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■娘たちのお正月準備(2)

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「でもこれ、そこの13万の正絹よりかえって見た目が良い気もするのですが」
 
「確かに生地の厚みとかは20万円の正絹クラスの厚みがあるんですよ。ですから、確かに価格は安くても13万の正絹より見た目はいいですね。しかし生地がポリエステルなので、振袖ではあっても第1礼装としては使えません。あくまで普段着、せいぜい外出着にしかなりません」
 
「でもそれにこだわらなければ、私たちのサイズでも10万円で振袖が作れる?」
 
「作れますけど、着ていける場所は限られますよ」
と専務は困ったような顔で言う。
 
「成人式ならポリエステルでも構わない気がする」
「うん。普段着で来る人もあるわけだし」
「そう言われるとそうなのですが・・・」
 
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「しかしここはお金は全部千里が出してくれるということだから、価格を考えなければ、その30万円の生地あたりが使い手が良いような気はする」
 
と江美子が言う。
 
「そうだ。千里が出してくれるということを忘れていた」
と華香。
 
千里は手を額にやって苦笑している。
 
「もう好きな価格で注文して。60万円の生地でもいいよ」
と千里は言っている。
 
「まあ千里はそうは言っているが、さすがにこんないい生地のを買ってもらうのは気が引ける」
と誠美。
 
「やはり30万円ので行こうよ」
「それなら4着で120万円かな」
 

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「分かりました。では、みなさんの採寸をさせて頂けますか?」
 
と専務さんは言い、女性スタッフに、サクラ・華香・誠美・留実子の採寸をしてもらった。
 
4人の採寸をした女性スタッフが
「次はどなたですか?」
と訊いた。
 
「レオ、ここの振袖も作っちゃったら?」
と江美子。
「いや2つ振袖があっても」
「札幌と東京で各々着るとか」
「うーん・・・・」
「それとも小樽でも出るんだっけ?」
 
「実は昨夜、小樽市の助役さんから電話掛かってきて」
「おぉ!」
「名誉市民にすると言うのを断って、市長表彰にしてもらった」
「名誉市民にしてもらえばいいのに」
「そんなのになったら面倒くさい。変なことして剥奪されたら市民の恥と言われそうだし」
「欲が無い」
「でも確かに小樽の成人式には出ないといけない雰囲気。札幌は東京と同じ1月10日・成人の日に成人式するんだけど、小樽は前日の1月9日にあるんだよ」
 
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「だったら振袖が2つあってもいいね」
 
「もし他の3人の方も作られるのでしたら、ディスカウントして7人分まとめて30x7=210万円の所を180万円とかではどうでしょう?」
と専務さんが言う。
 
「1人分が無料になる感じかな」
「ええ。そういう線で」
「1人あたりにすると26万円くらい。通常サイズの振袖を作る価格より少し高い感じか」
「はい。257,143円ですね」
と専務は電卓を叩いて言った。
 
「だったらですね。もうひとり、背の高い子がいるんですよ。その子に数日後ここに来させますから、その子まで入れて8人で切りの良い数字で200万とかではどうでしょう?」
と江美子が言う。
 
8人で200万なら1人あたり25万円である。
 
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「いいですよ。ではそのお値段で」
と専務さんは笑顔で言った。
 
「それを全部千里が出してくれるということで」
と江美子。
「うん、いいよ、いいよ」
と千里も苦笑している。
 
それで結局、玲央美・江美子・千里も採寸してもらった。
 
なお、もうひとりというのは、アジア選手権の直前に盲腸で入院してしまった後、現在は退院していったん博多に戻っている桂華である。
 
江美子が電話連絡してみると、桂華は直前にレンタルを予約すればいいだろうと思っていたらしいが身長165cmを越えたら、極端に数が減るよと江美子が言うと「え〜〜!?」と言い、念のため何軒かレンタル屋さんに問い合わせると、170cmサイズのものはもう予約が一杯でと言われたらしい。それでこちらで安価にしかも短期間に作れるなら、その話に乗ると言ってきた。彼女は当初レンタルで7-8万くらいかなと考えていたらしい。
 
