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■娘たちのお正月準備(4)

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「財布は?」
「バッグごと彼女の車の中。後で返してくれるとは思うけど」
「まさか昨夜からずっとここに居るの?」
「山下公園で仮眠した」
「ほとんどホームレスだね」
 
よく襲われなかったものである。
 
もっとも桃香が男性と誤認された可能性はあるなと千里は思った。デートしていたからだろうが、メンズのシャツとズボンを穿いているし、元々髪は男のように短い。お化粧もしていない。
 
「ね、千里、あとでお金払うから取り敢えず何か食べさせてくれない?」
「まあいいよ。おごってあげるよ」
「おお!それはすばらしい!!」
 
むろん、おごりを遠慮するような桃香ではない。
 

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結局、聘珍樓(へいちんろう)に入ることにする。
 
「ここ高そうだけど大丈夫?」
とさすがに桃香は心配そうだが
「うん。バイト代入ったばかりだし大丈夫」
と言って、案内してもらって2階のテーブル席に行く。
 
実際9月末にけっこうな額の印税が入っているのである。ただしお金はフェニックストラインの口座に入金されており、千里はそこから毎月40万円の給料をもらって学費と生活費、バスケットの活動費をまかなっている。なお振袖代の200万円は個人の貯金から払えるので問題無い。
 
まだ早い時間だったこともあり、客も少ない。そのせいか広めのテーブルに案内された。コース料理を頼む。
 
「桃香がいて良かった。コース料理って2名以上でないと頼めないからさ」
「へー。でも5600円か。けっこう高くない?」
「うん、大丈夫だよ」
 
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桃香は「2名で5600円」と誤解しているが、1名様5600円である。2人なら11200円である。むろんそれを知ったら多分桃香は「出よう」と言い出すだろう。
 
「ここは周富徳さんが昔総料理長していたお店なんだよ」
「ああ、あのおっさん、こんなまともなお店の責任者だったんだ?」
「料理人というよりコメディアンみたいな雰囲気を漂わせているよね」

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「でもホント桃香って女の子専門みたいね」
「私は男には興味無い」
「沢居さんだけが例外?」
「あれは気の迷いだな」
 
千里としては万が一にも沢居さんと桃香の関係が復活したりすると、緋那があぶれて、貴司への攻勢を強めかねないので、ここは少し気になる所なのである。
 
「だったら安心した」
と千里は言ったのだが、桃香は「ん?」と思う。まさか千里って私に興味あるわけじゃないよね?私は男の子は恋愛対象外なのにと思ったりする。
 
「千里は女の子には興味無いよな?」
「まさか。私はストレートだよ」
「そのストレートって、男の子が好きなんだっけ?女の子が好きなんだっけ?」
 
「私は女の子なんだから、好きなのは男の子だよ」
「あ、そういうことか」
 
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と思ってから、桃香はドキッとした。女の子? そういえば千里のことを女の子と見たこと無かったなと思う。
 
ふと千里の格好を見ると、水色のコットンシャツに薄黄色のカーディガンを羽織っており、ボトムは長めの白いプリーツスカートである。千里を「男の子」というフレームで見ていたので気付かなかったが、「女の子」と思って見ると、センスいいじゃんと思う。
 
お化粧はしてないが、ノーメイクでも充分可愛い女の子の部類である。長い髪におそらくストレートパーマを掛けて、さらさらと流している。今は食事中なので、髪が顔に掛からないようにクリップで留めているが、それを外すと日本的美少女という感じだ。桃香はどちらかというともっと線の細い子のほうが好みなのだが、ややボーイッシュな子も結構いける。どちらかというと、そういう子との方が長持ちしている気もする。
 
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ん?千里ってボーイッシュな女の子なんだっけ??
 
