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■娘たちの誕生日(11)

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京平を連れて阿倍子が泊まっているホテルに戻ると、彼女は今日丸一日寝ていたので、かなり体力を回復したようであった。それで千里は《びゃくちゃん》に後を任せて新幹線で東京に戻った。
 
翌9月23日は“ある問題”について、青葉・天津子とお互いに電話を掛けあって最終的な結論を確認しあった。青葉が夕方から北陸新幹線で東京に出てきたので、一緒に羽田から飛行機で札幌に移動。レンタカーを2人で交替で運転して美幌のマウンテンフット牧場に向かった。
 
9月24日にはケイから頼まれて、網走でローズ+リリーのアルバムに収録する曲『赤い玉・白い玉』の制作に参加した。東城一星さんが24年ぶりに書いた幻想的な曲である。この曲の演奏はチェリーツインがしてくれることになっていたので、桃川春美にアレンジを依頼していた。
 
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実際には、この演奏にはこういうメンツが参加した。
 
Gt.秋月義高(紅ゆたか) B.大宅夏音(紅さやか) Dr.桃川春美
Pf.古城美野里 Vn.鈴木真知子 Fl.秋乃風花
笙.今田七美花(若山鶴海) 龍笛.村山千里・川上青葉・海藤天津子
AltoSax.近藤七星 SopSax.鮎川ゆま
Vo.ケイ・マリ
Cho.桜木八雲(少女Y)・桜川陽子(少女X)
 
龍笛を千里・青葉・天津子の3人が一緒に吹くというのは初めてである。更に七美花が笙で入っている。
 
録音担当のケイの旧友・有咲は言った。
 
「今日は地球最期の日になるかもしれん」
 
実際この演奏の収録の際にはスピーカーが壊れ、DSPチップが飛び、弦が切れ、ガラスも割れたが、有咲は平然として壊れた機器を交換し、予め待機してもらっていたガラス屋さんにガラスを交換してもらって作業を継続した。
 
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それでもの凄い音源が完成した。
 

この日の夜、ケイたちも千里たちもマウンテンフット牧場に泊まったのだが、実はここで、青葉・千里・天津子が、亜記宏・春美夫妻が“知らなかった真実”を解き明かすセッションをした。
 
これは千里・青葉・天津子の3人がここ数年来悩み、3人ともがずっと宿題にしていた問題がやっと最終的に解き明かされたのであった。それは亜記宏の元妻・実音子の一族にまつわる悲しい歴史を解き明かすことでもあった。そしてこの真実が解き明かされたことから、亜記宏に掛かっていた封印が解かれ、亜記宏と春美は16年ぶりに“夫婦になる”ことができた。
 
セッションが終わって出てきた春美はたくさん泣いた跡があった。そしてケイに言った。
 
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「ケイさん、明日『赤い玉・白い玉』の収録をやり直しましょう」
「え〜〜〜!?」
 
「私はこの曲を編曲する時に易しくしすぎたんです。せっかく東城先生が意欲的な作品を書いたのに、私の解釈では平凡すぎた」
 
追加伴奏者が必要になるので、ケイは急遽東京から、近藤と鷹野を呼んだ。そして翌9月25日、再度多数の機械の故障・楽器の故障・ガラスや照明などの破損をしながら、完全にこの曲を録り直した。この新しいアレンジはこのような楽器担当で行われた。多重録音も駆使されている。
 
■洋楽器セクション
Gt.秋月義高(紅ゆたか)+近藤嶺児 B.大宅夏音(紅さやか)+鷹野繁樹 Dr.桃川春美 Pf.古城美野里 Vn.鈴木真知子+ケイ Fl.秋乃風花+村山千里 AltoSax. 近藤七星・今田七美花 SopSax.鮎川ゆま
 
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■和楽器セクション
笙.今田七美花(若山鶴海) 龍笛.村山千里・川上青葉・海藤天津子
篠笛 秋乃風花
 
■ボーカル
MainVocal ケイ・マリ
Chorus 桜木八雲(少女Y)・桜川陽子(少女X)
 
