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■クロ子義経(19)

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同じ頃、中山道を逆向きに歩いている“女性ふたり連れ”もあった。
 
13歳になった“仮名・壱”と18歳の“仮名・蜜”である。
 
出演しているのはオーディション選出の女子中学生、河田瑛子と榊原柚花である。
 
つまり・・・女同士である!
 
『追分宿で今夜は泊まろう』
『追分宿からは北国街道に行くんですね』
『うん。能登の時忠殿の屋敷まではまだ半月くらい掛かるけど、“壱”だいじょうぶ?』
『平気平気。私、まだ若いもん。“蜜”と一緒にいられるだけで私幸せ』
 
『でも女同士でひとつの布団に寝てるの、他の人に見られたら気味悪がられるかも』
『“蜜”はもう男に戻れないのでは?』
『自信無い。もう6年も女を装っていたから』
『女らしくなれるように玉を取っちゃう?』
『やだ』
 
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『竿(さお)も使ってないくせに』
『使いたい』
『何かあったらいけないから、時忠様のお屋敷に着くまではお預けね』
 
『やりたーい』
『また触ってあげるから』
『触られるだけでできないのもつらい』
『じゃ触らない方がいい?』
『触って触って』
 
女同士いちゃいちゃしながら歩いているので、ふたりを追い越して行く人たちが首をひねることもあった。
 

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「小さい頃の2人は男の子同士にやらせて、少し大きくなった所は女の子同士にやらせたんだ?」
とテレビを見ながら政子が言っている。
 
「ドラマがきっかけで恋が生まれたりすると面倒だからさ」
と私は言った。
 
「私はドラマをきっかけに恋が芽生えたけど」
と政子。
 
「ドラマがきっかけではない気もするけど」
「うーん、最初のきっかけは何だったっけ?」
 
と政子は自分と亮平の馴れそめを思い出せないようである。
 

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《追分宿》というテロップが流れる。
 
深夜、宿に忍び込む男たちがある。
 
怪しげな雰囲気に気付いて客のひとりが悲鳴をあげると、その客は男たちに刺し殺されてしまった。
 
しかしその騒動で客たちはみんな目を覚ます。
 
『みんな金目の物は全部出せ』
などと男たちが言っている。客たちが震えながら旅費にと持っていた布や絹などを出す。
 
男たちがやがて浄瑠璃姫(原町カペラ)の前に来た。
『金目のものを出せ』
 
それに対して浄瑠璃姫は荷物の中から1つの鼓を出した。
『それをくれるのか?』
と男たちが言うが、浄瑠璃姫は何も言わずにポン!と鼓を打った。
 

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すると突然窓を開けて飛び込んで来た男がいる。
 
佐藤忠信(今井葉月)である。
 
『何だ貴様?』
と男たちが言うが、忠信は自分に向かって来る男を2人、鮮やかに斬った。
 
『わっ、こいつ強いぞ』
と男たちがひるむ。
 
すると男たちの中のリーダーっぽい男が忠信の前に出た。
 
刀を抜いて構える。
 
しかし忠信はその男を全く問題にもせずに切り捨てた。
 
『わっ、親分がやられた!』
と言って、盗賊たちは盗ったものも放置して逃げて行った。
 
忠信はそれを見ると、さっと窓の外に飛び出していった。
 
(ちなみにここは2階である)
 

