[携帯Top] [文字サイズ]
■夏の日の想い出・いろはに金平糖(27)
[*
前p 0
目次 8
時間索引 #
次p]
2月16日(水).
§§ミュージック今年3人目の新人歌手・薬王みなみが
『音楽室の想い出/ブーゲンビリアの伝説』
でCDデビューした。
みなみに関しては、ひじょうに歌唱力が高いことから、全国のFM局のナビゲーターさんたちが事前に音源を流してくれていた。それで予約だけで10万枚を越えていた。CDの収録曲は下記である(↓+off vocal版)。
『音楽室の想い出』蜂矢仁美作詞・鹿賀カノン作曲
『ブーゲンビリアの伝説』蜂矢仁美作詞・本田慈媛作曲
当日は熊谷!の§§ミュージック分室内のスタジオからネット記者会見を行った。
出席したのは、薬王みなみ本人、制作責任者の花咲ロンド、タイトル曲作曲者の鹿賀カノンの代理・波斯魔琴(=清原空帆:青葉の高校の同級生)の3人だけで、レコード会社担当者は来ていない(実は決まっていない)。
今年デビューした3人の記者会見の出席者は下記である。
1/05 美崎ジョナ、川崎ゆりこ、TKR山口、作曲者 Ozma Dreamの2人
歌唱伴奏:ナイスエンジェルス
1/26 立山煌、山下ルンバ、TKR山口、作曲者・平野鉄郎&峰京子
歌唱伴奏:原町カペラ(KB)
2/16 薬王みなみ、花咲ロンド、作曲者代理・波斯魔琴
歌唱伴奏:本人のキーボード弾き語り
美崎ジョナの感情に配慮して、第二・第三のデビュー歌手の出席者をランクダウンしている。
しかし本人の弾き語りは、かえって彼女の音楽力をアピールする結果ともなった。みなみが歌っていると記者たちの間にざわめきが起きる。zoomのメッセージが飛び交う。
「この子、物凄く上手いじゃん」
「先日○○君と『この子はアクア、常滑真音の次に上手い』という話をしてたんだよ」
「確かにそのくらい上手い。中2でこの歌なら将来的にはアクアを抜くかも」
などといった会話が交わされていた。
歌が終わってから質疑がある。
「花咲ロンドさんのプロデュースというのは初めてですかね?」
「いいえ。実はデビュー未満の子がCM曲とかキャンペーン曲とかの制作をする時に、かなり指導をしていて、プロデュースとしてクレジットされています。でも確かに正式デビューした子のプロデュースは初めてかも知れないですね(*24). でもこの子、凄く上手いですよね。だから私はあまり指導すること無かったんですよ」
とロンドが笑顔で言うと、記者たちは頷いている。
(*24)ロンド本人はきれいに忘れているが、昨年出してヒットした原町カペラのアルバムと録り直しシングルはロンドのプロデュース!!それ以前に姫路スピカのシングルのプロデュースをしたこともある。
「作曲者代理さんは読み方は“ぺるしゃ・まきん”でよろしかったでしょうか」
と若い記者が訊く。どうもネットで検索して読み方を調べたようである。
「はい、その読み方で正しいです。これ読める人ほとんどいません。この字(“波斯”)を書いて“ペルシャ”と読むって知らない人多いし。たいていハシマコトとか読まれちゃうんですよ」
「作曲者さんとのご関係は?」
「鹿賀カノンは、松本花子の一部です。私は松本花子のとりまとめ役のひとりなので、お使いということで出て来ました。ちなみに、薬王みなみの音源制作の時も、私が代表を務めていますバンド、ホロウズ(Hollows)が伴奏しました。うちのバンドはこれまで5枚CDを出してますけど、1000枚以上売れたものが無いんですけどね」
