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■クロ子義経(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2019-04-30
 
ヒバリが語る。
 
『義経の軍は、安徳天皇や三種の神器の奪還はできなかったものの、屋島から平家を追い出し、これで平家は瀬戸内海東側の拠点を失うことになります。屋島はこの日到着した伊予水軍の数十艘に加えて数日後に掘景光が率いてきた源氏本隊(*10)と熊野水軍の連合軍によって完全に制圧されました』
 
『一方、河野通信を討ちに行っていた田口成直(*11)は河野の家人150人を殺害したものの、まんまと河野本人には逃げられてしまいました。この時、彼の本陣に、義経の部下・伊勢三郎義盛(演:南田容子)が武器を持たず白装束を着て訪れました。交渉をしたいという意味です』
 
『伊勢三郎は成直に、彼の伯父たちが皆討ち死にし、父親の成良も捕縛されて息子の身を案じていると言います。それで成直は驚いたものの、屋島が源氏に奪取された報せは聞いていたので、伊勢三郎の話を信じて投降してしまったのです。ちなみに伊勢三郎は元山賊で、口も上手く、成直はすっかり欺されてしまいました。義経の部下にはこういう一癖も二癖もある者が多いです。一方父の田口成良は捕縛などされておらず、屋島を奪われたので彦島を目指して移動中でした。他の平家の残党も彦島周辺に集結していきます』
 
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(*10)この本隊は梶原景時が率いてきたという説が流布しており、また逆櫓論争をして、これが景時が義経を恨むようになったきっかけのひとつともされるが、実際には当時景時は九州に行っている範頼の軍にいたらしい。吾妻鏡以降、何が何でも梶原景時を悪役にしたいという空気が強い。“逆櫓”については後述。
 
(*11)田口成直ではなく、兄の田口教能(別名教良)であったという説もある。教能・成直兄弟の父は田口成良で、この田口成良の別名が阿波重能である。
 

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ヒバリは話を少し戻した。
 
『ところで時の流れを追うと、木曽義仲が金環食の中で平家に大敗した水島の戦いが1183年閏10月、義経が鵯越(ひよどりごえ)からの奇襲で一ノ谷にて平家を破ったのが1184年2月、屋島の戦いに勝利して平家の東瀬戸の拠点を奪ったのが1185年2月なのですが、ずっと話を戻して、1183年4月、まだ木曽義仲と源頼朝との仲が決裂する前のこと、頼朝は義仲が暴走しないように、人質を出すよう要求し、義仲の息子で当時11歳の義高が源頼朝の所に送られることになりました』
 
1180.04.27 以仁王の宣旨
1180.10.20 富士川の戦いで頼朝勝利
1183.04___ 義高と大姫の結婚
____.05.11 倶利伽羅峠の戦いで義仲勝利
____.07.28 木曽義仲が入京。平家は3日前に脱出
__.閏10.01 水島の戦いで義仲大敗
 
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『誰と結婚させるですって?』
と北条政子(高崎ひろか)が詰め寄るように源頼朝(秋風コスモス)に言った。
 
『だから大姫と結婚させる』
『ダメです。大姫は殿が将来天下を取った時に、帝(みかど)に差し上げるために大事に育ててきています。それをあんな田舎武者の息子などと結婚させられますか?』
 
と政子が厳しい顔で言うので、頼朝もたじたじとなるが、
『義仲とそう約束したんだ』
『何もうちの娘と結婚させなくても、梶原景時あたりとでも結婚させたらいいじゃないですか?』
『景時は男だけど』
『じゃ景時の娘と』
『困ったことにあいつには娘が居ない』
『じゃ息子の景季あたりに女の服を着せて』
『無茶言うな』
『うちの大姫と結婚させるというほうが遙かに無茶です』
 
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ヒバリが登場して語る。
 
『北条政子は猛反対したものの、頼朝は大姫との結婚を押し切ってしまいました』
 
ヒバリの背景に頼朝の大姫(長女の意味)である一幡(いちまん,6歳)と、義仲の長男・義高(11歳)が嬉しそうな顔で並んで結婚式を挙げている。現代の年齢の言い方では一幡が5歳、義高が10歳で、半ばおままごとに近い結婚である。むろんふたりはセックスなどしない!大姫に初潮が来るまではお預けである。
 
一幡を演じているのは実際には小学1年生で劇団桃色鉛筆に所属している水原裕樹くん、義高を演じているのは実際には小学6年生で信濃町ガールズの上田雅水くんである。
 
つまり・・・両方とも男の子である!
 
