広告:放浪息子-5-Blu-ray-あおきえい
[携帯Top] [文字サイズ]

■娘たちの誕生日(14)

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 
前頁次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

理歌が寄ってきて言う。
「でも私たちも好都合でした。私たちや母とかも、貴司兄のお嫁さんは千里さんだと思っていますから」
 
理歌が披露宴・二次会の席次表に細川貴司・千里・京平とあるのも示すと冬子はそれにも驚いている。
 
「千里集合写真に写った?」
「写ったよ」
「それ阿部子さんが見たら何か思わない?」
「貴司が見せる訳無いから平気」
 
「元々千里姉さんは昔から親戚関係の集まりに兄さんの奥さんとして出ていたし、兄さんと阿倍子さんの結婚式にはこちらの親族は誰も出席してないし、結婚の通知も連名の年賀状も親戚関係には出してないし」
 
「そうなの!?」
 
「兄から親戚への年賀状はずっと兄の単独名義ですね。それも千里姉さんが代筆しているし」
「え〜!?」
 
↓ ↑ Bottom Top

「高校生の頃、私、貴司に言ったんだよね。貴司が例えば子供を作りたいからと言って、他の女性と結婚したいと言ったら認めてあげる。そして貴司が誰かを法的な妻にしたとしても、私はずっと貴司の妻であり続ける。何人legal wifeを作ったとしても、私は貴司のarch wifeであり続けるとね。まさか本当に他の女と結婚するとは思わなかったけどね」
 
と千里が言うと、冬子は何か考えているようだった。
 
「五線紙要る?」
「ちょうだい」
 

↓ ↑ Bottom Top

冬子が何か曲を書き、その調整をしている間に千里は留袖を脱ぐ。下にバスケットウェアを着ているので冬子はびっくりしている。
 
「私は試合があるから、そろそろ行く。京平、また夕方会いに来るから、お昼は理歌お姉さんや美姫お姉さんの言うこと聞いて良い子してろよ」
「うん。いってらっしゃい」
 
「会場はどこ?」
と冬子が訊く。
 
「大分市のコンパルホール。2時から」
「間に合うの〜!?」
「大丈夫、大丈夫。じゃね」
 
と言って千里は控室を出ると、大分にいる《すーちゃん》と入れ替わり、試合に出た。
 

↓ ↑ Bottom Top

試合終了後、いったん東京の《きーちゃん》と入れ替わりシャワーを浴びる。彼女に用意してもらっていた、ホワイトロリータのドレスに着替える。それで宗像に行こうとしていたら青葉から電話がある。
 
青葉は今“幽霊バイク”の事件に関わっており、そのバイクが町の中のどこに出現するか知りたいのだという。千里は青葉から町の地図をFAXしてもらい、しばらくその地図を見ていたが、郵便局の所に印をつけ、19:57という時刻も記入してFAXを返した。
 
その後、福岡にいる《すーちゃん》と入れ替わって、二次会に出席した。
 
披露宴は鶴派一族の民謡大会!になっていたらしいが、千里も何か演し物をと言われて、龍笛で『ウトムヌカラ』(**)という曲を吹くと、物凄い拍手が来た。
 
↓ ↑ Bottom Top

(**)麻里愛が書いた曲でアイヌ語で結婚式の意味らしい。
 
「ついでにソーラン節も行こうか」
などと風帆さんが言っているので、千里はやけくそ?で冬子のヴァイオリン(Rosmarin) を借りて“ヴァイオリンの弾き語り”!でソーラン節を唄ってみせた。こういう演奏の仕方を見たことのない人にはかなり衝撃的だったようで、龍笛の時より大きな拍手が来た!!
 
1000万円級のヴァイオリンをこういうのに使うのは申し訳無かったが!
 

