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■女子中学生・セーラー服と移転中(13)

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高木紀美はP神社で七尾善美を捉まえて、図面を見せて言った。
「新しい家のデザイン、こんなのではどうですかね」
 
善美はしばらく図面を見てから言った。
「この家、敷地面積より広い気がします」
「あらぁ!」
 
貞美は「やはりお姉ちゃんの設計は危ない」と思った。
 

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3月14日(火).
 
この日は卒業式の予行練習が行われていた。Rが「寝てしまう〜」と言って逃げ出したので、この日は千里F(実質Bs)が出席した。でもやはり寝てた!自分の名前が呼ばれても返事しないので小春に起こされていた。なお、恵香の努力で小春の分も卒業証書は用意され、小春が感激していた。公世の名前は「きみよ」と呼ばれたが、本人は諦めて「もういいや」と思った。マナはもちろん「さとう・まなさん」と呼ばれた。
 
上原君は朝のHRではセーラー服を着ていたので「それで式に出るの?」と女子たちが訊くと「ちょっと着てみたかっただけ」と言って予行練習前に詰め襟に着替えちゃった(但し下はブラウスのまま。ブラジャーも着けているのが確認できた)。でもセーラー服を着ている内に、女子たちの手で女子トイレに連れ込まれていた。
 
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「セーラー服のまま予行にも出れば良かったのに」
とみんなから言われていた。
 

この日、司も公世も“男の子から”たくさんホワイトチョコやマシュマロをもらった。司は、杏子や菅原君など野球の練習の仲間とシェアした。(杏子はホワイトデーをあまりもらってない)。菅原君はそれを更にマナとシェアした。
 
公世は翌日の稽古の時に早川ラボに持ち込むと、あっという間に女子たちが食べちゃった。
 
剣道部の竹田君と公世は「義理マシュマロ〜」と言って、千里、玖美子、マナにマシュマロを配っていた。これはバレンタインの時に千里・玖美子・マナが竹田君と公世に「義理チョコ〜」といってチョコをあげたののお返しである。
 
それで公世はバレンタインとホワイトデーの両方をもらうことになった。
 
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2006年3月15日(水).
 
この日は卒業式が行われた。今日はRが自分で出席した。でも寝てた!が自分の名前にはちゃんと返事して前に出て行き、卒業証書を受け取った。公世の名前は正しく「こうせい」と呼ばれた。これは実は沙苗が校長先生に言って正しく修正してもらったのである。
 
卒業証書授与の後、全国大会で優勝・準優勝した千里と公世に特別表彰が行われ、記念のメダルが学校から贈られた。
 
津気子は一抹の不安を感じながら卒業式にやってきたが、千里がちゃんとセーラー服を着ているのを見てホッとしていた。(*27)
 
なお教室で再度担任から卒業証書を渡される時は、RはGとの話し合いでY1を呼び出して出席させた。これで3人の千里が全員卒業証書を受け取ったことになる。
 
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小春は卒業式・教室と2回卒業証書を受け取った。
 
また小春は千里に「私が持っててあげるよ」と声を掛け持っておき、A大神に頼んで3枚にしてもらい R, B(Bs), Y(Y1) の3人に後で1枚ずつ渡した。
 
(*27) 秋以降、村山家に帰宅するのは男子制服を着た千里Bwだが、実はこの千里は学校に行っていない(学校に行くまでの間にBsかY1に代わってしまう)。学校に行くのはR, Y1, Bs であるが、3人ともセーラー服である。そしてこの3人は村山家に帰宅しない。
 

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クラブの後輩から卒業する先輩たちへの記念品が贈られた。
 
剣道部では如月から千里へ、聖乃から玖美子へ、好花から沙苗へ。また、由紀から公世へ、真南からマナへ(“まな”から“まな先輩”へ!)吉原君から竹田君へ、贈られた。贈ったのは全部コーヒーカップである。実はダイソー!男子には黒、女子には白を贈っている。黒をもらったのは竹田君のみである。公世もマナも当然白!
 
これを受け取ったのは千里Rである。Rが教室に来たことからY1は消滅した。
 

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千里Rが「私消えるねー」とVに連絡してから早川ラボに戻ったので、千里Vはそこに千里Fを転送出現させた。バスケット部の子たちが来て、千里F(実質Bs)に記念品をあげた。
 
そのあと合唱同好会でもプレゼントがおこなわれ、これも千里Fが受け取った。
 

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上原君は結局卒業式には詰め襟で出て来た。でも予行練習と同様、詰め襟の下にはブラウスを着ていた。ブラジャーも着けているようだった。そして教室に戻ったところでみんなに乗せられてセーラー服に着替えちゃった。
 
そしてクラス委員の優美絵が担任に要請したので、担任から再度卒業証書を受け取る時は、男子の並びではなく女子の先頭で名前を呼んでもらった。名前自体「ひろし」ではなく「ゆう」と読んでもらっていた。(彼の下の名前は“裕”)
 