夫婦役をさせるので、万が一にも本当に恋愛感情が生まれたりしないように男の子同士でキャスティングしたし、またわざと違う所属の子のペアにしたのだが、それでも恋愛感情が生まれたりしたら知らない!
 
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ヒバリの語りは続く。
 
『ところが水島の戦いで義仲が敗退して朝廷の期待を裏切ると、義仲と頼朝の仲も決裂。義経・範頼に命じて義仲を討たせます。それで木曽義仲は1184年1月20日粟津の戦いで戦死します。一幡と義高の結婚から1年も経っていませんでした』
 
『頼朝としては義高は人質として不要になりましたし、生かしておけば将来自分を親の敵(かたき)として狙う可能性もあります。そこで頼朝は義高を殺害するよう部下に命じたのです』
 
『大変です。頼朝様が義高様を殺そうとしています』
と青くなった侍女の祐殿が走り込んで来て言った。1184年4月21日というテロップが流れている。
 
『何ですって!?』
と一幡(7歳・演:水原裕樹)が青ざめて言う。
 
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(侍女・祐殿を演じているのはオーディション選出の谷畑博子さん。実は男性なのだが、女装すると女にしか見えないので、本人の希望に従い、女性役をしてもらった。女声の出し方も上手い。男性器は“まだついてる”し、おっぱいも無いらしい。普段は自動車販売店に(男性用)スーツ姿で務めており“猫をかぶっている”。本名は博隆ということだったが、女役をするので女性名のクレジットにした)
 
義高(12歳・演:上田雅水)は静かに言った。
 
『それは覚悟していた。私も征東大将軍の息子だ。潔く討たれようぞ』
 
『何と立派なお覚悟でしょう!世の人もきっと褒め称えますぞ。私も若と一緒に冥土への旅、ご同行つかまつります』
 
と側近の海野幸氏(うんの・ゆきうじ,13歳)も言う。彼は義仲の家来の息子で、義高が一幡の所に送り込まれてきた時、義高付きの小姓として同行して来たものである。彼の父・海野幸広は水島の戦いで戦死している。
 
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この海野幸氏を演じているのは上田雅水の兄でやはり信濃町ガールズに所属する上田信貴である。
 
『そうか。すまんな。一緒に立派な最期を遂げようぞ』
と義高は言っている。
 
『ちょっと、ふたりとも何言っているの?そんな簡単に死んじゃだめ!』
と一幡が泣き叫ぶように言います。
 

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「この子、小さいのに凄い演技力だね。きっと大人になったら大女優になるよ」
とテレビを見ながら政子が言っている。
 
「大女優って、この子男の子だけど」
「え〜〜〜〜!?」
と驚いたように言ってから政子は小声で
 
「すごーい。可愛い男の娘だね。やはり女の子になりたがってるの?」
などと訊く。
 
「役の上で女の子役をしているだけで、別に女の子になりたい訳ではないよ」
「え〜?もったいない。こんな可愛いのに。ちょっと手術受けさせて女の子にしてあげようよ」
「それ迷惑だから」
 
迷惑というだけでいいのかな??
 

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『しかしみっともないことはできないぞ』
と義高は言う。
 
『みっともなくても生きていればきっといいこともある。逃げるのよ!』
と一幡。
 
『逃げてもすぐ見つかりますよ』
と海野。
 
『そうだ!女の子の服を着たらきっと気付かれないよ』
と一幡。
『女の服!?そんな恥ずかしい格好ができるか』
と義高。
 
『でも生き残るためよ。そうだ。幸氏さん、身代わりしてよ。幸氏さん、割と太郎(義高)と似た顔立ちだし。確か親戚になるんだよね?』
 
『従兄弟なんだけど、確かに似た顔立ちと言われていた。ただ私は鬚を伸ばしているが、義高殿はまだ鬚が生えていない』
と海野。
 
『そのお鬚、悪いけど剃ったりできません?』
と一幡は必死である。
 
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『それで幸氏さんが、ここで私と一緒におしゃべりしていたら、まだ太郎がいると思われて、いくら何でも私の目の前では殺さないだろうから、きっと私が寝るまで待つと思うの。その間に本物の太郎は逃げられるわ』
 
義高と海野が顔を見合わせます。
 
『ここはいったん逃げてもいいかも知れない』
『そうしようか?』
 
(ちなみにここにいる4人は全員戸籍上は男子である)
 
