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■娘たちの誕生日(15)

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2016年11月17日(木).
 
今年の年末年始の歌謡賞の中でトップを切って、BH音楽賞が発表になった。発表会場は例年通り大阪ビッグキューブホールである。
 
この音楽賞の選考基準は“容赦無い”と昨年桜野みちるが言っていたが、本当に容赦無いなとアクアは思った。数えてみたのだが、昨年も出ていたアーティストは24組中半分の12組だけである。昨年『変奏曲』『停まらない!』と2曲連続ヒットさせたAYAも今年は『18.2482』(ルート333(√333)という意味で国道333号に掛けている)が話題にはなったものの枚数はそんなに売れていないため選ばれていない。あれだけ話題になったホワイト▽キャッツも入っていない。但しその選抜チーム、キャッツファイブは入っている。集団アイドルでは金平糖クラブも落選である。しかし松原珠妃さんのような復活組もある。
 
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§§プロ・ミュージックからは、アクア、桜野みちる、高崎ひろかの3人が選ばれていた。3人は17日午前中の新幹線で大阪に向かった。チケットが取れず、グリーン車にはこの3人だけが乗って、マネージャーの沢村は普通車に乗った。
 
「ありさちゃんと僅差だったと思うんですけどね」
とひろかは言った。
 
「ひとつの事務所から4人というのは選びすぎたということになったんだろうね。それでどちらかということになった。高崎ひろか『鎖を解き放て!』は統計では87000枚、品川ありさ『渡良瀬川の畔』は86000枚。統計上1000枚の差がついているけど、統計誤差の範囲だね。本当はどちらが多く売れたかは誰にも分からない」
とみちるは言う。
 
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「今回は私がありさちゃんと2人の代表として行ってくると言って出てきました。でも来年は逆の立場になるかも」
 
「まあ2人はいいライバルだから、お互い切磋琢磨していけばいいね」
とみちるは言った。
 
「でも来年はボクが落ちるも知れない」
とアクアは言う。
 
「そうそう。一寸先は闇なのが芸能界」
とみちるも言う。
 

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「アクアがそんなに売れなくなるとは思えない」
とひろかは言うが
「アクアに声変わりがくれば人気急落は間違い無い」
とみちる。
 
「あ、それがあるか」
とひろかは言ったがすぐに
「でもアクアは、睾丸取っているんだから声変わりが来る訳無い」
と言う。
 
「取ってないよぉ」
とアクア。
「はいはい。そういう建前だよね」
とひろか。
 
みちるは笑っていた。
 
「でもこういう声も出る」
とアクアが出してみせた声にふたりはびっくりした。
 
「アクア、まさか声変わりが来たの?」
「春からずっと練習していたんだよ。実は男声が出せる女性歌手さん(**)に教えてもらって」
「へー!」
「発声法なんだ!」
 
(**)丸山アイのこと。もっとも今“女性歌手”と言ったものの、結局丸山アイが男なのか女なのか、アクアは分からない。本人は睾丸は取ったと言い、アクアにも「そろそろ覚悟決めて去勢しちゃいなよ」と言っていたが、本当に彼女が睾丸を取ったのか、それとも元々女だったのが卵巣を取ったのか、よく分からない気がした。
 
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「今の所は数秒間しか維持できない。でもこれが使えるとボイスチェンジャー無しで男女両役できるでしょ?」
 
「ああ、やはり女役もやりたいんだ?」
とみちるは言ったが、ひろかは
「別に無理して男役しなくても、女役だけでいいじゃん」
と言った。
 
「まあ、視聴者の多くがそう思っているね」
とみちるも言って、笑っていた。
 

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大阪ビッグキューブホールに到着し、控室に入ると、ちょうど三つ葉の3人と目が合った。優羽(ことり)が笑顔で手を振りながらこちらにやってくる。優羽につられて波歌(しれん)と八島(やまと)も一緒に来る。
 
優羽は、ひろか・みちる・アクアの3人とハグし、沢村とも握手をしている。
 
(アクアが女性タレントとハグしても誰も気にしない)
 
「おはようございます。私、こんな凄い賞の対象になって嬉しい。一生の思い出になる」
などと優羽が言っているので
 
「来年もおいでよ」
とみちるが言う。
 
「でもテレビ番組でさんざん宣伝してくれての10万枚だもん。さすがに次からはこんなに売れないよ」
 
「毎回10万枚売れるように頑張ろう」
「とても無理〜。アクアみたいに毎回100万枚なんて、普通ありえないから」
「まあ、この子は特異な例だけどね」
 
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などと話していたら、
「コトリさん、アクアちゃんたちと知り合い?」
などと八島(やまと)が言う。
 

