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■娘たちの誕生日(4)

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ところで毛利五郎はこの2016年の春、ほとんど失業状態に近く、仕事が全然もらえず、家賃も長期間溜めて、追い出される寸前だった。それが5月9日、ケイが今にも崩壊しそう、というか既に廃屋にしか見えない毛利のボロアパートを訪ね、ドライ(後の三つ葉)のプロデュースを依頼してから生活が変わってしまった。
 
ドライのプロジェクトは、最初ΨΨテレビの森原プロデューサー、★★レコードの滝口、ラララグーンのソウ∽の3人が中心になって進めるという話だった(実際にはソウ∽はそれに同意しておらず森原の見切り発車だった)。
 
ところが森原が社長と対立して退職、滝口は癌が見つかって入院、森原の後任の名古尾プロデューサーがソウ∽を療養先の富山県・水仲温泉に訪ねてみると自分は今音楽活動ができる状態ではないとして断ったはずと言われた。
 
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それで結局オーディション合格者は通りがかり!のケイが決めることになり、ケイや同じく通りがかり!!の蔵田孝治の推薦で毛利五郎がドライのプロデュースをすることになったのである。
 
最初に始めた人たちがみんな居なくなったという状況の中で毛利にしても巻き込まれてしまったケイや蔵田も奔走することになるのだが、それをやっている最中に、毛利自身は、新人の山森水絵のプロジェクト、そしてアクアの新しいCDの制作にも担ぎ出され、一転して超多忙になってしまったのである。
 
毛利は5月9日に訪問してきたケイと一緒にアパートを出て、馬佳祥先生の所に挨拶に行き、その後、テレビ局に行って打ち合わせ、★★レコードに行って打合せ、3人の所属プロダクションがΘΘプロと決まると、そちらの担当となったハート長浜と打合せ、とめまぐるしく動き回り、徹夜で打合せをするのが常態化し、結局このあと長期にわたって自宅に戻ることができない状態になってしまった。
 
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さて、毛利が住んでいた崩壊寸前(既に崩壊していたかも)のボロアパートであるが、5月17日の雨の日、突然完全に崩壊してしまったのである。
 
このアパートに住んでいたのは毛利だけである。消防が崩壊跡を捜索したものの人の遺体のようなものは見当たらない。毛利本人に連絡が取れないかと彼の携帯に掛けるものの「この電話はお客様の都合により」というメッセージが流れる。
 
その時、大家さんは思い出した。
 
「そういえば毛利さんの婚約者さんの名刺を頂いていたんでした」
 
それは5月9日にケイが毛利の部屋を訪ねた時、ちょうど大家さんが家賃を払ってと言ってきたので、ケイはジョークで「毛利さんの婚約者です」などと名乗り、滞納している家賃を払ってあげた。その時、ついでに名刺(肩書き無し)を渡しておいたのを大家さんは思い出したのである。それでアパートが崩壊したという連絡がケイの携帯に入る。
 
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ケイは「毛利さんはピンピンしているから無事ですよ」と伝え、大家さんはホッとしていた。
 
「今にも崩れそうでしたもんね。本人は今多忙なんですが、誰か友人に頼んで荷物を回収に行かせますね。あの土地はこの後どうなさいます?」
 
「前々から、あそこ崩してマンションでも建てようかと思っていたんですよ」
「ああ、都区内ですからね。マンションにすれば結構人が入るんじゃないですか?」
「建て直したら、毛利さんご夫妻入居します?」
「はい、お願いします」
 

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などという会話をしていたら、そばに居た雨宮が電話を横取りした。
 
「お世話になります。婚約者の母でございます」
「それはどうもお世話になります」
と大家さん。
 
「何階建てくらいのマンションにするんですか?」
「ワンルームマンションで1フロアに4部屋くらいで、8階建てにしようかと思っていたんですが」
「その8階を1フロア1部屋に設定できないかしら?家賃は20万円くらいで」
 
「20万円も払ってくださるんでしたら、8階は特別仕様にしますよ!」
 
それで大家さんは8階建てのマンションを再建することにし、1〜7階は1フロアに4部屋(ワンルームだが実質1K)で家賃3万円なのだが、8階だけは1フロアで1戸の設定にして3LDK 20万円という設定にしたのである。
 
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「それで、その8階に取り付けて欲しいものがあるんですけど」
「はい、何でしょう?」
「階段なんですよ。前のお屋敷に取り付けていたものなんですけど、傷んでないですから」
「へー。でも階段取り付けてその上は?」
「屋上にペントハウス作れないかしら?小さいのでいいから」
「いいですよー。容積率には余裕がありますから」
 
「だったらそちらに持参すればいい?」
「では7月下旬くらいに持って来ていただけます?PC工法だから、その頃最上階の作り込みをすると思いますので」
「OKOK」
 
それで雨宮はアクアの『ロックバンドの少女』のPVを制作した時にセットとして作り、余っていたロートアイアン(wrought iron)の螺旋階段を、ここに持ち込んで取り付けてもらうことにするのである。3LDKの部屋は8階にあるので、この螺旋階段の上は屋上に作られたペントハウスということになる!このペントハウスまでカウントすると、ここは4LDKになる。
 
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むろん毛利本人はこの件を全然知らない!
 

