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■娘たちの誕生日(20)

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やがて12:00になって番組が始まるが、自分の出番は12:10からである。最初の10分間は東京のスタジオから放送が行われる。
 
12:08.「スタンバイして下さい」の声があり、アクアは席を立つと後方にいるヤコさんたちとアイコンタクトする。今日はエレメントガードの4人だけではなく、ドームで伴奏に参加してくれるミュージシャンさんたちが5人加わり、9人編成である。女性4人と男性1人だが、サックスを持っている女性は男装している。その人は男声で話していたので、男声の発声法を習得したか、或いは男性ホルモンで声変わりを起こしたのかな?と思った。
 
12:10.
 
放送局のスタッフさんの手での合図とともに伴奏が始まり、8小節の前奏を聴いてから、アクアは『モエレ山の一夜』を歌い始めた。
 
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記者さんたちが或いは驚いたような表情、あるいは感嘆するような顔をしている。アイドルなんて口パクが普通になっちゃってる人も多いから、生歌なのに驚いたのかなと思ったが、バックで演奏している追加ミュージシャンの人たちまで驚いているふうなのは、くすぐったい気分だった。
 
しかし・・・
 
何?このキーボード奏者さんの動揺の仕方は?
 
《こうちゃんさん》がOKサインをしている。ひょっとして、このキーボード奏者さんがボクを襲おうとしているんだっりして?でも《こうちゃんさん》がいれば取り敢えず死ぬことは無いよね?ボクの寿命までは死なないようにしてやると言ってたもん。その寿命がいつなのかは知らないけど。
 

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『希望の鼓動』まで歌ってから席に着き、記者会見が始まる。アクアの左隣がコスモス社長、右隣がケイさんで、社長の隣が三田原さん、ケイさんの隣が千里さんである。青葉さんはこの席には座らないようだ。さっき千里さんが膨らませたバスケットボールを持ったまま、アクアから見て左側、出入口そばの壁際に立っている。
 
記者会見が始まって5分ほどした時だった。
 
突然その青葉さんが立っているそばの入口が開くと、何か黒い物を手にした男が入ってくる。男を放送局のスタッフさんが停めようとした。
 
次の瞬間、アクアは空中に浮いていた。
 
何?何?
 
空中で180度回転させられて床に置かれる。千里さんの「逃げて!」という声があった。向こうからヤコさんが駆けてくる。アクアも急いで走ってそちらに向かう。その時、ダーン!!!という銃声のようなものを聞いた。
 
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今日はボクを襲おうとする人が何人もいる訳!?
 
アイドルって大変だなあ、とアクアは他人事(ひとごと)のように思った。
 

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アクアがヤコの所に走り寄り、ヤコがアクアをハグするようにして、くるっと半回転させる。何だか何度も回転させられる日だ。
 
それで会見席の方に視線が行く。
 
コスモス社長が男に羽交い締めにされていた。コスモス社長は自分の左隣に座っていたから、きっとボクと犯人との間に立ちふさがって、結果的にボクの代わりに人質に取られたのだろう。それを千里さんが睨んでいる。
 
続いてケイさんと三田原さんが席を立った。男が「動くな!」と大きな声で言う。男が持っているのは本物の拳銃のようだ。
 
ここまで男が乱入してきてから5〜6秒だと思う。
 
ところがこの状況で青葉さんがバスケットボールを持ったまま、笑顔で男に近寄って来た。
 
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「お兄さん、そんな、か弱い女の子を人質にしちゃダメだよ」
と男に笑顔で声を掛ける。
 
男の緊張が一瞬緩む。その瞬間、青葉さんがボールを千里さんにパスした。男が振り返る。が、その前に千里さんはボールを男の手首に当てていた。
 
男が拳銃を落とす。放送局の男性スタッフ数人が走り寄る。千里さんが自分の身体をコスモス社長と男の間に割り込ませて、社長を解放した。
 
放送局のスタッフは、1人が床に落ちた拳銃に飛びつくようにして確保。他の人たちが男を拘束した。次の瞬間には女性アナウンサーがマイクを握り
 
「犯人は無事取り押さえました。コスモスちゃんもアクアちゃんも無事のようです」
とカメラに向かって言った。
 
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アクアは小さな声で「ありがとう」とヤコに言うと立ち上がり、会見席の方に歩み寄って、コスモス社長、そして千里さん、青葉さんとハグした。どうもここまでが全国に放送で流れたようだった。
 
チラッとキーボード奏者さんに目をやる。ああ、この人はもう犯意を失ったな、と龍虎は思った。
 

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プロデューサーさん?が「警察が来るまで、誰もその場を動かないで下さい」と言って、取材したそうな記者たちを制止した。
 
