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■娘たちの誕生日(18)

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12月23日から28日まで、東京体育館でウィンターカップが行われていた。旭川N高校は夏のインターハイで準優勝したので自動出場となり、2010年以来6年ぶりのウィンターカップ出場となった。同校バスケ部の全女子部員が12月21日(水)に旭川から出てきて、宿舎と練習場を提供してくれるV高校に入った。同校から宇田先生や朝日校長は
 
「今年はウィンターカップの方なんですね」
と言われていた。昨年はオールジャパンに出場するのに東京に出てきてやはりこの高校の宿舎と体育館を借りたのである。
 
N高校はインターハイは 1995-1996, 1999, 2001, 2003, 2007-2011, 2014-2016 と出場しているが、オールジャパンは 2007,2015 と2度出場。そしてウィンターカップに出たのは 1996, 2008-2010, 2016 と今回が5度目である。
 
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この遠征期間中の食事の作成や練習相手に関東近辺のOGに声が掛かり、“バスケ部OG副会長”と誰からともなく呼ばれている若生暢子(40 minutes)を中心に、森田雪子・松崎由実(40 minutes), 白浜夏恋(BC運輸)、佐々木川南・横宮亜寿砂(JP運輸)、原口揚羽・紫・島田司紗・杉山蘭・水嶋ソフィア(Rocutes), 夏嶺夜梨子(Joyful Diamond), 越路永子(Joyful Gold)、志村美月(W大学)、などといった面々が応じた。
 
千里も声を掛けられたものの、あまりに多忙で断り「どこかで顔出すね」と言っておいたのである。もっとも今回のN高校の遠征費は例によって大半を千里が出している。
 
他に湧見絵津子(サンドベージュ)も顔を出せる範囲で出てくると言っていた。
 
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12月23日早朝甘地駅で貴司を見送り、その後、完成した市川ドラゴンズの宿舎を見てから、千里は大阪の《げんちゃん》と入れ替わって貴司のマンションに行く。京平に朝御飯を食べさせながら、しばし母子のふれあいをする(阿倍子は寝室で寝ている)。
 
その後、9時頃にV高校に移動してもらっていた《わっちゃん》と入れ替わって旭川N高校のメンバーに会った。今日は夕方まで彼女たちに付き合う。特に千里を待ち構えていた福井英美とは何十本もマッチングをして「明日の試合に響かないか?」と心配されるほどであった(N高校は23日はシードで不戦勝)。
 
「千里さん、明日は?」
「明日は福岡で会議があるんだよ。だから今夜の最終便(羽田20:00-21:55福岡)で移動するから」
「大変ですね!」
「また25日に来るね」
と言って千里は18:30頃、V高校を出た。
 
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先に羽田に移動してもらっていた《こうちゃん》と入れ替えで羽田に来る。チェックインはしてもらっていたので、そのまま搭乗して福岡に移動し、地下鉄で唐人町まで移動。シャトルバスでシーホーク・ホテルに入った。
 

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アクア主演の『時のどこかで』は11月までは『ねらわれた学園』の監督も務めた河村監督の下、歴史ドラマ風で楽しく撮影していたのだが、12月からは田箸監督に代わり、脚本も花崎弥生さんから井山玲佳さんに交替して、やや勝手が違う感じになった。でもアクアは気にしないことにした。井山・田箸のコンビはむしろ学園ドラマとして楽しいものにしようという方針のようで、これまであまり描かれていなかった、学校内の出来事が多く描写された。
 
井山さんが脚本を書くのが速く、田箸さんはあまり何度も撮り直しをせずに、多少のセリフミスなどがあっても、そのまま活かしてハプニングを楽しむ方針のようで、それはそれなりにライブ感の強い映像になっている気がした。おかげで撮影はスイスイ進み、1月中には撮了になりそうな感じだった。
 
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ただ最後の数回のストーリーを巡って、どうも揉めているようで、コスモス社長が「うちに任せると言われた」と言い、その件でアクアと、ライブツアーが終わった所で、相談したいと言われた。ボクが物語展開の好みとかを言っていいの?と疑問も感じた。(実際には主演俳優は結構自己主張することが多いし、その俳優のイメージ戦略との絡みで特定の設定や演技を拒否することも多い)
 

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12月に入ると、忙しさが凄まじかった。『時のどこかで』の撮影は主演ということもあり、最優先でスケジューリングされているが、それ以外のドラマにも「1分でいいから出て」などという依頼があり、話の筋も分からないまま、台本通りの演技をするというのも度々あった。バラエティ番組のレギュラーに出て、ラジオ局の番組に出て、歌番組に出て、というので、平日(月〜金)は2日だけ稼働という約束は完全に反故(ほご)にされている。
 
