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■娘たちのリサイクル(14)

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「その着メロ最近よく鳴っているような気がする」
と桃香は言った。
 
「私を振った人だよ」
と千里は素っ気なく答えた。
 
「やはり、そうだったのか。しかし婚約して結納まで交わしておいていきなり振って他の女と結婚するなんて酷い奴だ」
と桃香は言う。
 
「ホントホント。しかも相手の女は妊娠しているというし」
「それで千里振られたのか!」
「あったま来るよね。きっと最初から二股してたんだよ」
「だろうな。だったら、出産までには結婚する訳だ?」
 
「でもその女のお父さんが亡くなったんだよ。だから結婚式は1周忌の後まで延期」
「結婚を延期したら、その子供はどうなるの?」
「多分籍だけは先に入れるんじゃないの?」
 
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「でも千里、本当は諦めてないんじゃないの?」
「まあ、そのまま簡単には結婚させないつもりだよ」
「千里は簡単には物事を諦めない女だ。その結婚が延期されている間に彼氏を奪い返すつもりでは?」
「その気は30%くらいはある」
 

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「しかしその彼って、これまでの千里の話を聞いていると、ゲイの傾向があるのでは?」
「怪しいとは思っている」
「だったらきっと、純女とは長続きしないよ」
「それは期待している」
と千里も少し闘志を燃え上がらせるような顔をする。
 
「だけどさ」
と桃香は言った。
 
「うん?」
 
「いっそ、そんな千里のことを振ったような男のことは忘れて、これを受け取ってくれないか」
 
桃香は机の引き出しから小さな紙袋を取り出した。そしてその袋の中から青いジュエリーボックスを取り出した。
 
「何?桃香が同棲するつもりの女の子へのプレゼント」
 
桃香がジュエリーボックスを開けると、中にはダイヤのプラチナリングが入っている。ダイヤは0.7ctくらいある。これは多分100万円以上する。
 
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「うん。だから私は千里と一緒に暮らしたい。だから千里にこれを受け取って欲しい」
 
「へ?」
と千里は戸惑うように声をあげて桃香の顔を見上げた。
 
「千里、私の奥さんになって欲しい」
と桃香は言った。
 
「え〜〜〜〜!?」
 
千里はこういう事態は全く想定していなかったので驚いた。
 

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「桃香、私のこと好きだったの?」
「好きでなきゃ千里と同棲するわけない」
「それ、わたし的には同居なんだけど」
 
と言いつつ、桃香が性転換手術が終わったら言いたいことがあると言っていたのはこれだったのかと思い至った。
 
「千里、私のこと好き?嫌い?」
と桃香は訊いた。
 
「嫌いではないけど」
と千里は答える。
 
「そういう曖昧な言い方はやめて欲しい。好きか嫌いかどちらかにしてくれ」
 
千里は本当に驚いていて、どう桃香に返事していいのか悩んだ。しかしこの時は貴司に対する怒りもあり、向こうが結婚してしまうなら、こちらも結婚してしまってもいいかなと思ってしまったのである。
 
「桃香って、いつもそう言うよね。じゃ、好き」
「私も千里のことが好きだ。だから結婚して欲しい」
「そうだね。まあいいか」
 
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それで桃香は千里の左手薬指にエンゲージリングを填めてあげた。
 
「すごーい。ピッタリ!私、指のサイズ大きいのに」
「実は千里の例のプラスチックの指輪を宝石店に持ち込んでそのサイズで作ってもらった」
「なるほどー!」
 
桃香は婚姻届の用紙を出して来た。
 
「結婚の誓いでこれに記入しない?」
「え?でも私女の子になっちゃうから、これ受け付けられないよ」
「大丈夫。提出はしない。それにこれ少し改変してあるから」
「改変?」
 
それで見てみると普通の婚姻届け「夫になる人」の両親の名前および続柄の所に「男」と印刷されていて、「長男」とか「二男」とか書くようになっている所が「女」と印刷されている。むろん「妻になる人」の続柄欄も「女」である。つまりこの婚姻届は女性同士の結婚のために調整されているのである。
 
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「面白ーい!」
「私がこれの夫欄に記入するから、千里も妻欄に記入してよ」
「やはり桃香が夫なのね?」
「逆でもいいけど。千里、夫になる?」
「それは嫌だ」
「だったら私が夫だな」
 