ホームルームが終わった後、校舎の外で他の女子と多数の記念写真を撮っていた。彼のお母さんまで
 
「可愛い、可愛い。あんた高校は女子制服で通いなさいよ」
と言って多くの女子たちから賛同されていた。
「性転換手術、予約しておこうか?」
「要らない!」
 
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「でもゆうちゃん、ウェスト細いね」
とクラスメイト女子から言われる。
 
「そうかな」
「このスカート何センチ?」
「59cmだけど」
「負けたぁ!」
 
「ゆうちゃん、高校は女子制服作った?」
「お姉ちゃんからもらった。男子制服も一応作るつもり」
「女子制服があるならそれで通学しよう」
「男子制服作る必要無いよ」
「女子制服で出て行ったら叱られるよぉ」
「いや理解されると想う」
「K高校は女子が少ないからきっともてる」
「春休み中に性転換手術を受けて入学式までに本当の女の子になろう」
と言ったら、彼が沈黙したので女子たちは顔を見合わせていた。
 
中学の卒業アルバムでは彼のセーラー服写真が収録されている。(詰め襟写真は入ってない)
 
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中山広紀は
「ゆうちゃんもセーラー服着たよ。ひろちゃんもセーラー服着よう」
などと言われる。
 
「僕は別にセーラー服着たくないし、そもそもセーラー服持ってない」
と彼は答える。
「いや君のセーラー服姿は数十件の目撃情報がある(誘導尋問)」
「誰かの見間違いでは?(誘導には掛からない)」
 
「でも万一持って来てない場合のためにちゃんと用意しておいた」
「え〜!?」
ということで彼もセーラー服を着せられたが
 
「全く違和感が無い」
「普段から着ているのは間違い無い」
などと言われていた。
 
そしてその格好で校舎前で多数の女子と一緒に記念写真を撮っていた。
 
「これ誰の服?今着替えてくるね」
「着替えずにそのまま帰宅しなよ」
「それ私の洗い替えの服だけどそのままあげるから」
「え〜?」
「ひろちゃんがセーラー服で帰宅しても別にお母さんは驚かないよね?」
「というか、さっき母ちゃんに『あんた似合ってるよ』と言われた」
「ではこのまま病院に行って性転換手術を」
 
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「上原君は女の子になりたいみたいだけど僕は踊りで女舞をするだけだから」
「はいはい。そういうことにしとこうね」
「でもお母さんの後を継ぐから高校卒業までには女の子になる手術受けるんでしょ?」
「そんなことはない」
「取り敢えず冬休みに睾丸を除去する手術を受けたと聞いた」
「そんな手術受けてない!」
 
彼のお母さんは日本舞踊の女舞の師匠である。それで彼も小さい頃から舞踊のお稽古を受けていた。お稽古する時はだいたい振袖である。振袖姿で発表会に出たりもしている。実は名前も持っている。(男性が女舞を習っても構わない。彼以外にも男性の名取りは居る)
 
一応母の後継者は彼の姉ということになっているが、実際問題として彼の方が姉より上手い。それで姉は「あんたがちょっと簡単な手術受けて母ちゃんの後を継がない?」などと言っている。
 
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むろん彼はそんな話(ジョークと信じたい)は拒否しているし、舞以外の場面で女物の服は着ないと言っているが・・・・彼が女装してジャスコなどにいるのを多数の同級生に見られている。
 

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一方留実子は丸刈り頭・学生服で卒業式に出て、教室でも学生服姿で卒業証書を受け取った。彼は男子の並びで名前を呼んでもらった。下の名前は呼ばず単に「花和君」とだけ呼んだ。彼は卒業アルバムにもちゃんと詰め襟の学生服で写っている。「卒業式には男子制服で出ちゃえよ」と唆したのは実は鞠古君である。
 
教室を出てからは、応援団の他の3年生と一緒に1〜2年生とエールを交換していた。もちろん丸刈りの頭を曝していた。
 

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高木紀美はP神社で七尾善美を捉まえて、図面を見せて言った。
「新しい家のデザイン、書き変えてみたんですけど、今度はどうです?」
 
善美はしばらく図面を見てから言った。
「この家の玄関は?」
 
紀美はしばらく図面を見てから言った
 
「あ、この家、入りようがない」
「うん。この家は窓からしか出入りできない」
 
貞美は「やはりお姉ちゃんの設計では住めない家になる」と思った。
 

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3月16日(木).
 
新北九州空港がそれまでの旧・北九州空港に代わり、オープンした。IATAコードは旧空港と同じ KKJ である。旧空港は前日の3月15日で運用終了。廃港となった。新空港は当初“新北九州空港”が正式名だったが2008年に単に“北九州空港”の名前になった。
 
旧・北九州空港は霧がひどく、しばしば欠航したり到着便が福岡空港などにダイバートしていた。今回は海の上に作ったので、気象条件に左右されずに使えることが期待できる。
 
3月22日からは、スターフライヤーが北九州5:30発羽田7:00着の早朝便を就航させ、大いに利用された。8月からは24時間空港として運用されるようになった。
 

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3月16日(木).
 