警察はまだ来ていないが、ケイさんと青葉さんは大阪でのローズ+リリーのライブに行かなければならないというので、そのプロデューサーさんの許可を取って、すぐにスタジオを飛び出して行った。
 
やがて警察が駆けつけてくるが、プロデューサーさん、それに上の階から降りてきたテレビ局の社長さん?が警察の責任者っぽい40代の警察官に、簡単に事情を説明しているようである。乱入した男はその人が緊急逮捕して、別室に連行させていた。結局アクアたちはライブがあるからということで、名前を紙に自署して写真を撮られ、その上でライブ終了後にあらためて事情を聞きたいということになった。コスモス社長が最初に「秋風コスモス」と署名して写真に写っていたので、アクアも「アクア」と自署して写真を撮ってもらった。
 
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続いてコスモス社長に言われて千里さん、そしてエレメントガードの4人、追加伴奏者の5人が名前を書き写真を撮られる。サックス奏者さんが、女名前を書くが、男装しているので身分証明書の提示を求められていた。ああ、まだ改名していないのねと思う。あるいは性別変更と一緒に改名するつもりなのか。
 
出演者とスタッフがそれで解放されてドームに向かう。タクシーにはコスモス社長・三田原さん・千里さんが一緒に乗った。三田原さんが助手席で、後部座席に、社長、アクア、千里さんと座る。どうもアクアを護衛するような態勢のようだ。しかし千里さんも一緒なのが心強い思いだった。千里さんに
 
『キーボード奏者の人、どう思います?』
と脳間通信してみると
『任せて。龍はライブのことだけに集中して』
とお返事があるので、任せることにして、アクアはその人のことは何も考えないことにした。気持ちを集中させていく。
 
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車内で3人は今の乱入事件のことも、襲撃予告?のことも話さず、博多のラーメンはどこが美味しい?みたいな話をしている。ボクを緊張させないように、こういう話をしているんだろうなと思った。
 
三田原さんは新興勢力の一風堂、コスモス社長は濃厚な味の長浜・一心亭、千里さんはあっさり系の名代ラーメン亭を推していた。チェーン店の金龍と一蘭、それに独特の味付けの龍龍軒、なども話題に上がっていた。名代ラーメン亭のカレーライスセットは、ラーメン単独で食べるのより、よけいお腹が空く、ということで社長と千里さんの意見が一致していたが、三田原さんもアクアも意味が分からず首をひねっていた。
 
ドームにタクシーが到着する。
 
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アクアたちは楽屋口から入るが、その楽屋口の所に制服警官が2人立っている。タクシーで通りがかりにチラッと見た玄関の方も物々しい雰囲気だ。やはり何かの犯行予告があったのだろう。アクアたちに続いて、紅川・松前・三田原の乗ったタクシー、レイと男性奏者2人の乗ったタクシー、エミとギター奏者・フルート奏者の乗った車、ヤコ・ハルとキーボード奏者の乗った車と到着する。
 
先に着いた車に乗っていた人が警官の立っている楽屋口を通過して待っている。最後にヤコ・ハル、そしてキーボード奏者が楽屋口の2人の警官の間を通過したのだが、その時、キーボード奏者が転んだ。
 
持っていた荷物が床にぶつかる。キーボードケースがゴツッといった鈍い音を立てる。ルイヴィトンの旅行バッグは軽い音。しかし大きな巾着袋は明らかに高い音がした。そして彼女は恐怖におののいたような表情をした。
 
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『爆弾か何か?』
とアクアは《こうちゃんさん》に尋ねる。
 
『爆発しないように細工しといたから安心しろ』
というお返事。
 
なるほどね〜。それで転ばせた訳か。
 

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彼女の様子がおかしいので三田原さんが「どうかなさいました?」と訊くと「いや割れ物が入っていたので」などという。
 
「だったら割れてないか見てみたほうがいいよ」
と三田原が言うと、彼女はわざわざ手袋!をして、おそるおそるバッグの中に手を入れる。もう完璧に怪しい人だ。
 
「それ落ちた時に金属性の音がしましたね」
と千里さんが言うと、警官が言った。
 
「金属ですか?念のため見せて頂けませんか?」
 
ところが彼女は突然走って逃げようとした。
 
「こら待て!」と言って警官が追いかけ彼女を確保する。もうひとりの警官が白い捜査用の手袋をしてから、バッグの中のものを取り出した。
 
時計のようなものが付いた金属製の缶が出てくる。
 
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「向こうで任意で事情をお伺いしたいのですが、いいですか?」
という警官の言葉に、女は力無く頷いた。
 

