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■娘たちの誕生日(3)

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三つ葉のメジャーデビューCDは、他の有力アーティストの発売が無い日を慎重に確認して9月7日と決まり、6月中旬、実は手売り用に制作された『恋のハーモニー』と同じくらいのタイミングで、プロデューサーの毛利から、千里(醍醐春海)と北原春鹿(戸奈甲斐)に依頼された。しかしどちらも時間が取れない状況だったので、結局青葉(大宮万葉)と寺内雛子が代行することになった。
 
「それ男の子トリオ用のを書くんですか?女の子トリオ用のを書くんですか?」
と寺内雛子は名古尾に尋ねて来た。
 
「女の子トリオ用のでお願いします」
「ああ、やはり性転換はしないんですか?」
「さすがにそんなことしたら放送局が潰れます」
「いい病院知っているのに」
 
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両者ともすぐに曲を書いてくれたので、三つ葉の3人は実際には7月上旬からこの楽曲を練習しはじめ、7月下旬には既にマスターができあがっていた。そして8月上旬にはプレスして、8月14日の福岡の販売会で『恋のハーモニー』が3万枚売れた時点で、FM局などにサンプルを配布し、万全のプロモーション態勢をとってきた。
 
それで9月7日の発売日には予約も含めて初動5万枚、デイリー・ランキング、週間ランキングの1位を獲得して、順調な滑り出しをすることができた。このCDは最終的には10万枚を超えてゴールドディスクとなる。
 
この好評な営業成績を受けて、秋のツアーなども決まった。
 

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千里たちバスケット日本女子代表は8月6日からリオデジャネイロ五輪に参戦した。
 
女子は参加する12ヶ国が6ヶ国ずつAB、2つのグループに別れ、各々の上位4チームずつが決勝トーナメントに進出する方式である。
 
A フランス、日本、ブラジル、オーストラリア、ベラルーシ、トルコ
B アメリカ、カナダ、スペイン、セネガル、セルビア、中国
 
強豪のアメリカ・スペインと別の組になったのはある意味運が良かった。予選リーグを突破できる可能性が高くなったが、逆にいうと、決勝トーナメントでその付近に当たらないようにするには、予選リーグを1位か2位で通過したいところである。
 
初日8月6日のベラルーシ戦はかなり競ったものの、73-77で日本が勝った。次は1日おいて8月8日にブラジルと戦うが66-82で勝ち2連勝。これで決勝トーナメントには行ける可能性が高くなった。
 
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8月9日、この日のトルコ戦がいちばん悔やまれた。
 
初戦、2戦目と千里が先発したこともあり、この日は亜津子が先発したのだが、相手は亜津子をかなり研究していたようで相手の14番を付けた控えのスモールフォワードが厳しいマークをし、亜津子はなかなかボールをもらえず、またシュートもかなりの確率で叩き落とされてしまった。これが響いて第1ピリオドで24-9という大差を付けられた。第2ピリオドは千里が出て行くが、14-14のタイで前半を終えて38-23と、15点差のままである。第3ピリオドはまた亜津子が出て、今度は第1ピリオドほどにはならなかったものの、19-16で18点差になる。第4ピリオドでは日本も必死に追い上げたが、最終的に76-62と14点差でこの試合を落としてしまった。
 
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今回のオリンピックはこの大敗が全てであった。
 

1日おいて8月11日に4戦目のオーストラリア戦がある。この試合は前半は48-50とほぼ互角に戦った。そして第3ピリオド、千里の3連続スリーを含む日本の猛攻で11-21と10点差を付け、59-71と12点差を付けて明るいムードになる。しかし最終ピリオド、今度はオーストラリアが猛攻を見せる。亜津子は相手の巧妙なトラップに引っかかって2度も3秒ヴァイオレーションを取られる。それに動揺して全然シュートが入らず、結局このピリオド33-15と18点差。結局92-86で落としてしまった。この試合も勝てた試合だっただけに今後に課題を残した。
 
ここまで終わった時点で成績はこのようになっている。
 
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1.AUS(4勝) 2.FRA(3勝) 3.TUR(2勝) 4.JPN(2勝) 5.BLR(1勝) 6.BRA(0勝)
 
この時点でベラルーシの5位とブラジルの6位は既に確定である。明後日ベラルーシが負けてブラジルが勝って両者1勝になったとしても、直接対決でベラルーシが勝っているので、ベラルーシの5位は動かない。どっちみちこの2国は予選リーグ敗退である。
 