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提灯を持って宿の者があがってきた。
 
『何の騒ぎです?』
『盗賊がきたんです』
『え〜〜!?』
『客がひとり斬られた。その人です』
『わあ、それは気の毒なことを』
 
『でもお侍様が盗賊たちを切り倒してくれました』
『そこに倒れている2人とこちらに倒れている男が盗賊です』
 
『おお、そのお侍様は?』
『どこかに行ってしまわれました』
 
浄瑠璃姫(原町カペラ)は何事もなかったかのように、その鼓を荷物の中にしまっていた。
 
『なんかすごいねー』
『ボクが対処しなきゃいけないかな?と思ったら、あのまるで狐みたいな身のこなしの人が全部片付けちゃった』
と“壱”と“蜜”は話し合っていた。
 

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《夏・八戸・高館》(*21)
というテロップが流れる。
 
『丹波、今日は暑いよ。氷室の氷取ってきてくれない?』
と小袖姿のアクアが言うが返事が無い。
 
『丹波?』
 
そこに“長門の君”(海野五郎浪安)がやってくる。
『丹波の君(鷲尾三郎義久)は、御台所殿からの手紙を受け取りに南部様のお屋敷まで行きましたぞ』
 
『へー。今度は何の用事かね〜』
『あの御方もあれこれ画策しているようですな』
と“伊賀の君”千光坊七郎も来て言う。
 
『常陸の君(常陸坊海尊)は今度はいつ戻るんだろう』
『あいつは風来坊だからなあ』
 
『氷室の氷は私が取って来ましょう』
と言って“長門の君”(海野五郎:演=坂田由里)が馬に乗って出て行った。
 
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(*21)伝説によれば、平泉から逃れた義経たちは海路で種差海岸まで行き、最初館越に居たが、1年ほど後に高館(現在の八戸航空基地の近く)に移動したという。
 
八戸近辺は奥州藤原氏が倒れた後は南部氏の支配地となった。南部光行は父・加賀美遠光(武田信義の弟か甥)とともに、頼朝の奥州攻撃に参加し、その功績として南部地区を安堵されたと言われる。光行の嫡男・実光は北条時頼の側近として仕えた。要するにここは北条の息の掛かった地域である。
 
文治6(1190)年3月には、義経が生きていて、陸奥の国で蜂起するという噂があり、鎌倉が焦るという事件があったが、ガセであったということになった。しかしもしかしたらガセということにしたのかも知れない。
 
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義経が本当に生きていたとしても、奥州藤原が倒れた今、鎌倉に対抗することは不可能だし、もし義経が生きていたら、それを北条も知っていて黙殺していたケースしか考えられない。
 

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そこに密偵の香殿(斎藤恵梨香)が戻って来る。
 
『おお、お疲れ』
『こちらが私が調べました、筑紫(九州)方面の情勢です』
と言って巻物を提出する。
『ありがとう。しばらく休んでいてくれ』
『はい』
 
小袖姿のアクアは巻物を解いて読む。
『ほほお、久留目(現在の久留米)に先帝を祭る社を作るのか』
『按察使局伊勢がその地に赴いたのですよ』
『ああ。片岡が掬い上げた女か』
 
(この物語では安徳天皇は二位尼が抱いて入水したという立場を取るが、先帝を抱いて入水したのは按察使局伊勢という説もある。彼女が久留米水天宮の祖となった)
 
『筑紫の地は鎌倉の目も届きにくいですし、やりやすいのでしょう』
『かもね〜』
『松浦直殿が、予州殿が参られるのなら歓迎とおっしゃっていました』
『それはありがたい。しかしやめておこう』
と言って近くに居る千光坊(スキ也)を見るが彼も頷く。
 
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『今は北条殿、というより御台所殿の気まぐれでここに居られるから。私が西国に移動したらまた揉め事の種になって多くの人が死ぬ』
 
『随分死にましたなあ』
と千光坊も感慨深げに言った。
 

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場面は変わって、北条政子(高崎ひろか)が密偵から渡された巻物を読んでいる。
 
『なるほど。そういう手があるか。“静”殿もほんとにうまい手を考える』
とつぶやくと、畠山重忠を呼んだ。
 
『さすが御台所様、それはうまい手ですね。早速そのように進めましょう』
と畠山は言った。
 
『ところで大姫様の四十九日ですが(*22)』
『あれも若いのに親より先に逝ってしまった。盛大に弔ってやってくれ』
『はい。しっかり準備を進めます』
と言って畠山は下がった。
 
政子はつぶやいた。
『私だって逆賊といわれながら三郎殿(頼朝)に恋い焦がれて、結果的に激動の世の中を生きて来た。一幡のいちずな気持ちも分かるよ。元気にしてるかな?』
 
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そんなことを思いながら、政子は廊下に出ると遙か北の空を見上げた。
 

(*22)正史では、大姫が亡くなったのはこれより7年後、建久8(1197)年7月14日である。そして頼朝自身が建久10(1199)年1月13日にわずか53歳で亡くなり、頼朝は天皇の外祖父になることは叶わなかった。
 
頼朝が亡くなった後は、征夷大将軍はほぼ名前だけの存在になり、頼朝の血筋も早々に絶えて(むしろ絶やしたというべき)、北条家による支配体制が確立していく。北条家は平家の一族なので、源平の合戦の最終覇者は実は平家だったことになる。
 

