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■娘たちのお正月準備(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-07-07
 
深夜のファミレスでの4人の会話は続いていた。
 
「そういう前提で行くとですよ。スポーツ得意でボーイッシュな女の子なんて桃香にとっては凄い好みという気がしない?」
と美緒は言った。
 
「確かに」
と玲奈も同意する。
 
「でも千里は『自分はストレート』だと言ってたよ。女の子には興味無いって」
と友紀。
 
「ストレートってそういう意味なのか」
と由梨亜。
 
「だって千里は女の子なんだから」
「最近の日本語は難しい」
 
「だったら千里は桃香には関心無いのでは?」
 
「うん。でも桃香も普通の女の子ではない。あの子結構男らしいよ」
と美緒。
「言えてる」
 
「だから千里にとっても桃香はストライクゾーンにぎりぎり入っている可能性がある」
「だけど千里には彼氏居るんでしょ?」
「うん。でも彼氏は大阪に住んでいるみたいなんだよね」
 
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「遠距離恋愛か」
「それなら地元にもうひとりくらい恋人作ってもいいでしょ?」
と美緒が言うが
 
「いや、そういう発想をするのは美緒か桃香くらいだ」
とみんなから言われる。
 
「でも桃香が強引に千里に攻勢を掛けたら、分からなくもない気がしない?」
と美緒。
「まあ恋人未満くらいの関係までは行くかもね」
と玲奈も言った。
 

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4人は千里と桃香の噂話を1時間くらいした後、また別のカップルの噂話をする。そうやって明け方まで、様々な噂話をした後、
 
「今日は桃香は日中バイトに出ているはずだから、留守宅で寝せてもらおう」
などと言って、ファミレスを出た後、朝の街を歩いて桃香のアパートまで行き勝手に鍵を開けて中に入って、布団を出して来て適当にかぶって寝た。
 
これが11月7日の朝である。
 

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一方同じ7日、高知では全日本社会人選手権の2日目が行われる。
 
今日は9:30から男女の準決勝が4つのコートに別れて同時に行われた。千里たちはサブアリーナのDコートで、玲央美たちジョイフルゴールドと激突した。
 
「まあ事実上の決勝戦のような気がするよ」
と薫は言う。
「うん。でも負けた方はオールジャパンに行けない。厳しいね」
と千里は言った。
 
いつもなら試合前でも笑顔で手を振ってきたりする玲央美が最初から厳しい表情でこちらを見ている。熊野サクラや近江満子・池谷初美なども一様に厳しい表情だ。昭子だけはおろおろしている雰囲気。
 
試合はむろんジョイフルゴールドのサクラ、ローキューツの誠美というライバル同士でティップオフをする。
 
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これに誠美が勝って、ローキューツが先に攻撃した。
 
千里に玲央美、誠美にサクラ、麻依子に初美、薫に希優、と自然にマッチングが定まる。ポイントガードは凪子(元L女子校)と満子(元R高校 )の旭川対決である。
 
まずは薫・麻依子・千里の3人が複雑に絡む連携プレイから千里がスリーを放り込み、ローキューツが先行した。
 

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序盤から双方とも難しい連係プレイを繰り出してくる。お互い単純なスタンドプレイで得点させてくれる相手ではないと思っている。サブアリーナの方は最初はほとんど観客が居なかったものの、どうも最初見ていた数人がチームメイトを呼び寄せたようで、途中からけっこうな人数が観戦する中の試合になった。
 
ゲームは均衡して進む。ジョイフルゴールドはメンバーが疲れないようにローザ、美花・稀美・昭子といった所を適宜投入していくし、ローキューツも国香・夢香・桃子・岬・聡美といったメンツを入れていって、疲労の蓄積を避ける。
 
どちらもメンバーが交替しながら複雑な連携プレイをして巧妙にスペースを作ったり、あるいはトラップに掛けようとするので、見ている観客のほうが混乱して「え!?」という声を出したりしていたが、メンバーが交替してもどちらも連携ミスはしない。そして結果的に試合はロースコアで進んだ。
 
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結局第3ピリオドまで終わって45-45の同点である。
 

「向こうは仕掛けて来ますかね?」
と夏美が半ば独り言のように言う。
 
「仕掛けないでしょ。この試合は無理した方が負ける試合」
と凪子が言う。
 
「うん。我慢して我慢して我慢しきらないと、無理な作戦をするとそこから崩壊するよ」
「観客さん増えたけど、見ていてストレスを感じる試合だろうなあ」
と寛子。
「まあ客を呼べるような試合ではないね。これ」
と麻依子も言った。
 
とは言っても、サブアリーナの席は全部埋まってしまい、立って見る人まで出ている。
 
そしてゲームは第4ピリオド半ばまで行っても52-52の同点である。
 
ローキューツが攻め上がっていった時、玲央美が千里に小さな声で言った。
 
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「そろそろ勝負行かない?」
「そちらからどうぞ」
「マジ行くよ?」
「それ停めるから」
 