卒業式の翌日、留萌市内の公立校、K高校とS高校の合格発表が行われた。
 
高木紀美・風月美都はちゃんとK高校(2人ともスーパー特進科)に合格していた。那倉絵梨もちゃんとK高校(普通科)に合格していたのでホッとした。
 
他にK高校組では上原裕がスーパー特進、中山広紀は特進である。
 
中谷数子・花崎映子(以上普通科)・広川佐奈恵(特進科)もS高校に合格していた。
 
S高校にも落ちた子の大半は、滑り止めに受けていたU高校の入学手続きをした。
 
毎年若干居る、K高校に通るつもりでS高校を受けていなかったのにK高校に落ちた子、またS高校で大丈夫と思っていたのに落ちてU高校を受けてなかった子については、中学の先生がその日の内に本人と連絡を取り、前者にはS高校の二次募集、後者には旭川や札幌の私立の二次募集を勧めた。
 
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3月17日(金).
 
美都はP神社でご奉仕していた。市外の高校に行く子がみんな留萌を出て行き、随分寂しくなったなと思いながら巫女控室で進研ゼミの高校入学前・復習問題集などしていた。(紀美から「美都ちゃんもZ会しない?」と言われてテキストを見せてもらったが“取り敢えず辞退”することにした!)
 
トイレに行って来てから控室に戻ろうとしていた時、上品な和服を着た60歳くらいの女性に呼び止められた。訪問着・・・かな?などと思っている。でも生地が凄く立派だ。高そうなどと思う。
 
「美都や、そなた市内の高校に進学するのか?」
「はい。K高校に合格しました」
「おお、それはおめでとう」
「ありがとうございます」
と答えなから、自分を知ってるみたいだけど、誰だったけ?などと思っている。
 
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「そなた、留萌に残るならちょっとバイトをしてくれぬか」
「どんなお仕事でしょう?」
 
「沙苗に頼もうかと思ったが旭川に行ってしまうし」
「ええ。L女子高に合格したんですよね。剣道で特待生になるみたいです」
「それでセナに頼もうかと思ったのだが、どうもあの子は不安で」
「あの子は学級委員を小学校・中学校でやってて、しっかりしてるようですが、何かに違和感を感じた時に『まあいいや』と思う傾向があるんですよ」
 
(それで自分の性別が変わっていることにも気付かなかった!)
 
「私もそれが怖くて。基本的にはこの神社に詰めていて、時々私から声を掛けたのを聴いて、処理してくれればいいだけなんだよ」
「そのくらいはできると思います」
と答えながら、この人、宮司の娘さんか何かだっけ?と考えている。
 
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「報酬は月3万円くらいでどうだ?」
「やります!やります!」
それだけもらえたら、自分で携帯代払えるじゃんと思う(←使いすぎでは?)
 

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それで美都はこのバイトを始めたのである。
 
「でも誰だっけ?」
と思った。たまたま控室にいた仁美ちゃん(4月から中学生)に訊いてみた。
 
「こんな感じの女の人なんだけど」
と説明したら、小鳩と顔を見合わせている。
 
「それはこの神社の神様だよね?」
「私もそう思う」
 
「え〜〜〜〜!?」
 
「そのお役目ずっと千里さんがしてたんですよ」
「でも姫路に行っちゃうから後任が必要だったんでしょうね(*28)」
 

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「私神様に雇われちゃった?」
「特に意識することないですよ。声を掛けられたらそれに応じればいいだけだし」
「ははは」
「守秘義務が守れる人ならできると思う」
「あ、それはちゃんと意識する」
 
そのあと、美都が最初に頼まれたのは小鳩が社務所門柱の所の灯りに燃料補給するのを忘れていたのを頼まれたものであった。また夕方になっても境内の灯り(LED)が点いてないのとかも頼まれた。初期の段階ではやはり小鳩のミスのフォローが多かった。また近所で死にそうになってる年寄りの件を宮司さんに連絡したりもした。(救急車を呼び、お年寄りは助かった)
 
美都はその月から、自分の口座に“カミサマ”名義で毎月3万円の振り込みがあったので
「いまどきの神様は銀行振込なんだ!」
と驚いた。
 
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しかしお陰で美都の常駐度があがったので、高校生巫女が広海・紀美・セナ・美都と4人期待できて、P神社の運用がとても楽になったのである。美都としても勉強のできる紀美のそばで勉強していると、とても刺激になった。
 
(*28) 仁美もこの“お仕事”をしている。つまりお使いの仕事は千里・蓮菜・仁美の3人体制から、千里と蓮菜が抜けて取り敢えず美都が加わって2人になった。紀美や玲羅は神様の声を聞けないので使えない。
 

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女子中学生・セーラー服と移転中(13)

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