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■娘たちのお正月準備(7)

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10月30-31日には和歌山市のビッグホエールで近畿総合選手権が開催された。千里は自分たちの千葉総合と日程が重なるので見に行くことはできなかったものの、貴司たちは1回戦不戦勝、2回戦勝利で決勝に進出する。
 
しかし決勝では、大阪総合の決勝戦でも当たったチームに再び敗れて準優勝に終わり、オールジャパンの切符を掴むことはできなかった。
 

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一方の千里たちは11月3日、千葉総合(秋季選手権)の準決勝と決勝に臨む。
 
午前中に行われた準決勝の相手は関女2部のE大学である。むろん充分強い所なので心して掛かったが、千里と誠美は最後まで出なくて済んだ。
 
そして午後からは関女1部のK大学との決勝戦を迎えた。昨年はこの大会の準決勝で当たったチームである。昨年は3軍からの緊急徴用でベンチ入りしていた高校の時のチームメイト佐々木川南が今年は正式に1軍まであがってきている。川南も昨年冬の旭川N高校の合宿に付き合い“進化した”千里を見たりもして大いに刺激され、かなり頑張ったようである。
 
もっともまだスターターに入るほどではなくベンチスタートである。相手のスターターはこのようになった。
 
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PG木下/SG福原/SF山口/PF中谷/C宮野
 
宮野というのは札幌P高校にいた宮野聖子で、高校時代の玲央美のチームメイトである。千里や麻依子は何度もやり合った相手なので試合前からお互い手を振ったりしていた。また木下や福原は昨年ローキューツと対戦しており、特に福原は昨年の試合で千里のマーカーを務めた上手い人である。今年は主将になっている。
 
対するこちらはむろん最強の布陣である。
 
凪子/千里/薫/麻依子/誠美
 

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試合が始まると、相手はなんと宮野聖子が千里のマーカーを務めるダイヤモンド1のゾーンを組んだ。常識的にはダイヤモンド1をするなら福原さんがマーカーになるのが妥当な気がするのだが、むしろ千里をよく知っている聖子をマーカーにしたのだろう。
 
聖子は最初から全力全開。ファウルも覚悟という感じの激しい動きで千里を停めに来た。
 
しかし千里はその聖子を凌駕してしまう。
 
今年1月頃の千里ならまだ分からなかったろう。実際聖子は旭川N高校と札幌P高校の半合同合宿で千里とOG戦で戦っている。
 
しかし千里はあの後、フル代表での合宿を経験し、国際試合も多数こなし、U20アジア選手権を戦ってきて、物凄く進化している。聖子は千里を全く停めきれない。そこで途中でやはり福原主将と交代する。しかし停められない。
 
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結局第1ピリオドは千里のスリーが炸裂して16-26と大差が付く。
 

第2ピリオド、K大学は千里にダブルチームする戦術で来た。聖子と川南が2人で千里をはさみ、動きを制限する。千里を最もよく知っている2人による守備で、さすがの千里も少し得点力が落ちる。
 
しかし千里だけ抑えても誠美はゴール下を完全に支配する。リバウンドはほとんど取ってしまうので、K大学は確率の低いミドルシュートをあまり撃つことができず、近くからのシュートに頼らざるを得なくなる。
 
それでも第1ピリオドほど一方的にはならず、このピリオドを18-22で終えることができた。前半で34-48である。
 

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第3ピリオドは千里・誠美・麻依子といった主力が休む。この間に向こうは猛攻を掛けてきたが、国香や聡美たちには12点差まではOKと言っておいた。それでどんどん点を取られても彼女たちは焦らず、落ち着いたプレイを続けた。結局はこのピリオドは 28-20と8点差で、ここまで62-68である。
 
第4ピリオドは千里たちが復帰する。このピリオドでは聖子と福原さんが2人で千里のマークに入ったが、それでも千里はふたりをうまく振り切ってスリーを放り込む。そして福原さんが千里のマークに入っているとどうしても向こうの得点力は落ちてしまう。
 
結局このピリオドは18-24となり、合計80-92でローキューツがこの試合を制した。
 

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試合が終わり、審判がローキューツの勝ちを宣言した後、福原さんも聖子も首を振って、参ったという感じの表情であった。千里は2人とも、川南ともハグして健闘を称え合った。
 
こうして千里たちは秋季選手権を2連覇して関東総合に駒を進めた。
 

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11月4日(木)、千里が大学が終わってからファミレスのバイトに行く前に体育館で汗を流していたら、渋谷の呉服屋さんから、振袖が出来たという連絡が入った。それで明日、5日(金)に取りに行くと返事しておいた。
 
翌日の朝、バイトから戻った千里は「じゃ後はよろしく〜」と『千里』に言うと、布団に潜り込んですやすやと眠ってしまった。それでやれやれという表情の『千里』は思いっきり可愛い服を着て軽くメイクすると、スクーターに乗って大学に出かけた。
 
大学の講義を4時間目まで受けた後で、玲奈から
「千里、このあと用事ある?」
と声を掛けられるも
「これから振袖の出来たの取りに行くのよ」
と答えると近くに居た桃香が
 
「あ、じゃ私も一緒に行くね」
と言った。
「そう?じゃ一緒に」
と『千里』は答える。
 
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それで桃香と一緒に取りに行くことになったのだが、そのふたりの会話を聞いて教室内の数人が素早く視線を交換していたのは何だろう?と『千里』は思った。
 

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先週の桃香は単純に受け取っただけだったのだが、千里はこの日は着付けしてもらうことにしていた。この店で買った振袖の着付けは無料である。
 