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それには、みちるや優羽(ことり)が答える前に波歌(しれん)が言った。
 
「だって、優羽(ことり)ちゃん、去年までは§§プロに所属していたもん」
「え?そうなの?」
「最初に3人集まった時に言ってたじゃん」
「そうだっけ?」
 
「ヤマトちゃんは物忘れが激しいし、言ったことを聞いていない」
「ヤマトちゃんは忘れ物も多い。ヤマトちゃんの後ろを歩くと色々物を拾う」
「遅刻も多いから、念のため朝1番の便で来たんだよ」
 
「なんか大変そうね〜」
 
マネージャーのハート長浜と沢村も話していたが、沢村は(亡くなった)お母さんを知っていたので、そのお母さんのことでも話が弾んでいるようだった。
 
「へー。短大出たばかりなんだ!でもお母さん亡くなった後、苦労しなかった?」
「うちの社長(シアター春吉)がずっと私と妹の生活費・学費を出してくれたので」
「ああ、あの人はいい人だ。仏の春吉とか言われていたと言うし」
 
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ところで。この控室は、みちる・ひろかが居て、三つ葉の3人もいることからも分かるように女性用控室である。
 
アクアが女性用控室に居ることについて、本人も含めて誰も疑問に感じていなかったし、そもそもアクアに届いた今日の授賞式の招請状でも、この控室が指定されていた!
 

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11月18日(金).
 
キャロル前田が予定より3週間遅れで、やっと退院した。年末年始の特別番組の収録がたくさんあるが、医師の指示で、当面お仕事は1日に平日2時間、休日5時間以内、休みの日を週1日以上設定するということになったと発表された。
 
これを受けて、12月に入ってから『変身ポンポコ玉』の撮影は開始されることになった。河村監督がそちらに取られるので、『時のどこかで』は、12月以降ちょうどクランクアップしたばかりの『少女革命ウテナ』の田箸監督が担当することになった。
 
また12月で終了する『少女革命ウテナ』の後番組は『悪魔くん』のスピンオフ作品『鳥乙女の日常』(全7回:実写特撮)が2月まで放送されると発表された。主演は白島もれあである。“ヒロインの友人”みたいな役が多かった彼女にとって初主演作品となる。監督は映画『時のどこかで』の副監督を務めた白原監督である。
 
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そして3月から『変身ポンポコ玉』の放送は開始される予定とのことであった。
 

11月25日、桃香は産休届けを出そうとしたのだが、結婚するの?などと上司から聞かれたのをきっかけに口論になってしまう。
 
女子社員が出産するというなら結婚するのだろうと思うのが普通だし、結婚せずに産むといったら、なぜ結婚しないのか尋ねたくなるのが普通だが、桃香は説明を拒否する。それで部長が、まさか不倫じゃないよね?と心配するのも無理は無い。しかし桃香は喧嘩腰になってしまい、仲裁しようとした課長を桃香が殴ってしまうなどの経緯を経て、結局、桃香はこれまでの不満を全部出してしまう。さすがにむかついた部長が「そんなに嫌な会社なら勤めてくれなくてもいい」と言ったら、桃香は「だったら辞めます」と言って、その場で退職届けを書いてしまった。
 
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自宅に帰っても千里は出ているし、誰かと話したかった桃香は、冬子のマンションに行ってみた。ちょうど冬子の彼氏で、司法修習の“二回試験”が終わり結果待ち中であった木原正望が来ていた。正望は産休を申請しようとしたら辞めることになったと聞くと、自分はまだ弁護士になっていないけど、誰か先輩の弁護士を紹介しようかと、と言った。しかし桃香の話を聞いている内に呆れてしまう。
 
桃香も自分が悪かったと反省していたが、桃香が会社での酷い男女差別に不平を言うと「そういう会社多いんだよねぇ」と正望も冬子も同情していた。
 
桃香が夜12時近くに経堂のアパートに戻ると千里も帰宅していた。
 
「妊婦が夜遅くまで出歩くなんて」
と千里から叱られるが、会社を辞めたこと、冬子の所に行って来たことを話すと
 
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「まあ、これで赤ちゃんが2〜3歳になるくらいまではずっと付いていてあげられることになるんじゃない?」
と千里は言った。
 
「でも私、生活費どうしよう?」
「とりあえずここの家賃、電気ガス水道、電話代は私の口座からの引き落としに変更しよう」
「すまん!」
 

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11月26-27日(土日)、アクアの7枚目のシングル『モエレ山の一夜/希望の鼓動』の制作を都内のスタジオでおこなった。今回はここしばらくアクアの制作の指揮をしていた毛利五郎が、三つ葉と山森水絵で手一杯ということで千里とケイが共同で制作指揮することになった。実際曲もマリ&ケイの曲と、醍醐春海の曲である。
 
同じ11月26-27日、武蔵野市総合体育館で、関東総合バスケットボール選手権が行われ、ローキューツが接戦で江戸娘を破って優勝。2012年以来5年ぶり2度目のオールジャパン出場を決めた。
 

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2016年11月28日(月).
 
