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■娘たちのリサイクル(13)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-06-23
 
9月6日(木)夕方。貴司はNTCでの合宿が終わり、宿舎を出た。出口を出た時、赤いインプレッサが停まっているのを見て、ギョッとする。しかしよく見るとナンバーが千里のインプとは違うし、運転席に座っているのも中年の男性だった。運転手は携帯をしていたようで、やがて通話を終えて車を発進させた。
 
貴司は「はぁ」とため息を付くと、とぼとぼと赤羽駅への道を歩き始めた。
 
次の合宿は9日からである。
 
赤羽駅まで来てみどりの窓口で新大阪までの切符を買おうとしていたら、
「細川君?」
と声を掛ける人がある。振り返ると久しぶりに見る顔があった。
 
「水流さん!」
と貴司はにわかに笑顔になった。
 
それは留萌のS中学の時のバスケ部の先輩・水流貞次(つる・ていじ)の兄、水流将太(つる・しょうた)で、貴司をMM化学に誘ってくれた当人である。ただ水流さん本人は、その後チームのレベルが上がりすぎて、選手枠からこぼれ落ちてしまい、他のチームに移った。貴司は申し訳無い気持ちだったのだが
 
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「チームが強くなるのはいいこと。僕の代わりにこのチームを盛り立てて行ってよ」
と言い、笑顔で会社を去って行った。
 
「細川君はまだMM化学にいるの?」
「はい」
「君ならもうとっくにJBLにでも行ったかと思ったのに」
と言われてドキッとする。
 
それは千里からここ1〜2年、散々言われていたことでもあり、先日から龍良さんからも
「うちのチームでなくてもいい。JBLのどこかのチームに移籍しなよ。君はまだ伸びるけど、弱いチームにいては成長できない」
と言われているのである。
 
「水流さんは今どちらにおられるんですか?」
「茨城県の小さなチームにいるんだよ」
「へー」
「なかなか面白いよ。元プロがゴロゴロいるから」
「そんなに!?」
「君ちょっとうちの練習に出てみない?別に勧誘しないから」
「はい!ぜひお伺いさせてください」
 
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それでその日貴司は大阪に帰るのをやめて、取り敢えず水流さんと一緒に焼肉屋さんに行ってつもる話などをし、その晩はビジネスホテルに泊まった。水流さんは「僕の家に泊まらない?」と言ったのだが、何となく貞操の危機?を感じたので、辞退した。
 
カプセルホテルとかにすればホテル代を節約できるが、貴司はカプセルホテルの男性用のエリアに泊まるとお風呂に入れないし、かといって女性用のエリアに泊まる勇気は無い(そもそも追い払われるか、最悪警察に通報される気がする)。
 

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9月7日(金).
 
常総市に建設中だった千里の私設体育館《常総ラボ》が完成。千里は朝一番に引き渡しを受けた。工務店の人、ずっと作業してくれた人たちには感謝の意をこめてお菓子とポチ袋を配った。
 
さっそく使うことにする。体育館の壁沿いに一周すると86mほどあるので、まずは軽くこれを20周(1.7km)走り、それからコートの端から端までのドリブル走を右手と左手と交替しながら20往復やる。このウォーミングで30分ほど掛かっている。
 
それからミドルシュートの練習を場所を移動しながら軽く150本やり、その後、スリーポイントの練習をまた場所を移動しながら軽く150本やった。シュート練習には《すーちゃん》が返球係を務めてくれたので、300本の練習は2時間弱で終わった。
 
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「まだまだ練習が足りないけど、まずはこのくらいから少しずつ増やしていこうかなあ」
などと言って、千里は1階のトレーニングルームで懸垂50回、腹筋・背筋50回、腕立臥せ100回・スクワット100回をしてから、お昼過ぎにインプを運転して千葉に戻った。
 

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貴司は7日のお昼すぎに関東鉄道常総線の岩田駅まで来てと言われたので、ホテルを9時半頃にチェックアウトし、京浜東北線で秋葉原に出ると、つくばエクスプレスで守谷まで行く。ここで関鉄常総線に乗り換えて岩田まで行った。着いたのが11:40くらいである。
 