↓ ↑ Bottom Top

千里は貴司が飲み過ぎてふらふらしていたので、これでは京平を預けられない、と言って、理歌に大阪まで“京平を”連れて帰ってと頼む。チケットはこのカードでと言って、貴司の!VISAカードを渡した。
 
「OKOK」
「飲んべえさんはそこら辺に放置しといていいから」
「当然」
 
「それで大阪の後、ついでに金沢に行って、青葉にこれを渡してもらえないかな」
と頼み、小さな包みを渡す。
 
「これ何?」
「分からないけど、私のお友だちが英彦山の長老から預かったらしい。青葉はたぶんK大学の角間キャンパスでキャッチできると思う」
「分かった」
 
(こうちゃんが中津から福岡へ飛んでいく途中、英彦山で呼び止められて渡されたものである)
 
↓ ↑ Bottom Top


二次会終了後、貴司は明日仕事があるというし、千里と冬子も忙しいので、結局、千里・冬子・京平・理歌・貴司の5人でタクシーに乗って福間駅まで行き、電車で小倉駅まで移動した。小倉駅で千里は京平をギュッと抱きしめて「またね」と言い、理歌たちと別れる。そして冬子と一緒に北九州空港に向かう。
 
ところが、空港に向かうバスの中で、千里は唐突に、いつも青葉の後ろに居候している《姫様》から語りかけられた。
 
『このままにしておくと後10秒ほどで、青葉が死ぬのだが、どうしたものかと思って』
 
千里はすぐに《姫様》を通して、向こうの様子を見た。青葉は誰かのバイクに同乗して農道のような所を走っているが、前方300mほどの所に大きな穴がある。
 
↓ ↑ Bottom Top

千里は《姫様》のチャンネルを勝手に利用して青葉に呼びかけた。
 
『停まって!!死ぬ!』
 
それと同時に姫様のチャンネルを使って《りくちゃん》を現地に転送した。
 
青葉がインカムを通してバイクを運転している人に「停まって下さい!すぐ!死にます!」と伝え、急ブレーキが掛けられる。転送された《りくちゃん》と青葉の眷属《海坊主》が必死に2人を支え、青葉も運転者も無事であった。
 
バイクは時速100kmで走っていた。300mは10.8秒である。
 
《姫様》が千里に語りかけて千里が穴を認識し、千里が青葉に、青葉が運転者に声を掛けるまで4-5秒掛かっている。運転者が上手い人だったので声に反応して急制動を掛けるまでに1秒、急制動を掛けてから3秒ほどでバイクは停止した。合計8秒ほど。どこかであと1-2秒余分に掛かっていたら、2人は100km/hで穴に突っ込んで即死しているところだった。
 
↓ ↑ Bottom Top

むろん“幽霊バイク”はこんな穴など平気でその上を走り抜けて行ったのだが、本当に危ない所であった。
 

↓ ↑ Bottom Top

北九州空港から羽田への飛行機の中で、千里は貴司との件で冬子から色々聞かれたが
 
「なるようになると思う」
と答えた。実際貴司の優柔不断にはもう悟りきるしかない所である。ただ貴司が「自分は阿倍子と離婚しないから期待しないで欲しい」と言っていたのが、最近は「少し考えさせてくれ」とか「その件はまた」などと言うようになったので、阿倍子さんとの破綻も近いのかも知れないという気はしていた。
 
千里は昨年作った京平のDNA鑑定書を冬子に見せたが、京平が確かに千里と貴司の間の子供であるという鑑定書に冬子は驚いていた。
 
冬子は千里と京平が毎日会っているという話についても質問した。
 
「そりゃ母と子供だから毎日会うよ」
「どうやって?」
「 一般常識的には、夢の中で会っていると思ってもらえればいいよ」
と言って千里は疲れたように笑った。
 
↓ ↑ Bottom Top

「でも今日の結婚式は自分の貴司の妻として、京平の母親としての自覚を再確認して、自分なりに生きる希望が凄く膨らんだからさ、これを書いたんだよ。アクアに渡す楽曲をコスモスから頼まれていたから、これを渡そうと思う」
 
