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■娘たちのお正月準備(11)

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広州でアジア大会の準決勝・決勝が行われていた11月27-28日、日本では関東総合バスケットボール選手権が埼玉県深谷市の深谷市総合体育館(ビッグタートル)で行われた。2008年のインターハイで男子バスケットのメイン会場になった体育館である。あの時、千里たち女子は本庄総合公園体育館(シルクドーム)がメイン会場であった。
 
関東総合選手権は関東地区8都県の予選を勝ち上がった8つのチームによって競われる。千里たちの初日の相手はU20代表監督でもある篠原さんが率いる茨城S学園であったが、30点差で勝利した。S学園も千里にダブルチームを掛けたものの、さすがに高校生のダブルチームでは千里は抑えきれないし、千里の得点力を削いでも、麻依子や誠美がどんどん得点する。そしてゴール下で186cmの誠美の存在感は絶対的であった。名将・篠原にも手の打ちようが無く「参った」という表情であった。
 
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この日勝ち残ったのは、千里たち千葉ローキューツのほかは、東京の江戸娘、群馬の赤城鐵道、神奈川の湘南自動車の4者である。今年は高校・大学チームが全部1回戦で消えてしまい、クラブチーム2つと実業団2つが残った。
 

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江戸娘のメンバーはいったん自宅に戻ってまた明日出てくるということだったが、ローキューツは千葉県内のあちこちにメンバーがいることもあり、高崎市内の温泉旅館にみんなで泊まった(費用は千里持ち)。旅館は高崎駅まで送迎バスを出してくれる。高崎駅と深谷駅の間はJRで30分くらい。深谷駅と会場は2kmほど離れていて27日はとりあえず往復とも歩いた(千里や麻依子・誠美などはジョギングで移動した)。
 
夕食は、焼肉の食べ放題にしてもらっていたので、みんなよく食べていた。
 
「1人2000円で旅館とは契約しておいたんだけど、旅館は元取れないかも知れないなあ」
などと千里は浩子や玉緒と言い合っていたが、
 
「いや、2000円の元を取るくらいは食べないと」
などと聡美や岬などは言っている。
 
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「さっきトイレに行った時、『あの団体さん、女子チームと言っていたよね?』と若いスタッフさんが言ってるの耳にしちゃった」
などと夏美が言っている。
 
「まあ性別疑惑を持たれるのはいつものこと」
と言いながら、薫はたくさん食べている。
 
「薫は結局性転換手術済みなんだよね?」
「何を今更。戸籍も女に変更したよ」
「いつの間に!?」
「誕生日になったらすぐ手続きした」
 
薫は6月生まれである。
 
「言ってくれれば女になった記念パーティーとか開いてあげたのに」
「そういう恥ずかしいのは勘弁して〜」
 

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28日には朝9:30から準決勝が行われる。相手は昨年も準決勝でローキューツと当たった赤城鐵道RRRR (Red Rook Railway Robins)であった。昨年のこの大会の優勝チームである。
 
向こうも昨年ローキューツにはかなり手を焼いた記憶があるので、最初から全力で来たのだが、今年のローキューツは昨年とはまるでパワーの違うチームになっている。ここも千里にはダブルチームが必要とみて途中から2人掛かりで停めに来たが、千里に2人掛けてしまうと、残りの3人では、今年のローキューツの薫・麻依子・国香・桃子・岬・凪子・誠美といったレベルの選手4人を相手にできない。夏美や聡美でもかなり強い。それで簡単にゾーンにほころびが生じて、そこから得点される。そちらに気を取られると千里がすかさずスリーを放り込む。
 
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それで結局その作戦が破綻して12点差でローキューツが勝った。
 

午後から決勝戦が行われる。相手は神奈川の湘南自動車シャット・トリコロール(Chatte Tricolore *1)である。ニックネームの通り、ユニフォームには可愛い三毛猫のイラストが入っている。準決勝で江戸娘を20点差で下して勝ち上がってきている。昨年は実はここは1回戦で赤城鐵道に敗れていた。
 
メンバーを見ていると、元静岡L学園の舞田光、元東京U学院の松元ツバメなどが入っており、千里と目が合うと手を振ってきたので、こちらも手を振っておいた。他に元金沢T高校の清川飛鳥なども入っている。この人は誠美と手を振り合っていた。
 
「こちらを充分知っている相手って感じだね」
「たぶん、うちを結構研究しているような気がする」
「まあ頑張るだけだね」
 
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(*1)フランス語で猫は chat(シャ)と言うが、オス・メスを意識すると、オスが chat(シャ)で、メスは chatte(シャット)になる。定冠詞を付ければle chat / la chatte (ルシャ/ラシャット)である。
 