「千里、何かスポーツとかするんだっけ?」
「趣味の範囲でバスケットしてるよ」
「へー。私はバスケは分からん」
「桃香は何かスポーツとかするの?」
「全然。水泳はわりと得意だけど、部活ではしたことないし。中学・高校の時は科学部だったんだよ」
 
「すごーい。やはり理系少女なんだ。私はさっぱり理科とか分からなくて」
 
「千里はなぜ理学部に来た?というくらいに機械音痴・理科音痴だよな」
「うん。化学とか生物とか不得意。薬品とか生物の名前を全然覚えきれない。化学式も覚えきれないし。こないだもエテンとエタンを勘違いしてたし。家電品とかも、どうしても必要なものだけは何とか覚えてるけど、ふだん使っているソフトでも、触ったことのないメニューがたくさんある」
 
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「私なら知らないメニューがあったら、まず触ってみるんだけどな」
「そんなの触って元に戻せなかったら恐いもん」
「元のファイルのコピーを取っておけば恐くないよ」
「あ、そのあたりからよく分からない。セーブしていたつもりが、変わってしまった後のが、いつの間にかセーブされてて、元のが無くなってるし」
「いや、だからコピー取っておくのであって」
「うーん。。。そのあたりが結局分からない」
 
「やはりなぜ理学部に来た?だな。でも数学は割と得意みたい」
「うん。機械とか実験器具とかに触らなければ問題無い」
 
「なるほどー!千里、何次元の立方体くらいまで頭の中にイメージできる?」
「あれ、私あまり得意じゃないのよ。7次元くらいが限界。8次元はもう頭が混乱して見えなくなっちゃう。**先生は9次元までは分かるって言っていたね」
 
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「9次元が分かるって絶対異常。7次元がイメージできる人はかなり凄いと思う。私は頑張って5次元が限度だ」
 
「だって5次元図形なんて、普通に扱えるじゃん。私も7次元は集中しないと分からないよ」
「いや、やはりそれは凄いと思う。千里、x3-10x2+31x-30 を因数分解できる?」
と桃香はメモを見ながら言う。
 
「(x-2)(x-3)(x-5)」
と千里が3秒ほどで答えると
「なぜ即答できる?」
と桃香は呆れるように言った。
 

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1時間半ほど掛けてのんびりとコース料理を楽しんだが、少しずつ人が増えてきたので出ることにする。
 
「おごちそうさま」
「いえいえ」
 
「千里はここまで何で来たの?電車?」
「車で来たから、千葉まで桃香を乗っけていくよ」
「助かる!」
 
それで駐車場の方へ向かっていたら、美緒と紙屋君がこちらに歩いてくるのと遭遇する。
 
「今から晩ご飯?」
「そうそう。そのあとお楽しみタイム」
「じゃ頑張ってね〜」
「そちらもね〜」
 
と言って別れたが、千里は独り言のように呟いた。
 
「そちらもねってどういう意味だろう?」
 
「うーん・・・」
と言って桃香は腕を組む。この子、これ無意識なのかね〜?と桃香は悩んだ。
 
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「あ、このインプは以前にも乗せてもらった」
「うん。また借りてきたんだよ。後部座席で寝てるといいよ」
「そうさせてもらう。やはり野宿はけっこうこたえた」
「荷室に入っている毛布勝手に使ってね」
「さんきゅ」
 
それで桃香は一応シートベルトはした状態で、横になって眠ってしまったようである。千里も運転を《こうちゃん》に任せて意識を眠らせた。
 

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夕方で混んでいたので、千葉市内に戻って来たのは1時間半後である。
 
「いや助かった。千里もずっと運転していて大変だったでしょ。少し休んでいかない?」
 
「そうだね。じゃちょっと」
と言って車を桃香のアパート近くの時間貸し駐車場に駐め、アパートに行く。
 
桃香はその辺に駐めといても大丈夫だよと言っていたが、この付近は駐車違反の取締りが結構厳しい。そして実は千里が駐めた駐車場は“ある問題について”『安全な領域』でもあるのである。
 
しかし桃香のアパートに来るのは半年ぶりだ。千里はアパートのそばに立ってみて「気の流れ」が大きく変化していることを認識して満足する。やはり、あのお地蔵さん利いてるなあ。後でお供え持っていこう。
 
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後ろの子たちがワクワクしているようなので『処分していいよ』と言うと、飛び出していって“このアパート以外”の部分に漂っている“浮遊物の処分”を始めてくれた。
 

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「あ!こんな所に私のバッグが」
と桃香が声をあげている。どうも桃香の彼女が玄関前に放置していったようである。
 
