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■娘たちのクランチ(17)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-06-10
 
千里が頑張ったおかげで手術の最後の縫合が終わるまで千里の心臓はしっかり動き続けた。
 
『お疲れ様〜』
『みんなありがとう。そうだ青葉の方の様子は?』
と最後は向こうで青葉の近くで見守ってくれていた《てんちゃん》に尋ねる。
 
『こちらは今意識回復した所よ。千里あと少しだけ意識を維持しておいて』
『うん』
 
《てんちゃん》の目を通して千里も青葉の様子を見ることができる。どうも青葉は自分自身をヒーリングしようとしているのだが、それができないようである。
 
『パワーゲージが落ちてるね』
『傷が大きいから青葉の身体のバランスが取れないのよ』
『彪志君がそばに付いているのなら、彼のエネルギーが使えるはず。彪志君に手を握るように意識させて』
 
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『うん。思念を送り込む』
 
すると彪志が気付いて青葉の手を握ってあげた。それで彪志から青葉にエネルギーが流入する。青葉はそのパワーを使ってまず自分の身体と精神のバランスを回復させた。すると青葉と菊枝のコネクションが繋がったようである。
 
『千里、来るぞ。スタンバイしろ』
と《とうちゃん》が警告した。
 
『うん』
 
菊枝は青葉に筆ペンを使うように指示した。彪志に取ってもらって筆ペンを青葉が左手に握る。途端に千里はその筆ペン(元々は千里の所有物)を通して、青葉から大量にエネルギーを吸い上げられる。
 
「ひぇー」
と千里は思わず小さく声を出してしまった。
 
『大丈夫か?千里』
『辛いけど頑張る。まずは青葉を回復させないと始まらない』
『千里寝てた方がいい。その方が消耗が少ない。心臓がサボりそうになったら起こすから』
『そうする。お休み』
 
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それで千里は眠ってしまったが、寝ている間にもどんどんパワーを青葉に供給し、それで青葉は体力を回復させていった。
 

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千里は2時間ほど寝ていたが、その間に病室に戻されたようである。目を覚ました時、桃香が心配そうにこちらを見ていた。
 
しかし・・・辛い。
 
何か今にも死にそうな気がする。これ遺書でも書かなきゃいけない?と一瞬千里は思った。それでなくても手術で体力を消耗している時に青葉の回復のために大量にエネルギーを供給した。
 
千里が辛そうなのを見て桃香がナースコールし、痛み止めを処方してもらったものの、その程度で利くものではない。さっきは青葉が身体のバランスを取れずに苦しんでいたが、今度は千里が身体のバランスを取れない。青葉にたくさんエネルギーをあげたことで自分のパワーが危機的水準まで下がっているのだ。
 
これじゃビッグクランチ(一点収縮)じゃなくてビッグリップ(粉砕)だよぉと思う。
 
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『千里、予備タンクをひとつ開けるよ』
と小春が言った。予備タンク?そんなのあるんだっけ?
 
しかし小春がその《予備タンク》を開けてくれたおかげで、千里は『今にも死にそう』という気分から『物凄く辛い』という程度まで回復した。
 
『千里凄い。自力で回復させてる』
と小春の操作には気付かなかった眷属たちから声が出る。
 
その『物凄く辛い』状態で1時間ほど苦しんでいた時、桃香の携帯が鳴った。青葉がこちらに電話を掛けてきたのである。青葉は例のローズクォーツの数珠を千里の「仮想子宮」の上に置いてくれるよう言った。
 
そして青葉は電話を通して、千里の新しい膣の部分の傷をヒーリングしてくれたのである。ぐいぐい痛みが減っていくのを感じる。
 
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青葉すごーい!と千里はマジで思った。
 
青葉が作業を始めるまで、霊的操作の跡を見られるとまずいので作業を控えていた《びゃくちゃん》も一緒に傷の修復作業をしてくれた。ふたりの作業のおかげで、千里は劇的に痛みが減っていき、それとともに精神的な回路が回り始めた。
 
千里の顔色がみるみる良くなっていくので桃香は驚いているようだ。唯物論者の桃香もこの時は青葉のヒーリング能力をハッキリ認めた。
 

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ヒーリングが1時間ほど続いた所で桃香が
「これ以上は青葉に負担がかかりすぎる」
と言って作業をやめさせた。
 