それでオーストラリア、フランス、トルコ、日本の決勝トーナメント進出も確定である。問題は順位である。この時点ではトルコと日本は2勝で並んでいるように見えるが、直接対決でトルコが勝っているため、トルコが3位、日本が4位になる。
 
既にオーストラリアの1位は確定している。明後日オーストラリアが負けてフランスが勝っても、直接対決でオーストラリアが勝っているのでオーストラリアが上位になる。そしてフランス・トルコ・日本の順位は明後日の試合で決まる。
 
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B組の順位はまだ確定していないが、1・2位はおそらくアメリカとスペインではないかと思われた。A組3位はB組2位、A組4位はB組1位と当たる。できたらこの予選を2位通過したい。
 
取り敢えず明後日のフランス戦に負けてしまうと4位確定である。勝つのは必須なのだが、問題は点数である。
 
日本が勝つという前提で、明後日トルコが負けた場合はトルコの4位が確定し、2位日本、3位フランス、4位トルコと都合良く定まる。トルコの対戦相手のブラジルにはぜひ頑張って欲しい所である。
 
トルコが勝った場合は、
日本はフランスに勝ちトルコに負け、
フランスはトルコに勝ち日本に負け、
日本はフランスに勝ちトルコに負け
 
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ということになるので、相互得失点差の勝負になる。ここまでの試合では
 
FRA TUR39×-○55FRA
TUR FRA55○-×39TUR JPN62×-○76TUR
JPN TUR76○-×62JPN
 
なので暫定的な得失点差はこのようになっている。
 
___ for agn dif
FRA _55 _39 +16
TUR 115 117 _-2 (確定)
JPN _62 _76 -14
 
2位になるためにはフランスに15点差以上の点差で、3位になるためにも13点以上の点差で勝つことが必要である。千里たちはそれに賭けるしか無かった。全てはトルコに大敗したのが響いている。
 

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12日のグループBの試合でアメリカの1位が確定した。それでグループAで4位になるとアメリカとぶつかることになる。これを何とかして避けたかった。。
 
13日15:30からの試合でトルコは延長戦にもつれこむ接戦でブラジルに辛勝した。これで日本はフランスに大差で勝つ以外の道が無くなった。
 
13日17:45(日本時間14日5:45)リオデジャネイロ Youth Arena に両軍の選手が整列する。フランスがティップオフに勝って先攻する。フランスがシュートするも外れ、森下誠美がリバウンドを取って攻守反転する。
 
どちらもアメリカとは当たりたくない!ので必死の攻防が続く。第1ピリオドは19-17とほぼ互角の勝負となった。第2ピリオド、日本は千里と亜津子のダブル・シューターを入れて猛攻を掛け、このピリオド13-23と大差を付けた。第3ピリオドは千里がシューターに入り、スリーを2本入れるなど活躍。22-23として点差を広げる。この時点で9点差だが、2位になるためにはあと6点、点差を広げなければならない。第4ピリオドは前半亜津子、後半千里を使い必死に攻撃するも、フランスも必死に持ち堪えた。
 
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結局71-79の8点差で日本が勝った。試合終了時刻は19:35である。
 
しかし試合終了後の両軍の選手の様子は対照的だったし、また奇妙であった。
 
負けたフランスの選手たちが喜んでいたのに対して、勝った日本の選手たちは皆、ガッカリした表情だった。厳しい表情をしていた千里と玲央美を除いては。
 
この試合の結果、日本はA組4位となり、準々決勝でアメリカと当たることが確定した。
 
TUR39×-○55FRA JPN79○-×71FRA
FRA55○-×39TUR JPN62×-○76TUR
TUR76○-×62JPN FRA71×-○79FRA
 
___ for agn dif
FRA 126 118 +8
TUR 115 117 -2
JPN 141 147 -6
 
全体の勝敗表
___ AUS__ FRA__ TUR__ JPN__ BLR__ BRA
AUS ----- 89-71 61-56 92-86 74-66 84-66
FRA 71-89 ----- 55-39 71-79 73-72 74-64
TUR 56-61 39-55 ----- 76-62 74-71 79-76
JPN 86-92 79-71 62-76 ----- 77-73 82-66
BLR 66-74 72-73 71-74 73-77 ----- 65-63
BRA 66-84 64-74 76-79 66-82 63-65 -----
 
