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■娘たちのリサイクル(17)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-06-24
 
千里たちは普通に6時にサービスパークがオープンしてから入り、ドラマで使用するチーム名《オータムガール》で登録する。小島秋枝という役名から採ったチーム名である。
 
6:30からブリーフィング(コース説明会)が行われ、6:40から1台ずつレッキに出発した。まずはスタート地点から北東方向、県道654号を通ってスイス村まで行き、ここから南下する丹後縦貫林道がスペシャルステージの舞台である。
 
まず角突山を越えるのがSS1(9.3km)。上世屋から成相山を通って駒返しの滝まで行くのがSS2(8.55km)、それから更に林道を走って大内峠そばまで行くのがSS3(4.9km)であった(走り屋さんが大好きな大内峠自体は通らない)。SS4/SS5/SS6は、SS1/SS2/SS3の繰り返しである。つまり同じルートを午前と午後の2度走ることになる。
 
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この日はまずSS1/SS2/SS3を2回走った。1回目はゆっくりとメモを取りながら、2度目はそのメモの内容を再確認しながら走った。
 
その後2日目(Leg2)のレッキになる。これは1日目の逆コースである。
 
SS7はSS2の逆走(7.84km)、SS8はSS1の逆走(9.39km)になっている。同じルートでも順走と逆走では走り方はまるで違う。雨宮先生はかなり悩みながらノートを取っていたようである。そして最後にSS9は今回のメインルートからは外れて、スタート地点の北方にある道の駅・丹後王国まで行き、この道の駅の園内道路440mのコースを走る。この超短いコースがSS9である。これはこのラリーを観戦したい人たちのためのギャラリーステージである。そしてSS10/SS11/SS12は昨日同様SS7/SS8/SS9の繰り返しである。つまり道の駅にずっと居ると2度のステージを間近で観戦することができる。
 
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この後半のレッキでは、SS7/SS8を2回走った後、丹後王国に移動し、SS9を2度走った。
 
千里たちは13時前にはスタート地点に戻り、レッキ用のゼッケンを返却して旅館に戻った。そしてふたりで一緒にノートの内容を整理した。山道で走っている最中に書いた文字は、どうしても字が乱れ、書いた本人も分からないことはよくある。最終的には清書するのだが、この過程と最終的にできあがったペースノートをテレビ局のスタッフが撮影していた。また尾崎さんとイルザが同様のことをしている様も撮影していた。
 

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午後いっぱい休憩してから17時半頃、文化会館前に行く。18時からセレモニアルスタートが行われる。文化会館前にゲートが作られていて1台1台ここに付けては選手紹介後、選手にインタビューなどもし、市長さんが市旗を振ってスタートしていく。むろん本当のスタートは明日朝で、ここは単なるセレモニーである。例によって17:50にイルザと尾崎さんが乗った車を撮影用にセレモニアルスタートさせてもらって、そこをテレビ局のクルーが外側から3台のカメラ、車内からも1台のカメラで撮影していた。イルザがインタビューされているシーン(台本)もしっかり撮影したが、ここでインタビューした人は本物の司会者である。
 

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千里たちはオープン参加なので、かなり後の方になる。結局18:32になって、やっと順番が回ってきて
 
「オータムガールの村山千里選手・雨宮三森選手です」
 
と紹介される。千里たちは特にインタビューも無しで、そのまま市長さんの市旗を合図にスタートした。テレビ局のスタッフはこれも念のため撮影していた。
 
セレモニアルスタートの後はそのままパルクフェルメ(管理駐車場)に入れる。ここでまた明日の競技開始まで主催者側で保管される。
 
「お疲れ様〜」
と言って降りて一般駐車場まで歩き、千里のインプに乗り換えて旅館に戻る。実際にはパルクフェルメでラリー用の車を降りた所で、東京の大田区総合体育館に行っている《きーちゃん》と入れ替わった。
 
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このために《きーちゃん》には千里と全く同じレーシングスーツを身につけておいてもらった。
 

この日は19:00から初日カタール戦である。
 
貴司はスターターではなかったものの、第2ピリオドに出て行った。コートインしてすぐに巧みなフットワークで相手をかわして進攻。ゴール右側からシュートしようとしてブロックされそうになる。ここで貴司はゴール左側に走り込んできた背の高い選手(背番号とパンフレットを見て龍良正蔵という選手と知る)にボールを送り、彼がダンクでボールをゴールに叩き込む。
 
