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■女子大生・冬景色(2)

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千里(ロビン)はイーグレットの白井さんから相談を受けた。
「旧美術館を建てた時に銀行から借りたローンの残高がずっとそのままになってるんですよ。銀行は督促とかはしないものの気になっていて」
「ええ」
 
何しろ担保だったはずの旧美術館の土地建物は既に人手に渡っている(姫路製鉄に返納されたあと売却され現在は姫路市の所有)。今は銀行幹部と白井さんの人間関係で問題にされてないが、銀行内部の監査とかで指摘されると結構やばい。
 
「村山さん、私の所有株式を買い取ってくれたりしません?流動性の低いものばかりで申し訳無いのですが」
「いいですよ」
 
それで千里は白井氏の所有株、姫路製鉄、島根鉄鋼、播磨鉄道、舞鶴交通、紀州交通などの株を4000万円で買い取り、それで白井さんは銀行にローンの残高を完済した。
 
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白井さんからは「ほぼ無価値だけどおまけ」と言われて京都の人形屋さん“白猫人形店”の株券ももらった。人形つながりで買ってあげていたものらしい。
「毎年トンボの涙程度の配当があります。配当金領収証を郵便局に引き換えに行く交通費がもったいない程度の」
「あはは」
 

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千里は久しぶりに姫路ハウジングさんのCM撮影をおこなった。
 
今回は暖家(だんけ)といって暖炉型のペチカがある家である。本編撮影は、いつもの神戸市内のモデルハウスでおこなったのだが、雪の景色が欲しいということで、北海道が天気予報で雪の日を狙って、神戸空港からJALで新千歳に飛び、札幌の大通公園で雪の中、千里がフルートを吹く情景の撮影をした。寒かった!
 
日帰りは大変だろうということで、翌日の飛行機で帰還した。当日は札幌のホテルに泊まったが、晩ご飯は蟹料理でこれをルームサービスにして、ホテルルームの中に作ったセットで食べる様子も撮影した。石狩鍋を食べるところ、ジンギスカンを食べるところも撮影した。おかげで夕食を3回食べたが、実際に食べたのは、ロビン、ゆり(深川)、ロゼ(留萌)の3人である。妹役が欲しいと言われたので、玲羅・貞美・由梨子(玖美子の妹:高1)を留萌から呼んでおいた。3人とも食べる役というので張り切って食べていた。
 
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この3人は全員神秘的な雰囲気を持っているので、朝日ハウジングの上川社長がCMに使いたいと言い、3人とも同意していた。それで貞美と由梨子もフルートの練習をすることになる。(貞美は篠笛は吹ける)
 

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この商品は国内幾つかの住宅販売会社の共同販売商品で、北海道の朝日ハウジング、富山の越中ハウジング、島根の御縁ハウジングでも販売する。それで、富山と出雲でも風景の撮影をしている。また冒頭振袖を着たドイツ人女性が「ダンケ・シェーン」と言っている。
 
しかし結果的に千里は4年ぶりに朝日ハウジングのCMに登場した。
 

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関西に戻ってから、神戸市内のモデルハウスで家の外で千里がフルートを吹くところ、暖炉の前、階段の途中でフルートを吹くところなどを撮影する。
 
この撮影に使ったフルートはさくらフルート工房さんの作品で真っ赤なフルートである。洋銀のフルートに赤い塗装をしたもので、千里はリンゴのシールを貼ったので“紅玉”(こうぎょく)と称する。
 
玲羅にも同じ物をあげて、千里と玲羅で赤いフルートのデュエットをするところを札幌では撮影している。(千里と玲羅のピアノ連弾も撮影している)。演奏した曲は山田耕筰の『ペチカ』と、チャイコフスキーの『くるみ割り人形』から『行進曲』、ヴィヴァルディ『四季』から『冬』第2楽章Largoである。
 
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「ねえ、ライラちゃんが変わったような気がするんだけど」
と玲羅は言った。ライラというのは玲羅のコピーで、玲羅の代わりに毎日村山家に帰宅している。玲羅本人は村山家には帰らずロゼ家で暮らしている(*3).
 
「ああ、消滅したからまた新たにコピーを取ったから」
とロゼは答えた。
 
「消滅?」
「ライラを玲羅からコピーして生成したのは2008年1月だったからね。前にも言ったけど人間のコピーってふつう寿命は1年くらいなんだよ。2年近く持ったから、長持ちした部類だと思う」
「消えたらまたコピーするんだ?」
「何か問題ある?」
「まるで消耗品だね」
「人間なんて消耗品だよ。会社なんかもどんどん定年退職するからどんどん新人を採用する。総理大臣もどんどん入れ替わる」
「ああ。鳩山さんはあれ1年もたないよね」
「私だってロゼの2人目だし」
 
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「うん。代替わりしたのは分かった。寿命で死んだのではないと思うけど」
「先代のロゼは殉職したから。代わりに私が生成された。まああまり気にすることは無い」
「そうする」
 