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「ちなみに、優勝記念にこの振袖代金、全部千里が出してくれるらしいから」
「うっそー!? それはありがたく頂いておこう」
と桂華は言っていた。
 

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デザインに関しては、古典的な絵柄、現代的デザイン、デザイナー、などの既製のデザインの他、千里が今着ている着物のように、自分でデザインしてもいいということであった。
 
「難しいデザインだと時間が掛かるとかいうことは?」
「関係ありません。プリンターですから」
「あっそうか!」
 
留実子は絵に自信が無いから、と言って、現代的なデザインの中から選択していた。本人の写真を撮って、モニターの中で試着させてみる。
 
「サーヤはもっと大柄の絵のが似合う気がする」
「うん。その方が映える気がする」
と江美子や玲央美が言い、彼女らがデザイン見本を見て
「たぶんこちらがいいよ」
と言って推奨してくれた。そちらをモニター上で着せてみると、凄く格好良くなった。
 
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「りりしい〜!」
「女必殺仕事人って感じだよ」
「うん。格好良い」
などと褒められて。留実子もすっかりその気になり、そのデザインで行くことにした。
 
誠美、華香、サクラもやはり大柄な絵を使ったものが似合った。
 

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玲央美は既にひとつ別に作っているしと言って、自分で絵を描いてみると言い、パソコンでお絵描きを始めた。
 
「あ、inkscapeですか?」
「はい。お使いになったことありますか?」
「ええ。これなら分かります」
 
と言って、タブレットを操作している。
 
江美子が
「バスケしている絵の振袖着てみたいけど誰か描けない?」
などと言うので、千里が描いてあげることにした。
 
「千里もinkscape使えるんだ?」
「このソフトは分かる」
 
と言って千里も作業に取りかかる。
 
実は雨宮先生に言われてCDジャケットを一晩で作るというのを何度かやらされたので覚えたのである。
 
本人の要望を聞きつつ、華香や誠美が茶々も入れる中、千里は2時間ほど掛けて江美子がレイアップシュートしている絵を描いた(その間、他の子たちは実際に印刷された生地のサンプルなどを見せてもらいながら、おやつを食べていた)。
 
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絵が完成したところで、モニター上で着せてみると、これが格好いい。
 
「こんな振袖着る人は絶対他にはいないから、これでいこう」
と江美子はかなりテンションがあがっていた。
 
その頃には玲央美のデザインもできあがっていた。こちらはライオンが赤白青のバスケットボールで遊んでいる様なのだが、そのライオンが物凄く可愛い。そして玲央美は丁寧に陰影付けをしており、とっても立体的に感じるのである。
 
「インクジェットの着物ではよく自動で付けたグラデーションが入っているけど、それって人間の手描きではあり得ない絵柄なんだよね。だから自動のグラデーションじゃなくて、わざと手作業で陰影を付けた」
と玲央美は言っている。
 
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専務さんは
「この程度は賄賂にはならないでしょうから」
と言って、お昼に仕出しを取ってくれた。
 
なお、千里は江美子の絵で時間を使ってしまったので、自分の振袖のデザインは、自宅のパソコンで作ってメールすることにした。inkscapeまたはIllustrator形式(.svg or .ai)でデータを作って送ってもらえればいいということであった。
 
また「もうひとり」というのが、博多に住んでいると言うと、わざわざ来社されなくても、採寸はお母さんにでもしてもらって、デザインは、この会社のサイト上でデザインを選択するか、あるいはinkscapeなどでデータを作ってメールしてもらえばいいと専務さんは言っていた。
 
