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2月1日(水).
令明と追風の2人は関西学院(かんせいがくいん)大学の総合政策学部を受験した。難しい名前の学部だが、この中に建築科があるのである。キャンパスは三田(さんだ)市である(*11).
「三田市の関西学院大」って関西以外の人は誤読しやすい。
×みたし・かんさいがくいん
○さんだし・かんせいがくいん
(*11) どうでもいいが筆者のイオン銀行の口座はイオン三田ウッディタウン店で作ったものである!出雲の神迎祭・神在祭を見て、そのあと島根から国道9号を夜通し走って来て、ちょうど翌朝三田市で休憩した時に勧誘された。
2月3日(金).
この年は2月3日が節分であった。各神社では豆まきが行われる。
留萌Q神社には、学校が終わった後千里Fが行き、自身は豆まきしなかったものの、豆まきする人(市の有力者や地場企業の社長さんなど)の補助でたくさんお仕事をした。
留萌P神社には宮司からの電話で起きだした千里Y1が行き、こちらは豆まきに参加した。この日はお客さんがたくさんいたので、裏方で稼働した小学生たちも忙しかった。
豆まきをしたのは、宮司、浅美、善美、広海、千里、沙苗、蓮菜、氏子代表、そして留萌H新鮮産業の香川専務である。純代・恵香・美都などは受験準備があるので不参加。受験の終わっている千里や沙苗・蓮菜などが参加した。
姫路にいる越智さんは数日前に千里R(留萌に居る)に電話した。
「こちらのK神社で金曜日に豆まきするんだけど、村山さんこちらに来てたりはしないよね。豆まきする人の手が足りないみたいで」
「ああ、ちょうどその日は姫路に行ってるんですよ。何時からですか?」
「夕方19時からなんだよ」
「じゃ18時頃行きますね」
電話を切ったRはGに電話した。
「姫路の立花北町のほうのK神社で豆まきがあるんだよ。2月3日の18時にグレース行ってくれない?今姫路でしょ?」
「いいよ。行ってくるよ」
「じゃよろしくー」
全く“自分使い”が荒い、とGは思ったが、いつもGがしてることである!
それでGは夕方コリンに司令室の留守番をさせ、K神社に行った。越智さんと会い、平田茂行宮司(73)に紹介される。
この人が越智さんの奧さん・響子さん(45)の従兄である。年齢差があるのは、双方の親の世代が8人兄弟の1番目と7番目だからである。そのくらいの世代には10人兄弟とかが普通で8人というのはまだ少ないほうである。昔は結婚年齢が早かったし避妊なんて考えも無かったからどんどん出来た。でも子供の死亡率も高かった。実際8人兄弟の内成人したのは5人だけである。更に響子の父は遅く結婚したし響子は末っ子であったために、従兄妹なのにこんなに年齢差が出た。
平田家は代々宮司の家柄で、平田晴観が先代宮司。素麺の製造は郷史の奧さん・峰子さんのお父さんが始めた。子供が女ばかりだったので、末娘・峰子の夫となった平田郷史が継いだ。響子はその末娘。一応素麺屋さんは長女(響子の姉)晴子の夫である西岡広義(59)が継ぐ予定だが、この夫婦には子供がいない!ので、結局後継者問題は時限爆弾である。
宮司の跡継ぎについては後述。
平田茂行宮司(73)を見た千里Gは「わぁ、この人寿命がほとんど残ってない」と感じたが、もちろんそんなことは口に出さない。実際宮司は正月の後はずっと寝ていたらしいが、節分だからといって起きてきたらしい。ただし体力が無いので、宮司の正装で座っているだけで、実際には越智さんが宮司の代わりに豆まきの音頭取りを務めるという。
豆まきに参加したのは、他に立花北町・立花元町・橘丘新町の各町内会長さん、セブンイレブンの店長さん、立花元町にあるスーパー東北屋立花店の店長、立花小学校の坂村洋子校長、市会議員の西宮火都美さん、それに巫女衣装を着けた千里を含む4人である。千里は他の3人の巫女さんと紹介しあった。
「4月から姫路市内の高校に入ります、村山千里です。よろしくお願いします」
「言葉が違う。関東方面から来た?」