千里たちバスケット女子日本代表は8月16日(火)18:45(日本時間17日6:45)、カリオカアリーナでアメリカ代表と相対した。
 
昨年7月のユニバーシアードで延長2回までもつれる大激戦をした時のメンバーが向こうにも居る。その子が千里に手を振ってきたので、こちらも振り返した。
 
試合が始まる。
 
アメリカは全力だった。
 
しかし日本も気合い負けしていなかった。向こうが最初から主力級を並べて来るが、こちらも千里・亜津子・玲央美・王子と入れたスーパージャパン級の選手で対抗する。アメリカもどんどん得点するが、日本もどんどん得点して、このピリオドは30-23 と点差はつけられたものの充分対抗していった。
 
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第2ピリオドも向こうが適宜交替しながら強い選手を並べる。体格で差があっても向こうの選手のアタックに、千里も玲央美も王子もビクともしない。このピリオドは26-23で持ち堪える。しかし点差は10点に拡大する。
 
「点差は付いてるけど、負けている気がしない」
「このペースで頑張ろう。持ち堪えていれば、最後は向こうも疲れが出てくる」
という声もあるが、千里はチラッと玲央美と視線を交わした。
 
実は千里も玲央美も逆にこちらの体力がもたないのではという気がしたのである。
 

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第3ピリオドは、向こうはフォワード5人を並べて猛攻を仕掛けて来た。こちらは防戦一方になるも、千里や玲央美がみんなに声を掛けて態勢を整え直す。それでピリオド後半は何とか盛り返したものの、25-13の大差をつけられた。ここまで81-59の22点差である。
 
最後のインターバル、日本ベンチはさわやかムードだったが、アメリカのベンチは監督が何だか物凄く怒っていた!
 
最終ピリオド、向こうの選手たちが怒ったような顔でプレイしていた。点差はついているものの、勝負としてはかなり互角に近い状態で来てしまったことに、選手たちが奮起したのだろう。さっきのインターバルでは、向こうの監督さんは「お前らアジアの弱小に何やってるんだ?お前らもう女辞めるか?」などと檄(げき)を飛ばしていた。きっと人目が無かったら殴っているだろうなという気がした。
 
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実際この第4ピリオドのアメリカはここまでのアメリカとは違った。
 
千里や玲央美は、これこそがアメリカの本気なんだと思った。
 
このピリオドは“海外組”の千里と王子が1本ずつシュートを決めたほかは無得点。29-5という物凄いスコアになった。千里や玲央美が危惧したように日本側の疲れも出てしまった。玲央美のシュートは物凄く惜しかったのだが、リングを数回まわってから外にこぼれてしまった。亜津子は全く撃たせてもらえなかった。
 
合計110-64で、ダブルスコアに近い敗戦となった。
 
みんな泣いていた。しかし千里・玲央美・王子の3人だけは試合終了後、コートを睨むようにして立っていた。
 
アメリカのシューターがそういう3人を真剣な眼差しで見ていた。
 
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これで千里たちのリオ五輪は終わったのである。
 
試合終了後、アメリカの選手たちが呼びかけて、日本選手とアメリカ選手が入り乱れて並んで記念写真を撮った。泣いていた選手、厳しい顔をしていた選手、そしてアメリカ側で怒ったような顔をしていた選手も、みんな笑顔で肩を組んで写真に写った。これが“ノーサイド”だよなと思った。千里や王子は何人もの選手から握手を求められた(実は後でユニフォームの交換もした!)。
 

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2016年8月20日(土).
 
龍虎は15歳の誕生日を迎えた。昨年は1日お休みをもらったのだが、今年はとても休めなかった。レギュラー番組をいくつも抱えている中で『ときめき病院物語II』の撮影が8月14日以降、6月までの3倍くらいの高密度ペースで進められ、出演者全員スケジュール調整がたいへんなことになっていた。アクアは他の出演者に「私の映画の撮影が割り込んだためにご迷惑掛けて、大変申し訳ありません」と謝ってまわったが、みんな「いや、君のせいじゃないよ」と言ってくれた。
 
そんな中で「キャロル前田倒れる。入院は最低2ヶ月か」という報道があり、びっくりした。
 
「なんか忙しそうでしたもんね。大丈夫かなと思ってた」
とアクアが言うと
「君も苗場ロックフェスティバルで倒れたんだって?君こそ大丈夫?」
と倉橋礼次郎さんが気遣ってくれた。
 
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「『変身ポンポコ玉』の撮影はどうなるんだろう?」
 
「緊急会議したみたいだけど、多分延期だろうね」
「ああ」
「そうなると、今から代わりに10月開始のドラマか何かの企画を作らなければならない」
「ひぇー!!」
 

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ΛΛテレビでは全役員と全プロデューサーによる、半日にわたる緊急会議をした上で、このようなことを決めた。
 
・『変身ポンポコ玉』は 2016/10-2017/3 放送予定を半年ずらし、2017/04-09の放送とする。その撮影は2017/01-03におこなう。
 
(2ヶ月で半年分を撮影するのはさすがに無理で、やったとしても主演が倒れるという声が、今回映画『時のどこかで』を撮影したスタッフから出た。実際に撮影中にアクアが倒れたことから、キャロルの事務所と交渉の末、彼の日程を退院後3ヶ月間確保してもらえることになった)
 
・七浜宇菜・横川れさとW主演『少女革命ウテナ』を2016/10-12に放送する。『変身ポンポコ玉』でアサインしていた大半の俳優さんにこちらに出てもらう。1-3月期については後日検討。脚本は筆の速い井山玲佳さんにお願いする。
 
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(宇菜はウテナ役で男装披露。宇菜に男装させないとファンがうるさい)
 
・『変身ポンポコ玉』は予定通り、小池プロデューサー・河村監督のコンビで。『少女革命ウテナ』は中村プロデューサー・田箸監督のコンビで。
 
(田箸監督は業務放棄で厳重注意されたものの、謝罪文を提出して逆池プロデューサーとも和解した)
 
・河村監督が9-11月空くのでドラマ『時のどこかで』の監督を映画に引き続きお願いしたい。12月以降の監督は現時点では未定。ドラマ『時のどこかで』の担当プロデューサーは和田プロデューサーとする(和田は2月に予定される撮了まで担当)。
 
 
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