「Photoshopでもいいですか?」
と江美子が訊く。
 
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「その場合は、1200万画素程度以上のpsd形式でお願いします。デジカメの場合は、一眼レフでないと難しいと思いますが、4000x3000程度以上でJPEGからではなく、Raw data(圧縮していない撮影したままの画像データ)から取り込んで欲しいです。画素数は多ければ多いほどいいです」
 
江美子は専務から聞いた内容をそのままメールに打ち込んで送信していたようである。もっとも専務が raw dataと言っていたのを江美子は low data と書いてしまい、桂華を悩ませることになった。
 

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千里はその週までは大学を公休にしてもらっているのをいいことに、自分用の振袖デザインを6日から7日に掛けて作成した。また江美子に描いてあげた絵についても、三角専務と連絡を取って、更に調整させてもらった。調整後のデータを試着モニター写真と一緒に送ったら
 
「凄い格好よくなってる。これでお願い」
ということであった。
 
ちなみに千里が自分用に描いたのは、雌雄の鳳凰がバスケットボールで遊ぶ姿であるが、小さな雌雄の鳳凰も隅の方に1羽ずつ描いている。
 
自分と貴司と、京平と小春かなあ、と千里は考えていた。
 
でもこれ未婚の人の絵柄じゃないみたい!!
 
そんなことを考えたら、斜め後ろ方面で小春がクスクスと笑ったような気がした。
 
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『ところで小春は女の子になれそう?』
『なかなか許してもらえないんだよ。もし男の子に生まれてしまったら性転換して女の子に変えてよ。できたら赤ちゃんの内に』
『さすがに赤ちゃんを性転換する訳にはいかないなあ』
 
(小春との会話はチャンネルが異なるので《くうちゃん》以外の眷属には聞こえない)
 
なお桂華は「自分で絵を描いて変になったら嫌だから」といって既製デザインで、伝統絵柄のものを選んだようである。
 
なお振袖の完成は12月頭くらいの予定ということであった。やはり工場のスケジュールが立て込んでいるらしい。
 

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2010年10月8日(金)。
 
今年のWリーグが開幕した。初日は昨年優勝のサンドベージュと準優勝のビューティーマジックの対戦で、他の試合は明日から始まる。
 
千里はこの週末はずっとローキューツのメンバーとともに練習をしていた。インドお土産の紅茶とチーズケーキを配ったら、チーズケーキの方は一瞬で無くなったが
 
「これ結構美味しいね〜」
という声があがっていた。
 
10月9日。
 
大阪市中央体育館で、近畿実業団バスケットボール選手権大会の準決勝・決勝が行われ、貴司たちのMM化学は惜しくも準優勝で、全日本実業団競技大会の切符を逃した。
 

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10月11日(祝)。
 
千里とローキューツのメンバーは大半が千葉駅に、一部は船橋駅などに集まり、船橋から東武野田線で鎌ケ谷駅まで行った。一部は直接そちらに入った子もいる。この日は千葉県立鎌ケ谷高校で、先月の千葉県クラブバスケット選手権大会の続き、準決勝と決勝が行われるのである。
 
準決勝の対戦相手、フドウ・レディースのメンバーは対戦前から嫌そうな顔をしていた。もっともここは現在ジョイフルゴールドに居る近江満子が一時期在籍していたチームで結構強い。それで、こちらは「ややマジ」なメンツ
 
浩子/聡美/夢香/岬/桃子
 
で出て行った。すると桃子の身長(178cm)を見ただけで、相手のセンターの人が戦意喪失している。ティップオフは当然桃子が取って攻め上がる。聡美が鮮やかなレイアップシュートを決めて先制する。
 
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その後も、向こうのパスを聡美や岬などがカットしては反転して攻めて行くパターンが多く発生し、前半だけで20-50と大きな差がつく。それで後半は司紗、夏美、菜香子などといった《地区予選要員》も出して行く。それでも相手がもうやる気を失っていたので、更に差が広がっていき、結局35-102で決着した。千里や麻依子たちの出る幕は無かった。
 
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