「北海道の留萌(るもい)という所から来ました」
「あ、にしん(鰊)のたくさん取れるところだ」
「にしんさんは50年ほど前からロシアに移住してしまわれたようで」
「あら〜」
残り3人は姫路市内の中高生で、山崎弓佳(高2)、鷹見和枝(高1), 丘野志織(中1)、といった。山崎さんと鷹見さんは昨年もやったが、丘野さんは豆まきは初めてだということだった。3人ともお正月もここで巫女さんのバイトをしたらしい。
「でも村山さん、かなりキャリアがあると見た」
と年長の山崎さんが言う。
「そうですね。3歳の時からやってるから12年くらいになるかな」
「凄い」
「その長い髪が凄く巫女っぽい」
「そうそう。巫女さんやってるからというので中学時代もこの長い髪が許可されてたんですよ」
「なるほどー」
「だったらここの神社で巫女さんやりますからと言って高校でも許可もらえばいい」
「あ、それいいな。みんながこの長い髪で私を識別するから、誰か違う人が長い髪してたら、きっと私だと思う」
「ありそー」
豆まきは19時頃から始まった。豆を蒔く人は12人だが、客は数千人集まっており「さすが都会〜」と思った。でも多分他地域から来た人も多い。千里たちは30分くらいで3万個用意した福豆の入ったビニールパックを撒ききった。撒くのは拝殿に4人と、境内4ヶ所に設けられたお立ち台に2人ずつである。千里は入口に近い所のお立ち台から撒いた。
なお豆を撒く人は、巫女さん4人の他は男女問わず裃(かみしも)姿であった。
この福豆のパックには、五色豆、殻付き落花生、一口チョコレート、などのほか、御守りの根付け、コインチョコまたは五円〜五百円の交換券が入っている。五百円の交換券は3万個のうち300個しか無い。100分の1の確率である。
コインを直接入れないのはぶつかった時に危険だからである。交換券と現金の交換は、神社の出口のところで、事務員を示す松葉色の袴を着けた女性が10人くらいで対応していた。これは宮司の娘さんや孫娘さんたちらしい。(つまり無給労働者!)
なおこの根付けは宮司の孫娘さんのひとり(*12) が発案したもので、女子中高生好みの物凄く可愛いデザインである。十二支と十二星座の24種類があり、穴が空いていて携帯ストラップとしても使用できるようになっている。豆撒きした人も、この福豆パックを10個ずつもらったが、
「これ可愛い!」
と歓声があがっていた。ついでにお互いダブったのを交換していた。
「これ普段でも神社の授与所で頒布しては?」
「今授与所に常駐できる人が居ないからねー」
と越智さんが言っていた。
「ああ」
「常駐巫女を雇うだけの予算が無いみたいなんだよ」
「なかなか内情も苦しいようですね」
これは翌月(3月)に改善されることになる。
(*12) 宮司には、男の兄弟、男の子供、男の孫、男の曾孫が1人も居ない。みごとに女ばかりである。
Gは節分の行事が終わると“鏡”を使っていったん留萌に戻った。
「忙しいね」
とVが声を掛ける。
「自分で2人欲しいなんて言ったらきっと2人にされちゃうよね」
「ああ、そういうことは言わない方がいい」
「でも姫路に行って来たことで重大な問題を発見した」
と言って千里Gは何かメモのようなものを見ながら、ネットでどこかの通販サイトに接続していたようだった。
「何か買うの?」
「うん。きみよちゃんに、かっわいいお洋服を用意してあげようと思って」
とGは言う。
「ああそれはいいね。あの子も高校卒業するまでには完全な女の子になれぱいいと思うなあ。きっと可愛いお嫁さんになるよ」
とVは言った。
「あの子、卵巣があるんでしょ?」
「あるけど今自分の意志で排卵機能を停止している。だからしばらく生理も来ない」
「そうなんだ?」
「あの子の睾丸もライブ保存されてるから完全な男の子にすることも可能」
「そんなものは捨ててしまおう」
「捨てるのはP大神のお許しが出ないから」
「へー」
「捨てちゃったら子供作れなくなるじゃん」
「赤ちゃん産むのに睾丸は要らないと思うけど」
2月4日(土).