するとここにトレーニングウェア姿の水流さんがいる。
 
「よし走るぞ」
「はい!」
 
それで貴司は駅を出てから軽いストレッチ運動をした上で水流さんと一緒に走った。
 
「練習場所までどのくらいですか?」
「まあ走って2時間かな」
「え〜〜〜!?」
「冗談冗談。4kmくらいだから30分程度だよ」
「それでも結構ありますね!」
「練習の基本は走ることだよ」
と水流さんが言うと、ドキッとする。それはS中学時代に、よく水流さんの弟さんが言っていたことである。当時はほんとによく走らされた。
 
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30分ほどで総合運動公園という名前が彫られた碑がある所に到達する。
 
「ここが練習場所ですか」
と少し息があがりながら訊く。水流さんは平気そうだ。うーん。自分は鍛錬が足りないとあらためて思った。
 
「そうそう。でも俺たちはこの運動公園の隅にある小さな体育館で練習してる」
「へー」
 
それで道路沿いに歩いて行くと、右手に運動公園の総合体育館、野球場、テニスコートなどが並んでいるのだが、テニスコートの左手の方に真新しい小さな体育館があった。
 
「ここ新しいですね」
「うん。以前はもっとボロい体育館だったんだけど、最近建て直しになったんだよ」
「へー」
「以前の体育館は雨が降ると室内にいてもずぶ濡れになってたから」
「それは困りますね!」
 
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それで貴司が水流さんと一緒に階段をあがって2階に行くと、バスケのコートがギリギリ1コート取られた狭い体育館の中で4人の選手が練習をしていた。
 
「みんな、これ俺が以前いたチームの細川君」
と水流さんは貴司を紹介した。
 
「うちに加入するの?」
と言っているのは28-29歳くらいの女性だが、背が高い!自分とほとんど背丈が変わらない感じである。
 
「いや入らないけど、彼昨日までナショナル・トレーニング・センターで合宿していて、また明後日から同じ場所で合宿なんだよ。彼、家は大阪なんだけど、2日間大阪に戻っても練習とかできないし、それならこちらに留まってうちのチームと練習しない?と誘ったんだよ」
 
「ナショナル・トレーニング・センターで合宿って、何かの代表?」
と40歳近くかなという感じの男性が訊く。
 
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「日本代表、フル代表だよ」
「すげー!」
「代表って男子代表?女子代表?」
「男子だと思うけど。細川君、ちんちん付いてるよね?」
「あ、えーっと・・・」
「声が男だし、男子代表では?」
などと言われると、かなりドキドキする。
 
「それなら俺たちはとても練習相手にはならないのでは?」
「でも新幹線に座ってただ往復するだけよりはマシだろ?」
「確かに確かに」
「だったら俺たちが胸を借りるつもりでいけばいいね」
「そうそう」
 
貴司は『胸を借りる』という言葉にドキッとした。あまり胸に触られたくない!
 

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「ところで皆さんのチーム名をお聞きしていいですか?」
「女装ビーツ」
「へ?」
「漢字は《女を装うビーツ》
「え!?」
「常総をローマ字で書くとJosoだろ?それを誰かが女装と誤読したんで、それもいいかとその名前にした」
「マジですか?」
「ビーツは甜菜(てんさい)のbeetではなく、勝つという意味、ブザービーターのビート(beat)ね」
「へー」
「まあ天才:ジーニアス(genius)にも若干掛けている」
「うん。俺たち天才だし」
「わあ」
 
「ちなみに私は女装している訳ではなくマジで女だけど」
と、取り敢えず女性に見えるメンバーが言っている。
 
「女装したい人のために『女装の勧め』というパンフレットを作ったが、誰も女装しようとしない」
「そうだ。別にうちに入らなくてもいいから、このパンフレットあげるよ」
と言って貴司は本当に『女装の勧め』と表紙に書かれた、コピーしてホッチキスで留めた小冊子をもらってしまった。
 
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「できるだけ勇気のいらない女物の服の買い方とか、お化粧の仕方、化粧品の買い方とかも解説しているから」
「君もぜひ女装をしてみよう」
「あはは」
 

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しかしともかくも貴司は彼らと一緒に練習することになった。
 
ところが彼らが強い強い!
 
最初、白鳥さんという女性が手合わせさせてくださいと言って彼女と1on1をしたのだが、勝てない!
 