貴司とその選手がハイタッチする。
 
今ので貴司にはアシストが付いたはずである。
 
その後も、貴司は中盤のボールをよく支配し、得点こそあげないものの、スティールやアシストをよく決めている。
 
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「MM化学ではバリバリ得点あげているのに、ここではプレイスタイルが違う」
と千里が呟くと
「点取る能力の高い選手が多いから、ここでは裏方に徹しているんだよ」
と《こうちゃん》が言った。
 

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第3ピリオド、貴司がスリーポイントライン付近でドリブルをしていたら、右斜め後ろの死角から相手ポイントガードがあまり足音を立てないように近づいて来た。
 
「貴司!5時!」
と千里は叫んだ。
 
するとカタールの選手が貴司のドリブルを横取りしようとした瞬間、貴司はそのドリブルを左手に移した。そしてその選手が勢い余って前方に数歩ステップしたのを壁に使い、貴司は右から包囲網を突破してそのまま制限エリアに突入。きれいにレイアップシュートを決めた。
 
味方の選手とハイタッチした貴司がこちらを見た。一瞬千里と目が合う。
 
千里はドキっとした。
 
千里が笑顔で手を振ると、貴司も笑顔を返してくれた。
 
私、桃香と結婚しちゃったのに、これ精神的浮気かなぁ、などと千里は少し罪悪感を感じた。
 
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この日はその後3回も貴司と目が合った。この日の試合は69-73で日本が勝った。
 

9月15日(土).
 
この日はラリー1日目である。ラリーではレグ1(Leg 1)という。これはラリーのみならずスポーツ一般で使用される言い方である。ホーム&アウェイ方式の1試合目をLeg1, 2試合目をLeg2といったりする。千里たちは今日も明日も、午前と午後で同じコースを2度走るがこれを各々セクション1、セクション2と呼ぶ。つまり今回のラリーは2レグ・4セクションの競技である。
 
千里たちは朝御飯を食べてから9時すぎに会場に入った。スタートは10:00である。まずはスイス村まで40分ほどリエゾンして行き、スペシャルステージが始まる。
 
スタートは10:48からである。千里たちは41番のゼッケンなので11:28のスタートとなった。
 
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雨宮先生の指示に従って走って行く。道は傾斜が急だしジグザグで、一瞬たりとも気が抜けないコースだ。
 
「えっと・・・前の車との距離がどんどん縮まっていきますが」
「抜こう」
 
後ろから後続の車が迫ってきた場合は、追いつかれた側はすみやかに譲ることがルールとして定められている。千里たちの前の車もハザードを焚いて脇に寄ってくれたので安全に追い越すことができた。こちらもサンキューハザードを焚いておいた。
 
そういう訳で結局7分半ほどの走行の間に3台も抜いてしまった。
 
次のSSへ25分ほど掛けて移動する。そして次のステージでも3台抜く。SS3でも2台抜いて、結局午前中の競技で8つも先に進んでしまった。
 
午後はリグループと言って再び出走順に並べられ、1分単位で出走するのだが、千里たちが最初に抜いた車も含めて(千里たちより前に)5台も午前中だけでリタイアした車があり、千里たちのSS4スタートは36番目となった。先頭が13:57スタートだったが、14:32のスタートになった。
 
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そしてこの午後の競技でも千里たちは7台抜いた。
 
なお今日の競技の様子はヘリコプターからテレビ局のクルーが撮影していたのだが、追い越す場面がたくさん撮れたのは、テレビ局としては嬉しい誤算だったらしい。
 

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15日の競技が終わってサービスパークに戻ったのは15:55、サービス(給油と整備)を終えてパルクフェルメに移動し、車を降りたのが16時半すぎであった。千里は実際にはサービスパーク内で給油・整備が終わった時点で《きーちゃん》と入れ替わり、パルクフェルメへの移動は《きーちゃん》がしてくれた。
 
この日は16:30から台湾戦であった。この日も貴司は途中から出場して活躍し、試合は78-90で勝った。試合中、貴司とは6回も目が合った。
 

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「細川君、客席の彼女と何度も視線を交わしていたね」
と貴司は前山に指摘された。
 
「ごめーん」
と貴司が謝ると、龍良がヘッドロックを掛けてくる。龍良の太い腕で押さえられると、マジで動けないし痛い!
 
「そんな浮ついた奴は今晩俺と付き合え」
と龍良が言ったが
「それセクハラだから」
と須川主将が言ってくれたので、この日の貴司の貞操は守られた!
 