と魔琴がおどけたように言うと、記者たちの間で笑いが起きる。
「実はカップリング曲の『ブーゲンビリアの伝説』は、うちのバンドで2年前に出した曲なんですけど、100枚も売れませんでした。でもコスモス社長がたまたま耳にして、カバーしていい?と言うので提供しました。もっとも歌詞は中学生が歌うには問題があったので、新たに蜂矢(はちや)さんに書き下ろしてもらいましたが。元々の歌詞は私が書いたものですが、文法が間違ってる、と大宮万葉ちゃんに指摘されました」
と言うので、また笑いが生じているが、結果的に大宮万葉がこの曲に関わっていることを示唆することになり、あちこちで記者が頷いていた。
この曲はひじょうに出来がいいのである。
(追加プレス分から両A面に変更された)
その他、薬王みなみの誕生日や血液型なども尋ねられるのでこれは本人が答えていた。みなみは秋頃から、あけぼのテレビには多数出演しているので、記者会見の席でも全く物怖じしていない。堂々とした記者会見だった。
記者会見はTKRのサイト上でも公開されていたが、かなりの接続数があった(TKRの親会社トリプルスターの回線をフルに利用できるので、実はあけぼのテレビよりも混雑に耐えられる)。
このCDはダウンロードを含めて初日に15万枚売れた。これは既に昨年の七尾ロマンのデビュー曲の累計売上枚数を上回っている。むろんデイリー・ランキングの1位を取った。この日はホワイトキャッツもCDを出していたが、隙間を狙ったつもりが1位を取れなかった(ホワイトキャッツは本当にいつも間が悪い)。
2月22日(火・さだん(定)).
江戸川区に建設中であった、落合茜(町田朱美)の家が竣工し、多忙な茜に代わって、女子寮に同居中の姉・翠が受け取りに行った。もっともこの日は受け取っただけで、ここで生活するには、最低限、寝具や衣類、調理器具などを搬入する必要がある。翠は妹から渡された、何か砂の入っている袋を言われた通り、家の中心になる1階LDKの真ん中に置いて(女子寮に)帰ってきた。
実家に連絡して話し合った結果、3月1日の翠の卒業式の後で、引越作業はしようということになった。
2月22日(火).
この日は2/22 ニャーニャーニャーで「猫の日」なので、あけぼのテレビでは夕方19:00から20:00まで『舞音の猫ちゃんパーティー』という特集を生放送(定額放送)した。司会は“仮免キャスター”と自称する松島ふうかが務めた。
最初に出演者全員が猫の着ぐるみを着て並んでいる所で、鈴原さくらのピアノ伴奏で、常滑真音と薬王みなみが、『CATS』の『Memory』をデュエットした。
この曲は下がG3、上がC6と、2オクターブ半の音域がある難曲だが、2人ともその最高音のC6をきれいに出していたので「すげー」という視聴者の声が相次いだ。
司会の松島ふうかのトークが入った後でvend'orのピアノ&管楽器合奏でルロイ・アンダーソンの『The Waltzing Cat』を演奏する。ソミファソ・ミッドーという曲である。この“ミッドー”の部分を猫がニャーオと鳴くかのように演奏する。
この演奏に合わせて、舞音・水谷姉妹・ライカ&めぐみの猫のダンスが入った。
Gt.山鹿クロム、B.三陸セレン、Dr.薬王みなみ、の3人による伴奏で、原町カペラ・三田雪代・太田芳絵の3人が『CAT'S♥EYE』のテーマを歌う。3人が黒いレオタードを着ているので、男性視聴者がいっせいに画面を見た!?