「無くならなくてよかったね」
「全く全く」
 
と言って、桃香はバッグの中から財布を取り出し、その財布の中から鍵を取り出して、アパートの部屋のドアを開けた。
 
「それバッグが無かったら、もしかして部屋にも入れなかった?」
「ああ、大丈夫。その時はここに予備の鍵があるから」
と言って、メーターボックスのふたをあけ、水道のメーターにマグネットで貼り付けてある鍵を取り出して見せる。
 
「それ、無茶苦茶不用心」
「だって、鍵を中に入れたまま、うっかりドアを閉めてしまうことってよくあるだろう?」
「そう?」
 
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「でもみんなに知られているから、朱音とかが勝手に中に入って寝ていることもある」
「あぁ・・」
 

取り敢えず中に入る。冷蔵庫の中から桃香がビールっぽい缶を2つ出してくる。
 
「ごめーん。私、車運転しないといけないから」
「あ、そーか。待って。何か無かったかな」
と言って桃香は、イオンの29円のサイダーを出して来た。
 
「あ、これ私も大量に買う」
「これ安くていいよな?」
「うんうん。安いの大好き」
 
「安物好きというのでは、私と千里の好みは一致している気がする」
「ちなみにその桃香が飲んでるのは?」
「これはディスカウント・ショップで買った1個69円の第4のビール。韓国産」
「イオンのバーリアルより安いじゃん!」
「あ、バーリアル飲んでる?」
「私が飲む訳じゃ無いけどね。普段は彼氏には一番絞りとかプレミアム・モルツとかを買ってあげるけど、浮気とかした時はバーリアルになる」
 
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「なるほどー!そうか。彼氏居たんだったね」
「でも浮気性だからなぁ」
「なんか耳が痛い」
「もしかして桃香も浮気性?」
「浮気のおしおきなら何度もされた」
「何されるの?」
「縛り上げたまま放置して帰っちゃうとか」
「それどうすんのさ?」
「誰か助けてくれそうな子に電話して助けてもらう」
「なるほどー。ガールフレンドがたくさん居るんだ?」
「いや。たくさんという訳じゃないんだけどね」
 
そんな会話をしながら、桃香は千里に彼氏がいるということは相手はゲイなのかな?だったらビアンの自分とは接点が無いから、千里はひょっとしたら朱音とか真帆とかの女性の友人より安心して友だち付き合いできる子なのかも知れないと考えていた。
 
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(この時点ではまだ桃香は千里に恋愛感情は持っていない。高岡で襲おうとしたのは、条件反射の部類である!)
 

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「だけど、このアパートって割と便利な場所だよね」
「千里、いやに遠い所にアパート借りてたよな」
「うん。遅くなった時に帰るのが結構大変なんだよ」
「ここは大学の南門から歩いて10分くらいだし、遅くなったら泊まってもいいよ。朱音とか玲奈とかはよく泊まっているし」
 
千里は一瞬考える。
 
「私って桃香の恋愛対象外だよね?」
「多分。千里、ちんちんあるんだよね?」
「あるけど」
 
「だったら完全に対象外だ。ちんちんは自分に付いてるのは構わないけど、相手に付いてるのを見たら嫌な気分になる」
「桃香、ちんちんあるの?」
「時々ね」
 
「ふーん。でも高岡で桃香の実家に泊まった時、私、襲われそうになったけど」
「済まん。済まん。寝ぼけてたもんで」
 
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「まあ襲われることないのなら、時々泊めて」
「OKOK」
 
ここの結界のメンテもしたいしね〜。後ろの子たちにたくさん食べさせてあげられるしね〜。ここあの神社より凄い餌場じゃん!と千里は考えていた。
 
何かの時は、りくちゃん守ってね、と言おうとしたが《りくちゃん》はまだ『食事中』のようであった。
 
「だけど逆に女の子を泊めた時、襲いたくなることは?」
 
「クラスメイトには基本的には手を出さない」
 
ほんとかなぁ〜?
 
「夜中に朱音に殴られたことはあるが」
「まあいいや」
 
 
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娘たちのお正月準備(4)

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