていたのは中学の女子制服!である。
 
2015年秋に『ねらわれた学園』の端役の人たちの役を決める時、西湖はアクアのボディダブルを務めるのと同時に同級生の男子役(顔出し)ももらえるということだったの会議に出席した。台詞テストを受けた時に監督が
 
「君うまいね!男子のセリフのある役はもう埋まってしまっているけど、君って女顔だから、女子の同級生役してくれるなら、セリフのある役をあげるけど」
 
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と言われたので「やります!」と答えた。それで女子生徒として顔出し・セリフありの役をもらった。
 
しかし女子生徒役だから、撮影現場にも女子制服で来てねと言われたので、適当な女子制服を川崎ゆりこ副社長から出してもらい、それを着てスタジオ入りしているのである。実際には西湖は学校が終わった後、駅の多目的トイレ!で女子制服に着替えた上で放送局やスタジオなどに入る。そして帰りは女子制服のまま帰宅して自宅で着換えている。
 
コンビニに行く時に普段着に着替えているのは、埼玉県の条例で、18歳未満は22-4時の間、出歩いてはいけないことになっているので、制服を着たままコンビニに入ると注意されるからである。とはいっても西湖の両親は劇団事務所に詰めていてほぼ不在なので、コンビニが利用出来ないと西湖は餓死してしまう!
 
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そういう訳で知り合いのコンビニの店長さんが目こぼしをしてくれるものの、制服は勘弁してということだったので普段着に着替えているのである。
 

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コンビニは今日は店長さんがお休み(あるいは休憩中?)のようで、バイトの女性だけだった。この人ともわりと顔なじみなので、一瞬「ん?」という顔はしたものの、すぐに笑顔になって「いらっしゃいませ」と言われ、夜間外出の注意はされなかった。
 
スパゲティ・カルボナーラとLチキ2個、おにぎり2個(朝御飯用)とインスタント味噌汁、1Lの紙パックジャスミンティーを買う。Lチキを2個・おにぎりを2個買ったせいか、おしぼりを2個、持参のエコバッグに入れてくれた。それも要らないと言おうとしたのだが、袋は不要と言ったのでいったん取り出したレジ袋をしまっていたので、更に面倒を掛けるのは悪い気がして、まいっかと思い受け取った。
 
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お金を払った後でコンビニの人が“29赤”のボタンを押すのを見る。
 
ボクだいたい女の子だと思われること多いなあ、などと思うが、スカートを穿いている子は女の子と思われるのが普通である!
 
(アクアから大量に女物の服をもらうので、それがあふれていて、西湖の家では最近制服以外の男物の服が発掘困難になりつつある)
 
ちなみに“19赤”ではなく“29赤”を押されたのは、未成年だと声かけとかしないといけないからかな、と思った。
 
「そうだ。これ時間が過ぎて本当は廃棄しないといけないんだけど良かったら」
と言って、肉まんとポテトの入った袋を渡される。
 
「ありがとうございます!頂きます」
と言って笑顔でもらう。
 
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「夜道気をつけてね。懐中電灯とか防犯ブザー持ってる?」
と訊かれたので
「はい。どちらも持ってます。ありがとうございます」
と答え、懐中電灯はポケットから取り出して、点灯させてからお店を出た。
 
両親からほぼ放置されている西湖は日々このようにして命を繋いでいるのである。
 

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22:40頃に赤羽のマンションの前で降ろしてもらった龍虎はエレベータで10階まであがり、自分の部屋に入った。
 
このマンションは18階建てなので、高額所得者の龍虎であれば最上階の18階に住んでも良さそうだが、10階に住んでいるのは“消防車の梯子が届く高さ”を選んだからである。一般的なはしご車は30mまでしか届かない(一応東京消防庁は40mのはしご車や消防ヘリも持っている)。このマンションの10階の床が28mの高さなので、10階以下に住むことにしたのである。
 
自分の部屋に入ると、まず服を全部脱いでしまう!それからバスルームに行き、熱いシャワーを身体に掛ける。これでかなり疲れが取れるのである。
 
身体を拭いてファンからもらったマイメロのバスローブを着る。
 
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テーブルの上に母の字で「夕食と朝食作っておいたよ。冷蔵庫の中」というメモが置かれている。龍虎は微笑んでまずは冷凍室から、そのままチンOKの保存容器に入った御飯を取り出してチンする。その後、冷蔵庫の中から晩御飯っぽい回鍋肉(ホイコーロー)を出して、それもチンした。
 
食卓に持って行き、足を伸ばして座椅子に座り、
「頂きます。お母ちゃんありがとう」
と言って食べようとした時、
 
「そうだ。あのジュース飲んじゃおう」
と言って、撮影の時に沢田峰子さんからもらったオーストラリア土産のジュースのことを思い出し、バッグの中からそれを取り出そうとした。
 