取り敢えず受け取り、ケースから出してみるが、とてもきれいである。さすが高いだけあるなどと桃香と言い合っていた。
 
今日は振袖の試着着付けをする人が何人もいたようで、着付師さんが空くまで1〜2時間待って下さいということであった。お茶とお菓子が出てきたので、頂きながら桃香とおしゃべりしつつ待つことにする。ところがその時桃香が
 
「私も一緒に着れたらよかったんだけどね」
と言ったのを鈴木さんが耳にする。
 
「あら、それでしたら、そちら様も一緒に着付けしましょうか?」
と鈴木さん。
 
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「でもこの店で作った振袖ではないのですが」
「そんなの誤魔化しておけば大丈夫ですよ」
「じゃ、頼んじゃおうかな」
 
と言って桃香は大急ぎで千葉まで往復して自分の振袖を持って来た。
 
桃香が戻って来た時、ちょうど『千里』の着付けが終わった所だったので、そのまま次に桃香が着付けしてもらった。桃香が着付けしてもらっている間に『千里』の方は鈴木さんが写真を撮ってくれていたのだが、桃香の着付けも終わると続けて桃香の写真、そして2人並んだ所の写真まで撮ってもらった。
 

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「提携している写真館の方にお越し頂ければプロの腕で3枚2万円でお撮りすることもできるのですが」
 
「それは成人式の直前くらいにお願いすることにして」
「やはり美容院くらい行ってからにしたいし」
 
「確かにそうですよね。もし日程が決められるなら決めて頂くと予約をお入れしますが、どうしましょう?」
 
「そうですねぇ」
と言って『千里』は自分の手帳を開いてスケジュールを確認する。
 
「12月15日とかどうですかね?」
「少々お待ちを」
と言って鈴木さんはパソコンで空きを確認しているようである。
 
「12月15日なら私も行けるな」
と桃香。
「じゃ一緒に撮りに行こうか?」
 
「12月15日、おふたり大丈夫です。何時頃がよろしいですか?」
「午前中美容院に行って、午後着付けと撮影に行けばいいかな」
「では14時くらいとか?」
「ああ、そのくらいがいい感じです」
「では12月15日午後2時、村山様と高園様、ご予約入れておきますね」
 
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この日は振袖を着たまま、ふたりで渋谷の街を歩き、ドーナツ屋さん
に入って、チョコドーナツとコーヒーを飲みながらおしゃべりすると
いう、やや危険なことをした。写真を桃香が自分のと千里のとを各々
の携帯で撮り、自分のは母にメールしておいた。
 
「さすがにこのまま焼肉屋さんに行くのはまずいよね?」
と桃香が言う。
「それはさすがにやめとこうよ。焼肉するならこれを脱いでからだよ」
と『千里』は言った。
 
「だったら、一緒にお肉買って帰ってうちでホットプレートで焼肉しない?」
「いいよ」
 
それでふたりは振袖を着たままいったん千葉まで電車で戻り、桃香のアパートで振袖を脱ぎ、『千里』がそれをきれいに畳んでケースに収納している間に桃香がお肉を買ってくる。それでホットプレートを出して焼肉をした。呉服屋さんに行ったのがそもそも遅い時間だったので、晩ご飯が終わったのはもう22時半くらいである。
 
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「千里、帰りのバスある?」
「びみょー」
「だったら泊まってく?襲ったりしないから」
「その後半はやや怪しい気もするけど、私もバージンじゃないし泊まっていこうかな」
 
桃香のアパートにはしばしば同級生(朱音や優子など)が泊まっていくので客用布団も2組ある。それで『千里』はその客用布団のひとつを台所!に敷くと、そこで寝ることにした。
 
「千里、和室でもいいのに」
「いや、そちらで寝るのはさすがに貞操が恐い」
「朱音みたいなこと言ってる」
「なるほどー。朱音も台所で寝る訳か」
 
『千里』は念のため《せいちゃん》に
『千里の身体を守ってね』
と言ってから、すやすやと寝た。
 
この日は桃香的には、千里が初めて桃香のアパートに泊まって行った日である。
 
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一方、前日、バイトから戻ったあと仮眠していた《千里》は、午前10時半頃目を覚ますとバスケットの道具を持ち、近所の駐車場に駐めていたインプレッサの後部座席に乗って《こうちゃん》に
『じゃよろしく〜』
と言って、毛布をかぶり眠ってしまった。
 
《こうちゃん》はぶつぶつ言いながらも高速を走って東京駅まで行くと千里を降ろす。千里は御礼を言って降りて、東海道新幹線の改札前に行った。車はそのまま《こうちゃん》が江戸川区の駐車場に回送する。
 
千里が行った時はまだ人は少なかったが、やがてローキューツのメンバーが少しずつ集まってくる。明日と明後日は、高知で全日本社会人バスケットボール選手権が行われるのである。ここで2位以内に入ると、お正月のオールジャパン(皇后杯)に出場することができる。
 
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やがて集まってきたメンバー全員で改札を通り、12:30の《のぞみ35》に乗車した。
 
東京12:30-15:56岡山16:05-18:48高知
 
新幹線から《南風17号》に乗り継ぎ、その日は高知市内の旅館に投泊した。なお、この日の夕方以降しか動けないメンバーに関しては翌日朝からの移動になった。
 
千葉5:36-6:14東京6:30-9:56岡山10:05-12:28高知
 
朝からの移動になったメンバーについてはタクシーに相乗りして会場に入ってもらう(タクシーチケットを予め渡している)。高知駅から会場の春野総合運動公園までは路線バスの直行便がなく乗り換えて1時間掛かってしまうが、車で走ると20-30分で到着する。
 

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