黒猫の場合はオスが char noir(シャ・ノワール)、メスが chatte noire(シャット・ノワール)、白猫はオスがchat blanc(シャ・ブラン)、メスはchatte blanche(シャット・ブランシュ)だが、三毛猫はメスしか居ないので chatte tricolore(シャット・トリコロール)が一般的である。むろんごく稀なオスの三毛猫はchat tricolore(シャ・トリコロール)になる。noirは女性形でnoireに、blancは女性形でblancheになるが、tricoloreという形容詞は男女同形。
 
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むろんカフェ・チェーンの「シャノアール」も黒猫の意味。創業者が同名のパリの喫茶店から名前を借りたものらしい。同系列のヴェローチェはイタリア語で「速い」という意味の veloce で、迅速なサービスということでの命名らしい。
 

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湘南自動車の清川と、ローキューツの誠美でティップオフをする。誠美が勝ってローキューツが攻めて行くが、向こうは松元が千里に付いたほかは残りの4人でダイヤモンド型のゾーンを組んだ。
 
しかし千里はスピードを急変させることで彼女を振り切りフリーになる。そこに凪子から矢のようなパスが来て、千里はスリーを放り込む。0-3とローキューツが先行してゲームは始まった。
 
その後も、松元は攻守ともに千里とマッチングすることになるのだが、第1ピリオドも半分くらいまで進んだ所で、向こうの意図が明らかになる。松元は千里を“完全に封じる”ことは意図していない。千里へのパスを少しでも減らせばいいという感覚でプレイしている。
 
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確かに千里にかなりしっかりと松元が付いているので、他のメンバーは千里にパスしにくい状況になっていた。それで麻依子や誠美、あるいは薫や岬などを使った攻めの比重が多くなった。それが向こうの狙いだったのである。結果的に第1ピリオドは20-22とほぼ互角の点数となった。
 

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勝負は後半と見て第2ピリオドでは、千里と誠美を休ませ、浩子/国香/薫/岬/桃子といったメンツで出て行き様子を見る。千里が出ていないので、松元も早々に退いてベンチで休ませているようであった。つまり松元はこの試合ではひとりで千里に対峙するつもりなのだろう。
 
このピリオドでは、国香がこのピリオドだけに全力を使うつもりでプレイしたので18-22と4点リードを取ることができた。前半で38-44である。
 
ハーフタイムを終えて千里と誠美が復帰する。向こうも松元が復帰する。展開は第1ピリオドと同じような感じになり、向こうは千里を完全には封じないものの、千里を使ったローキューツ側の攻撃を減らすようにプレイする。このピリオドでは16-20とローキューツ4点リードで終わり、ここまでの合計は54-64である。
 
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インターバルで薫が首を傾げている。
 
「どうしたの?」
「いや、おかしい。私は何か見落としている」
「へ?」
「こんな作戦でうちに勝てると思う?」
「え?」
「杞憂ならいいんだけど・・・」
と薫は腕を組んで考え込むようにしていた。
 

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第4ピリオド、向こうはスモールフォワードに、背番号34を付けた馬鈴を出して来た。ユニフォームにはBAREIと書かれている。珍しい苗字だなと千里は思った。身長が170cmくらいだろうか。ふつうの女子としては高身長だがバスケ選手としては、わりとよくいる身長だ。しかし彼女は横幅が大きい。体重は90kg近くあるのではという感じで、正直この体格でまともなプレイができるようには思えなかった。
 
最初見た時は!
 
ところが実際にゲームが再開されると、彼女は思った以上のスピードプレイヤーであった。その巨体を物凄い速度で走らせ、俊足の凪子の前に回り込んだりする。凪子が思わず「嘘!?」と叫んだ。ついでに彼女は凪子の一瞬の隙を突いて、ドリブル中のボールをスティールする。
 
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そのまま自らドリブルして走る。誠美がゴール下で対峙したものの、誠美と激突しながらゴールを決める。
 
さすがにこれはチャージングが取られて得点無効になったものの、誠美が凄い顔で彼女を睨む。慌てて千里は誠美をなだめて、興奮しないように注意した。
 
(バスケットでは相手を睨み付けただけでテクニカル・ファウルを取られる可能性がある)
 