と言って千里は冬子にスコア譜を見せた。
 
『希望の鼓動』と書いてある。Cubaseで打ち込んでプリントしたもので、日付は今日の日付 Sun Nov 13 2016が印刷されている。
 
「いつの間に入力したの〜!?」
 
実際には試合前に走り書きで譜面を書いたものを、葛西の《わっちゃん》が入力してくれたものである。
 

↓ ↑ Bottom Top

11月中旬。龍虎は進学問題について母に相談してみた。
 
もっと早く相談したかったのだが、龍虎自身がこの所、連日深夜の帰宅になっていたので、ゆっくり話す時間が無かったのである。
 
「公立は無理だと思うよ」
と母もあっさり言った。
 
「だいたい、あんた中学の勉強もサボっていたのに公立高校の授業に付いていける訳無いと思うし、出席日数が足りなくなるだろうし、テストで赤点取って、夏休み前に退学になっちゃうかもね」
「私立だとどうにかなるの?」
 
「まず授業のレベルが易しい。進級するのに必要な出席日数が公立より少ない所が多い上に、特に芸能人の生徒を受け入れている学校では、レポートの提出で授業出席に代えてくれる所もある」
「そんな所があるんだ!」
「学校によるよ。それに私ずっと心配していたんだよ。あんた毎日熊谷と東京を往復しているけど、それだけでかなり体力使っているんじゃないかって」
 
↓ ↑ Bottom Top

「それはそうだけど、熊谷にいるから夕方18時からしか予定を入れられません、とか、終電は23時なので帰ります、って言えるんだよね」
 
「実質2時間短くて済んでいるかも知れないけど、その分2時間列車に揺られていたら体力的な負荷は大差無い気がするよ」
 
「うーん・・・」
 
「だから都区内の私立高校に入って、その高校の近くにマンションでも借りて、仕事が終わってからもそこに帰宅すればいいんじゃない?」
 
「・・・その方が楽な気がしてきた。でもごはんどうしよう?」
「ファミレスのデリバリー使ってもいいだろうし、牛丼とかホカ弁とか買って帰ってもいいだろうし、気力があるなら自分で作る。食材の宅配サービスを利用すれば買物に行かなくても済むよ」
 
↓ ↑ Bottom Top

「それは自分で作りたい気がする。お弁当とかすぐ飽きちゃう気がする」
「まあ作るだけの精神力が残っていたらそれでもいいかもね。それとも料理作ってくれて掃除してくれる家政婦さんでも雇う?あんたそのくらい雇う程度のお金はあるでしょ?」
 
「家庭に他人を入れたくない気がする」
「ああ、あんたはそうだろうね」
 
母が言う意味は、自分が早くに実の両親を亡くして、ずっと里親の元で育っているだけに、愛情関係の無い人と暮らすのは、ひとりで暮らすよりもっと寂しく感じるだろうということである。ただ龍虎は、そういう人を入れた場合、絶対《こうちゃんさん》に悪いことされそうという気もした。ボクが“無事”なのはボクが男の子だからだろうけど、女の子に改造して自分の嫁さんにしたいとか思ってないか?という疑惑を龍虎は持っている(かなり鋭い所を突いている)。
 
↓ ↑ Bottom Top

その内、卵を産み付けられたりしないだろうかという不安があるが、実際には《こうちゃんさん》は卵子は持っていないはず。
 
「あるいは、あやちゃん(彩佳)と結婚して一緒に暮らす?」
「男の子は18歳になるまで結婚できないよ!それに彩佳、30歳になるまではボクとの恋愛関係は保留するという約束をコスモス社長としたらしいし」
 
「男の子は18歳まで結婚できないだろうけど、あんた戸籍を修正して女の子になったら16歳で結婚できるよ」
 
「女同士では結婚できないじゃん」
 
むろん母はジョークで言っているのだが、戸籍を女子に修正するのは別に構わないのか?と突っ込みたい気分だった。それに母は龍虎にひょっとして生理があるのでは?という疑惑を持っていた。最近龍虎の“体臭”が女の子の体臭になっているような気がしているのである。やはりこっそり去勢したのかな?という気もするし、ナプキンも使っているみたいで数が減っているし、などと思う。(田代家では母も父もナプキンは無用なので使用しない)。
 
↓ ↑ Bottom Top


↓ ↑ Bottom Top

前頁次頁目次

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 
娘たちの誕生日(14)

広告:ゆりだんし-myway-mook-立花奈央子