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■女子中学生・セーラー服と移転中(10)

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一方千里は、制服採寸のあとN高校にはひとりで行った。
 
千里はN高校には運動できる服装で出ていった。
 
「君本当に男子なの?入学までにちょっと簡単な手術受けて女子として入学しない?」
などと女子の部長さんは言っていた。
 
千里はその場でスリーを30本撃って26本入った。
「すごーい!」
と出て来ている部員から声があがる。
 
「ただ後半少し確率が落ちたね。前半は全部入れたのに」
「私あまり体力ないですー。中学時代も試合の後半では守備には参加せずにずっとフロントコートに立ってることがよくありました」
 
(↑“この”千里は2年生以降全く学校に行ってないので1年生の頃の記憶しかない)
 
「なるほど。そこが少し課題か。じゃ取り敢えず毎日早朝ジョギング5kmだな」
「ひゃー」
 
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“この千里”(Bw)は自分ではジョギングするつもりはない!でも千里Bsが毎日自宅近所で坂道5-6kmのジョギングをしている。これは中学に入った頃から千里R・沙苗・留実子の3人でやっていたものだが、この秋以降はRに代わってBsがやっている(*20)。Rは清香と一緒に早川ラボ近くの道を毎日10km走っている。
 
留実子は
「千里は毎日僕と一緒に坂道5-6km走ってるのになぜそれを言わないんだ?」
と思った。だいたいシュート30本くらいでへばるとは思えない。毎日僕でも音を上げるようなハードな練習してるのに。
 
留実子はランニングシュート30本中24本決め、そのうち半分がダンクだった。
 
「男子にほしい。君、入学までにチンコ取り付ける手術して男子に出ない?」
などと男子のキャプテンが言うが
 
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「いや、絶対男子には譲らない。花和さん、間違っても入学式になるまでに性転換手術とか受けないでよね」
と女子のキャプテンは言っていた。
 

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(*20) 武矢が自宅に居るためRは秋以降帰宅できなくなった。それで千里S/U(実質Bw)が帰宅していたが、Bwは数人の千里の中でも最も根性が無いので、しばしば途中で消えてしまい、どの千里も帰宅しないことがあった。それで秋以降の村山家の夕食は(津気子が作るので)貧弱になる。料理が美味しくないし父があれこれうるさいしで、玲羅もカレー曜日以外は神社または高木家で晩御飯を食べてから帰宅することが多くなった。
 
3月中旬に千里が留萌を出て,更に7月に“新高木家”が完成すると玲羅は“貞美ちゃんとこでピアノ弾かせてもらう”と称して、金曜日以外はそちらに帰宅するようになり、村山家に帰らなくなる。玲羅は中学2年から高校を卒業して札幌の大学に進学するまで、事実上新高木家に住んでいた。結果的に千里は玲羅を“光辞の番人”として5年間使わせてもらったことになる。
 
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3月4日(土).
 
留萌S高校で入試が行われ、数子・佐奈恵・映子・那倉絵梨などが受験した。
 

3月5日(日).
 
留萌K高校で入試が行われ、高木紀美・那倉絵梨(卓球部)・風月美都(P神社の常連のひとり)などが受験した。
 
那倉絵梨はK高校が微妙だったのでK高校とS高校の両方受けた。
 
美都はK高校に落ちることはあるまいと思い、K高校のみ受けた。第1希望が来年度から創設される“スーパー特進科”で、そこが不合格だったら特進科、そこも不合格なら普通科と“回し合格”されるが、まあ最低でも特進科には合格できるだろうと思っている。
 
美都は旭川か札幌に行きたかったが、学区の壁を越えられるほどの優秀な点数を取る自信も無く(北海道は学区制があるので学区外からの枠はとても小さい)、私立には経済的に行かせてもらえず留萌K高校の選択になった。しかし神社で一緒の高木紀美もK高校・スーパー特進科志望というので心強かった。紀美ちゃんお金持ちっぽいから札幌の私立にも行けそうなのにと思ったが。
 
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3月5日(日).
 
千里Gは朝から“鏡”を使って姫路に移動した。この後しばらく滞在する。この時先日3つにデュプリケイトしてもらった制服を持って行った。
 
この日の午後、いよいよ姫路司令室が稼働した。
 
A大神のエイリアスが眷属のシネさんと2人で姫路司令室を訪れ、必要な機器のセットアップをした。これに立ち会ったのは千里Gのみである。コリンには地下室に行っておいてもらった。
 
この姫路司令室のモニター群で、留萌司令室(今月中旬に深川に移転予定)と全く同じ情報を見ることができる。
 
この司令室は留萌司令室の移転前に稼働させる必要があった。向こうの移転作業をしている間は、こちらの司令室だけが頼りである。
 
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3月中旬までは、ここにはコリンが常駐する。コリンが席を外さなければならない時は小糸に留守番させる。
 

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A大神は司令室のセットアップをした後、留萌からP大神も呼び、有明町のK神社・本社の方に行き、K大神と3人で楽しそうに話し合っていたようである。千里は“いや〜な”予感がした。
 

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3月7日(火).
 