ここで麻依子が得点して52-54となった所で、ジョイフルゴールドはまた連携プレイかと思わせて、玲央美が独走する。しかし千里はそれにしっかり付いてきて、スリーポイントラインの付近で対峙する。
 
いきなり玲央美はスリーを撃つ。
 
しかしきれいに千里がブロックする。
 
こぼれ球を岬が取って自らドリブルして攻め上がる。凪子にパスしようとするが、満子が物凄いディフェンスをしている。麻依子を見るがローザが完全にパス筋を塞いでいる。
 
仕方ないので自分で中に進入する。誰にも邪魔されずにシュート。52-56.
 
満子がボールを持ち、いきなりロングスローイン。これを岬の独走を放置してコート半ば付近に居た昭子が取ってドリブルで少し進み、カバーに走り寄った千里が彼女の所に辿り着く前にシュート。55-56.
 
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昭子は千里にニコッと微笑み、千里も思わず昭子の頭を撫で撫でした。ふたりが接触しているので副審が寄ってきたものの、ふたりが笑顔なので当惑している感じだった。
 

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しかしこのあたりから、お互いのマークが外れたり変則的になったりして、ミスマッチも頻繁に発生し、結果的に一転してハイスコアのゲームになった。
 
残り5分から残り2分になる3分間の得点は10-11で、ここまで62-63である。
 
次のジョイフルゴールドの攻撃で玲央美が麻依子のディフェンスを振り切ってスリーを入れ、65-63. しかし次の攻撃では千里がスリーを入れて65-66. 試合は攻撃の度にリードが変わるめまぐるしい展開である。そして残り1分を切った所で、ローキューツが得点して69-70とローキューツ1点のリードである。どちらも速攻を繰り返す上にスクリーンプレイを使うのでマークがどんどん入れ替わってしまう。千里は不本意ながら、ローザを相手にしたり、昭子と“師弟対決”したりして、なかなか玲央美と対峙できない。
 
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ここから、ローザと誠美が2点ずつ取って73-74.残りは36秒。更に玲央美が2点プレイで75-74として残り28秒。ローキューツの攻撃。
 
ここではローキューツはリードされているから攻めなければならないがあまり速攻すると次のジョイフルゴールドの攻撃機会に時間をたくさん残してしまう。それでややゆっくりと攻め上がる。
 
ゆっくり攻め上がったので、お互いのマークが本来の組合せに戻った。
 
「ここは当然スリーで来るよね?」
と玲央美が言う。
 
「当然。そうするよ」
と言って千里はドリブルしながら玲央美に突進する。
 
玲央美が「え!?」と声をあげた。玲央美の横を通過する直前に千里は麻依子にパスする。麻依子は制限エリアに進入しながらボールをキャッチする。そしてそのままレイアップに行こうとする。必死でサクラが停めようとする。しかし麻依子はサクラが目の前で完全にブロックしているのを見ると、空中で体勢を変えて千里に鋭いパスを送る。
 
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その時千里はもうスリーポイントライン付近まで走り抜けていた。
 
今度は玲央美が「あっ」と言った。
 
千里が美しくスリーを入れる。これで75-77.
 
残り5秒。
 

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エンドラインでボールを持ったサクラが思いっきりふりかぶった。
 
今度は千里が「あっ」と言う番だった。玲央美を探す。
 
もうコートの向こうまで行っている。
 
玲央美は千里がスリーを撃った瞬間にダッシュを始めていたのである。
 
千里は必死で戻るが、玲央美はもうボールをキャッチしている。ドリブルでスリーポイントラインの所まで行く。
 
そして千里が玲央美の所に到達する直前に玲央美はシュートを撃っていた。
 
美しい弧を描き、ボールはダイレクトにゴールに突き刺さった。
 
78-77.
 
残り1秒!
 

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ローキューツはタイムを取った。
 
凪子、千里、麻依子、桃子、誠美という背の高いメンツで出て行く。向こうもサクラ、ローザ、玲央美、初美、美花と背の高いメンツを並べている。
 
凪子がロングスローインする。
 
激しいキャッチ争い。
 
しかしここでボールを確保したのは玲央美であった。
 
取られないようにしっかり胸に抱きしめたままブザー。
 
千里は大きくため息をついた。
 

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整列する。
 
「78対77でジョイフルゴールドの勝ち」
と審判が告げる。
 
「ありがとうございました」
と言ってお互い歩み寄って握手したりハグしたりする。
 
こうして今年のローキューツはジョイフルゴールド敗れて、社会人選手権ルートではオールジャパンの切符を逃したのであった。
 
もうひとつのルートである関東総合は11月27-28日に行われる。
 

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同時に行われていた女形ズと千女会の準決勝は女形ズが辛勝してオールジャパンの切符をつかんだ。
 