それでこの日の交信は終了する。しかし結果的に青葉と千里はお互いの能力で協力し合うことによって、いちばん辛い状態から脱出することができたのである。
 
『しかしこれ青葉の手術が先で良かったな』
『思った。逆だったら私あの瀕死の状態で3〜4時間耐えてないといけなかった』
 
その後、千里も青葉も普通の人の倍以上の速度で回復していき、双方の主治医を驚かせることになる。むろん青葉は毎日自分と千里をヒーリングしていたし、《びゃくちゃん》も千里の傷を修復してくれていた。
 

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18日の昼休み、学級日誌を担任の増田先生に渡すのに職員室に行った龍虎は先生から唐突に言われた。
 
「田代さんさあ、体育祭の時とか先頭列で元気に踊っていたけど、普段はわりと引っ込み思案だよね」
「そうですかね」
「やはり、もっと積極的に学校生活を送った方がいいと思うのよ」
「はい」
 
「今週末に学習発表会の演目と出演者を決めるけど、田代さん、思い切って主役に立候補してみない?」
「主役ですか!?」
 
「田代さん、国語の朗読とか凄くうまいじゃん。だからお芝居のセリフなんかも上手に言えると思うのよね。去年の学習発表会の劇では何の役したんだっけ?」
 
「去年の演目は『白雪姫』で、私、魔法の鏡の役だったんですけど、当日主役の磯村(麻由美)さんが風邪引いて休んじゃって、誰かセリフ覚えてる人?と聞かれたので手を挙げたら、だったらあんたやりなさいと言われて、白雪姫役を演じたんです。磯村さんもわりと身体が小さいから、彼女の衣裳が入る子が少なかったのもあったんですけどね」
 
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「白雪姫をやったのか!」
 
「3年生の時は、わらしべ長者でミカンと反物を交換する人の役で」
「ああ、あの役か」
 
(ミカンと反物を交換する人は、旅の商人というパターンと、若い女性で実は最後に出てくる長者の娘だったというパターンがある。龍虎は実際には男物の和服を着て男性の商人を演じたのだが、増田先生は長者の娘を想像した)
 
「2年生の時は笠地蔵の11番目のお地蔵さんでした」
「お地蔵さんがたくさんいたのね」
「はい。18人です」
「凄い!!」
 

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「だったら、今回主役やっちゃいなよ」
「何の劇をするんですか?」
「ピーターパンの予定」
「ああ」
 
龍虎はピーターパンって確か《永遠の少年》だよなと思った。成長しない子供というのなら、わりと自分がやってもいいかもと思った。
 
「分かりました。じゃ主役に立候補します」
「うん。頑張ってね」
と増田先生は言った。
 
ちなみに増田先生がいう「主役」とはウェンディーのことである!!
 

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7月19日、射水市・プーケット。
 
昨日性転換手術を受けた青葉と千里は、各々の病院で爽快に目を覚ました。眠っている間に基本的な身体の自然治癒能力が働いて傷と痛みをかなり癒やしてくれたのである。青葉の主治医・松井医師は傷口を点検して
 
「これは普通の患者なら3日くらい経った状態だ」
と言って驚いていた。
 
千里の主治医も
「信じられない。あなた物凄く再生能力が高いね」
と驚いていた。
「以前掛かった医者から、あなたは腕を切断しても腕が再生しそうだと言われたことあります」
と千里が言うと
「そしたら、あなたのおちんちんも再生したりして?」
と医師が突っ込む。
「それは嫌です!」
と千里はマジで言った。
 
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お昼過ぎ。千里の携帯が鳴る。『恋のダンスサイト』の着メロなので桃香はいぶかるような顔をする。それが千里の彼氏、つまり千里との婚約を破棄した男性からのメールだというのが分かっているので、一体何の用なのだと疑問を感じたのである。しかし千里にはだいたいの内容が想像ついていた。
 
《阿倍子のお父さんが亡くなった》
とだけあった。千里は速攻でメールを削除して桃香には見せなかった。
 

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貴司は実際にはこの日19日から22日までまた合宿に入っていたはずである。千里がメールを受信したのは13時頃で、日本時間では15時。午後の練習中の休憩時間に阿倍子さんからのメールを見てそのことを知り、わざわざこちらにも報せてくれたのかな?と千里は思った。
 
ロースターに入れるかどうかギリギリの貴司は絶対に合宿を途中で抜け出すなどということはできないはずである。貴司は阿倍子のお父さんの葬儀には出られないだろうと千里は想像した。
 

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7月15日までの合宿をこなした貴司はその日の最終新幹線で大阪に戻った。阿倍子からお父さんがかなりやばい状態になっているという連絡は入っていたものの、そちらに顔を出すのは困難だった。合宿の間に仕事が溜まっており、貴司は16日も17日もあちこち走り回ることになる。17日は午後からソウルまで行ってくるハメになった。帰国したのはもう18日のお昼近くである。空港から会社に行って報告をし、合宿に入るので申し訳ないがその後をお願いしますと言って14時すぎに会社を退出させてもらった。
 