「あ、その細川君の彼女という人から差し入れが入っていましたよ」
と事務の人が言うので貴司はドキッとした。
 
“彼女”って、どっちだ!?
 
それで出てきたのを見ると《生八つ橋》である。
 
「おお!これ好き!」
という声がいくつもあがり、生八つ橋は一瞬で無くなる。出遅れた貴司は1つも取れなかったが、前山が2個取ってくれていて1個貴司に渡してくれた。
 
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「ありがとう」
と言って受け取る。前山君は気配りが凄いなと貴司は思った。
 
「彼女って京都に住んでるの?」
などと磯部さんが訊く。
 
「いや、そういう訳ではないのですが」
「来る途中で買ってきたのかな?」
と酒井が言う。
 
あ、そうかも知れないと貴司は思った。だったらこれを買ってきたのは阿倍子か?バスケットの大会なんて興味無いようなことを言っていたのだが、見に来てくれたんだろうか?と思うのと同時に千里と鉢合わせとかしないといいのだがと冷や汗を掻いた。
 
それで控室を出てNTCに移動中に貴司は阿倍子に
《こちらに来てるの?お土産ありがとう》
とメールを送った。
 
ところが阿倍子からの返信を見て肝を潰す。
《私、ずっと神戸にいるけど。お土産ってどなたからの?》
 
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ひぇー!?だったらお土産を持って来たのは千里か?それとも理歌か誰かでもこちらに来ているのだろうか?と考えた。
 
恐る恐る千里にメールする。
《応援ありがとう。頑張れたよ》
 
敢えてお土産のことは書かなかった。すると千里から返信がある。
 
《凄く頑張ってるね。この活躍を元に来期はマジでどこかNBLのチームに入りなよ。お土産届いたかな?午前中、京丹後市に行ってたから現地で買って持ってきて事務の人に渡しておいたんだけど》
とあった。
 
お土産はやはり千里が持ってきたのか〜〜!?
 
と貴司は頭を抱えたが、お土産の御礼だけメールしておいた。
 
《お土産ありがとう。一瞬で無くなったよ》
《そう?だったらまた何か持って行ってあげるよ》
 
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16日は貴司たちの試合は無い。それでこの日千里はずっと京丹後市でラリーをやっていた。
 
昨日の午後の競技で10組リタイアした人たちがあったらしい。その内千里たちより前の順番の人が4組あったので、結局千里たちは繰り上がって32番目のスタートとなった。
 
8:30にパルクフェルメを出てリエゾンして延利まで行き、9:26からSS7が始まる。千里たちは今日もここで2台、次のSS8で2台抜いた。10:42からSS9、道の駅・丹後王国でのギャラリーステージが行われる。440mのコースなのでむろん追越しなどは発生しないが、たくさん観客のいる所で走るのはなかなか楽しかった。
 
この丹後王国のステージでも、本番が始まる前の10:00に、イルザと尾崎さんが乗った車がこのコースを走り、道の駅に居た人たちから声援を受けていた。この440mは全部イルザが運転した。イルザは12時からは、道の駅の特設ステージでミニ歌謡ショーもおこない、かなり盛り上がったらしい。
 
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ラリー本戦は最後のセクション4になる。また延利まで行ってSS10/SS11を走る。ここでもまた2台ずつ抜いた。そして最後に13:54から丹後王国でのSS12が行われ、その後杉谷の京丹後市役所前のゴールまで走って、全ての競技は終了した。
 

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ゴールに辿り着いたのが14:20くらいで、そのままパルクフェルメに入れて、車両の再検査を受けた。そして全ての車両の検査が終わった所で車両管理は終了し、車をサービスパークに移動させる。
 
15:30に結果が発表され、千里たちの《オーガスト・ガール》はオープンクラスの2位に入っていた。
 
「うっそー!?」
「まあよく前の車抜いたしな」
 
なお選手権参加者の成績に照らしても30人中15位に入る立派な成績であった。
 
それで表彰台に乗って賞状と楯を頂いたが、この場面で撮影用にイルザたちを表彰台に乗せて撮影させてもらえないかとテレビ局が申し入れ、OKになったので1位・3位の人たちはそのまま、イルザと尾崎が2位の所に立ち賞状と楯を受け取るシーンの撮影も行った。
 
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入賞してしまい、しかも2位というのはドラマ制作側も誤算だったらしいが、シナリオを書き換えると言っていた。
 

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娘たちのリサイクル(17)

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