リハーサル役が秋田利美だけでは足りず、本来はボディダブル役の今井葉月もこの頃からリハーサル役に駆り出されるようになった。姫路スピカも身長が近いので、かなり使われていた。
 

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FM局に、たまたま川崎ゆりこ副社長と一緒に行った時、制作部長さんから言われた。
 
「今年度1年間 Times of JC の金曜日を担当して頂いていたのですが、3月で中学を卒業するのでJCは卒業ということで、Times of JK 本体の方に昇格して頂ければと思っているのですが」
 
「はい。ぜひお願いします。放送の曜日はどうなりますか?」
とゆりこが尋ねる。
 
「Times of JK の火曜日担当の遠上笑美子ちゃんが3月で高校を卒業するのでその後任ということでお願いしたいのです。実は遠上笑美子ちゃんと同じ事務所で今年秋にデビューした川井陽生(かわい・はるみ)ちゃんが来年中学3年生なので、彼女にアクアさんの後任のTimes of JC をやってもらおうかということになっておりまして」
 
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「ああ。ζζプロさんと枠の交換なんですね」
「そうなんです。本当はその枠は&&エージェンシーの枠なんですが、そちらにトークのうまい女子中生タレントさんが居ないもので」
 
「なんか枠の貸し借りが複雑になってません!?」
「いや、実はもう、たいがい訳が分からなくなりつつあります」
と言って部長さんも頭を掻いている。
 
「でしょうね!」
 
しかしそういう訳でアクアはTimes of JC 金曜日から、 Time of JK 火曜日に移動することになったのである。
 
ちなみにJCが女子中学生、JKが女子高校生の略ということにアクアはいまだに気付いていない!
 
「ところでアクアさん、進学する高校は決まりました?」
「都内の私立高校にしようということまでは決めたのですが、まだ完全には絞っていません」
「なるほど。やはり都内に出てきますか?」
「熊谷との往復で結構体力使っているので」
「そうでしょうね!」
「最初は平日には日程を入れないという話だったのですが」
「ああ、それはさすがに無理」
と部長さんも言っていた。
 
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その高校問題だが、龍虎(アクア)は12月10日に冬子(ケイ)と電話していて
「第1候補C学園(北区)、第2候補F学園(多摩市)、第3候補D高校(品川区)」と考えたのだが、冬子が途中で気付いて
 
「C学園もF学園も女子高なんだけど」
と言った。
 
え〜?と思ったものの、女子高では仕方ない。それで母とも話し合い、結局、芸能活動ができる主な高校の中で男子でも入れる学校として
 
「第1候補D高校(品川区)、第2候補J高校(世田谷区)」
 
と2つの候補に絞り、学校説明会があるので、コスモス社長に連絡してその日の日程を空けてもらい、聞きに行ってくることにした。2つの学校の説明会の日程は
 
D高校 12月17日(土)13時 品川マリンプラザ
J高校 12日18日(日)15時 渋谷メロンホール
 
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ということになっていた。ところがここで龍虎は誤って、17日の13時に渋谷メロンホールに行ってしまったのである!
 
この日の13時に渋谷メロンホールでも学校説明会が行われていたので龍虎は全然間違いに気付かなかった。そして全体説明が終わり、個別ガイダンスを受ける段階になって、向こうは今大人気のアクアというので驚いたようだが
 
「ところでうちは女子高なのですが、田代さんは実は女性だったのでしょうか?」
と訊かれて仰天する!
 
「え?D高校って女子高だったんですか?」
「うちはC学園ですが」
 
と言われて、ここでやっと間違いに気付いたのであった!
 

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それで龍虎が「お騒がせしました」と言って謝り、行けなかったD高校の方には何て連絡入れようかと思って帰り掛けた時、教頭先生が龍虎に訊いた。
 
「あなた、テレビとかで聴くとかなり歌が上手いけど、あれって生歌唱?」
 
「はい。私も含めて§§ミュージックの歌手は基本的に口パクはしません。下手でもいいかも生で歌えというのが社長の方針なんです」
 
「今ちょっとこの場で何か歌ってもらえないかしら?」
 
それで龍虎が1曲歌ってみせると、先生たちは驚いている様子だった。そして教頭先生が入試担当の先生と何か話しているようである。そして言った。
 
「これだけ歌唱力のある人なら、芸術コースで受け入れてもいいです」
「芸術コース? あのぉ、それ入学前に性転換手術受けてね、ということじゃないですよね?」
 
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「そんなことは要求しません。実は来年度から芸術コースに限って、5名以内までは男子生徒も受け入れることになったんですよ」
 