12:50から行われた3位決定戦ではローキューツが先日の千葉秋季選手権に続いて千女会を破り、ローキューツはこの大会では3位になった。
 
14:30から行われた決勝戦ではジョイフルゴールドが大差で女形ズに勝ち、この大会の優勝を勝ち取った。
 
なお、ジョイフルゴールドは社会人選手権経由でオールジャパン出場を決めたので来週行われる予定の東京都秋季選手権の準決勝・決勝は辞退することになった(対戦予定だった多摩ちゃんずは不戦勝で決勝進出)。
 
今回の社会人選手権1回戦でジョイフルゴールドに敗れた江戸娘は、その東京都秋季選手権で準決勝に進出しており、そちら経由でのオールジャパン出場を目指す。(準決勝の相手C大学と準決勝を戦い、勝てば多摩ちゃんずとの決勝戦になる)
 
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11月上旬に、千里は母からの電話を受けた。
 
「玲羅の最終面談に行ってきたんだけど」
と母が切り出すので、千里はだいたいそれで用件は想像が付く。
 
「どこか入れそうな大学ある?それとも専門学校とかにする?」
「本人はできたら大学に行きたいと言っているのよ。でも先生が言うには玲羅の成績で入れる大学って、北海道内に限れば、6つくらいしか無いらしくて」
 
「6つもあるか・・・」
「ひとつは旭川A大学の保健福祉学部。割と近くていいと思うんだけど。美輪子の所に下宿させる手もあるし」
 
「新婚さんの所に下宿するのは気が引けるけど。でも看護師さんになりたいの?」
「いや、看護婦になれる保険看護科はこの子の成績では無理だって。もうひとつコミュニティ科というのがあって、そこなら入れると」
 
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「それ何か資格取れるの?」
「社会福祉士というのが取れるらしいんだけど」
「それって、名称独占資格でしょ?」
「何それ?」
「社会福祉士というのを名刺に印刷できる以外には何の特権も無い資格。調理師とか着付師などと同類」
「うーん。。。。」
「もし介護とかの仕事したいのなら、むしろニチイとかに通ってホームヘルパーの資格を取った方がずっと役に立つし就職先もある」
「あの子、介護の仕事するのかしら・・・」
 
「性格的には合わない気がするけどなあ。腕力も無いし。あれは体力仕事だよ。それにあの子、アバウトな性格だから、入居者さんとかに怪我させそう」
 
「だよね〜。それに本人も旭川よりは札幌に行きたいみたいで」
「まあ遊ぶ所が多いからね。札幌だと、どのあたり?」
 
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「札幌K大学の観光学部、北海S大学の商学部、札幌C大学の中国語文化学科、札幌B大学の芸術学部。玲羅の成績で入れるのはこの4つだって。実はもうひとつ、稚内S大学の情報メディア学部も入れそうということだけど、本人も稚内まで行きたくないというし」
 
要するに、名前を書けば合格するレベルかな〜と千里は思った。
 
「まあよほどこだわりが無い限り稚内に行くことはないだろうね」
「私もそう思う」
 
「あの子、中国語できるんだっけ?」
「英語の成績もいつも赤点ギリギリだよ」
「無理っぽいな。観光学部って何するの?」
「私もよく分からない」
「商学部とか、あの子簿記とかできたっけ?」
「あの子、計算は苦手だよ。それにあの子にOLとか務まるとは思えない」
 
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だよね〜。玲羅が経理の仕事とかしたら、帳簿が全く現金と合わなくなりそうだ。
 
「だとすると、札幌K大学の観光学部と、札幌B大学の芸術学部の二択という気がする。あの子、歌はうまいし、ピアノも割と弾くでしょ?」
「うん。レッスンとかに行かせてもやれなかったのに、自分で学校のピアノとか弾いていたみたいだし」
 

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「それで千里、相談なんだけど」
 
うん。多分その先が本題だよなあと千里も思う。
 
「取り敢えず受験料、入学金、初年度の授業料とかは出してあげるから、好きな大学に行かせなよ」
と千里は母から言われる前に言った。
 
「ほんと?何か悪いね。父ちゃんの放送大学の授業料も出してもらってるのに」
「まあ、今は私も少し余力があるから。こちらがお金無くなったらごめんね」
 
「そういえばあんたお正月はどうするの?」
「ピンポイント往復になりそう。31日にそちらに着いて1月2日に戻る」
「どんな服、着て来るの?」
「お正月だし、振袖もいいかなあ。成人式の予行も兼ねて」
 
「それ私は見たいけど、父ちゃんには見せないでよね」
「お父ちゃんに見せたらダメ?」
「それはまた今度にして」
 
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うーん。いつかは明かさないといけないんだけどなあ、と千里は思った。
 

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娘たちのお正月準備(9)

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