と言い、桃香は婚姻届けの左側の列を埋めていった。
 
氏名 高園桃香
生年月日 平成2年4月17日
住所 千葉市稲毛区**#丁目$番△号
本籍 高岡市***$番△号
父母の氏名 高園光彦/高園朋子
続き柄 長女
 
それで千里も右側の欄を埋める。
 
氏名 村山千里
生年月日 平成3年3月3日
住所 同左
本籍 留萌市***$番△号
父母の氏名 村山武矢/村山津気子
続き柄 長女
 
「苗字はどうする?」
と千里が訊くと
 
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「私は夫婦別姓論者だ」
と言う。
 
そして見ると「結婚後の夫婦の氏」の欄には「夫の氏」「妻の氏」以外に、「各々の氏を継続使用する」という選択肢がある。
 
「面白ーい」
「これを選んでいい?」
「うん。いいよ」
 
そんなことを言いながら千里は思っていた。私、いったいこれまで何度貴司に振られたんだろう。そしてどれだけ浮気されたんだろう。あんな薄情者の浮気者のことなんか忘れて、桃香との愛に生きるのもいいかも知れない。
 
ああ。でも保志絵さんや淑子おばあちゃんに何て説明しようかな。
 
桃香は初婚再婚の所で、桃香は《再婚》を選び、《離別.平成24年6月25日》と書いた。千里も《再婚》を選び《離別.平成24年7月6日》と書いた。
 
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職業欄はどちらも学生にした。同居を始めた日は平成23年1月30日と桃香が記入した。
 
「よくそんな日付覚えているね〜!」
「ちゃんと手帳に書いておいた」
「へー!」
 
「証人はいいよね?」
「うん。私たち自身が証人ということでいいと思う」
 
それで桃香は千里にキスした。千里も今日は桃香のキスを素直に受け入れた。
 
「じゃ結婚したからこれをつけよう」
と言って、桃香はプラチナのペアリングを出してくる。
 
「結婚指輪も用意していたのか!」
「内側に刻印もあるよ」
と言って桃香は内側を千里に見せる。
 
「MO to CH, CH to MOか」
とその刻印を読んでから千里は腕を組む。
 
「この指輪、季里子ちゃんと交わした結婚指輪に似てる気がするんだけど、まさか再利用じゃないよね?」
 
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「まさか。季里子のイニシャルなら KI だよ」
「あ、そうか」
「こういうデザインが好きだから、ついまた同じようなのを選んでしまった。それに季里子の指輪が千里に入る訳ない」
 
「ほんとだ!」
 
それで、桃香は千里の左手薬指のエンゲージリングをいったん右手薬指に移した上で、MO to CH の結婚指輪を千里の左手薬指につけ、その上にエンゲージリングを再度左手薬指に重ねてつけてあげた。千里もCH to MOの結婚指輪を桃香の左手薬指につけてあげた。
 
それで再度キスをした。
 
「でもごめん。私の女性器まだ不安定だから、桃香を受け入れられないんだけど」
「いいよいいよ。年末くらいまでには使えるようになるかな?」
「かもね」
「じゃクリスマスか1月2日の姫初めで」
「いいよ」
と千里も微笑んで言った。
 
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それでこの日は一緒のお布団に並んで寝た。あそこをいじってあげたら気持ちいい!と言って喜んでいるようだった。
 

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指輪であるが、実は CH to MO の結婚指輪は季里子と交わした指輪の再利用(Reuse)である。千里は季里子のイニシャルがCHであることを知らない。彼女は画家のジョルジョ・デ・キリコ(Giorgio de Chirico 1888.7.10-1978.11.20)のちょうど生誕100年後、1988年7月10日に生まれたことから、季里子と名付けられた。それで彼女は自分の常用クレジットカードも Chirico Shioの表示にしている(海外に出た時のためにパスポートと同じスペルのKiriko Shioのカードも持っている)。
 
そして MO to CH の結婚指輪は実は季里子に贈った結婚指輪をいったん融かして、少しプラチナを追加して千里の指に合うサイズに再加工してもらったものである。刻印も新たに入れてもらった。そういう訳でこちらは実は資源再生(Recycle)したものだったのである。
 
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正直、リサイクルするより、単純に下取りしてもらって新たな指輪を買った方が値段的には安くなったのだが、桃香は実は季里子への愛をまだ思い切れずにいて、その気持ちを密かに持ち続けたいという下心(?)でリサイクルを決断したのであった。単純にサイズ直ししてもらう手も考えたのだが、それではどうしても繋ぎ目の所が分かると言われ、いっそ融かして再形成という方法を選択した。
 
なお桃香はこの結婚指輪のリサイクルと、新たな婚約指輪の購入のために、電話受付会社からもらった退職金に加え、1年生の時に優子のお勧めで買った株で最後まで残っていたものを売却して資金に充てた。これで桃香の貯蓄は完璧に無くなってしまった。
 

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2012年9月8-9日(土日)、前橋市のALSOKぐんまアリーナ(群馬県総合スポーツセンター)で全日本クラブ選抜大会が開催され、ローキューツはこれに関東クラブ選手権1位の資格で出場した。
 
以前は全日本社会人選手権に出場するには、3月の全日本クラブ選手権の上位入賞が必要だったのだが、今年からはこの全日本クラブ選抜の上位が派遣されることになったのである。
 