「少し疲れているみたいね」
「いや面目ない」
「でもこちらはいい練習になる〜。細川さん、もっとやろう」
「ええ!」
 
それでこの日は彼女と50本くらい1on1をやったが全く勝てなかった。その後、シュートの練習をする。6人で順番に、シュート係→ブロック係→リバウンド係→ボール拾い係と回しながら、ひたすらランニングシュートをするのだが、貴司は4回に1回くらいしかシュートを入れることができない。ことごとくブロックされてしまうのである。シュートとブロックが同じ組合せになってしまうので、時々順番を入れ替えながらやっていくたのだが、貴司は女性の白鳥さんにもブロックされ、この日はかなり精神的にショックだった。
 
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「いや、合宿でみっちり鍛えられた後では、疲れが溜まっているよ」
と貴司をかばうように、最年長っぽい戸田さんが言っていた。
 
練習は夕方17時で終了するが、貴司は言った。
「すみません。ここでもう少し練習とかできますか?」
「ああ。いいよ。22時までなら使っていいから。鍵を帰る時に1階の郵便受けに放り込んでおいて」
「はい!」
 
それで他の5人が帰った体育館で、貴司は22時までひたすら1人で練習を続けたのであった。
 

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「もう帰らなきゃ」
と貴司は独り言のように言うと、22:10頃に練習をやめた。
 
床を掃除し、トイレを借りてから体育館を出る。
 
「しかしこのトイレもまるでつい昨日できたみたいなきれいさだなあ」
と貴司がつぶやくと、貴司に見えない所で頷く影があった。
 
トイレは洋式の便器のある個室が1つあるだけだが、試合とかがある時はきっとテニスコートの方のトイレを使うのだろうと貴司は解釈した。
 
「さて走るか」
と言って貴司は駅までの道のりを走った。駅まで行くと列車が停まっている。水海道行きと書いてある。運転士さんが「乗りますか?」と声を掛けるので
 
「乗ります!乗ります!」
と言って飛び乗った。
 
「ありがとうございます。待ってくださって」
「これが最終だからね」
「本当ですか!助かりました」
貴司は危なかったなあと思った。
 
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この日貴司は水海道で乗り継いで取手(とりで)駅まで移動した後、取手駅近くのホテルに泊まった。
 
貴司は翌日も午後から岩田駅まで行き、4kmの距離を走って昨日の体育館に行くと、チームの人たちと練習を重ねた。例によってなかなか勝てないのだが、昨日よりは少しは勝てる感じになり「よし!」と思った。
 
「今日は昨日よりは調子いいみたいね」
と戸田さんが言っていた。
 
貴司はこの日も22時まで居残り練習をさせてもらったが、今日は汽車にギリギリにならないよう、早めに体育館を出た。
 

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千里は8日は朝5時に起きてまたインプを運転して常総市の体育館に行き、お昼くらいまで練習をした。この日は千里が常総市に行く時、《こうちゃん》にはKawasaki ZZR-1400を、《きーちゃん》にはZX600Rを乗せたハイゼットを運転してきてもらい、体育館の1階車庫に格納した。これで駐車場のやりくりに苦労しなくて済むようになった。
 
(彪志の運転練習は終了している。彪志からはお礼にピザ屋さんの商品券をもらった)
 

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8日のお昼過ぎ、千里が常総市から戻り、シャワーを浴びてからお昼にそうめんでも食べようと茹でていたら、桃香が帰宅する。
 
「桃香、お帰り〜」
「千里、昨日も午前中出ていたね」
「うん。リハビリ始めようと思って午前中は少しウォーキングしてた」
「傷は痛まない?」
「だいぶ楽になったよ。青葉のおかげだね」
 
「ところでこないだから千里に言いたいことがあったのだけど」
「こないだも言ってたね?あ?新しい彼女のこと?」
「うん」
「取り敢えず、そうめん食べてからにしない?」
「そうしようか」
 

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それでミカン缶と、桃香の希望で冷凍していたハンバーグを解凍して食べる。
 
「千里はほんとに料理がうまいなあ」
「桃香も少し覚えればいいのに」
「料理のうまい女の子と結婚しようかな」
「ああ、それもいいんじゃないの?」
 
そんなことを言っていた時、千里の携帯にメールが着信する。着メロはヴィヴァルディの『四季・春第一曲』である。名前の表示は《たかこ》になっている。実は『貴司、この野郎!』の略である!!
 
千里は携帯は開けるとメールを見て速攻で削除した。
 
貴司は実は毎日何かひとこと、千里にメールしてくるのである。今日のは《明日からまた合宿。頑張るね》
というものである。千里が貴司にメールしたのは1度だけ、8月31日に男子代表12名が発表になった時送った《おめでとう。頑張ってね》というものだけである。
 
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娘たちのリサイクル(13)

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