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コスモス社長がアクアとエレメントガードおよび他の伴奏者に
 
「楽屋で軽く練習してて」
と言ったので、ヤコに促されて全員控室に向かう。控室にゆりこ副社長、沢村と鱒渕がいる。ヤコがゆりこ副社長を部屋の隅に連れて行き、何かささやいている。ゆりこ社長は驚いていたが、別の控室にいた愛心とハナちゃんを呼んだ。2人とも1台ずつ電子キーボードを抱えてきている。しかし実際は2台とも愛心が弾くようで、愛心の前に2台置いた。
 
「米本さんがキーボード弾いて。それで少し練習しておいて」
とゆりこは言ってから部屋を出ていく。コスモス社長から呼ばれたようである。
 
愛心をわざわざ苗字で呼んだのは、身内の研修生ではなく外来演奏者かと思わせるためかもとアクアは思った。音楽の世界では中学生や、どうかすると小学生でも凄いプレイヤーがいる。実際愛心は、その付近のバンドでキーボード弾いている人よりは、ずっと上手い。
 
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それでハナちゃん(貫禄があるので、ディレクターか何かには見える。実はただの女子高生なのに!)の指揮で、冒頭演奏する『モエレ山の一夜』を練習する。
 
「ドーム初体験の方もあるかと思いますが、こういうのは最初の1曲がうまく行けば後は何とかなるものですから」
などとハナちゃんは言っている。ほんとに偉い人みたいだ!
 
それでさっきの騒動があって、不安そうな顔をしていた演奏者たちも気持ちを切り替えて演奏に集中できるようになったようだ。むろんアクアもしっかり歌う。
 
演奏が終わるとハナちゃんはパチパチと笑顔で拍手をした。
 
「うん。うまく行った。次は『エメラルドの太陽』行ってみようか」
 
それで20分くらい練習していたのだが、やがてコスモス社長・ゆりこ副社長と千里さんが入って来た。
 
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コスモス社長が
「醍醐春海先生が今日のキーボード奏者のパートを弾いてくださることになりました」
 
と告げると、ミュージシャンたちの中から歓声があがっていた。
 
「醍醐先生なら安心ですね!」
と今キーボードを弾いていた愛心が笑顔で言ったが、それを見て、千里さんは
 
『あ、私が弾かなくても、この子も弾けたじゃん』
といった顔をした。きっとコスモス社長がうまく乗せて千里さんに頼んだのだろう。でも確かに愛心が弾くより、“醍醐春海先生”が弾く方がミュージシャンたちは安心するかもね。ブランド効果だ!
 
それでハナちゃんが再度指揮して、愛心に代わって千里さんがキーボードの前に立ち、軽く練習をした。結局ハナちゃんはまるで今日の音楽監督でもあるかのように、色々指示を出しながら、14時くらいまで練習を続けた。
 
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その後、休憩になるが、アクアはコスモス社長から
「少し寝ておいた方がいい」
と言われ、控室の隅のベッドに横になった。千里さんも
「ヒーリングしてあげるから寝ていて」
と言ったので、アクアは目を瞑ったらすぐ眠りに落ちてしまった。
 
45分ほど寝ていたようである。ヒーリングのおかげか身体がスッキリしている。トイレに行って来てから衣装に着替え、メイクもしてもらいながら気持ちを集中して行く。
 
さぁ、歌うぞ!
 
伴奏者たちに続いてアクアがステージに出て行くと物凄い歓声である。アクアは笑顔で観衆に手を振ると、伴奏者たちの前奏に続いて『モエレ山の一夜』を歌い始めた。
 

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姫路スピカの幕間パフォーマンスをはさんで2時間半ほどの歌唱を終えると、アクアはくたくただった。再度千里さんに少しヒーリングしてもらった。
 
「昨日あたりから少しだるかったんですけど、やはり疲れが溜まっているせいですかね?」
などと言ったら
「うーん。ちょうど排卵期みたいだから、ただの排卵痛じゃない?あまり気にしない方がいいよ」
と千里さんは言っていた。
 
うーん・・・。
 
「排卵日だから、男の子とセックスしないようにね。妊娠するから」
 
ボクが妊娠!?
 
それは困る。
 
「セックスはしませんよぉ」
「自分ではしないつもりでも、レイプされることだってあるから。絶対1人にはならないようにね」
 
「はい。それは気をつけます」
「アクアが妊娠したなんていったら、事務所が倒産するから」
「あははは」
 
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