その時、突然凄い光と音がした(と思った)。
 

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「わっ!!!」
 
と声をあげ、後ろに倒れるようにして手をつく。そして龍虎は目の前に居る2人の人物を見て
 
「君たち誰?」
 
と言ったが、目の前に居た2人も
 
「君たち誰?」
と言った。
 

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2017年4月17日 0:25頃。
 
“千里”はバンコク行きの飛行機に乗っていた。前日になるが22:50頃に桃香・京平・雨宮先生から続けざまに連絡があった。
 
(1)経堂のアパートにいる桃香からは「産まれそう」という連絡
(2)大阪の京平からは「ママのぐあいがわるい」という連絡
(3)タイの雨宮先生からは「お金持って来て」という連絡
 
である。それで「身体が3つ欲しいよ」と思いながら選手村のビルを出て駐車場へ向かおうとしていたら、物凄い光と音があった。一瞬気が遠くなったが、気が付いたら羽田空港に居た。それで《くうちゃん》が転送してくれたのかな?それにしては激しい転送の仕方だなと思いつつも、羽田に飛ばされたということは、タイに向かえということだろうと思い、バンコクへの往復切符を買い、0:20発の便に乗ることにした。
 
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切符を買った後で《くうちゃん》に、
 
『桃香の用事と京平の用事は何とかなります?』
と尋ねたら
『何とかなるよ』
というお返事があったので、安心した。多分誰か他の眷属を行かせたのだろうと考え、京平には後で連絡しておくかと思った。
 
桃香は自分の眷属が自分に扮して行ってもそれを千里自身と思うだろう。しかし京平にはその手の偽装は通じない。それが誰なのかを見抜いてしまう。でも別に問題ないだろう。京平は明らかに自分より遙かに高い霊的能力・・・の素質を持っている。まあ、さすがに1歳10ヶ月では、まだまだ私には及ばないけどね!
 
(京平の誕生日は2015年6月28日15:30)
 

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出国手続きをして搭乗口で待っていたら電話が鳴る。これが23:40頃であった。見ると龍虎(アクア)からであった。
 
「はい」
「千里さん、折り入ってお願いがあるんですが、今どこにおられます?」
「羽田だけど」
「どちらかに行かれます?」
「タイまで行くけど、明日の夕方くらいまでには帰国するよ」
「慌ただしいですね!」
「エロい先生の用事でね」
「あの先生ですか!大変ですね」
「何の用事だった?」
 
「千里さんでなきゃ信じてもらえないようなことなんです。もしよかったら明日帰国なさってから、お疲れの所申し訳無いのですが、夜中でも会えないでしょうか?」
 
「何か急ぎの用件なのね?」
 
今夜は何て日だと思った。これでは身体が4つくらい欲しいぞなどと思う。
 
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「そうなんです。千里さんもお忙しいのに申し訳無いんですが」
と龍虎は言っている。
 
「龍ちゃんには負けるよ!だったら明日の夜。龍ちゃんのマンションに行けばいい?」
「はい」
「じゃそれで」
 

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それで龍虎とは電話を終えた。
 
すぐに搭乗案内が始まる。千里はエコノミーなので優先搭乗は無い。立って列に並ぶのは疲れるので列がはけるのを待ってから搭乗ゲートを通った。
 
席に着いてから20分ほどでB747は羽田空港を離陸した。千里は寝てようと思ってから、ふと気付いて《きーちゃん》に語りかけた。
 
『ね、きーちゃん。誰がどちらに行ったんだっけ?』
 
しかしお返事が無い。
 
眷属たちのリーダーは《とうちゃん》だし、いちばん千里が使っている(こき使っている?)のは《こうちゃん》だが、全体を把握しているキーパーソンであり、また千里と最も長い付き合いなのも《きーちゃん》である。それで彼女に尋ねたのだが・・・
 
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寝てるのかな?何か最近Jソフトのお仕事が大変そうだしなどと思い《たいちゃん》に声を掛けてみた。
 
ところが返事が無い。
 
ん?
 
眷属たちはこちらが頼んだ用事、あるいは勝手に見つけた用事?で千里の所から離れて行動することもあるものの、基本的に《とうちゃん》《たいちゃん》の2人はよほどのことがない限り、千里のそばを離れることは無い。だったら、よほどのことが起きている??
 
《とうちゃん》にも呼びかけてみるが返事が無い。千里は他の眷属にも呼びかけてみるが誰も返事しない。《くうちゃん》とは会話が出来るが、彼は必要なこと以外話してくれない。千里は最後に
 
『わっちゃん?』
と呼びかけてみた。彼女の正式名?はワシリーサ(Василиса)で略して“わっちゃん” である。
 
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『はい』
とお返事がある。千里はホッとした。
 
『良かったぁ。みんな居なくなっちゃったのかと思った』
と千里。
 
『私も何があったのか分からなかったんです。でも気が付いたら誰も居なかったんですよ』
と彼女は言っている。
 

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