「ほんとですか!」
 
元々龍虎はこのC学園を第1候補に考えていた。しかし女子高だからということで諦めていたのだが、男子を受け入れてもらえるということなら、ここに行きたいと思った。
 
「でも定員5名以下って厳しいですね」
「はい。ずっと女子高でやってきた学校なので、男子を受け入れる場合でも、かなりハイレベルな人に限ります。実は今2名内定しているのですが、1人は国際***音楽コンクールのヴァイオリン部門で昨年3位になった人、もう1人はピアノの**コンクールでここ3年連続で入賞した人」
 
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「私とてもその人たちのレベルじゃないです!」
「いや、今の歌唱を聴いた限りでは、かなりハイレベルだと思った」
と音楽の菱見先生が言った。
 
「あなた楽器は何かする?」
「えっと。ピアノとヴァイオリンとフルート、あとはギターかな」
 
「色々するね!」
「今度愛用の楽器を持ってうちに来てくれない?親御さんも一緒に」
「分かりました・・・ピアノもですか?」
 
「ピアノを抱えてくるのは大変だから、うちの学校にあるピアノで」
「そうですよね!」
 
龍虎は後ろで《こうちゃんさん》がどこから持って来たのかグランドピアノを軽々と片手で抱えてアピールしているのは取り敢えず黙殺した!
 

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そういう訳で、龍虎はいちばん魅力を感じていたC学園に入れるかも知れないということになった。すぐに母にメールしたが、龍虎から父、支香さん、それに上島さんにも連絡しなさいという返事だったので、母に送ったのとほぼ同じ文章を送った。すると上島さんが明日なら大丈夫ということで、支香さんも明後日までならOKということだった。それで母と父にその旨連絡すると、明日休みを取ってくれることになり、C学園側には直接電話してOKを取る。
 
それで明日12月18日(日)に北区C学園に、保護者4人!と一緒に行くことになった。
 
学校側からは、理事長・校長・教頭、芸術コース主任の窪田先生が出てくれた。窪田先生も音楽の先生だが、弦楽器と合唱指導をしているらしい。昨日説明会の会場で龍虎の歌を褒めてくれた菱見先生はピアノの担当である。この学校は音楽の先生だけでも5人いる。音楽教育に力を入れているとうたっているだけのことはある。
 
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最初は歌を歌ってと言われたので、上島さんにピアノ伴奏してもらい鴨乃清見の『門出』を歌った。3オクターブの声域を使う上に、それまでの和音からは想像が付かないような音から、伴奏より先に歌い出す必要がある場所が数ヶ所ある難曲である。その難曲を正確に歌ったので、先生たちが思わず拍手をしてくれた。ただひとり窪田先生を除いては。
 
窪田先生は
「移調してますよね?」
と訊いた。
 
「はい。すみません。原曲は F3-E♭6 なんですが、私は下の方が G3 までしか出ないので、本来C-Majorなのを2度上げてD-Majorにして G3-F6 で歌わせて頂きました」
 
「いや F6 が出るのが凄い」
と言って窪田先生も結果的には褒めてくれた。しかしこういうポップス系の曲の原キーが分かるというのは凄いなと龍虎は思った。
 
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続いて龍虎は教室に置かれたグランドピアノを使ってショパンのノクターン2番 E♭ Major Op 9-2 を弾いた。ここにあるピアノは Yamaha S4B なのだが、実は田代家にも同じシリーズの S6A があり、日常的に弾いているので安心感があった。
 
更に今度は田代母にピアノ伴奏してもらって E.H.Roth (Ernst Heinrich Roth, エルンスト・ハインリッヒ・ロート 現在は3代目) の工房のヴァイオリンで『ツィゴイネルワイゼン』を弾く。龍虎はYamahaのArtidaも持っているのだが、今日は量産品ではなく、工房の手作り品を使用して手作り品ならではの個性のある楽器を弾きこなしてみせた。
 
更に愛用のフルート Yamaha 'ideal' YFL-877 (offset AG925) でメンデルスゾーンの『歌の翼に』(Auf Fluegeln des Gesanges) を演奏する。
 
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そして最後に愛用のアコスティックギター Yamaha LS-56 でホルストの『木星』を美しく弾いてみせて、また先生たちから大きな拍手をもらった。窪田先生は
 
「色々な楽器をこなすけど、やはり歌がいちばん凄かった」
と言った。
 

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