これに臨んだローキューツのメンバーは下記である。
 
選手(16名)
4.歌子薫(SF) 6.森田雪子(PG) 7.風谷翠花(PF) 8.原口揚羽(C) 9.松元宮花(PG) 11.水嶋ソフィア(SG) 15.東石聡美(SF) 16.馬飼凪子(PG) 18.岡田瀬奈(SG/SF)22.五十嵐岬(PF) 23.愛沢国香(PG/SF) 24.岸原元代(PF) 27.深山三葉(SF) 30.後藤真知(SF) 33.森下誠美(C) 35.長門桃子(C)
 
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スタッフ(8名)
ヘッドコーチ 西原敏秀 アシスタントコーチ 谷地博伸 サブコーチ 杉山蘭 主務 島田司紗 マネージャー 鴨川絵美・宮中春江・沢口葉子・真田雪枝
 
以上の24名がベンチに座るが、玉緒と茜はベンチ外で事務的な作業をし、また沙也加たち8名のチア部も同行したので参加者は全部で34名に及ぶ。体調を整えるため選手は現地に前泊している。玉緒と司紗も事務作業のため前泊で、それ以外のメンバーは当日前橋に入っている(希望者は前泊可。実際真田雪枝と沢口葉子は前日に選手と一緒に前橋に入った)。
 

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今回は全日本クラブバスケットボール選抜大会の第1回大会である。
 
全国から16チームが出場し、上位3チームが11月の全日本社会人選手権に進出し、そこで2位以内になるとお正月のオールジャパンに出場できる。関東から出ているのは、ローキューツ・江戸娘・須賀イラインの3チームである。
 
初日の午前中はまず中国地区の代表と対戦し15点差で勝利した。そして午後からは東北のチームと対戦。これも10点差で勝った。
 

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「そういえば麻依子ちゃん、赤ちゃんできたんだって?」
「そそ。3月に生まれるって」
「もうママかぁ。なんか凄いなあ。同い年なのに私は彼氏も居ないや」
「まあ彼氏ができたらトントンと結婚・出産まで行くかもね」
「やはり結婚して出産の方がいいよね」
「出産してから結婚という人もたまにいるけど、それ色々問題あるよ」
 
「千里ちゃんは何か手術受けたと聞いたけど」
「性転換手術を受けたと本人は言っているが」
「嘘!?男になったの?」
「それが本人は男から女になったと言っている」
「だって元から女じゃん」
「うん。だから千里の言うことはよく分からない」
「千里も妊娠したという話もあるのだけど、未確認」
「妊娠したのなら、男だったというのも嘘だな」
「まああの子は時々よく分からないことを言う」
 
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2日目まで残ったチームは下記である。
 
長崎カステラズ、三重ツインビュー、奈良ドリームキャッスル、千葉ローキューツ
 
準決勝の相手は奈良ドリームキャッスルであったが、この相手にはローキューツは終始リードを許す苦しい展開だった。しかし最後の最後に相手シュートを誠美がブロック。それを速攻で雪子が相手選手をひらりひらりとかわしてゴール近くまで運び、最後に相手センターに阻まれた所で、全く後ろを見ずにポンと後ろ向きにボールを放り投げる。
 
そこにソフィアが走り寄り、スリーポイントラインの所からシュート。
 
これがブザービーターとなって、最後の最後で劇的な逆転勝利をおさめた。
 
これでローキューツは全日本社会人選手権への出場を決めた。
 
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最後に行われた決勝戦の相手はツインビューであった。カステラズとこちらも1点差ゲームを制して勝ち上がってきた。
 
このゲームは非常に厳しい戦いになった。
 
ツインビューは守りの堅いチームで、こちらはなかなか向こうの陣内に進入できない。誠美は明らかに狙われて第1ピリオドだけで2つファウルを取られたので、その後は彼女もかなり慎重になった。
 
むろん誠美や短時間彼女の代わりに出る桃子も、そう簡単には相手にゴールを許さないしリバウンドもどんどん取るのだが、結果的に超ロースコアのゲームとなった。
 
それでソフィアのスリー頼みになるのだが、向こうはソフィアにもかなり警戒してダブルチームを掛けたり、ファウル覚悟で停めに来るので、千里ほどの精密度と頑丈さの無いソフィアではこの場面を打開するほどの力は無かった。むしろ「怪我しないようにプレイして」と薫から注意され、ソフィアもあまり無理しないようにしていた。
 
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試合はそれでも最後は誠美が取ったリバウンドを翠花が速攻で向こうに運び、彼女のシュートはブロックされたものの、こぼれ球を真知が取ってソフィアにつなぎ、ソフィアがファウルを受けながらもスリーを放り込んで逆転する。その後のフリースローも決めて、43-45の2点差でローキューツが勝利。優勝を掴んだ。
 
全日本クラブ選手権・全日本クラブ選抜の2冠達成である。
 

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娘たちのリサイクル(14)

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