兵庫県立大の合格発表があり、九重・清川の2人は合格していたが、南田兄弟は落ちていた。それで南田兄弟は滑り止めで受けていた西宮市のT大学に行くことになる。九重・清川は県立大の入学手続きをし、T大学には辞退の連絡をした。
 
「南田兄弟の方が頭良さそうなのに」
と千里Gは意外そうな顔をして言った。(彼らにはGとVの区別が付かない)
 
「いや、若さに負けました。地歴とかは結構いけるんですけど、数学や物理化学の計算問題で、やはり脳味噌の回転速度が若い頃より衰えてますよ。分からない問題は無かったけど、最後まで辿り着けませんでした」
 
と2人は言っていた。
 

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「君たち、どの辺に住みたい?」
と言って、千里Gは姫路市の地図を広げ、兵庫県立大に通うことになった九重・清川に尋ねた。
 
「千里さん、市内の山中(さんちゅう)に土地をお持ちですよね」
「あるけど」
「あそこに適当に穴を掘って住んでいいですか」
「まあいいけど地目が山林だから家屋は建てられないよ」
「家とかあったら3日で壊します。洞窟とかが最適ですが、地面に掘った穴でもいいですよ」
「なるほどねー」
 
女子たちが1ヶ月で壊すなら、こいつらは3日で壊すだろうなと千里は思った。
 
「んじゃあそこで適当にやって」
「了解です」
 

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「俺たちは西宮の六甲山中ででも」
と南田兄弟が言う。
 
「了解了解」
ということで前橋に言って六甲山中の人が入らないような深い山の土地を買わせた。彼女は3000坪 (1ha) の“崖付き”土地を70万円で買ってくれた。
 
「崖があったらそこに横穴掘れるから最高ですね」
と南田兄弟は喜んでいた。
 
これで“兵庫グループ男子”の内若者2人を除く4人の住まいが定まる。
 

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「でも3000坪が70万円か。西宮は土地が安いんだね」
と千里は何気なく言った。
 
「千里さん、姫路の山林はいくらで買ったんですか」
「1000坪が100万円だったけど」
 
「・・・・・」
「それは金額が間違ってるか広さが間違ってるかどちらかです」
「え〜〜!?」
 
千里は権利書を出してみた。
「ほら1000坪って書いてある」
「千里さん、その前に3.3ha って書いてありますけど」
「1000坪は括弧書きですね」
「3.3ha なら坪に直すと1万坪ですよ」
「嘘?」
「たぶんゼロの個数を間違った」
 
念のため、広沢の知り合いの司法書士さんに付き添ってもらい、法務局で確認したところ、法務局の人は添付の地図を確認した上で
 
「ああ、これは単純な換算ミスか誤記ですね」
ということで法務局の人は職権で登記を変更してくれた。
 
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それで千里が12月に買った山林は1000坪ではなく1万坪であることが判明した!
 

千里は九重・清川と一緒に現地に行ってみた。
 
「1万坪っていってもそんなに広い気がしないな」
「せいぜい100間(けん)×100間ですからね」
「結構斜面があるね」
「この斜面に横穴作れば雨水が流入しにくい家になるな」
「ああ、雨対策は大変そうだね」
 
「あまり雨水が流れ込まないように取水装置作っていいですか?溜まりすぎた水は姫路の家に持ってって使いますよ」
「それは任せた」
 
彼らは隣接する下方の土地に竹林が広がっているのに気付いた。
「おっこれは猪がたくさん来そう」
「竹林に猪が来るの?」
「竹は猪の大好物だから」
「へー」
「来たら捕まえて猪肉(ししにく)(*22)パーティーだな」
「他人の土地で勝手に捕まえていいの?」
「誰も気にしませんよ」
「気になるようならこの竹林も買ってくださったら嬉しいです」
「いいよ!」
 
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(*22) “猪肉”は“いのししにく”又は“ししにく”と読むのが一般的だが、しばしば婉曲表現として“ぼたん”(牡丹)と呼ばれる。猪鍋は“牡丹鍋”である。これは日本では長く続いた肉食禁止時代(8世紀〜明治初期)に、お役人が聞きとがめたりしないよう隠語として用いられていたものが一般化したものと言われる。
 
肉食禁止時代の習慣例
・猪肉を「牡丹」、馬肉を「桜」と呼ぶ。
・兎を1羽、2羽と数えて鳥の一種だと主張する(鳥肉は禁止されていない)
・牛肉は「滋養強壮の薬」という名目。(現代と同様お歳暮の高級贈答品)
 

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前橋に所有者を調べさせ、交渉したら売ってもらえることになった。千里はそこを6.6ha=20000坪 150万円で買った。上方(じょうほう)の土地より更に安いが、所有者は
 