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___ W L for agn dif for agn dif AUS 5 0 400 345 +55| FRA 3 2 344 343 +01|126-118 +8 TUR 3 2 324 325 -01|115-117 -2 JPN 3 2 386 378 +08|141-147 -6 BLR 1 4 347 361 -14| BRA 0 5 335 384 -49|
 

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試合終了後、青葉が電話をしてきてくれた。
 
「惜しかったね。結果的に厳しいことになっちゃったし」
「私実はなぜ日本が4位なのか、説明されたけどさっぱり分からない」
と千里は言う。
 
日本は総合得点表の得失点差ではフランス・トルコを上回っているのである。
 
「私もルールブック5回くらい読んでやっと順位の決め方が分かったけど、計算が物凄く複雑で、レポート用紙10枚くらいの計算してやっと分かったよ」
と青葉。
 
「青葉でさえそうなら、私には一生掛けても理解できないな」
 
まあ、ちー姉は数学とか弱そうだもんねと青葉は思う。もっともルールが難しすぎて、どれだけ理解している人がいるか疑問を感じる。
 
「でもアメリカを倒して勝ち上がりなよ。ユニバの時は惜しかったじゃん」
「あれがあるから、きっとアメリカは本気で来る」
「その本気のアメリカと戦うのもいいんじゃない」
「まあ、そう思うしかないね」
 
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8月14日はB組の残りの試合が行われ、B組の順位が確定した。
 
1.USA 2.ESP 3.CAN 4.SRB 5.CHN 6.SEN
 
中国は調子が悪かったようで、決勝トーナメントに進出することができなかった。
 
これで準々決勝の組み合わせはこのようになる。
 
USA-JPN ESP-TUR CAN-FRA SRB-AUS
 

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14日は試合観戦もせずにひたすら練習をしたのだが、15日は疲れもピークに達しているだろうということでオフにして“練習禁止”とした。禁止にしないと練習しようとする、やり過ぎの子たちが数人居る。
 
ショッピングに出かけたり、町の観光をする子たちもいたが、千里はホテルで作曲をしていた!
 
昼頃、亜津子が部屋に来訪する。
 
「練習とかで見ていた時の千里の動きと、フランス戦やオーストラリア戦で見せた千里の動きがまるで違っていた。千里、ふだんは手抜きしてない?」
 
「うーん。手抜きしているつもりはないけど、基本的に私は栗を剥くのにレーザーカッターを使ったりはしないよ」
 
「・・・千里に真剣に訊きたい。2012年の世界最終予選直前に代表落ちした後、何をしていた?」
 
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「あれ?知らなかった?私はずっとスペインに居たけど」
「何だとぉ!?」
 
「これ私の選手証」
と言って、千里はレオパルダ・デ・グラナダの選手証を見せる」
 
「外国に出ていたのか」
 
「あっちゃんも外国に行きなよ。あっちゃんは日本でトップクラスの選手として、ちやほやされていたら自分の才能を伸ばせないよ。日本ではcm単位のプレイでも通用する。でもスペインではmm単位でプレイしないと勝てない」
 
「何か意味が分かる気がする」
 
「プリン(高梁王子)だってWNBAに入ったし(**)。私、レオ(佐藤玲央美)にも外国に行きなよと言っているんだけどね」
 
(**)王子はこの年6月にアメリカの大学を卒業。ドラフトに掛けられてWNBAのチームに入団した。
 
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「じゃ千里はレッドインパルスとスペインと兼任?シーズンずれてるんだっけ?」
 
「いや重なる。去年までは日本側はクラブチームだから兼任で行けたんだけどね。でも今年の4月にこのスペインのチームは解散しちゃったんだよ」
「あら」
「それでこのオリンピックが終わったら、どこか移籍先を探さなきゃ。でもWリーグのシーズンが終わってからにするかもね」
 
「うーん・・・」
「あっちゃん、今から入団活動してないと、来年の春には間に合わないよ」
「というか、3月まではWリーグの方が抜けられない」
「まあそれはあるけどね。誰か信頼できる代理人とかに交渉してもらうといい」
「それと今のチームとも話をしなきゃ」
「ある程度強引にやらないと、抜けさせてもらえないよ」
 
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「そうだろうね!」
 
この後、亜津子は愛知J学園の先輩を通してWNBAのチームで亜津子が入れそうな所を探してもらい、11月下旬に内定をもらうことができた。
 

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