千葉ローキューツ、東京40 minutes、江戸娘、ジョイフルゴールドの4チームで共同で建設していた深川アリーナ(正式名91Club体育館)が竣工。落成式が行われた。2-3階の固定観客席5000席、アリーナに椅子を並べたらバスケットの試合(センターコート)で3000席、コンサート(額縁舞台使用)なら5000席設置できる。バスケットのコートは公式基準で4つ設定できて、タラフレックスの敷き直しで数種類のレイアウトに対応できる。体育館の地下は駐車場になっていて、350台の普通車が駐車可能である。
 
アリーナに4コート取れて、コート間の目隠しを降ろすこともできるので、建設に参加した4チームが同時に練習することができる。またこの体育館はコンサートでも使えるように防音がしっかりしていて外に音が響かないので24時間使用することができる。また、ロビーに牛丼チェーン・まき家の店舗が入っていて、最初営業時間はお昼11-14時と、夕方16-21時であったが時間外に練習に来た選手が「お腹空いた」と言うので数ヶ月後には24時間営業になった。
 
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この後、この体育館は次のような日程が組まれている。
 
12.02(金) クロスリーグ 江戸娘vsローキューツ、40 minutes vs Joyful Gold
12.03(土) Wリーグ レッドインパルス vs ブリッツ・レインディア
12.10(土) ローズ+リリーのライブ
 

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落成式、親善試合の後、冬子(ローキューツのオーナー)、千里(40 minutesのオーナー)、それに花園亜津子の3人で都区内の料亭に行った。実は上島雷太(江戸娘のオーナー)も参加予定だったのだが、T都議に呼ばれたとかいうことで欠席。1人減ったことを連絡しようかと言っていた所に亜津子が来たので、代わりに!?連れて行ったのである。
 
亜津子は春からアメリカのWNBAに参加すると言った。
 
やはり今年の春から王子がWNBAに参戦したこと、そして千里がこの3年間スペインリーグにいたことを知ったことで、自分も海外に挑戦しようという気に、やっとなったようである。後は玲央美だな、と千里は思った。
 
「あっちゃんは、もっと早くアメリカに挑戦して良かったと思う」
「なかなか踏ん切りが付かなかった部分もあるし」
「年齢的にはけっこうギリギリの挑戦になるかもね」
「千里もおいでよ」
 
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亜津子が言っている意味は、スペインのチームが解散して行き先が決まってないのなら一緒にアメリカに行こうよということだが、千里はレッドインパルスに入ったばかりだしね〜と言って言葉を濁した。
 
「だから今年は私と千里が同じリーグで戦える最初で最後のシーズンだよ」
「Wリーグの決勝、オールジャパンの決勝、オールスターで対決しようよ。まあ全部私が勝つけどね」
「もちろん対決して私が勝つよ」
 
それで2人は硬い握手をした。
 

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11月30日、Wリーグのオールスターのファン投票が締め切られ、千里はファン投票の東軍 G,SF部門で3位に滑り込み、1年目からオールスターに出場することになった。
 
★西軍
ファン投票 PG.武藤博美(EW) SG.花園亜津子(EW) SF.佐伯伶美(BR) PF.中塚翼沙(SS) C.馬田恵子(EW)
リーグ推薦 PG.比嘉優雨花(BM) PF.大野百合絵(FM) PF.日吉紀美鹿(BM) PF.加藤絵理(EW) PF.鈴木志麻子(BM) C.金子良美(FM) C.石川美樹(SS) C.富田路子(BB)
 
★東軍
ファン投票 PG.田宮寛香(SB) SG.村山千里(RI) SF.広川妙子(RI) PF.平田徳香(SB) C.夢原円(SB)
リーグ推薦 PG.松前乃々羽(HP) SF.湧見絵津子(SB) SF.渡辺純子(RI) SF.翡翠史帆(SB) PF.鞠原江美子(RI) C.吉住杏子(FR)
開催地推薦 SF.中井翔子(CS)
 
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同じ日、男子の強化選手68名が発表され、その中には貴司も含まれていた。貴司は12月18-20日に東京NTCで合宿に参加する。
 

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娘たちの誕生日(15)

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