「急斜面で木も生えてないので。それにそもそも年取ってあそこまで到達不能になっちゃったんですよ。息子は大阪市に行っちゃってコンピューターの仕事してるし」
と言っていた。
 
「本州にはヒグマがいないけど、猪ならたくさん居そうだからここでたくさん捕まえますよ」
「楽しそうだね」
「竹林をもっと広げてもいいですか?たくさん猪が来るように」
「まあここも買ったから好きなように」
 
「猪の養殖みたいなもんだな」
「猪牧場かな」
「播磨の牧場だから、播磨牧場って感じだ」
「まあ好きなように。そうだ。ヴァースキ君(九重)を播磨牧場の社長に任命しよう」
「おぉ!」
 
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これが“西の千里”の事業の出発点となる播磨牧場の創業?だったのである。でも牧場の社長の仕事って何だろう?猪肉パーティーで乾杯の音頭を取ること??
 

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「竹が一杯あるからきっと剣道の竹刀もたくさん取れますよ」
「竹刀に使えるかな」
 
それでサンプルに何本か切って姫路市内の鈴本竹刀製作所という所に持ち込んでみたら
「凄い良質の真竹(*23)だ」
と言われた。それで向こうの好みの大きさの竹を切ってここに買い取ってもらうことになった。
「これ採取場所はどこですか?」
「姫路市内ですよ」
「それは凄い。確かに姫路市内で採ったという証明書を発行してください。あと現地写真とかも」
「分かりました。発行します」
 
それで千里が買った土地の竹は証明書付き1本300円でこの鈴本竹刀製作所に買ってもらうことになった。現地写真を見て製作所の鈴本社長さんは
「とんでもない山奥みたいですね」
と驚いていた。
 
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「歩いて到達するのが困難な場所なんですよ。いつもヘリで現地入りしてます(ということにしておく)」
「それは凄い」
 

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(*23) 真竹(まだけ)は太く背の高い竹で、竹刀のほか、はしご、物干し竿、などに使われてきた。伸縮が小さいので物差しの材料ともなる。また竹の皮は包装に使われる。真竹は120年に一度開花し一斉に枯れる。1962-1966には日本の真竹林の3分の1が枯死して消滅した。次は2090年頃と言われている。
 
中国でも1970年代と1980年代に竹の一斉枯死が起きて大量のパンダが餓死したと言われる。中国での竹の一斉枯死は2008年にも起きた。
 
なお、篠笛などの材料になるのは細くて柔らかい“女竹”(めだけ)である。女竹は篠竹とも呼ばれる。篠笛の材料になるから篠竹と呼ばれるのか、篠竹から作るから篠笛と呼ばれるのかは両論あって不明である(卵が先か鶏が先か)。
 
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龍笛の場合は、真竹を使用したものと女竹を使用したものがある。千里たちが使用している梁瀬さんの作品は全て真竹。天津子が持っている龍笛も真竹。
 
しかし一般には女竹を使った龍笛が多い。
 
なお恵香・玲羅・善美の龍笛や青葉の龍笛は安価な花梨製。天子が練習に使っているのも花梨製。
 
千里の所有地に真竹が生えていると聞いて、岸本メイが
「欲しーい!」
と言ったので岸本さんにも1本300円で売ることにした。岸本さんは女竹は自家栽培しているらしいが真竹は栽培が難しいらしい。
 

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鈴本社長が、一度行ってみたいというので、貴子に本当に小型ヘリ Robinson R22 を借りてきて、ヘリコプターの免許を持っているロデムに鈴本さんを連れていってもらった。
 
このヘリは2人乗りなのでロデムと鈴本さんだけを乗せたが、千里とガード役の九重は先に現地に入って待っていた。
 
「ほんとに凄い場所ですね」
と言って社長さんは驚いていた。
 
「広い竹林だ」
「人の手が入ってないからどんどん広がっているみたいですね。竹林って広がる傾向があるから」
「そうそう、そうなんですよ」
 
社長さんはたくさん写真を撮っていた。その日は鈴本さんのお気に入りの竹に印を付けてもらい、翌日それを持ち込んだらとても感激していた。
 
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その後、オーナーさんの写真もなどと言われて、たまたま姫路に来た瑞江の写真を撮って渡したら
 
「ああ、オーナーさんは女性ですか。お若いですね」
「旭川の女子大生なんですよ。私の又従姉なんですが」
「へー。相続か何かなさったんですか」
というので彼女の写真がまた結構好評だったようである。
 
でも瑞江さん、何年“自称女子大生”を続けるつもりだろう?
 
「まあ男の写真より女の写真が喜ばれるかもね」
と前橋は言っていた。
「前橋さんの写真でも良かったのに」
「こんなおばちゃんの写真より、女子大生の写真が好まれる」
 
「でも前橋さんも4月から女子大生だよ」
「ほんとだね!!」
 

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女子中学生・セーラー服と移転中(10)

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