一転して、鈴原さくらのピアノ伴奏で、舞音・水谷姉妹が『黒猫のタンゴ』を可愛く歌う。ライカ&めぐみ、マイコ&リエナが各々組んでタンゴを踊った。
夕波もえこがエレクトーンを格好良く弾いて『となりのトトロ』から『ねこバス』を吹奏楽アレンジで演奏する。本当にトランペットやトロンボーンが鳴っているかのような演奏に、注目が集まる。舞音と水谷姉妹が乗ったねこバスが画面を横切っていく。
甲斐姉妹が鈴鹿あまめのピアノ伴奏で『サザエさん』の主題歌を歌い、水谷姉妹が古屋あらたのピアノ伴奏で『犬のおまわりさん』を歌う。
魚を咥えて逃げて行く猫(舞音!)をサザエさん(夢夜)が追いかけるパフォーマンス、続いて、泣いている猫(石条ぼたん)をなだめる犬のお巡りさん(原町カペラ)というパフォーマンスが行われた。
大崎忍が夕波もえこのキーボード伴奏で『何かいいことないか子猫チャン(What's new, pussycat)』を歌う。
招き猫のコスプレで登場した舞音と水谷姉妹が招き猫バンドの伴奏で『とことこ、なめなめ、招き猫』、更に『マネの招きマネキン』を歌う。
鈴原さくらと長浜夢夜が、セレン・クロムのアコスティック・ギター伴奏でスピッツの『猫になりたい』を歌った(“ニャンコ”じゃなくて“オンニャノコ”になりたいのでは?というツッコミあり)
「それでは次は全員で・・・」
と言いかけた司会の松島ふうかに、後ろから猫足で忍び寄ったライカとめぐみが猫の着ぐるみをかぶせるので、ふうかが思わずキャッ!(Cat!?)と叫び声をあげ、マイクが転がる音がする。転がったマイクを拾っためぐみが
「次はニャーケービーだにゃ」と(ジバニャン風に)言った。
それで全員が猫の着ぐるみを着て(ふうかも並ぶ)、ニャーKBの『アイドルはウーニャーの件』を合唱(伴奏は招き猫バンド)した。
そして常滑真音が『猫ふんじゃった』をピアノで演奏(カメラは舞音の指を映す)し、水谷姉妹と甲斐姉妹が「にゃんこ踏んじゃった、にゃんこ踏んじゃった」と歌って番組は終了した。
舞音がたくさん出る番組ということで、最初からフレームレートを落として放送したが、回線キャパぎりぎりで、則竹部長が回線使用量モニターから目を離せない状態で後半は推移したようであった。(無料放送ならダウンしたと思う)
2月24日(木).
モスクワ時間午前6時(日本時間正午)、ロシアのプーチン大統領はロシア国民向けのテレビ演説を行い、その数分後、ウクライナへのミサイル攻撃を行った。ロシアのウクライナへの侵略の開始であった。
私はニュースを聞いて暗澹(あんたん)たる気分になった。超大国ロシアと人口4千万の国ウクライナでは、勝負にならないと思った。軍事力もたぶん10倍くらいの差がある。恐らくあっという間にロシアはウクライナをその支配下に収めるだろう。
ウクライナという国が1〜2ヶ月以内に消滅する未来を見た気分になり、私は取り敢えず眠ることにした。
夜中、政子に揺り起こされる。
「何てことするのよ!?ロシアは」
政子は怒っている。
「悔しいね。何もできないことが」
「何もできないの?」
「私たちにできることは歌うことだけ」
「何を歌うの?」
「いつも太陽があるように」
「こんな時にロシアの歌を歌うの?」
「ロシアの歌だから歌うんだよ。ロシアの国民みんながこの戦争を支持しているわけではない。戦争に反対する人たちも、きっと多い。だからその人たちを応援するためにも、ロシア語で歌うんだよ」
「それはいい考えだ」
それで私たちは、私がピアノを弾きながら、2人で『いつも太陽があるように』をロシア語で歌った。
待って、兵隊さん、聞いて兵隊さん。人々は爆弾で怯えている。千の瞳が空を見上げている。
私の唇は断固として言う。
プー・フシグター、ブージェット・サンツェ
プー・フシグター、ブージェット・ネーバ
プー・フシグター、ブージェット・マーマ
プー・フシグター、ブードゥー・ヤー
(いつも太陽がありますように。いつも空がありますように。いつもママがいますように。いつも僕がいますように)
災厄は嫌だ。戦争は嫌だ。少年たちのために立ち上がろう。太陽が永遠であるように。幸福が永遠であるように。それが人々が求めるもの。
そして私たちは翌日これを風花に撮影してもらい、動画に日本語の字幕を付けて動画サイトにアップロードしたのであった。
[*
前p 0
目次 8
時間索引 #
次p]
夏の日の想い出・いろはに金平糖(27)