P大神とA大神は千里の妹である玲羅のコピーが消滅したことから、千里のコピーが消滅しないのはやはり千里だけの特殊事情なのだろうと考えた。
 

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(*3) 玲羅とライラの生活
 
玲羅:朝ロゼ家から学校に行く。夕方ロゼ家に帰宅。
ライラ:夕方村山家に帰宅。父に夕飯を食べさせる、朝通学鞄を持って村山家を出るが昼間はロゼ家に滞在。夕方神社でバイト。
 
神社のバイトは土日は玲羅本人がしているが、平日夕方は玲羅は部活をしているのでライラがバイトを代行している。夕飯はロゼが作ってライラの帰宅後ロゼが村山家の台所に転送する。おかげで武矢はカップ麺生活から脱せた。朝はライラがお魚を焼いてあげている。これがきっと再来年(2011年)3月に玲羅が高校を出るまでは続く。なお母は朝は何も食べずに出掛け夕食はコンビニのお弁当を食べている。母は休日以外料理を作らない。
 

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姫路の千里家には、この4月から楢橋美穂の一家と花田大が住んでいた。しかし美穂の父は転勤族で、ここまで静岡→仙台→久留米→姫路と転勤しており、また転勤になるかもと言っていた。それが本当に転勤になった。今度は室蘭である。
 
大と美穂の2人だけになってしまうので、千里は姫路邸にA大神の眷属ミヨ子さん(甲斐路代)に入ってもらうことにした。調理係にはきーちゃんの眷属で杏代(ももよ)という人に入ってもらう。
 

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雅が物凄い押し寄せた注文を本当に全部さばき、注文された全員の振袖を製作したというのは全国紙にも報道され、感嘆と称賛の嵐が起きていた。
 
大手新聞の記事
 
今年の春、京都の呉服店“雅”(みやび)に例年の20倍もの振袖予約が殺到した。そんな大量の予約はさばけないだろう。早めに全部キャンセルして謝罪すべきではという声もあったが、雅は50億円ほどの投資で工場を増設、機械も増設、スタッフも大増員、材料となる絹織物も兵庫県内の関連企業に増産してもらい、11月中旬までに全ての注文振袖を完成させて注文者に通知した。業界や京都市民の間にも「すごい」、「よくやった」という声が多数あがっている。雅の小川社長は「一生の記念になる成人式の振袖なのに、頼んでいたものが当日無いなどということは絶対あってはならないことです」と述べている。
 
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一社だけこういう記事を書いた。
 
この「振袖作戦」のために雅が投資した資金は工場増設、スタッフ増員などで50億円ほどに及び、実際の振袖売上額の倍以上である。また既製品の振袖を多数他社から買い付けているが売値より高い値段で買っている。しかし雅の小川社長は言う。「採算は度外視です。ご予約を受けた以上はちゃんとご用意するのが商店としての義務ですよ」と。
 
この新聞社は、以前誤って異常に安い価格で大量のパソコン注文を受けてしまい、それを全部きちんとその価格で販売してから倒産した会社があったことにも触れており、販売業のモラルに関わる問題だとして評価していた。ただ一定数でオーダーストップできなかったことは批判していた。また雅側もこんな大量の予約が来ることは想定外だったためオーダーストップの仕組みが無かったことは手落ちだと認めていることも報じていた。
 
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しかし多くの新聞はただ全注文をこなしたことを褒めていた。
 
ネットでは「空前の利益が出たろうな」「税務署が手ぐすね引いてる」などといった書き込みも見られた。投資額のほうが売上より大きい問題に触れた人もあったが
「工場増設とかプリンタの購入は費用とは認められないからな」
「費用でなく資産として計上する必要があるね」
「実際のお金の出入りは別として帳簿上は物凄い利益になったはず」
と書かれていた。
 
むろんスタッフの労賃・派遣料、スタッフ募集の広告料、反物の購入代金や輸入のための飛行機チャーター料は費用として認められる。
 

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“50億”という数値はよく新聞や雑誌の報道に出てくるが、これは山崎工房、姫路ネオラボの土地代・建築費を各々10億円、東山の拡張費を3億と見ている。実際には新工房の建築費と東山の拡張費は全部合わせて4000万円程度で新工房の土地代が両者で2億円程度である。
 
実際の帳簿上の投資額は25億円程度である。寮にするマンション4つ(山科・山崎・姫路・伏見)の買い上げが15億円、給料・派遣料の補助が5億円程度、工房関連費2.5億円。後は細々とした費用。千里が紫微に払った裏金は千里と紫微に関わるもので雅は無関係。
 

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なお雅はこれまで小さな税理士事務所に帳簿を見てもらっていたが、そこがギブアップし、友禅組合の紹介で大手の監査法人に見てもらうことにした。でもそこから「この会社の経理はしっかりしている」と褒められた。
 
またコンピューターシステム(経理・販売・在庫・人事・給与)も完全に更新した。年商が昨年度の30倍、従業員が倍(パート等を入れると5倍)になっているから必然だった。
 
「そういや昔四国の衣料品販売会社が急成長した時はコンピューターの担当者が2人も過労死しましたよ」
とメーカーの課長さん。
「不吉なこと言わないでください」
と雅のシステム部長。
 
この話を聞いて小川社長は彼に一週間の特別休暇をあげた。(社長もかなりの過労だと思う)
 
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