結果的に昨日の録音も遙かに超える、物凄い音源が完成したのであった。
 

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9月25日夜、千里と青葉は翌日富山に行かなければならなくなったので、すぐにマウンテンフット牧場を出発することにする。これに春美が付き合ってくれた。その車中で春美は「母(亜記宏の母で春美の養母である弓恵)が夢枕に立った」と言って、“夢の中”で母と対話した内容を語ってくれた。そしてこの内容で事件は最終的な解決に至ることになる。
 
3人が交替で運転する車は2時頃、札幌の玲羅(千里の妹)のアパートに到着する。実はこんな夜中に札幌まで走って来たのは、玲羅に渡すものがあったからであった。それは音楽制作会社に就職した玲羅からねだられていたフルートであった。
 
「あ、私がこないだ買ったフルートと同じやつだ」
と青葉が言う。
 
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「うん。だから2人とも練習頑張るといいね」
と千里は笑顔で言った。
 

千里と青葉はそのまま玲羅のアパートで3時間ほど仮眠させてもらい、(9月26日)朝5時頃、目を覚ます。春美が熟睡しているので、結局置き手紙して放置し、玲羅が2人を新千歳空港まで送ってくれた。レンタカーの返却も玲羅に頼んだ。
 
2人はそのまま富山空港に飛ぶつもりだったのだが、新千歳空港でケイ・マリと遭遇する。マリはアクアのイベントを見に行くのに早く帰りたいと言い、千里たちに少し遅れて、(専任ドライバーの)佐良さんが運転する車で新千歳まで来たらしい。
 
結局千里たちは富山行きをキャンセルしてケイたちと一緒に羽田に飛んだ。
 
マリはアクアのイベントに行くので、千里・青葉・ケイの3人で恵比寿のマンションに行く。それでケイがどうしても聞きたいと言っていた春美に関わる問題の一端をケイにも話した。
 
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千里は春美の悲しいこの16年間を思って『寒椿』という曲を書き、これはローズ+リリーの制作中のアルバム『やまと』に収録されることになる。千里はこの曲でも龍笛を吹いたが、時間が取れないので、千里のパートだけ別録りにさせてもらった。
 

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千里と青葉は11時頃ケイのマンションを出て、新幹線で富山に移動する。ここで“ドッペルゲンガー少女”左倉ハルと会い、彼女の学校の体育館で起きているという、心霊現象の解決をした。
 
千里はこの日(9月26日)は青葉の家(桃香の実家)に泊まり、翌27日青葉と一緒に再度ハルの学校を訪れて、先生たちに今回の心霊現象の原因と対策を説明した。
 
そして午後の新幹線で東京に戻った。
 

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翌9月28日、千里はアテンザで東北道・山形道を走って出羽の羽黒山に行った。
 
「あんた久しぶりに来たね」
と美鳳から言われる。
 
「そうでしたっけ?」
 
美鳳に付き合って“軽く修行”をした後、先日から頼んでいた土地の結界作成用アイテム(工作好きの佳穂さんの作)を受け取った。そして湯殿山で1泊した後、山形道を戻って、9月29日の午前中、石巻の和実を訪ねた。
 
それで和実が買物に行っている間希望美ちゃんのお世話をし、お昼を食べてから、喫茶店の建設現場を見せてもらう。
 
「千里もしかして今何かしてる?」
「ちょっとお掃除」
「なるほどねー」
 
「和実、この龍の置物をこの土地の四隅に埋めてくれない?」
「結界を作るんだ!?」
「まあお店の中にまでは幽霊が入って来ないようにしなくちゃ」
 
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それで和実は工事をしている工務店の社長さんに話して、千里が渡した4つの龍の置物を千里が指定する場所に埋めてもらった。
 

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8月中旬にバラエティ番組の撮影中倒れ、緊急搬送されて入院するハメになったキャロル前田(13 本名前田聖也)であるが、医師の診断では内臓機能の低下で、2ヶ月程度の休養が必要ということになり、取り敢えず10月末までお休みということになって、まだ入院中なのだが、彼が入院している間に、ネットでは変な噂が立っていた。
 