佐藤仁(ひとし/めぐみ)はバイトしているファーストフード店の女子トイレでナプキンを交換しながら思った。
「ぼくって男の子に戻ったのに、生理はやはりあるの〜?」(*13)
むろん彼(彼女)はこのお店で女子制服を着て普通の女子としてバイトをしている。
(*13) 実は↓のようになってる。
完全に女性器が揃っている。陰核さえもあるので、彼は何と陰核と陰茎の両方を持っている(羨ましい)。陰茎自慰の感覚が遠かったのは陰茎では感じず、陰核の遠くからの刺激で感じていたため。
だから実は彼は陰嚢を付けられたために隠れてしまった陰核を直接刺激するともっと気持ち良くなれる。
男性器は壊死しないように神経を繋ぎ血液を流しているだけで、実は本体と生理的にはつながっていない。ほんとに単純にくっつけただけ。3-11歳の千里もこれに近い状態だが、もう少し精密に繋いでいる。これはかなりおざなりな繋ぎ方。
なお“魔女っ子千里ちゃん”はマナの骨格がかなり男性的だったので、このままでは妊娠した時に胎児を保持できないと考え、従前の状態から、→女→男→女、と3回性転換を掛けて骨格を女性的に変えた(結果的に身長が3-4cmも縮んだ)。いったん女から男に戻した時に大神の指示で男性器を切除させてもらったので、これは間違い無くマナの遺伝子を持つ男性器。あの時点でマナに付いていた男性器は、マナ本人の物とは思えなかった。
(多分適当な誰かさんから取ってきた男性器。だからクリスマスにペニスが消失し、お年玉で玉が落ちた人がいたはず。マナの元の男性器は8月に女性器に作り変えられてしまったので存在しなかった)
2月6日(月).
グランドピアノYamaha S6B が姫路の家に納入された。地下のピアノ室に運び込み、組み立てて翌々日には調律もしてもらった。代金は既に現金で払っている。
「ここはちゃんと響きがありますね」
と調律師さんが驚いていた。
「ええ。三重壁なんですよ。防音のための二重壁の内側に響きを作るための内壁がある」
「凄いですね」
この仕様は七瀬と貴子が話し合って決めたものである。2番目の壁には穴あきボードを使いグラスウールも入れているが、内壁は豊かな響きを作る江差ヒバである。
2月6日(月).
松戸のマンションに住む志水夫妻のところに不動産屋さんから“督促状”が届いた。2月分の家賃が引き落とせなかったので至急払うようにということである。
英世と照絵は話し合った。
「これきっと猛獅さんの口座から毎月引き落とされていたのが残高か無くなったんだよ」
「事務所に連絡したら代わりに払ってくれるかもしれないけど、これ以上好意にすがるのもよくない」
「自分達で家賃払えるアパートとかに移動しよう」
それで英世は不動産屋さんを訪問し、事情を話して退去したいということを伝えた。不動産屋さんは志水の支払い能力に応じたアパートを紹介してくれた。少し不便だが、松戸駅まで歩いて12分のマンション(事実上アパート)である。一応鉄骨造りなのでマンションに分類されているが見た目はアパート。ただ今のマンションから距離が近いので引越費用があまり掛からないと思われた。
それで志水一家は引越屋さんの安い、2月23日(木)にその新しい住まいに移動したのである。もちろん荷造りは自分たちで頑張ってして、楽器類は自分たちで移動した。それで引越屋さんの代金は7万円で済んだ。
3月に入ってしまうと多分この倍になっていた。
「でもここなら龍虎が通う予定になってた幼稚園を変わらなくて済む」
「うん。よかった。せっかく先生たちにも気に入ってもらえていたのに」
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女子中学生・セーラー服と移転中(6)