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第4ピリオド前半では、湘南自動車はほとんどの攻撃を彼女を軸にして戦った。すると体格的に彼女とマッチングできるのが誠美くらいで、自然とこの2人が対峙するのだが、最初こそチャージングを取られたものの、その後は、向こうも激突を避けて、誠美の虚を突くような軽いフットワークで翻弄し、どんどんゴールを決めていく。彼女はあの体重にもかかわらずとても軽やかなフットワークを見せるのである。ジャンプ力が凄い。170cmしか身長が無いのに、ほぼ置いて来るようなシュートを見せる(さすがにダンクにはならない)。
 
おそらく彼女は驚異的に頑丈な下半身を持っている。千里は彼女はボクシングでもしていたのではと思った。
 
監督がタイムを取った。
 
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この時点で70-72と2点差に迫られている。
 
「こういう選手を隠していたのか」
「準々決勝でも準決勝でも使っていない。隠し球にしていた」
「たぶんスタミナに課題があるんですよ」
 
「しかしこれどうする?」
「とにかく僕に任せて下さい。何とかします」
と誠美が言う。
 
しかし前半既にそうなっていたのだが、誠美が馬鈴にマッチアップしているので、向こうのセンター清川が事実上フリーになっていた。誠美に代わって清川にマッチアップしていた薫ではリバウンドを取るのがうまい清川を押さえきれない。実際このピリオドではリバウンドをほとんど向こうに取られていた。
 
「長門(桃子)も出て。清川さんにマッチアップして」
と監督が指示する。
 
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「分かりました」
 
それで凪子/千里/麻依子/桃子/誠美というオーダーで出て行く。向こうは選手交代無しである。
 

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それで誠美が「何とかする」と言ったように、気合いを入れ直して対峙するので、こちらもファウルを取られたりするものの、そこまでよりは馬鈴の得点を抑えることができた。しかしさすがに桃子では清川に完全には対抗できない。リバウンドでは薫がマッチアップしていた時よりずっと改善されたものの、彼女の攻撃は桃子では抑えきれない。そして、馬鈴と清川に気を取られすぎると、舞田が麻依子を振り切って華麗に得点を決めたりする。
 
結局この第4ピリオドの10分間については、ローキューツは総合力で湘南自動車に競り負けていた。
 
前半ほどひどいことにはならないものの、じわじわと向こうの得点が重なり、あっという間に逆転され、どんどん離されていった。
 
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監督が再度タイムアウトを取り、対策を話し合ったものの、妙手は浮かばなかった。桃子が消耗しているので元代に出てもらったものの、むろん彼女では清川さんにかなわない。
 
結局84-78まで行ったところでブザーが鳴る。
 
千里は目を瞑って首を振った。
 

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整列する。
 
「84対78でシャット・トリコロールの勝ち」
「ありがとうございました」
 
千里は松元さんや舞田さんなどと握手し、健闘を称え合った。
 
こうしてローキューツは関東総合で準優勝に終わり、こちらのルートでも今年はオールジャパンへの出場を逃してしまったのであった。
 

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控室に帰ってから着換えながら
「悔しい!」
「オールジャパン行きたかった」
という声がたくさん出た。
 
玉緒が言う。
「私、就職しないことに決めた」
「え〜〜!?」
「大学は卒業しちゃうけど、バイトしながら、このチームでまだ1年頑張るよ。そして来年こそはオールジャパンに行こうよ」
 
「うん。来年こそは頑張ろう」
と多くの子たちの声が出た。
 
「じゃ取り敢えず2月の関東クラブ選手権に向けて練習を重ねようよ」
「うん、私ももう少し練習に出てこられるように調整を試みるよ」
 
「ところで、さっき唐突に思いついたけど、あの人、馬鈴(ばれい)の苗字で、背番号34ってさ、チャールズ・バークレイを意識しているんじゃない?」
と麻依子が言うと
 
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「なるほど!」
という声が多数あがっていた。
 
「体格もバークレイっぽいよね」
「確かに確かに」
 
チャールズ・バークレイは1980年代後半から1990年代に掛けてNBAでプレイした選手で選手番号34はフィラデルフィア76ersとフェニックス・サンズで永久欠番になっている。193cm 120kgと、どっしりした体格でゴール下を完全に支配し、リバウンドを取りまくった。体重があるのにジャンプ力もあり「空飛ぶ冷蔵庫」の異名を取る。生涯得点23757 リバウンド12546 は分かるが、4215アシストというのも光る。パワーフォワード登録だが、オールラウンド・プレーヤーであった。1992,1996五輪ゴールドメダリスト。
 

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娘たちのお正月準備(11)

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