それはキャロル前田は性転換手術を受けるために入院して、現在手術後の身体を休めている期間なので仕事を休んでいるというものである。実際彼(彼女?)が入院している病院の性科学センターでは、だいたい月に2例くらいのペースで性転換手術が行われているというのもこの噂の背景にはあった。
 
噂はネットで少しずつ広がり、その内、事務所宛のファンレターに
 
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「キャロルちゃん、性転換手術したそうですね。女の子になれておめでとうございます。可愛くなったキャロルちゃんの今後の活躍を期待しています」
 
とか
 
「キャロルちゃん、手術を受けて女の子になっちゃったと聞きました。女の子になったのなら、俺、キャロルちゃんと結婚したいくらいです」
 
などと、“性転換を祝福する”手紙やメールが届くようになってきた。
 
この噂を聞きつけて、無責任な週刊誌が
 
「キャロル前田、性転換して美少女に変身!」
「退院後の初仕事は、セーラームーン実写版か?セーラーマーキュリー役に決定の噂」
「今後の人気沸騰間違い無し」
「セーラー服で通学することで中学側と同意」
 
などと、取材など全くせずに、ほぼ憶測だけで記事を書いた。
 
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それでこの件をテレビのワイドショーが取り上げるまでに至る。
 

事務所は放置できないと考え、病院内で本人と主治医にも出席してもらって記者会見を開いた。
 
「ボクが性転換したという事実はありません」
と冒頭キャロルは発言した。
 
「ではキャロルさんは、まだ男性なのですか?」
「はい、そうです。ボクが言っただけでは信じない人もあるかも知れませんが、ボクのお股をカメラで映すわけにもいかないでしょうから、先生にお願いして見て頂きました」
 
医師が発言していう。
「本来治療に関係のないことなので不本意なのですが、患者さんが困っているということでしたので、見させて頂きました。前田さんには、確かに男性器が存在します」
 
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「陰茎も睾丸もあるのですか?」
「はい、どちらも存在します」
 
「退院後、セーラー服で通学するという話は?」
「ボクは別にセーラー服で通学したいという希望はありませんので、学生服で通学するつもりです」
 
「万一通学していた中学が女子校になっても学生服ですか?」
という質問をした記者があり、ネットでは『なんつー質問だ?』と非難された
 
「それは困りますね。ボクは男の子だから転校すると思います」
 
記者たちの大半が笑っていた。
 
「退院後、実写版セーラームーンのセーラーマーキュリー役をするという噂があるようなのですが」
 
「そんな話、聞いてびっくりしました。ボク自身聞いたことがありませんし、ボクは男の子なので、そういうお話はお断りさせて頂くと思います。アルテミス役ならいいですけど」
 
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(アルテミスはセーラーV(セーラーヴィーナス)が飼っている白猫♂)
 
この発言は「キャロルのアルテミス可愛いくなりそう」「アルテミス演じているキャロルちゃんを見たい!」という大量のネット発言を引き起こした。
 
「でもなんでタキシード仮面ではなくてアルテミスな訳?」
「そりゃタキシード仮面やったら、女が男装しているようにしか見えないからだろう」
という書き込みもあった。
 

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キャロルは言った。
「ボクは退院した後、12月か1月から七浜宇菜ちゃんと一緒に『変身ポンポコ玉』の撮影をする予定になっています。ボクのダウンで七浜さんや共演者の皆さん、スタッフの皆さんにご迷惑お掛けしましたので、身体が良くなったら頑張って演じますので」
 
この発言には「キャロルちゃん頑張らなくていいから無理しないでー」という書き込みが多かった。
 
キャロルはまだ青い顔をしてはいるものの、けっこうしっかり記者たちの質問に答えていた。また記者の大半も、そもそも13歳で性転換手術など受けられるわけがない、と考えていたようであった。その点については同席した院長も
 
「当病院では性転換手術や去勢手術・豊胸手術なども行ってはいますが、20歳以上に限定させて頂いておりまして、中学生にそういう手術をするというのは、あり得ません」
 
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と言明していた。
 

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