ヒバリの語り。
 
『それで侍女の祐殿が、女童(めのわらわ)用の服を持って来て、義高はそれに着換えて髪も元結を切って女のように髪上げをして大垂髪に変更することにしました。そして、幸氏が鬚(ひげ)を剃って義高の服を着、一幡と一緒の御帳の中で双六(バックギャモンのこと)をしていることになりました。一方、義高は祐殿ほか数名が手引きをして女装で館を脱出するのです』
 
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深夜亥の刻(22時頃)、頼朝の命を受けた数人の武士が、一幡と義高の寝所に密かに忍び寄ります。ところが一幡と義高の声がします。どうもふたりは双六をしているようです。
 
『どうしますか?』
『姫君が寝られるのを待とう。さすがに姫君の前でやるわけにはいくまい』
『姫君が寝られてから、そっと若君を連れ出し、討たせていただく』
 
それで武士たちはふたりが寝るまで3時間以上待つことになった。ところが武士たちが待ちくたびれて来た丑の刻(2時)近く。一幡が言った。
 
『義高様はもう安全な所まで逃げられたかしら?』
『もうかなり時間が経ちます。きっともう酒匂川(さかわがわ)を越えられた頃でしょう』
と、武士達が義高だと思っていた相手。
 
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武士たちの顔色が変わる。
 
『御免』
と言って部屋の中に入っていく。
 
『何?あなたたちは?』
と一幡が言うが、武士たちは帳をめくり、中を見た。一幡と双六盤を挟んで座っているのは鬚(ひげ)の生えた武者である。義高にはまだ鬚が無い。
 
『貴様、まさか海野幸氏か?』
『何を言っている?私は源義高であるが?』
『ふざけるな!義高殿には鬚など無いわ。義高殿はどこに行った?』
『何の話だ?』
 
その時、別の武士が言った。
 
『さっき、おふたりは酒匂川とおっしゃっていました。小田原方面に逃れられたのでは?』
 
『すぐ追うぞ』
 
それで武士たちは走り出して行った。
 

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明智ヒバリが登場して語る。
 
『実際には祐殿および数名の侍女と一緒に逃げ出した義高は小田原方面ではなく逆の武蔵国方面に逃げていたのです。2日掛けても義高が見つからないので、ひょっとしてと思い、頼朝は関東一円に義高捜索の触れをします。すると5日後の4月26日、頼朝の家臣で藤内光澄という者が、湯島郷(後の江戸)の廃寺に義高たちが隠れている所を発見。一緒にいた祐殿もろとも、殺害したのでした』
 
背景に、祐殿および2人の侍女が、女装の義高を守ろうとして一緒に斬られるシーンが映る。そして女のような髪にした義高の首が鎌倉にもたらされた。
 
ヒバリは語る。
 
『義高が殺されたという報せに一幡はショックを受け、寝込んでしまいます。すると北条政子は頼朝にありったけの非難を浴びせます』
 
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背景には北条政子(高崎ひろか)が源頼朝(秋風コスモス)に詰めより頼朝がたじたじとなっている場面が映る。
 
『政子は非難します。こうするつもりなら最初から大姫と結婚させるべきではなかったし、結婚させた以上、自分の親族として扱うべきだった。もうこんな先見の明もなく、薄情で肝っ玉の小さい男とは離婚だ。北条の支援が無かったら、あんたなんか平氏の残党にやられて死んでしまうんだから、などと言われ、困った頼朝は、義高を討った藤内光澄以下を処刑し晒し首にしてしまったのです』
 

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「え〜〜!?それって酷くない?」
とテレビを見ていた政子が言う。
 
「酷いよね。手柄を立てた部下を死刑にしちゃうんだから。でも頼朝ってどうもそういうふらふらした所がある性格なんだよ。義経の方が肝が据わっていて、よほど大将の器だと思う。まあだから、北条にしても梶原にしても、義経が恐かったんだろうけどね」
と私は言う。
 
「なるほどー」
と言ってから、政子は首を傾げるようにして言った。
 
「ねぇ、さっきヒバリちゃんの背景に流れていた、義高や祐殿が殺されるシーンだけどさ。あれ演じてたの、本当に上田雅水ちゃんだった?女装してお化粧しているからよく分からなかったけど、お兄さんの上田信貴ちゃんにも見えたんだけど」
 
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「ふっふっふ」
 

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■クロ子義経(9)

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