貴司はこの日千里が“性転換手術を受ける”と言っていたことを思い出した。冗談なのかも知れないが、ひょっとしたら何か治療のための手術でその内容を自分に言いたくないのかもと思った。それで千里の携帯に
 
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《付き添ってあげられなくてごめんな。手術頑張れよ》
というメールを送った。
 
貴司はいったん自宅に戻るとシャワーを浴びて身体をきれいにする。そしてAUDI A4 Avantに乗ると、滋賀県竜王町の三井アウトレットパークまで走った。そしてその中にあるナイキのショップに行くと、勇気を出してスポーツブラのコーナーに行く。そして何個か手に取って製品を見ていたものの、どうも分からない。
 
それで意を決して、女性の店員さんに声を掛けた。
 
「すみません。スポーツブラが欲しいんですが」
「はい。お嬢さんのでしょうか?」
 
う・・・俺ってブラが必要な娘がいるくらいの年齢に見える??
 
「いえ。僕が使います」
 
すると店員さんは困ったような顔をして言う。
「たいへん申し訳ありません。うちでは男性用のブラジャーは取り扱っていないのですが」
「それが僕はホルモンの異常で胸がかなり大きくて、競技をする時に邪魔になって困っているんです。それでブラジャーで抑えられないかと思って」
と貴司は恥を忍んで説明した。
 
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「失礼しました。少し触っていいですが」
「はい」
それで店員さんが貴司の胸を触る。
「これは結構ありますね」
「そうなんですよ」
「普段も普通のブラジャーつけておられます?」
「いいえ」
「じゃ取り敢えずサイズを計りますね」
 
それで店員さんが計ったくれたのによると貴司のバストはアンダーバスト103cm, トップバスト115cmでC100あるいはB105でフィットすると思うということであった。それで試着させてもらうとB105では胸の“中身”がおさまりきれない感じである。結局C100を買うことにした。
 
「友人の女性アスリートがつけているんですが、ガッチリと抑えて邪魔にならないようにするタイプもありますよね?」
「はい、あります。ただお客様のサイズでしたら注文販売になると思うのですが」
「構いません。それも取り敢えず3枚ください」
「はい」
 
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それで貴司は普通のスポーツブラを取り敢えず6枚(このサイズはこれだけしか在庫が無かった)買い、ハイサポートタイプのを3枚注文した。
 

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その後貴司は大阪まで戻ると、深夜の歓楽街に行き、あらかじめネットで調べておいたお店に入った。もうこの際恥ずかしがっても仕方ないので最初からお店の人に訊く。
 
「****が欲しいんですが」
「えっと・・・FTMさん?」
 
貴司の身長なら男性客と思われてもおかしくないのだが、店員さんは貴司にバストがあるのを認めたので大柄だけど、男性ホルモンをやっている女性かもと思ったのである。
 
「あ、はい(ということにしておいた方がいいだろう)」
「ハーネスも使われます?」
「はい(確か必要だったはず)」
「リング式とプラグ式とどちらがお好みですか?」
「えっと・・・」
 
貴司が分かっていないようだったのでお店の人は丁寧に説明してくれた。
 
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「リング式というのはこのように****を通す穴が空いています。****の根本は広がっているので、それで留まるんですね。多くの****に適合します。プラグ式というのはこのように取り付け器具が付いているもので、****側にこれに合う穴が空いている必要があります。対応する****が少ないですが、しっかり固定してくれるのが特徴です」
 
それで実際にいくつかの商品を見せてもらってから、結局リング式の目立たない色の肌色のハーネスと、物凄くリアルな****(ソフトタイプ・中空)を買った。ソフトというのは日常用でハードは性交用である。中空になっているのはそこに"STP"などを通す。ただこの時点では貴司はSTPのことを知らなかった。
 
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中空タイプの物には男性が使用して、自分のおちんちんを入れることのできる物もある。実は****は男性の使用者も結構いるのである。これはEDの場合と巨大化させたい人の場合がある。ただ現在貴司はそういう使い方はできない。
 

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それで貴司はまた自宅に戻ると、もう最終新幹線が出てしまっているので、AUDI A4 Avantに乗り、一路東京を目指した。
 
しかし海外出張の後、更に色々走り回った後なので猛烈に疲れている。もうダメ〜と思って、途中の湾岸長島PAに車を駐め、そこで熟睡してしまった。
 

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