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場面は再び八戸の高館に移る。
 
しばらくアクアが小袖姿のまま、ひとりで西国の情勢の調査書を読んでいたら足音がする。
 
『丹波?』
と声を出してアクアが振り向こうとしたら、いきなり後ろから両目に手を当てられる。
 
『だぁ〜れだ?』
 
アクアは驚いて振り返りながら言った。
『浄瑠璃?』
 
『牛若様、遭いたかったぁ』
と言って原町カペラがアクアに抱きつく。
 
(ネットでは「こら離れろ!」というツイートが多数)
 
『良く来たなぁ。それにここがよく分かったね』
『途中で金売吉次様に会って、場所を教えてもらいましたから』
 
『吉次!?あいつ死んだのでは?』
『生きてましたよ。また金(きん)売りの商売に戻ったとおっしゃってました』
 
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金売吉次こと堀影光は文治2年9月20日、ちょうど静が鎌倉から京都に戻る途中の頃に京都で頼朝の御家人・糟屋有季に捕縛され、拷問に掛けられて義経の居場所を吐かせられた上で斬られたというのが通説ではあるものの、生存説もあり、実際問題としてよく分かっていない。
 
『ところで私を後ろから襲うのは危険だぞ。危うく刺す所だった』
と言ってアクアは短刀を鞘にしまう。
 
『きゃっ!』
と原町カペラが悲鳴をあげた。
 

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浄瑠璃姫の侍女・薬師殿(桜野みちる)がそんな2人の様子を微笑んで眺めていると、千光坊がお茶を出してくれので
『わ、すみません。殿方にお茶を出して頂いて』
と恐縮して受け取る。
 
『なに、ここは主が主ですし、男とか女とか全く気にも留めませんから』
と千光坊は言っている。
 
 
『ところでどなたでしたっけ?』
と千光坊。
 
『私の最初の妻なのだよ』
と義経(アクア)は言った。
 
『ほほお』
 
(この物語では鬼一法眼および皆鶴姫は存在しない立場を取っているので、浄瑠璃姫が義経の最初の女である)
 
『しかし女手があると助かる。我々ではなかなか子供の世話が出来なくて』
と千光坊が言うので、浄瑠璃姫が見ると、向こうの間に子供が2人寝ている。
 
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『それはどなたの子供?』
『実は浪の戸の子供なんだよ。衣川館が襲撃された日、たまたまこの子たちをお参りに連れて行っていた。あの時、浪の戸も伴っていれば死なせずに済んだのだが』
と義経は悔やんでいる。
 

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『小さい方の子はまだお乳が必要だよね?どうしてるの?』
『もらい乳をしている』
『ね、ね、私が赤ちゃん産めば、お乳出してあげられるよ』
と浄瑠璃姫は義経に売り込む。
 
『それ10月10日(とつき・とおか)かかる』
『早速今夜にも製造しようよ』
『その件はまたあらためて話し合うということで』
 
『ちんちんまだ付いてるよね?』
『付いてるけど』
『じゃ製造できるね。牛若様ってほとんど女の人にしか見えないから、付いているのかどうか不安になっちゃう』
『ボク、髭も生えないんだよね〜』
『いっそ女人になられます?』
『まあここでは女人の振りして暮らしているのだけどね』
『九郎様、小袖姿がよく似合いますよ。髪も振り分け髪の方が可愛くていいし』
 
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『姫様、ここでは大和の君ということになっていますから、牛若とか九郎とか義経とか予州とかの名前は使わないで下さい』
と千光坊が注意するので浄瑠璃姫は頷く。
 
『取り敢えず、私がこの子たちの母親になってもいい?』
『うーん。まあいいか。今の所ボクには誰も妻はいないし』
と言ってアクアは微笑んだ
 
丹波の君(鷲尾三郎)が戻ってきて、大和の君(義経)に北条政子からの密書を渡す。そこに長門の君(海野五郎)も戻ってきて、氷室の氷を砕いて飲み物を作ることになる。奥で休んでいた香殿も呼ばれて出てくる。
 
『冷たくて美味しい!』
と浄瑠璃姫が歓声をあげ、それを見て微笑むアクアのアップの上に《完》の文字が表示された。
 
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